元『ウィッチャー3』開発者たちから『The Blood of Dawnwalker』開発者へ。期待の新星Rebel Wolvesのスタジオを訪問
さて、ここからはワルシャワに拠点を置くゲーム会社を訪問した際の模様をお伝えしていく。まずは、2026年9月に発売されたばかりの『The Blood of Dawnwalker』開発元、Rebel Wolvesだ。
グローバル・マーケティング・リードを務めるPaweł Panasiuk氏からのプレゼンにてまず語られたのは、Rebel Wolvesは「RPGへの愛から生まれたスタジオ」だというメッセージだった。
それもそのはずで、彼らはCD PROJEKT REDなどで『ウィッチャー』シリーズや『サイバーパンク2077』といったRPGに携わってきたメンバーが多く集まっているスタジオだ。
本スタジオの設立者でCEOは、CD PROJEKT REDに長年在籍し、『ウィッチャー3 ワイルドハント』のゲームディレクターを務めたKonrad Tomaszkiewicz氏。株式市場などのプレッシャーに急かされることなく、じっくりと開発に集中できる環境でゲームを作りたいという思いからRebel Wolvesは設立されたという。
そんな自分たちの経験を考えれば、FPSやレースゲームではなく「本物のRPG」を作るのは自然な選択だったというわけだ。
設立は2022年。何もない状態から4年間でスタジオづくりとゲーム開発を同時に進めてきた。フォーカスしているのは、やはりストーリーを重視したシングルプレイのRPGだ。「オールドスクールなアプローチ」で、ゲーム内課金などは用意しない方針とのこと。
ミッションは「ジャンルを定義するようなRPGを作ること」。現在のスタッフは約160人。最初は約20人でコンセプトアートやストーリーづくりから始め、徐々に規模を拡大してきた。
『The Blood of Dawnwalker』は、14世紀ヨーロッパを舞台にしたオープンワールドのダークファンタジーアクションRPGだ。中世のルーマニアやポーランドから着想を得つつ、世界観は自社のライターが書いた完全オリジナルのIPとなる。
主人公のコーエンが、昼は人間、夜は吸血鬼として、家族を救うために戦うというストーリーの作品だ。
そして本作は最初から「サーガ」として構想しており、1作目を出したらレースゲームやシューターなどほかの作品に方向転換するようなことはないとのこと。長期的に取り組んでいく姿勢を示したかったという。
本作のパブリッシャーはバンダイナムコエンターテインメント。ゲームの発表よりも何か月も前に、スタジオを訪れてプレイした彼らが感銘を受けて契約を決めた。
開発予算は約4000万ドル(約63億円)で、発売後にすぐさま100万本を販売。ウィッシュリストは300万件以上にのぼるという話題作になった。発売後は高い評価を獲得している。Steamのユーザーレビューも「非常に好評」になり、本記事執筆時点では約87%が好評だ。
そんな彼らは本作を届けるうえで、新しいスタジオ、新規IPだからこそ、プレイヤーの信頼を得るために誠実なコミュニケーションを心がけてきたとのこと。
ゲームプレイを公開する際も、見栄えのいい部分だけを磨き上げるのではなく、開発中のありのままの状態を見せた。そのうえで、戦闘やレベルデザイン、クエストデザインについてフィードバックを求め、改善につなげたという。
物語の舞台は、黒死病がヨーロッパを壊滅させた時代。人間が弱ったその瞬間を、何世紀も人間の陰に隠れて暮らしてきた吸血鬼たちは見逃さなかった。吸血鬼をはじめ、伝説だと思われていた夜の生き物たちが姿を現し、世界から隔絶された谷「ヴェイル・サンゴラ」を人間から奪い取る。

ただし、本作における善悪は必ずしも白黒はっきりしていない。吸血鬼たちは自らの血で人々を癒やし、食べ物や水を与え、税も撤廃した。立場によっては、前の支配者よりよほどましだと考える人もいるという。
そんな世界で主人公のコーエンは10代のころから銀鉱山で働き、銀の粉塵を大量に吸い込んでいた。人間たちの蜂起の際に吸血鬼に襲われて瀕死となり、本来なら吸血鬼になるはずだった。しかし、肺の中の銀の粉塵のせいで変異が完全には進まず、昼と夜の狭間を生きる存在「ドーンウォーカー」になったのだ。
敵対するブレンシスはコーエンの家族をさらっており、彼がヴェイル・サンゴラの支配者として戴冠するまでの「30日と30夜」のうちに家族を救うのが目的となる。

