世界を救う英雄が、かならずしも正義の味方とは限らない。
たとえば……戦う者すべてを「斬る」戦闘狂が、英雄である可能性も否定はできない。
私がいま遊んでいる戦略RPGの主人公は、たとえ戦いで負けた相手が命乞いをしてきても「斬る」しか選択肢を選ばせてくれない。
容赦がない。冷酷無比。
でも……
顔が良い!
敵も味方も口を揃えて「美しい」と表現するほど、顔が良い。
そんな異色の主人公「ディートリヒ(声:日野聡さん)」が登場するのは、人気の戦略RPG『ファイアーエムブレム』シリーズの最新作『ファイアーエムブレム 万紫千紅』だ。
冥界の王が率いる軍団によって蹂躙され、各国の秩序が崩壊した凄惨な世界。そこに、降り立った1人の救世主が、圧倒的な脅威に立ち向かうため、過去に遡り強力な仲間を集めて「救世主軍」を結成する。……そんな物語が描かれるタイトルとなっている。
いきなり完成された強い助っ人を呼ぶわけではなく、プレイヤーは過去の時代に飛び、大剣闘祭で活躍した偉大な戦士たちの軌跡をたどりながら彼らの成長物語を追体験する。そうして立派に育ちきった強者たちを5年後の現在へと導き、協力して巨悪に立ち向かう──そんな激アツ展開が描かれるのだ。

本作を彩る主人公は、4人の才気溢れる戦士たち。
プレイヤーはそれぞれ異なる能力や出自を持つ主人公らからひとりを選択し、その冒険を追体験することができる。今回は9月17日に発売を控えている本作を先行プレイできる機会をいただいたので、筆者は美貌を誇る剣士ディートリヒの足跡を追うことに決めた。
【主人公】ディートリヒ(CV:日野聡)
— 『ファイアーエムブレム』総合 (@FireEmblemJP) June 15, 2026
己の渇きを満たすため、強者との戦いを求め続ける美しき剣士。
海を越えた先にある「フォドラ」の地からやってきた異邦人。
●好きなもの:「美しい」と感じるもの、甘い物、妹 #FE万紫千紅 pic.twitter.com/R6S4fmoaUn
本稿では、ディートリヒの破天荒でバトル狂な旅路を通じて、本作の内容をすこしでもお伝えできれば幸いだ。
文/TsushimaHiro
編集/anymo
顔の良すぎる戦闘狂・ディートリヒ。ちなみに、慈悲はない
ディートリヒという男を一言で表すなら「顔の良すぎる戦闘狂」だ。
すれ違う人びとから山賊に至るまで、彼の顔をみると皆が口をそろえて「綺麗」「別嬪」「美しい」と見惚れてしまう。しかし、そんな美貌とは裏腹に、彼の頭の中は強い敵と戦い、斬り伏せることでいっぱい。まさに戦うために生きているような人物であり、主人公としてはちょっとばかり珍しいタイプだ。
彼の物語は、強者との血沸く戦いを追い求めて旅をしている最中からはじまる。
ディートリヒの乗っていた船は嵐の中で巨大な獣に襲撃され沈没。見知らぬ地に打ち上げられる。
さっそく、ディートリヒの美しさが発揮されてしまう。
浜辺に打ち上げられるだけで美しいって、どういうこと???
その美しさは相当なものらしく、彼を見つけた廃品拾いの老人ですら「おっそろしくキレイな男やったわ」と漏らし、先で遭遇する山賊すらも「こいつ、とんでもねぇ別嬪さんだぜ!」と褒め称えてしまうほど。
とはいえ、先述したとおりディートリヒが求めているのは美貌への賞賛ではない。戦いだ。
彼はいざ戦いがはじまると喜んで愛刀「魔剣アンスウェラー」を抜き放ち、山賊を圧倒的な剣技でねじ伏せる。死にかけた山賊が「家族がいる」と命乞いをしてきても、プレイヤーに提示される選択肢は「斬る」のみ。無慈悲である。
ディートリヒいわく、殺意を持って立ち向かってきた以上、「殺すか死ぬかしかあり得ない」のだという。このままいくと仲間になりそうな人まで死んじゃいそうな気がして、ハラハラする。
果たして、彼を満足させる者が現れる日は来るのだろうか……?
