中国共産党中央宣伝部で広報や出版の規制を管轄する機関「The State Administration of Press and Publications」(通称、SAPP)は、未成年者によるオンラインゲームのプレイ時間や有料コンテンツの課金額を大幅に制限するための、新たなガイドラインを発表した。同国内で深刻化する若年層のゲーム依存症を未然に防ぐことを目的としている。
The South China Morning Postによると、新たなガイドラインは実名登録による年齢確認制度を採用。ユーザーから提出された氏名をデータベースと照合することで年齢確認を行う。18歳未満のユーザーによるゲームプレイは、平日で90分間、休日で3時間までに制限される。また、未成年者は毎日22時から翌日8時まで、ゲームへログインできなくなる。
オンラインゲームにおける有料コンテンツの課金額にも、利用者の年齢に応じた制限が設けられる。まず、8歳未満のユーザーは課金コンテンツへのアクセスが不可。8歳から15歳のユーザーは1回の利用につき50元、月額の合計で200元までに制限される。そして、16歳から17歳のユーザーについては1回につき100元、月額の上限が400元と規定されている。
未成年者によるオンラインゲームの利用制限は、これまでにもコンピュータゲームを対象に実施されてきたが、今回のガイドラインでは規制対象をモバイルゲームにまで拡大している。中でも、今回が初めてとなる実名登録の年齢確認制度がおよぼす影響は絶大だろうと、Niko Partnersでゲームアナリストを務めるDaniel Ahmad氏は語る。データベースによる管理の下で、未成年者による年齢詐称や不正行為が非常に難しくなるからだ。
ゲーム業界の各企業がユーザーの身元や年齢を確認するための中枢システムを構築する上で、SAPPは中華人民共和国公安部の協力を得ている。ガイドラインが定めた指針から逸脱してサービスを提供する企業には、その程度に応じた処罰が課せられるという。最悪の場合、ゲーム販売のライセンスを剥奪されることになる。
中国では、未成年者によるゲーム依存症や有料コンテンツの高額利用が社会問題に発展しており、中国政府は2007年から対策に乗り出している。特にスマートフォンの普及によるモバイルゲーム産業の発展は著しく、人気タイトルの中毒性がたびたび問題視されてきた。
2017年にTencentの『Arena of Valor』が世界的に大ヒットした際には、中国共産党機関紙である人民日報や国営通信社の新華社通信から激しい批判を受けた。こうした背景からTencentは、『Arena of Valor』を含む31タイトルにおいて、2019年1月から未成年者による利用時間を年齢に応じて制限している。
中国におけるゲーム規制事情に関しては、2018年3月に国家主席の任期を撤廃する憲法改正案が可決されてから、ゲーム販売の認可プロセスを監督する機関で改革が進められ、ゲーム規制の権限が共産党の直接的な統制下へ置かれたことも記憶に新しい。同年8月に規制当局がゲームライセンスの承認を凍結した際には、Tencentの時価総額が1500億ドル減少するなど、国内のゲーム業界を震撼させる事態に陥った。
ライター/Ritsuko Kawai