彼らは、RPGとしてだけでなく、ここ数年あまり扱われてこなかった「吸血鬼」というテーマじたいにも新しい切り口を持ち込みたかったという。
冒険するオープンワールドには都市や村、森、洞窟、中世の集落などがあり、古代の遺跡や書物を通じて世界の伝承を知ることができる。こうした知識は、サーガの次回作をプレイする際にも役立つとのことだ。

今後については、サーガの次回作にも取り組むが、現在はパッチ開発に集中しているとのこと。フォトモードや、要望の多い「強くてニューゲーム」の実装を予定している。ちなみに日本版では流血表現などの規制の問題があったが、Steam版については2026年10月22日に配信されたアップデート1.1により改善。コンソール版についても2027年初頭に調整予定と発表されている。
参加者から比較的小規模なチームで成功できた秘訣を聞かれると「透明性」というキーワードが紹介された。Rebel Wolvesでは2週間に1回、開発者も経理もマーケティングも全員が参加する全社ミーティングを開き、ゲームの進捗から次の社内パーティーの話まで共有しているとのことだ。
働き方もフルリモート、出社、ハイブリッドから選べる。それでも期限に遅れたことは一度もないという。ちなみに『The Blood of Dawnwalker』はPS5とXBOX Series X|Sでの販売に必要となる認証を一発で通過したとのこと。
また、Paweł氏が2022年に読んだ開発ドキュメントが、そのまま発売されたゲームになっている。大きな方針転換がなかったことで、無駄な時間を使わずに済んだのだそうだ。
スタッフの国籍については、約160人のうち110〜120人がポーランド国内に在住。フィリピン、ブラジル、スペイン、イギリス、フランス、ノルウェーなどのメンバーもおり、場所を問わず採用しているそう。いっぽう、10人ほどいるパブリッシングチームは全員ワルシャワにいて、頻繁に連携をとっているそうだ。

「グローバルなオーディエンスに届けるコツは?」という質問には、やはり「誠実さ」と回答された。1年〜1年半前からクエストを丸ごと見せるゲームプレイ映像を公開し、フィードバックをもとに修正を加えていった。SNSチームは世界中のコメントやメッセージに対応し、バンダイナムコとも連携してファンとの接点を保ってきたとのこと。
とはいえ新しい会社の1作目なので、まだ知られていない層もいる。少しずつ認知を広げていく必要があるという。
発売前は「元CDPRの開発者」「元ウィッチャーの開発者」と呼ばれていたが、発売後は「『The Blood of Dawnwalker』の開発者」と呼ばれるようになった。それこそがゲームが評価された証だと語られた。
プレイヤーのフィードバックで改善した具体例としては、カメラの挙動が挙げられた。最初のトレーラー公開後、戦闘中のカメラをもう少し引いてほしいという声があり、戦闘と探索それぞれで近距離・遠距離のカメラを選べるようにしたのだ。
戦闘方式も、スティックを倒した方向(上下左右)に攻撃する方向指定型に加え、方向を気にせずボタンだけで攻撃できる方式を追加。戦闘よりもストーリーを楽しみたい人に好評だったという。
市場のトレンドを意識してゲームを作るのかという質問が出ると、Paweł氏は「僕らはRebel(反逆者)だから」とひと言。ヒット作のコピーを作れば売れるかもしれないが、何よりも自分たちが遊びたい、楽しめるものを作りたいという。
次回作もトレンドを追うのではなく、本作に近いものになるそう。ただし、小さなトレンドで本作の中にうまく収まるものがあれば、試してみる余地はあるとのことだ。
以上が、Rebel Wolvesのスタジオ訪問にて担当者の方から語られたスタジオの概要だ。印象的だったのは、「元CDPRの開発者」という呼び方に関する言葉。
確かに、『The Blood of Dawnwalker』は発売を迎えるまでは「元『ウィッチャー3』開発者による新作」という触れ込みで語られることが多かった。
しかし、ゲームの発売後は確かなクオリティでSteamの評価も「非常に好評(※記事執筆時点)」を獲得。RPG界の新星として一躍期待のスタジオとなった。
そんな彼らが「サーガ」を構想しており、次回作を準備中だというのだから、RPGのファンとしては期待せざるを得ないだろう。今や彼らは確かに、「『The Blood of Dawnwalker』の開発者たち」と呼べる存在になっているのだから。
18周年を迎えたGOGは「クラシックゲーム愛」にあふれたストア。ミッションは「ゲームを永遠に生かし続けること」
