新しい、“新伝奇”。
それが、ゲーム『アストラエ・オラティオ』を目指すところだと、本作のゲームディレクターであるイム・ジョンギュ氏は繰り返し語った。
この発言を理解するためには、まず「新伝奇」を知らねばなるまい。
これは、主に小説やノベルゲームを評する際に使われているカテゴリーだ。もともとは「伝奇小説」というジャンルから派生した考え方で、一見すると現実世界と大差ないように思われる時代や場所を舞台としつつ、その裏側では超自然的な忍術や風水、魔術などが跋扈する様を描いた作品群をさす。
では「新伝奇」の“新”はなにかと言えば、これは時代背景がより新しい、つまり現代に近いものを指すことが多い。戦国時代や江戸時代が舞台となりがちな「伝奇」に比べ、昭和や平成、せいぜい明治期を舞台として、「現代小説」的なテイストを取り込んだものが、「新伝奇」と呼ばれる傾向にあるようだ。
本作の開発陣も、「新伝奇」を「現実の裏側に“神秘”や“超能力”の世界が広まっているもの」と紹介した。ジャンル名に馴染みがなくても、構成する要素から人それぞれ思い浮かぶ作品はあるかもしれない。
『アストラエ・オラティオ』は、「新伝奇」ジャンルを正面から掲げ、とりわけ「魔法」という要素に注目した意欲作である。韓国のDynamis Oneが開発し、2027年にリリースを予定している本作の、公式によるジャンル名は「新伝奇魔法RPG」だ。
9月17日、「東京ゲームショウ2026」(TGS2026)にて本作のメディアプレビューが開催された。
そこでゲームディレクターのイム氏がくり返し口にしたのが、「新しい新伝奇」という趣旨の言葉だった。
従来の新伝奇をなぞるのではなく、自分たちで新しく考えたものとして提供する。そしてそのすべてを、スマートフォンというプラットフォームで完結させる。これがイム氏の一貫した主張である。
本稿では、TGSの場でおこなわれたメディアプレビューと、あわせて実施された合同インタビューの模様をお届けする。
TGSのメディアプレビューにて、人ならざる権力者「裏内閣」や、本作の主人公である「主任」のビジュアルが初公開
メディアプレビューでは、開発陣による本作の概要と、新PVについての紹介がなされた。

『アストラエ・オラティオ』は、東京を舞台にした「新伝奇」RPGだ。
ゲームディレクターのイム・ジョンギュ氏は、新伝奇を「私たちが知る現実の裏側に、神秘や超能力の世界が広まっているという想定から出発したジャンルになります」と紹介する。
プレイヤーが担うのは、魔法使いたちを担当する機関「特区庁」の一般公務員である「主任」。その立場で、さまざまな人物や事件に遭遇していくことになる。
イム氏は、開発で重視した2つを挙げた。まずは「ストーリー、アート、プレイ性を1つのスマートフォンゲームとして成立させること」、そして「ライブサービスを通じて継続的に拡張していけること」。また運営型タイトルであることに対しては、「“連載もの”のようにゲームを拡張していきたい」とも強調した。
続けて公開されたのは、初お披露目となる2本の映像だ。物語の始まりを描いたダイジェストでは、主人公である「主任」のビジュアルが明らかに。彼が「特区庁」に属することになった経緯や、都市の裏に潜む人ならざる権力者「裏内閣」のビジュアルも紹介された。
2本目は、「港区の魔法使い」たちの日常を描いたMVだ。かわいらしさを全開に押し出したテイストで、迫力ある展開が目立った1本目とは真逆。本作の持つ2軸の魅力を感じられた。
映像公開が終わると、話題はTGS2026で初公開となったデモビルドへと映った。イム氏が今回のビルドで特に伝えたかったのは、「ストーリーと戦闘の繋がり」だという。
これは多くのRPGが取り組んできたテーマでもある。では、『アストラエ・オラティオ』ならではの差別化ポイントはどこにあるのか。
イム氏はこれを「戦略的な判断とリアルタイムな緊張感の融合」とし、
「反射神経ではなく、予測しながら設計する楽しさ」
「準備しておいた戦術が正確にはまる瞬間の快感」
「その瞬間にキャラクターがもっともかっこよく見える演出」
といった工夫を挙げた。
本作のバトルでは、敵のアイコンを見れば「つぎの行動」が予測できる。しかしアイコンは時間経過で流れていくため、じっくりと考えて“正解”を導き出すのではなく、その場の状況に応じた最適解を選んでいく必要がある。
予測と実態をすり合わせつつ行動を組み立てていき、見事に思惑がハマったときの達成感こそ、本作のバトルのキモと言える。
