ゲームを中心に、コミックやアニメなどマルチメディアで自社作品を展開する株式会社マーベラス(以下、マーベラス)は、中国深セン市に本社をおくテンセントの完全子会社であるImage Frame Investmentとの間で資本業務提携に係る契約を締結することを発表した。
最終的にImage Frame Investmentはマーベラスの株式の20%保有を目指し、筆頭株主が中山隼雄氏から同社へと交代する予定だ。これが実現すれば、マーベラスはテンセントの持分法適用会社となる。第23回定時株主総会において、同社が指名する1名を取締役候補者に含む取締役選任議案を提出する予定となっている。
マーベラスは1997年にセガの中山晴喜氏が設立した株式会社マーベラスエンターテイメントが前身となる。2011年にAQインタラクティブとライブウェアを吸収合併し、2014年に社名を現在の株式会社マーベラスへと変更した。『牧場物語』やそのスピンオフ『ルーンファクトリー』、『閃乱カグラ』、『Fate/EXTRA』、『ノーモア★ヒーローズ』などのシリーズを販売している。
ゲームだけでなくアニメやいわゆる2.5次元ミュージカルなども企画しており、ネルケプランニングとともにミュージカル『テニスの王子様』の興行を行っていることでも有名だ。
業務提携の内容として、以下の6項目が実現されるという。詳細は今後協議の上内容が確定次第明かされる。
マーベラスによる以下の実現
・当社の既存IPのリッチコンテンツ化とグローバル化
・新規IP創出に向けた大型投資
・新規事業展開のための投資
・最先端技術の習得及び活用
Image Frame Investmentによる以下の実現
・グローバル展開可能な新規IPの創出及び育成
・日本の独特な文化の理解と中国市場における事業展開
この資本業務提携は、『牧場物語』を含む既存のコンテンツをより強力なブランドに育て、世界での認知を深める。また、新規IPを立ち上げにむけた大型投資や、それを世界的なレベルに育成していくことを目標とする。
今後は第5世代移動通信システム(5G)によってエンターテイメント業界も大きく変わり、新型コロナウイルスの感染拡大によって生活様式の変化も予想され、それに対する強固な基盤作りと持続的な成長を可能とする体制構築のための提携となる。
今回の提携では、まずグローバル展開可能な新規IPを創出・育成するための開発費(人件費、外注費等)とプロモーション費用(広告宣伝費、販売促進費等)に30億円、新規事業展開のための研究開発費及び立ち上げ費用として9070万円を充当。
既存の主力IPをグローバル化するための開発費(人件費、外注費等)及びプロモーション費用(広告宣伝費、販売促進費等)として1億円を充当するとしている。
テンセントとマーベラスは『牧場物語』のスマートフォンでの展開で協力体制を築いており、2019年にテンセントの子会社であるTencent Technologyとライセンス契約を締結している。マーベラスが素材を提供し、Tencent Technologyが開発・配信・運営を担当し、両社のノウハウを合わせることで、モバイルカテゴリーでの『牧場物語』IPの展開を目指す。ゲームはまだリリースされていないが、今回の提携で開発が加速することが予想される。
テンセントはこれまでに『League of Legends』のRiot Gamesを完全子会社とし、『Path of Exile』のGrinding Gear Gamesの株式を80%取得。2020年にはプラチナゲームズへの投資も行っている。
投資先はビデオゲーム業界でも大手のUbisoft、Epic Games、Activision Blizzard、Paradox Interactiveなどにもおよび、子会社のTiMi Studiosが『Call of Duty: Mobile』の開発を担当しているように、モバイルゲーム業界への影響力も強い。テンセントの名前がゲームファンの目に止まることはあまりないが、世界最大のゲーム企業と見なされている。
ライター/古嶋誉幸