「強いのか?」ではじまるコミュニケーション。戦闘狂すぎるよ
つぎは、道中で立ち寄る漁村での出来事だ。村を脅かす海獣の生贄として、「エスメラルダ」という名の娘が岩礁の杭に縛り付けられていた。放置すれば、罪なき娘が理不尽にも怪物にむさぼり喰らわれるという悲痛な場面である。
しかし、そこへ通りかかったディートリヒの口から出たのは「海獣とやらは、強いのか?」という言葉だった。
どんだけ戦いたいんだ!
彼は海獣と戦うためにエスメラルダの鎖をあっさりと斬り飛ばし、戦闘に参加するのであれば「自分の身は自分で守れ」と言い放つ。
無事に海獣を退治したあと、少し物足りなさそうな顔をするディートリヒ。
だが、そんな命知らずな戦いぶりと美貌が、エスメラルダの心を強烈に射抜いてしまう。
なんて罪な男……。


彼女はすっかりディートリヒに惚れてしまい、のちに彼を「ダーリン」と呼んで旅に同行することになる。
「えっ?いきなり恋リアはじまっちゃった……?」と困惑しそうにもなるが、やっぱ、『ファイアーエムブレム』はこうじゃなくっちゃ!パーティメンバー同士をカップリングさせるという体験は過去作からあり、シリーズでも人気を博していた要素のひとつ。一見、恋とは無縁に思えそうなディートリヒ相手でも、関係性をにおわせてくれるのはありがたい。妄想が広がる。
筆者はストレートなアプローチをしかけるエスメラルダのことをディートリヒはどう見るのだろうかと内心ドキドキしていた。しかし、そんなふたりの戦闘中の会話では、「なぜ私を助けたの」と問うエスメラルダに対し、ディートリヒが「その、強い光を湛えた瞳が気になっただけだ」と言い放つ……なんてシーンがある。
どうやら彼は、強敵と相まみえたときや強大な力を持っている相手、また心の内に“強さ”を秘める者に対して“美”を感じているように見える。本当に心から戦闘を楽しんでいるし、真の強者に出会うと笑顔でその強さを讃える。
戦闘中のディートリヒの表情は、どう見ても「楽しそう」なのだ。
彼が身を投じているのは間違いなく命のやりとりなのだが、筆者にはまるで、彼が遊び相手を探して旅をしているかのようにも見えた。
そんな彼がこの先どうなるのか?行末を見届けたくなる、その美貌だけではない魅力に満ちたキャラクターなのだ。
じつは猫好きなの、ずるくない?
会う人のほとんどから「顔が良い」と言われるディートリヒだが、ときにその殺気を感じ取られて「殺人者の目だ」と怖がられてしまうこともしばしば。たしかに、血の匂いしかしない気もするディートリヒだが、ステータス画面の支援情報を覗くと、意外な事実が判明する。
「好きなもの」の欄に、「甘いもの」「妹」「猫などのかわいいもの」と、しれっと記載されているのだ。(彼が結成したチーム名は「ラミーヌ一家」となる。)
あんなに血に飢えた戦闘狂のくせに、甘いものに目がない……?
なんだ、その女性向け恋愛シミュレーションゲームの男性主人公みたいな設定は!
ずるい!!!ずるいぞチクショウ!!!そのギャップはずりぃよ……人気出ちゃうやつじゃん。


選んだ主人公によって「戦力の強化方法」も変化
本作のゲームシステム面についても、紹介させてほしい。
特筆すべきは、本作に登場する主人公4人の個性がゲームシステムそのものに影響を及ぼす点だ。
一例として、さきほど紹介したディートリヒの場合は、「ワールドマップ上で魔剣を発動することで付近に潜む敵をあぶり出し、ゲリラ的に“遭遇戦”に挑める」能力を持つ。遭遇戦に勝てば報酬や、あらたに仲間をくわえるために必要となる“名声”が獲得できる。
また、各地に潜む「兇戦士」からの挑戦状を受け、勝利すれば通常攻撃とは異なる強力なスキル「戦技」を奪い取ることもできちゃうのだ。
純粋な少年・カイを主人公として選べば、騎乗動物を捕獲しつつ、作物を育てることが可能。
“鉄の女”ことセオドラを主人公として選べば、軍団兵を募集・派兵して計略をめぐらせる王道戦記モノみたいなプレイが可能。
踊り子のレダを主人公として選べば、各地で興行を打ちながら秘密の情報を集めることができる。
大枠のゲームシステムは4人共通ながら、選んだ主人公によって育成方法に違いが出てくるのだ。
そして、先述したとおり本作はキャラクター同士が絡むシーンももちろん充実している。せっかくなら、4人の物語を遊びたおしてから最終決戦に挑みたいと思ってしまうのは筆者だけだろうか?
