「好きなゲームなのに、クリアできない」
さまざまなゲームをプレイしている方のなかには、こういった経験をお持ちの方も少なくないだろう。そんな時、皆さんはどのように対処するだろうか。
世の中には驚きの方法で対処する方がいる。その方法とは「自分でもクリアできるゲームを作る」という、まさかの手段だった。しかも、そのゲームが全世界に向けて発売されるというのだから、驚きはさらに加速する。
そのゲームの名は『ANTHEM#9』。新進気鋭のゲーム開発者koeda氏が「『Slay the Spire』をクリアできなかった」という悔しさをバネに作り上げた、新たなローグライトゲームである。
しかもkoeda氏は、プログラム経験もなかったというのだ。なんと、koeda氏は本作を作るために、Unityの勉強から始めたというのである。
そうして作り上げた『ANTHEM#9』のプロトタイプ版は、当時集英社が主催したコンテスト「集英社ゲームクリエイターズCAMP GAME BBQ vol.2 デモなし部門」で見事に大賞を受賞。2年間の開発期間を経て、ついに2026年2月5日、PC(Steam)向けにリリースされた。
本稿では、サクセスストーリーを猛ダッシュで突き進むkoeda氏のバイタリティの源はどこにあるのか? 初のゲーム制作でありながら、なぜこのような“ツボ”をおさえた作品が作れたのか? といった部分を、開発者であるkoeda氏本人と、本作のプロデューサーである集英社ゲームズの森田航氏のおふたりにうかがった。
編集/うきゅう
※この記事は『ANTHEM#9』の魅力をもっと知ってもらいたい集英社ゲームズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
『ANTHEM#9』制作のきっかけは「『スレスパ』がクリアできなくて悔しかった」から!?
——『ANTHEM#9』制作のきっかけ、ゲーム制作をやってみようと考えた動機はどういったものだったのでしょうか?
koeda氏:
『ANTHEM#9』を制作しようと思ったきっかけは単純で、私がデッキ構築型のローグライクに“ドはまり”したからです。
ただ、私はゲームが上手なプレイヤーではなく、当時大流行していた『Slay the Spire』がどれだけプレイしてもクリアできず、非常に悔しい思いを抱えていました。
そこで「自分でもクリアできるデッキ構築ローグライクを作りたい!」と考え、戦闘システムをカードよりも直感的な「色合わせパズル」に置き換えて、ゲームとして成立するかどうかを試してみることにしました。
Unityを前に悪戦苦闘しながらではありますが、なんとか1ステージ分の小さなプロトタイプを完成させて自分で遊んでみたところ、これがおもしろかったんです。
「これはイケる!」と感じましたし、システムを確認できるだけのデモではありますが、「おもしろいゲームを動作させることができた」ということは自分にとって大きな自信になり、その後の開発でも指針になってくれました。

——「ゲームを作りたい」と考える人は多くとも、その想いを「実際にゲームを作る」ところまで昇華させられる人は非常に少ない印象です。koedaさんを「ゲーム制作」に突き動かした原動力はなんだったのでしょうか。
koeda氏:
じつは、ゲームを作ろうとしたのは本作が初めてではないんです。10年以上前になりますが、会社の同僚とゲームを作る真似事のようなことをしたことがありました。
このときは本当に趣味程度のものでしたし、私はプログラムも書けない、シナリオ担当でしかなかったのですが、ひとりで「これはおもしろいぞ! 人生をかけてでもやりたい!」と熱意を暴走させていました(笑)。
それ以降、私はずっと「ゲーム制作者になりたいな」というこじらせた思いを抱え、Steamでインディーゲームを追いかけ、「どうすればヒットするのか?」、「どんな人たちが、どんな思いで開発しているのか?」など、自分なりの市場調査や分析を続けていました。
そんな10年に渡る充電期間を過ごしていた私に、転機が訪れます。コロナ禍で在宅勤務となり、まとまった時間が取れることになったんです。

