とある家庭で巻き起こる、主婦とクトゥルフとの戦いを描くコメディホラーゲーム『The Call of Karen』がSteamにてリリースされた。価格は無料。
ゲームデザイナーでアーティストのケイト・オルギン氏が率いるゲームデベロッパーのTrumbusによって開発されている。
宙に浮かぶ目玉焼きを皿に載せようと奮闘したことがある人はどれくらいいるだろうか。焼き上がった目玉焼きはフライパンから浮き上がり、皿を取って戻るとこつぜんと姿を消している。
仕方がないからその辺を漂うフライパンを捕まえ、同じように漂っている卵を探してもう一度焼き直す。あまりにも地味だが、毎日繰り返されるとイライラする嫌がらせである。
そんな状況のなかで生まれる感情は非日常の恐怖ではなく、仕事を邪魔される主婦としての純粋な怒りだ。
『The Call of Karen』は、1950年代の古き良きアメリカの家庭を舞台に、不幸な結婚をしてしまった主婦カレンがクトゥルフと戦うゲームだ。プレイヤーはクトゥルフが巻き起こす正気を失わせるような出来事にSAN値を削られながらも、日々の家事をこなしていく。
とはいえ、敵はクトゥルフだけではない。家庭のことを顧みない無責任な夫や、母親の苦労も知らない恩知らずの子どもが追い打ちを掛けてくる。はたして、主婦から正気を失わせるのはクトゥルフなのか、それとも不幸な家庭なのだろうか。
プレイヤーは主婦として、朝はベーコンエッグを用意し、昼は掃除や片付け、夜は夕食の準備などのルーチンをただ毎日こなす。フライパンをコンロに置き、冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して焼く。焼き上がったらお皿にのせて塩こしょう。
ほかにも掃除機をかけたり、散らかった本やカードを片付けたり、日々のタスクは現実でもよく見る光景ばかり。
大きく異なるのは、この家がクトゥルフに魅入られているという点だ。壁紙や絵画に冒とく的な文様が浮かび上がったり、空中に奇妙な文字が表示されたりと、この家では日常ではあり得ないことが起きる。
壁紙の色がちょっと気持ち悪く変わる程度はかわいいものだが、前述の通り、家事を邪魔する地味な嫌がらせもしてくる。嫌がらせは毎日のように続き、クトゥルフへの怒りを燃やすことになる。
ゲームの後半には、ついにクトゥルフへの対抗手段を獲得。スプレーボトルに入った聖水や不思議な魔道書からパワーを得た掃除機など、いくつかの主婦ガジェットを使って得体の知れない悪意との決戦が始まる。鍛え上げられた主婦の技であれば、きっとクトゥルフすら倒せるだろう。
全編英語で字幕表示もないため、ストーリーを完全に理解するのは少し難しいかもしれない。しかし、地味な嫌がらせをしてくるクトゥルフや家族への怒りは言葉を超える。
クリアするためにやるべきことは文章として常に表示されるので、辞書を片手にこの戦いに挑んでみてほしい。
ライター/古嶋誉幸