ああ、時間が、時間が奪われる……(歓喜)。
名声を高めて食事に誘い、部隊に勧誘。世界の危機を救うため声をかけまくる
そして『ファイアーエムブレム』の醍醐味といえば、仲間集めだ。
本作は主人公らが名声を高めた状態で、街に滞在する戦士たちに声をかけることで「仲間」にすることができる。
贈り物を手渡したり食事に誘うことで「支援レベル」を上げ、各地で依頼をこなせば名声が上昇し、条件を満たせば相手をスカウトして仲間に引き入れられる……という仕様だ。条件さえ満たせば、敵陣の有力な戦士を仲間にすることも可能かもしれない。
しかし、世界を救うという大義名分があるとはいえ……作中でも屈指の美男であることが知られているディートリヒが女性たちに声をかけまくる姿を見ると、まるでナンパでもしているような気分になる。


プレイヤーの分身はキャラメイクも可能、時を渡る救世主となる。
そして、過去の英雄たちを5年後の現在へと導くのが、プレイヤーの分身「救世主」だ。
滅びかけた現在を救うため過去へ遡り、戦士たちを5年後のこの地に集めるのが救世主の役目。今は亡き4人の戦士の過去に干渉することで、それぞれの運命を導くのだ。
滅びゆく世界の最終決戦に際して、初期状態での戦力は分身を含めてわずか3人。作中の台詞を見るに、世界を救うためにはざっくり“いまの10倍の戦力”が必要になるというのだから穏やかではない。時代を超えて戦士たちがしのぎを削りあう「大剣闘祭」に赴き、最強の戦士たちを見つける必要があるというわけだ。
目覚めたときは心臓だけの存在だった(!?)主人公は、新しい肉体を与えられる。
肌の色から顔立ち、髪色、インナーに至るまでキャラメイクが可能で、選んだ容姿はムービーシーンや戦闘、会話画面のグラフィックにも反映される仕様となっている。
また、『ファイアーエムブレム』と言えば“剣と魔法の世界”というイメージがあるが、この分身を造ったのは、かつて宇宙を渡っていたという船「ジョカ」の民。訓練シーンではホログラムを用いた敵が襲いかかってくる。
そう、本作には“宇宙SF”の要素が散りばめられている。
今回ピックアップした主人公のひとりであるディートリヒは、基本的には戦うことしか頭にないのは間違いない。しかし、強者を尊び、白熱するバトルをこよなく愛する姿には、純粋さすら感じられた。そんな魅力あふれる主人公が、まだあと3人も控えているというのだからこのゲームはおそろしい。
余談だが、彼の旅にはじつにユニークな面々がくわわっていく。
道中で出会った宣教師のファビオは、じつは魔剣の来歴に詳しい博識な人物。(気になった対象を解剖したがるという特殊な趣味を持っているので完全に安全というわけでもなさそうだが)回復も遠隔攻撃もこなしてくれる優秀な男だ。
また、帝都ダグシオンの酒場では事前のSNSリサーチでも人気の高かった元・傭兵ミカエラさんと合流。ひとり娘を養うために傭兵生活に復帰するというお母さんだ。「鉄血」の異名を持つ斧使いで頼れる仲間となってくれる。ディートリヒに惹きつけられたミカエラママを含む仲間たちと疑似家族のような関係を築いていく過程は、見ていてとても心地が良かった。
4人の英雄たちが織りなす立身出世ストーリーにくわえて、未来から彼らを導くプレイヤーの分身の物語も加わり、合計5つの本筋が存在する本作。彼らが現在の世界に降り立ったとき、どのような決着が待っているのか。 その先は、ぜひみなさんの目で確かめてほしい。
Nintendo Switch 2 ソフト『ファイアーエムブレム 万紫千紅』は9月17日に発売される予定だ。
































