『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』は、ジャンルを「読書型ファンタジーアドベンチャー」と銘打つ作品だ。
HPなどの数字はすべて消しゴムで消してから鉛筆で書き直される、シーンの切り替わりはページをめくって表現される、画面上でサイコロが振られる(内部的に数字は確定しているのに)──
プレイした当初、これらのアナログな演出に対して少し妙というか……無粋と言えば無粋なのだが、「なぜわざわざそんなことを……?」と思ってしまった。
しかし、プレイしていくうちに、別の感覚を覚え始める。
このゲーム、そうした演出に付随する効果音が実にいいのだ。
ページをペラっとめくるときの紙が擦れる音。
消しゴムが文字を消し、えんぴつで数字を書き込む音……。
そして、転がるサイコロの目を見守るドキドキ。
そんな、アナログゲームにあった「フィジカルな快感」を再発見できる本作を紹介したい。
ゲームブックのフレーバーを再現したRPG
『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』。
ジャンルを「読書型ファンタジーアドベンチャー」と銘打った本作は、かつて隆盛を誇った「ゲームブック」を、コンピューターRPGとして復活させようと試みており、いわばデジタルゲームブックというべきスタイルを取っている。

ゲームブックとは……すごくざっくり言うと、TRPGを書籍としてデフォルメし、ひとりでも遊べるようにしたもの……と言えるだろうか。

プレイヤーキャラクターは戦士ハヴェロックと魔女パネリのふたりから選ぶことができる。選ばなかったほうがNPCとして登場し、ともに同じ事件に別の視点から立ち向かうことになる
読む順番はページ通りになっておらず、セクションごとに番号が振られ、読者=プレイヤーは自身の選択に従って「その行動を選んだのならこのセクションを読め」という形で読み進める。これにより、本という形式でありながらストーリーの分岐やランダム性を表現することができ、「ゲーム」として遊ぶことができたのだ。
本作はそうしたゲームブックの手触りを再現するため、画面左側にはゲームブックが、右側にはパラメーターや所持アイテムなどのリソースを管理するキャラクターシートが配置される。
また、エリア内を移動する際は別紙の地図を開くようなかたちで画面いっぱいに地図が表示される。

そしてゲームブックのように読む先を選択し、ダイスを振って戦闘を行い、限られたリソースを慎重に管理して、物語の結末に向けて読み進めていくのだ。

触れた当初に感じた疑問。しかし…
正直に言うと本作のコンセプトを見聞きし、そしてゲームプレイを始めた最初の1時間ほどは、その狙いについて少し懐疑的であった。
直撃世代でないこともあり、ビデオゲーム上でゲームブックをわざわざ再現する、ということにあまり意味を見出せなかったのだ。

例えば戦闘の際にはプレイヤーと敵とでそれぞれダイスロールで判定が行われる。
画面上で6面ダイスがふたつ振られ、その数値にレベルを足した合計値で上回った側が一方的に攻撃することができるというシステムだ。
また、HPなどの数字の増減についてはわざわざ消しゴムで消してから鉛筆で書き直される、という演出が入るなどその「アナログな描写の再現」の徹底っぷりには感服させられるものがある。

が、よく考えるとこれらは少し妙というか……無粋と言えば無粋なのだが、「なぜわざわざそんなことを……?」と思ってしまった。
そもそも、こうしたアナログな処理を自動化したのがコンピューターゲームではなかったか?
ダイスロールというランダム要素を乱数生成で処理し、数字の管理をコンピューター計算でやってもらう……。
増してや、このゲームの場合はそうした処理をした上で、画面上でダイスロールやキャラクターシートへの書き込みというビジュアル演出をわざわざ行なっているのだ。これは、二度手間ではないだろうか?