続いて訪れたのは、PCゲームストアを展開するGOGのオフィス。プレゼンしてくれたのは、事業開発責任者を務めるBartosz Kwietniewski氏だ。
Bartosz氏の率いるチームはGOGで販売されるすべてのゲームを担当しているが、GOGならではの仕事が「クラシックタイトルの復活」である。彼らは今では遊べなくなってしまったかつてのPC・コンソールゲームを蘇らせる仕事を続けてきた。これがGOGのミッションの中心にあるという。
そもそも、GOGはCD PROJEKTグループの一員として設立された。現在もオフィスはCD PROJEKT REDのビル内にある。設立は2008年で、今年で18周年を迎える。
当時のCD PROJEKT REDは初代『ウィッチャー』を作った小さなデベロッパーだった。設立当初の名前は「Good Old Games」。「買えなくなったクラシックゲームを買えるようにする」ことが唯一のミッションだった。
それからCD PROJEKT REDが大きくなるにつれ、GOGもまず同社のタイトルを扱うようになる。『ウィッチャー』『ウィッチャー2』、そして2015年の『ウィッチャー3』。これがCDPRにとって最大の転機であり、GOGが成長し始めたタイミングでもあった。
それからゲームの起動や実績、フレンドとのプレイ、ライブラリの閲覧ができる専用アプリをリリースし、2020年には『サイバーパンク2077』の販売もスタート。
その後、ミッションを反映したサービスとして、GOG Preservation ProgramやGOG Mod、GOG Dreamlistなどをユーザーと開発者・パブリッシャーの双方に向けて展開してきた。
ちなみに彼らは昨年12月にはCD PROJEKT共同創業者のMichał Kiciński氏への売却により独立したことが発表されている。公式の声明文では、CD PROJEKTは高品質のRPGを作ること、そしてGOGはクラシックなゲームを蘇らせることにそれぞれフォーカスできるという前向きな姿勢が示されている。
GOGの掲げるミッションは「ゲームを永遠に生かし続けること」。実際に彼らの働きかけによって復活を遂げたゲームは多い。
たとえば『ディノクライシス』『サイレントヒル4 ザ・ルーム』、Ubisoftの『Heroes of Might and Magic III』など。これらの作品を探すとき、GOGに行けば最良の状態で見つかるようにしたいとのことだ。現在や将来のPC環境でも動作し、一部のタイトルはゲームパッドにも対応するなど、最適な改善が施されている。GOGで買えばそれが保証されるという。
そして、Bartosz氏が「いつも自慢に思っている」というのが、カプコンとの提携だ。彼らは『バイオハザード』1〜3、続いて『ディノクライシス』1と2、『ブレス オブ ファイア IV』をGOGで発売した。
Steamよりずっと小さなプラットフォームだが、AAAからAA、インディーまで、世界の大半のパブリッシャーと取引しているという。毎日膨大な数の新作が出るなかで、クラシック作品に再び触れたいときに、いつでも動く状態で手に入るようにしたいとのこと。
新作も販売しているが、自分たちや今の開発者を形作ってきたクラシックゲームにここまで力を注いでいるプラットフォームは他にないと語られた。
それから、クラシックゲーム向けの主な機能が紹介された。いずれもこの2年ほどで立ち上げたものだとのこと。
まずは、「GOG Dreamlist」。これは、過去作から最新作まで、GOGで発売してほしいゲームをコミュニティが投票する「究極のウィッシュリスト」だ。
投票に、GOGのユーザーかSteamのユーザーかは問わない。主な目的は、今ではどこでも買えなくなったクラシックゲームのうち、どれを確保すべきかをコミュニティに教えてもらうことだ。

現在の1位は2001年にリリースされたLionhead Studiosによる作品『Black & White』。権利関係が非常に複雑で実現は難しいが、諦めずに交渉を続けているという。
このリストではクラシックに限らず、2年前に出たゲームが挙がることもある。コミュニティの声を受けて事業開発チームがパブリッシャーに打診するのだが、開発者にとってもどのタイトルをGOGで出すべきか、どの販売終了タイトルを復活させるべきかの指標になるとのこと。
