トレーディングカードゲーム『マジック・ザ・ギャザリング』でも、希少性とカードデザイン、効果からもっとも高値で取引されるカードの一枚として知られる「ブラックロータス」。
オークションサイトeBayで出品され、一時1億円を超える入札がされたことで話題になったブラックロータスのカードが、123件の入札を経て51万1100ドル(約5380万円)で落札された。1億円の入札はキャンセルとされている。
保存状態が異なるが、同一のカードが2019年に約1860万円で落札されたことを覚えている方もいるだろう(参考記事)。このオークションでは、約3倍の値段がつくこととなった。
オークションに掛けられたブラックロータスは、わずか1100枚しか印刷されなかったといわれる「リミテッドアルファ」に収録されたものだ。リミテッドアルファは『マジック・ザ・ギャザリング』として初めて発売されたシリーズ。ブラックロータスのカード自体は、その後カードのデザインなどを少しずつ変えて再収録され、約2万枚が市場に出回ったとされている。
ブラックロータスを生け贄に捧げることで、カードを場に召喚したり能力を使うために必要な「マナ」を3つ生成できる。ブラックロータス自身はマナ無しで使える上、複数色あるマナから任意の色を3つ追加できることから、『マジック:ザ・ギャザリング』黎明期の9枚の強力カード「パワー9」の筆頭とも称される。
あまりの高額商品のため、再収録版を加工してリミテッドアルファ版と偽るような詐欺行為まであるという。そのため、オークションにかけるまえにしっかりとした団体や企業が鑑定し、カードが本物であることを保証することが多い。
今回オークションに出されたブラックロータスは、カードなどの真贋や保存状態を認定する組織PSAが鑑定を行った。本物であることはもちろんのこと、カードの保存状態は最高の10点。ジェムミントとされるグレードだ。このグレードはカードに傷や汚れが一切なく、印刷もしっかりとしていることが保証される。
くわえて画像を見ても分かるとおり、ケースにはこのカードのイラストを描いた故クリストファー・ラッシュ氏が署名している。
ラッシュ氏は『マジック・ザ・ギャザリング』に最初期から関わった。ブラックロータスのほかに100枚以上のカードデザイン、さらにゲームをプレイすれば誰もが目にするマナのシンボルマークを手がけたことでも知られている。2016年に50歳という若さで逝去した(参考リンク)。
以前1860万円で落札されたブラックロータスは、認定する組織が違うもののグレードは10点満点中の9.5点。単純な比較はできないが、ラッシュ氏のサインが書かれたケースという希少さも加えると3倍の差にも納得ができる。
時を経るごとに高騰が続くブラックロータスだが、ここに来て史上最高額がついた。ラッシュ氏の功績も含め、ゲームを象徴する取引になったはずだ。
ライター/古嶋誉幸