もちろん、それを言い出したらすべてのビデオゲームのビジュアル演出は余計ということになり、数字の増減だけ見てりゃいいだろということになってしまうし、本作のそうした演出が往年のゲームブックファンの郷愁を呼び覚ますのは理解できる。
だが世代でない私には、これを見て「懐かしい」とは思わなかったし、その真価がいまいちわからなかった。
しかし……。
アナログな手続きが生み出す原始的な快感とデジタルでスマートな処理のいいとこどり
プレイしていくと別の感覚を覚え始めた。
このゲーム、そうした演出に付随する効果音が実にいいのだ。
ページをペラっとめくるときの紙が擦れる音。
消しゴムが文字を消し、えんぴつで数字を書き込む音……。
それらのアナログ的演出を彩る効果音の数々が、実に心地いい。また、そうした演出がゲームの進行を妨げず、シームレスにテンポよく挟まれるのも好感を抱いた。
そしてなによりダイスロールだ。
本の上をコロコロとダイスが転がる……それが耳にも気持ちいいのはもちろんだが、なによりもそのビジュアルにいつの間にか射倖心を煽りに煽られていることに気づいた。
「6とか5出ろオラ!」
と思いながらマウスをクリックし、投げられた賽を睨みつけている自分がそこにはいたのだ。
あ、そうか。これか。
こういうフィジカルな快感がアナログゲームにはあったんだな。
アナログなゲームとか、それを再現したものを見て、「単にノスタルジーじゃないの?」と穿った見方をしてしまっていたことがそもそも間違いだったのだ。
サイコロが転がる時間には期待が詰まっていたんですね。
めちゃくちゃ悪い言い方をすればチンチロをしてるときと同じ感情なんだなこれは。
しかも本作はサイコロの目(とレベルを足した合計値)が大きかった側は、反撃も喰らわず一方的に攻撃できるというハイリスク・ハイリターンなシステムを採用している。
これがまた脳を激しく刺激する仕組みとなっており、、サイコロの出目次第で勝てる時は圧勝できるし、勝てない時はバチボコに蹂躙される。
レベルが低いまま戦闘に突入してしまい、アイテムも使い切ってしまい……といったときも、サイコロの出目が良ければ勝てないことはないので延々リセマラすればなんとか勝ち抜くことも可能ではあるのだ。


このギャンブル性の高い戦闘システムと、ダイスロールが生み出す期待を煽る時間が絶妙にマッチし、戦闘中には常に身を乗り出しながらプレイするようになってしまった。
サイコロをもっと睨みつけたいんだよ! 睨んだところで結果は変わらないんですけども……。
ダイスロールが無い、ふつうのビデオゲームのRPGのような乱数による戦闘だったらこうはならなかっただろう。
しかも計算と記録はしっかりゲーム側でやってくれるわけで……。つまり本作は「ビデオゲームでわざわざアナログゲームを再現したノスタルジー溢れる作品」というより「ビデオゲームとアナログゲームのいいとこ取りを目指した作品」だったわけなんですねえ。
2周目以降の味変も楽しい
アイテム欄のストレージ管理もなかなか絶妙で、たくさん持ち歩けるようで意外とすぐに一杯になってしまう。
が、「容量無限にしてくれよ!」的なものにはなっておらず、どう取捨選択するか? なにをいつ使うといちばん得できるか? を考えさせられる楽しさがあり、リソース管理のジリジリ感を味わうことができる。

ストーリー的には、とくに序盤はわざとらしいまでに王道なのだが、ゲームが進むにつれなかなか興味深い設定が開示されていって楽しめる。
1周で得られる情報は限定的なので、ぜひ周回プレイもしてみてほしい。
2周目はこれまた「あ、そういう感じ??」という体験が得られ、また1周目以上にテンポよく遊べます。
Steamのストアページで公開されている制作者インタビューによれば、本作のストーリーのモチーフの一つとして、数年前Twitterで流行った「#魔女集会で会いましょう」が使われているらしく、その点も「なるほどねぇ〜〜」となりました。なかなか余韻ある味がして、美味しくいただけました。
『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』は、PC(Steam)にて発売中だ。