「GOG Preservation Program」には現在300本以上のゲームが参加している。このカテゴリが適用されたゲームは、GOGが存在する限りサポートされ続ける。古いPCゲームの起動やプレイには互換性の問題がつきまとうが、それを将来にわたって解消することを目指すというわけだ。
ゲームのコード自体には手を入れず、高解像度化やゲームパッド対応、コミュニティが長年求めてきた不具合修正などを施している。複雑な改修作業をGOG側が引き受けて改善しているわけだ。
これは単なるラベル付けではなく、ビジネス面でも価値がある。プログラム参加タイトルは、非参加タイトルより売れる傾向にあるというのだ。最終的な目標は、クラシックゲームや過去作を探したとき、GOGに行けばすでに保存プログラムに入っている状態にすることだ。
そして昨年立ち上げたのが「GOG Mods」。Modは魅力的だが、導入が難しくハードルが高いという課題に対応したものであるとのこと。
現在20本以上のModを扱っており、新しいメカニクスや世界を追加するような、ゲームの幅を広げるModを選んでクリエイターに声をかけている。クリエイターとの契約などはすべてGOG側が担い、開発者にとっても簡単かつ法的に安全に導入できるようにしているそうだ。
Mod自体は基本無料だが、遊ぶには元のゲームが必要。そのためゲーム本体の売上も伸びるという。最大の成功例は『Fallout 4』のMod『Fallout: London』。Modの配信開始から最初の1週間で、それまでの2年間を上回る本数の『Fallout 4』が売れたそうだ。
「GOG Patron」は、GOGのミッションを支持するユーザーが月5ドルで支援する仕組み。参加したユーザーは非常に熱心で、保存すべきゲームや保存プログラムに加えるタイトルを選ぶ手伝いをしてくれるそうだ。権利関係の情報を提供したり、開発者への連絡を手伝ったりすることもあるという。
30年前のゲームの話であっても、「ゲームの保存」というミッションがゲーマーに響いていることの証だと語られた。
そしてGOGはこうした成果を自社に囲い込むつもりはない。保存・復活させたゲームの多くは、パブリッシャーがその後Steamで発売しても構わないという。たとえばカプコンの『バイオハザード』シリーズは、まずGOG独占で発売され、その後カプコンがSteamでも発売した。品質も重視しており、これまで保存したゲームは軒並み高評価を獲得しているという。
以上でプレゼンは終了。ここからは参加者との質疑応答が行われた。
サーバーが終了した古いオンラインゲームにも対応するかという質問には、現時点では扱っていないと回答。常に検討はしているが、今はより復元しやすいシングルプレイのクラシックゲームに集中しているという。
AIの活用については、リスクもあるがポジティブな面に目を向けているとのこと。とくにリバースエンジニアリングや古いコードの復元には効果が見込めるという。ただし生成AIは使わない。ゲームの「魂」はそのまま残したいとのこと。チームが数週間〜数か月かけて乗り越えていた技術的な壁を、AIで1日で越えられる可能性もあり、すでに取り組みを始めているそうだ。
比較的新しいのにサービスが終了してしまったゲームの保存についての質問には、社内での「クラシック」の定義が紹介された。GOGでは、基本的に発売から10年が経ったゲームを「クラシック」としている。たとえば、2015年発売の『ウィッチャー3』も、新しく見えてもう10年以上前の作品だ。

ただし保存プログラムに加える基準は、開発者がサポートを終えたかどうか。2年前のゲームでも、開発者が次のプロジェクトに移っていれば対象になりうる。実際、Tango Gameworksによる2022年の作品『Ghostwire: Tokyo』をプログラムに加えた。スタジオに起きたことを考えると、今後アップデートされない可能性もあるからだという(Tango Gameworksは2024年に閉鎖を発表。その後KRAFTONが『Hi-Fi RUSH』のIPを取得して事業を継承している)。
このように、ただのPCゲームストアではなく「古き良きゲームの保存」というミッションを掲げてさまざまな取り組みを実行している点が、GOGのユニークな点だと言えるのではないだろうか。訪問したオフィス内には古いPCゲームのパッケージやレトロPC、ゲーム機などが飾られており、まさに彼らの掲げるミッションを形で表現したかのような様相となっていた。
そんな「クラシックゲーム愛」あふれるPCストアとして、今後もワルシャワから世界に向けてゲームの魅力を届けていってもらいたい。そう思わされた今回の訪問であった。