まとまった時間ができたことで、「これだけゲーム開発者になりたいという思いを持ち続けていられるなら、きっと何があっても大丈夫だ」という覚悟も決まり、思い切って行動を起こすことにしました。
思い返せば、幼稚園の卒園文集でも将来の夢は「げーむぷろぐらまー」でした。本当はそのころからずっと、ゲーム制作をやりたかったみたいです(笑)。
——長年の情熱とまとまった時間が行動を生み出したということですね。開発当初、koedaさんはプログラムを書けなかったとのことですが、本作はおひとりで制作されています。どのように制作手法を学び、実践されたのでしょうか?
koeda氏:
ゲーム制作に取り掛かる前から、Unityでゲームを作れる、ということは先の会社の同僚から聞いて知っていました。
ですので、参考書数冊を購入し、オンライン学習サイトの講座を受講して、自学しました。ときにはUnityを教えてくれた同僚のもとを訪れ、わからないところを聞くこともありました。
当時の私は、30を過ぎてからゲーム制作の基本を学び始めたという部分で、「かなりビハインドを負っている」というコンプレックスを感じていました。とにかく必死で、「専門学校の学生さんに負けたくない!」の一心でゲーム制作に打ち込みました。
——実際にゲーム制作をはじめてから、楽しかったこと、ツラかったことがあればお聞かせください。
koeda氏:
楽しかったことは全部です。制作過程は全部好きですね。
そのうえで、毎日充実した日々を送れたいちばんの理由は、Xをきっかけにたくさんの「ゲームクリエイター仲間」ができたことです。
うわーん、また😭✨
— koeda@ANTHEM#9 2026年2月5日発売! (@koeda68287606) January 26, 2026
ただのマスターアップ報告なのに
皆さんの暖かいコメントのおかげです!
高塚さん配信の効果もあると思います!
改めて皆様ありがとうございます…!#anthem9 pic.twitter.com/ewy1oG0Bd5
自分はそれまでひとりで10年もこじらせていたので、同じ目標に向かって全力で語り合い、高め合える仲間ができたことが本当にうれしかったです。仲良くしてくださった皆さんには本当に感謝してますし、いまでも本当に尊敬しています。
制作して実感したのですが、ゲーム開発者になるのって、とんでもなく覚悟と忍耐がいるんです。そんな素敵な人たちと知り合うことができて、こんなにうれしいことはありません。
あと、ツラかったことは……あまり言いたくはないですが、寝る暇がないことです(笑)。
2023年、集英社の主催したオリジナルゲームコンテストで大賞を受賞。選出の決め手は「やりたいことと動機が、誰よりも明確だった」
——『ANTHEM#9』は2023年、オリジナルゲームコンテスト「集英社ゲームクリエイターズCAMP GAME BBQ vol.2 デモなし部門」の大賞を受賞しました。森田さんにおうかがいしたいのですが、本作のどのようなところに魅力を感じたのでしょうか?
森田航氏(以下、森田氏):
やりたいこととそれをやる動機がどの応募者よりも明確で、方向性もおもしろいと思えたからです。
「GAME BBQ vol.2」選考時、斬新で奇抜な色と形のUIを引っ提げたゲームの企画書が目に飛び込んできたことをよく覚えています。
「おお、これはいったいどういうゲームだ?」となり、いざ選考を進めるにあたってkoedaさんと面談をしたところ、しっかりと「本作がなぜこのような作りになっているのか」の動機を伝えてくれました。
初のゲーム制作で自分が持てる技術を駆使し、とっかかりのある画面作りを目指したところ、直線的なUIが中心になったこと。そして、パズルであれば誰でもできる要素だと考え、赤/緑/青のパズルをコアシステムとしていること。
koedaさんご自身が「難しすぎる!」と感じられた『Slay the Spire』に代表される、いわゆるデッキ構築型ローグライクの敷居を下げたい、という話に私も共感した覚えがあります。だから我々としても本作のカジュアルなゲーム性をプッシュしたく、「ジェムマッチローグライト」を謳っています。
本作は面談の時点でプレイできるROMが用意されていて、「え! これが初めて制作するゲームなの!?」と驚かされるほど完成度が高かったんです。ゲーム開発を専門にお仕事されてきたわけでもない方が、おひとりでこれを作っているのか、という衝撃は大きかったですね。

——集英社ゲームズが正式にサポートを行うことになってから、具体的にどのような関係性・業務分担で制作を進められていったのでしょうか?
koeda氏:
プロデューサーは集英社ゲームズの森田さん、開発ディレクターはkoedaという役割分担になっています。
お話をいただいた当初、私は集英社ゲームズさんを「純粋にパブリッシャー業だけを行ってくれる組織」だと勝手に思っておりました。しかし実際にお付き合いが始まると、もっと開発の中身、企画に立ち返るところまで踏み込んで一緒に良くしていこうと、とても熱量のある素敵な方々だとわかったんですね。
当時から現在までずっと週次のミーティングを開いてくださっていて、進捗確認からゲームの企画や仕様の悩み、テストプレイの所感など、本当に開発チームの一員として集英社ゲームズの皆さんは真剣に議論に付き合ってくださいました。
1時間を予定していた打ち合わせが、2時間~3時間に伸びることはザラですし、節目で大きな仕様の改善案を検討する際には、集英社ゲームズさんのオフィスにうかがって丸一日会議室に缶詰で議論に没頭した、という思い出もあります。
森田氏:
集英社ゲームズとしては、開発資金のサポートはもちろん、翻訳作業やQA/LQA、オープンテストやチューニングテストなどなど…….個人のクリエイターさんでは作業的に手が回らないところはすべてやらせていただいています。
制作面においては、アセット作成など、さすがにkoedaさんひとりでは手が回らない部分は外注しているのですが、外注先の選定は基本的にkoedaさんにお任せしつつ、必要に応じて集英社ゲームズでアレンジする形を取っていました。
私個人の役割として大きかったのはkoedaさんの壁打ち役でしょうか。マンガにたとえるなら、koedaさんがマンガ家で私が編集者という立ち位置で二人三脚という作り方をした作品が『ANTHEM#9』だと思っています。

もちろん、koedaさんのやりたいことを中心に据えて開発は進めるのですが、koedaさんはゲーム開発を専業にされているわけではないため、実装をしてもご自分で確認される時間には限りがありますし、何よりおひとりで作られているので誰かの意見はすぐにほしくなる。
ですので、プレイは私が行い、フィードバックをお伝えしていくような作り方で進めていきました。集英社ゲームズ内では、現在もさまざまなタイトルの制作プロデュースが走っていますが、こういった作り方をしているのは『ANTHEM#9』くらいだと思います。