演出面については「普段は淡々と、決定的な瞬間には確実に」という、ギャップを意識した考えかたで構築しているという。「新伝奇というジャンルは、日常が淡々としているほど裏側があらわになり、その瞬間が引き立つと思っています」と語った。
そのため、ほとんどのシーンは静かに展開し、ハイライトシーンや、バトルに大きな影響を与える「領地宣言」のような瞬間に一気に盛り上がるよう構成されているそうだ。
そうした「淡々とした描写」のなかで、キャラクターの魅力をどう見せていくかという話題について、キム氏は「シナリオでの立ち位置」、「バトルでの活躍」、そして「恋愛対象」という3つのレイヤーを意識していると語った。
最後の話題は、東京ゲームショウ2026後に実施するCBTについて。イム氏がユーザーに注目してほしい点として挙げたのは、大きく3つだった。
・世界観とキャラクターの魅力
・ストーリー、戦闘、日常のサイクルが楽しく繋がっているか
・これらすべてをスマートフォンで100%楽しめるか
イム氏の狙いとして、本作はリリースして終わりではなく、連載物のようにライブ感をともないつつ発展していきたい、という思いがあるとのこと。「CBTでいただいた皆さんのご意見を反映し、改めてお見せすることを目標としています」と、イム氏は締めくくった。
「新しい新伝奇」とはなんなのか? CBTで体験できるコンテンツ量は? PC対応の予定は? メディアからの質問に開発者が応じた合同インタビュー
メディアプレビューの後半では合同インタビューが実施され、ゲームディレクターのイム・ジョンギュ氏と、アートディレクターのキム・イン氏が、メディアからの質問に応じた。
──リリース時には何名ぐらいのプレイアブルキャラが登場するのでしょうか。また、彼女たちが属するグループはどれくらいになるのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
キャラクターに関しては、おそらく30人以上、グループとしては10個ほどと考えていますが、より多くなると思います。
──これまで公開されていた情報は、キャラクターのビジュアルや世界観が中心でした。TGSまで詳細なゲームシステムを公開しなかった意図をうかがえますか。
イム・ジョンギュ氏:
『アストラエ・オラティオ』は、バトルシステムも魅力です。しかしその前に、まずはキャラクターやビジュアルを知ってもらったうえで、今回のTGSでシステム部分を公開しようと考えました。
──CBTでは、どれくらいのボリュームを楽しめるのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
およそ3日~5日分を楽しめるものとなっています。
──CBTの日程など詳しい内容はうかがえますか。また、どれくらいの規模感なのか、どれくらいの人数が参加できるのかを聞かせてください。
イム・ジョンギュ氏:
こちらは公式発表で皆さまにお伝えしますので、楽しみにお待ちいただければと思います。
──本作はスマートフォン向けと発表されていますが、CBTをふくめ、今後PCでの展開はされるのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
『アストラエ・オラティオ』はスマートフォン向けに開発をしてきました。CBTにおきましても、PCで展開する予定はいまのところございません。
もちろん長期的にはPC向けの展開も視野に入れたいと思っていますが、もし今後、何か開発する予定があれば別途にしていく予定です。
──スマホゲームであることを強調していらっしゃいますが、どのようなOSに対応できるかをお聞きしたいです。
イム・ジョンギュ氏:
詳しい仕様というよりは、ここ5~6年の中で対応できるようなもの、という形で考えております。
戦闘は“格闘ゲーム”から。ビジュアルは“2000年代のライトノベル”から。幅広い影響を受けつつ目指す、。「新しい新伝奇」
──韓国の開発者が、日本の東京を背景として選んだ理由をお聞かせください。
イム・ジョンギュ氏:
新伝奇というテーマを採用するにあたり、日本が必須であったことが理由です。
──本作は「新伝奇」がテーマとなっており、「領地宣言」のような特殊な概念も存在しています。本作の世界観を作るにあたって、何か影響を受けたものはあるのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
