『Rainbow Six Siege(レインボーシックス シージ)』(以下、R6S)を、ひとりで5人分同時プレイに挑むプレイヤーが現れた。
本作は、2015年にユービーアイソフトから発売されたマルチプレイ対戦シューターだ。プレイヤーは5人でチームを組み、個性豊かな特殊能力を持つキャラクターから一人ずつ選んで5対5で戦う。ハードコアな内容にも関わらずプレイヤーは増え続け、総アカウント数は4000万を超えている。
チームプレイが非常に重視されるゲームだけに、自分が強いだけではゲームには勝てない。自分のミスが他人に、あるいは他人のミスが自分に降りかかることも少なくない。他人のミスでチームが敗北したとき、特に上手いプレイヤーなら、もし他のチームメイトが自分だったらと考えることも少なくないだろう。
つまり、もし自分が5人に分身してひとつのチームを組めば、『R6S』で絶対に負けないともいえる。ストリーマーのBasically Homeless氏は、そんな「もし自分が5人いたら」という願いを実現しようとした『R6S』プレイヤーだ。
この狂気のような挑戦を実現するために、Basically Homeless氏は5台のPCを用意した。コントロールで使用するのは分配器に繋いだ一組のマウスとキーボード。5台のPCをスイッチで切り替えながら操作するという方法で、自分が5人いるチームを作り出そうというのだ。
この方法であれば、ある種チートともいえるかもしれないが、敵の居場所を言葉で伝える必要もなく、他のプレイヤーが見ている風景を直接見ることが可能だ。
氏は、まずはテストとしてAIと戦うテロリストハントで遊ぶ。やはり一筋縄ではいかないもので、すぐに壁が立ちはだかる。『R6S』は3分間何も操作しないプレイヤーを途中退席者としてゲームから追放する機能がある。
何も対策をしなければ、3分程度で操作キャラクター以外が次々とゲームから追放されてしまう。これを解決するため、外部ソフトを使って全てのPCで2分毎に前進キーを押すようにした。
次に実際に他のプレイヤーと戦うカジュアルマッチに挑戦した。原因不明だがマッチメイキングに何度も失敗した後、ようやく対戦がスタートする。負けることもあるが、ひとりで全てのキャラクターを操作しているとは思えないほど勝利をもぎ取り、ついにランクマッチに挑む。
ランクマッチは基本的に同じ腕のプレイヤーが集まるため、カジュアルマッチよりも腕の差が小さいことが期待できる。しかし一般的に言って本気のプレイヤーが集まるマッチでもあるので、苦戦は必至だった。
ラウンド4で初めての勝利をもぎ取り、4ラウンド先取で敗北するランクマッチでギリギリの綱をなんとか渡っていく。残念ながらこのマッチは敗北したようだが、確かな手応えもあったようだ。
しかし、問題も起きる。PCナンバー5のアカウントがランクマッチで追放され、一定時間プレイできなくなったのだ。誰かプレイヤーが補充されるまでは4人で戦わなければならない。
すぐにプレイヤーは補充され、声からしてかなり若いプレイヤーと思われるTheRealSamR6氏が登場。Basically Homeless氏は現在他の4人全員を自身が操作していることを伝える。どうやら氏のことを知っているようで、Youtubeチャンネルの名前を聞いて驚いていたようだ。
このマッチはギリギリの攻防が続き、敵チームが4、味方が3ポイントを取り、このラウンドで負ければ敗北という戦いとなった8ラウンド目。攻撃側となったBasically Homeless氏は1対1、残りたった12秒という状態で最後の一人となってしまう。
TheRealSamR6氏も諦め、ナイストライと声をかけたが残り数秒というところで奇跡の勝利をもぎ取り、4対4と敗北を阻止。この大きな勝利は長く『R6S』をプレイするBasically Homeless氏も雄叫びを上げる。
最終的には惜敗となったが、1人で4人のキャラクターを操りここまで戦いきったのはBasically Homeless氏をおいて他にいないだろう。
PC5台を操り、たったひとりで勝利を目指すことが規約として禁止されているかは不明だが、上記の通り、他のプレイヤーの画面を直接見る行為は、チートに類されるかもしれない。しかし、多くの『R6S』プレイヤーが夢見る、自分だけのチームを実際にやってみたらどうなるかという試みは面白く、Basically Homeless氏の健闘をたたえるべきだろう。
これを見た他のプレイヤーはどう思うだろうか? 多大な労力がかかることから「自分もPCを5台用意してランクマッチに挑みたい!」とは、さすがにならないかもしれない。マルチプレイゲームは他のプレイヤーがいてくれることに感謝しながら、楽しくプレイしたい。
ライター/古嶋誉幸