「なんだ〜〜誰ですかこれは〜〜〜???」
「おガッ!」
「やめてくれ、いまはやめて……!」
『UN:Me』を遊んでいるあいだ、そんな独り言がついつい口をついて出てしまう。
ホラーゲームの“あるある”だと筆者は勝手に思っているのだが、不安になってくると自分をごまかすためについつい独り言が飛び出してしまうのだ。
ホラーゲームなので怖い。当たり前といえば当たり前なのだが、このゲームが厄介なのは、一度「これは大丈夫」と思ったものが平然と裏切ってくることだ。
さっきまでとはあたりの様子が少し違う。なんでもなかったはずのただの背景、オブジェクトだと思っていたものが、急に自分を追いかけてくる。“安心できる場所”がない。
本作『UN:Me』は、ひとりの身体に4人の魂が入っている少女を操作していくホラーゲーム。そしてその「魂」が入れ替わることで、世界のありようも、“恐怖の対象”も変わる。言ってみると、ゲームのルール自体が変化してしまうのだ。
『UN:Me』は、ヒストリアが開発・集英社ゲームズがパブリッシングを務める「ソウル・トリアージ アドベンチャー」。主人公の少女には4つの魂が存在し、しかもその魂が状況に応じて(あるいはランダムで?)プレイヤーの意図に関係なく勝手に表に現れる。
それぞれの魂は異なるトラウマを抱えているため、恐怖する対象もさまざま。そのため、さっきまでただの通路でしかなかった場所が、急に不穏なホラースポットに変貌するようなことも起こるのだ。
本作は8月26日からドイツのケルンで行われているgamescom2026にて、初めて体験版を公開。今回はそれに先がけて行われた国内メディア向けの体験会に参加してきたので、その模様をお届けしていく。
執筆/恵那
今回プレイした体験版の舞台は、奇妙な学校だ。冒頭から屋内の廊下で雨が降っていたり、頭の代わりに花を生やした生徒たちが授業を受けていたりと、あからさまに異様な光景が広がっている。
この異様な学校を探索しながら、主人公の少女(たち)に関係するアイテムを探していくのが体験版の目的になる。
気味の悪い場所ではあるが、とはいえこれは「背景」だ。異様ではあっても、人間は何にでも“慣れて”しまう。そして慣れると次第に安心する。その安心を許さないのが、「ひとつの身体に4つの魂」というシステムだ。
その理由に至る説明はまだなされていないのだが、本作の主人公は4人の魂がひとつの身体を共有している状態にある。通常はその魂のどれかひとつが表に出ている状態なのだが、本作ではその表出した魂に応じて“世界の見え方”や“恐怖の対象”までが変化する。
ごく簡単に言えば、ある魂にとってなんでもない場所が、別の魂にとっても安全とは限らないのだ。
たとえば、学校の一区画にある「保健室」。この部屋の周囲には同じ顔をした看護師たちが歩き回っており、近くに来ると「コツコツ……」という足音がしてかなり不気味だ。
とはいえ、基本的にはそれだけ。気味は悪いが実害はなく、基本的には近寄ったり、すれ違ってもなんの問題もない。
けれど「Ⅳ」の魂が表に出ているときは違う。プレイを進めると分かるのだが、彼女はどうも「保健室」に嫌な記憶を持っているらしく、「ナース」が恐怖の対象になっている。
そのため、「Ⅳ」の魂が出ているときはナースたちが積極的にこちらを追い回すようになり、捕まると大勢のナースに囲まれてGAMEOVER。
またナースが近くにいるとBGMも変化。事前に危険を察知できるという意味ではありがたいのだが、だからといって怖くないかと言われるとそれはまったく別問題である。むしろ不気味な音楽によって、否が応にも不安が煽られる。
「ダッシュ」のような逃走手段がなかったのも地味に嫌なところで、じわじわと詰めてくるナースたちに、真綿で首を絞められているような気分になる。
さらに、魂によって周囲の見え方も変わる。魂ごとに画面の色合いが微妙に異なっており、場所によってはかなり印象が変わっている場所もある。
人格によってインタラクトできるものが変化する。たとえば先ほどの「Ⅳ」の場合、ほかの人格だと通れない保健室前の「立入禁止」通路を、看板を蹴り飛ばして無理やり通行できるようになっていた。
しばしば言われる一般論として、「人間は未知のものを恐れる」のだという。
これはゲームを遊んでいるときにも同じで、たとえば本作のような探索型のホラーゲームを遊んでいると、普通は探索を進めるにつれて少しずつ場所に慣れてくるものだ。
「こいつは不気味だけど安全」
「この部屋には特にギミックなし」
「これはただの背景オブジェクト」
そんなふうに頭の中で地図ができあがり、ゲーム的なルールがなんとなく理解できてくる。けれど『UN:Me』は魂ごとに怖がっている対象が違うため、ある魂では素通りできていた場所が、別の魂によっては危険スポットであったりして、同じ場所だからといって気が抜けない。
一度通って安全だと思っていた場所を、別の魂でもう一度探索すると違うことが起きる。
しかもこの魂、場所や状況に応じてプレイヤーの意図に関係なく勝手に表に出てくることがあり、なんだか周囲で「コツコツ……」と聞こえているタイミングで主人公が「ウッ!」と頭を抱え始める(魂が切り替わるときの予告動作)と「いまはやめてくれ……!」と、ものすごく焦る。頭を抱えたいのはこっちだよ。

ただこれ、逆に言えばある魂が「怖い」と思っているものでも、ほかの魂ならなんとも思っていないということでもある。逃走中に魂が切り替わってくれると、押し寄せていたナースが急にまた無機質な背景オブジェクトに戻る……なんてことも起こる。
怖い目に遭っている「自分」そのものが入れ替わるというワケで、まるでホラー映画で、怪物から逃げていた人物がふっと我に返るようなシーンを観ているような感覚だ。「さっきまでのアレはいったい……?」というつめたい余韻だけが残る。

主人公ひとりの身体に4つの魂が宿っているという設定が、ホラーの見せ方にかなり強く作用しているのだが、これはもちろんストーリー的にも重要な設定。
プレイを進めていると、各魂のキーとなるアイテムを見つけることで、主人公の中にいるそれぞれの魂と「対話」ができる場面が出てくる。それぞれの少女たちはそれぞれことなるトラウマを負っているらしく、対話を通じたカウンセリングによって彼女たちの抱えた闇についてのヒントが引き出せる。
今回の体験版はUIがすべて英語なのだが、音声は日本語。聞いていると4人は性格もそれぞれまったく違うことがわかってくる。たとえばナースが苦手な「Ⅳ」の魂は、いかにもな“不良娘”という話し方をするのだが、大人しそうな女の子や、表情が硬いクール系などもいて、その違いがおもしろい。
とはいえ、言ってみれば相手のトラウマをほじくり出しているわけなので、どう聞くかの聞き方はかなり大事。失敗すると相手のメンタルにダメージを与えることになってしまうのだ。

以上、ざっくりとながら『UN:Me』初の体験版についてのレポートになる。
現在gamescomでこの体験版がプレイ可能なのでぜひ……と言いたいところながら、さすがにいまからドイツまで行くのはなかなか無理がある。
ただ本作は9月の東京ゲームショウでも試遊出展されることが発表されており、興味がある方はそちらをお待ち頂くのが良いだろう。なおゲーム自体のリリースについても、今年2026年中を予定しているとのことだ。