戦闘は、『ストリートファイター』など、対戦ゲームにインスピレーションを得ました。世界観に関しては特定のゲームを参考にしたわけではなく、総合的に感じたものを反映しております。
キム・イン氏:
ビジュアルに関しては、テーマとして新伝奇や魔法というものがありつつ、そこに2000年代のライトノベルなどから発想を得ています。
──『アストラエ・オラティオ』を制作するにあたって、なんらかのサブカルチャーが作品に反映されているのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
私たちが幼かった頃に楽しんでいたゲームの世界観です。ですが世代に関係なく、できるだけ多くの人が楽しめることを重要視しています。
──本作のキャラクターは「杖」を持っているかと思いますが、それぞれの違いやアイデンティティを表現する難しさはありましたか。
イム・ジョンギュ氏:
魔法使いというテーマがあるので、たとえば90年代の魔法少女や『ハリー・ポッター』などの要素を入れています。「領地宣言」や代表的なシーンでは、要素としての「杖」を活かす設定としております。
──本作の「90年代、2000年代の世界観をモチーフとした新伝奇」についてうかがわせてください。小説やゲームの形で新伝奇を楽しんでいる方からも、本作の世界観に注目が寄せられていると思います。しかし本作はスマートフォンのみでの提供です。新伝奇を標榜しつつ、作品をスマートフォンの枠組に収めた意図はあるのでしょうか。
キム・イン氏:
『アストラエ・オラティオ』の新伝奇は、従来のものというよりは、「私たちが新しく考えた新伝奇」というジャンルとして提供したいと考えております。そのため、スマートフォンでも楽しめる世界観となっています。
──サービスの方向性についてうかがいます。近年では韓国のゲーム会社も、まず日本で先に公開をしてから、韓国で発表・展開していくという形が多いように思います。『アストラエ・オラティオ』に関しても同様なのでしょうか。
イム・ジョンギュ氏:
本作は、「連載もの」としてのライブ感を楽しんでいただきたいと思っています。今回のTGS2026での発表を通し、そこから全世界に発展させてまいります。
──おふたりが本作でもっとも好きなキャラクターを教えてください。
イム・ジョンギュ氏:
私個人の好きなキャラクターは百杏(もあ)ですね。
— 【公式】アストラエ・オラティオ (@Asora_JP) August 21, 2026
キム・イン氏:
アートディレクターの私としては、いちばん初めに作ったキャラクターである「田中えりん」が好きです。
【特区庁広報課からのご案内】
— 【公式】アストラエ・オラティオ (@Asora_JP) June 9, 2026
キャラクター紹介 – 田中えりん
「あたし、もしかして主任さんに期待されてるのかな?」
日本で生まれ育った庶民の中学生。日本人。
母がアイルランド系のため、見た目は完全に西洋人だが、実際は普通の日本の庶民である。(ちなみに英語は全くできない)… pic.twitter.com/f3Y3p4jNnj
──最後に、『アストラエ・オラティオ』を待ち望んでいるユーザーにメッセージをお願いします。
キム・イン氏:
今回の東京ゲームショウを通じて、『アストラエ・オラティオ』を初めて皆さまに披露でき、うれしく思います。デモを通じて本作の世界やキャラクターがどのようなものか、そしてストーリーや戦闘がどのように展開されるのかを、皆さまに少しでも感じていただければ幸いです。
今後のCBTでは、『アストラエ・オラティオ』の体験をスマートフォンで完結して楽しめるということを、ぜひ確かめていただければと思います。これから続く物語と、成長していく『アストラエ・オラティオ』を、ぜひ見守っていただければ幸いです。ありがとうございます。
イム・ジョンギュ氏:
『アストラエ・オラティオ』は、長期間にわたって展開していくタイトルです。ライブサービスゲームの強みは、つぎのストーリーを待つ期待感や、新しいコンテンツが公開されるたびに盛り上がり、それを他のプレイヤーたちと共感できる点であると考えています。
今回のTGSでの初公開を皮切りに、間もなく実施されるCBTでは、さらに深く体験していただくことができます。長く愛されるタイトルを作れるように、開発陣一同、いっそう力を注いでいきますので、どうぞご期待ください。(了)
















