ついに始まったEpic GamesとAppleの『フォートナイト』に端を発する訴訟は、ソニーやほかの企業を巻き込んでさまざまな情報公開の場となっている。そんな裁判で、Apple側がオープンマーケットプレイスのitch.ioについて言及し、話題を集めている。
最近Epic GamesはEpic Games Storeにて、「itch.io」アプリをリリースした。このアプリを導入すれば、itch.ioから無数のゲームやアプリケーションをダウンロードしたり、作者やファンと交流することができる。基本的にはitch.ioのデスクトップアプリと同じアプリだ。
itch.ioにはほかのストアにない特徴として、ストアと作者の取り分を作者自身が決められるというものがある。Epic Games Storeは利益の配分を12対88にして話題となったが、itch.ioは0対100も可能だ。itch.ioのストアページにはコメント欄が設けられており、フィード機能や開発ログの投稿、ゲームジャム専用ページなど、特に小規模開発者を支援する機能に富んでいる。
基本的に開発者が自由にゲームを投稿できるため、18歳以上を対象としたアダルトゲームも無数に投稿されている。投稿が許可されていないのは、人権侵害や著作権を侵害するゲームなど、規約で定められているもののみ。
Appleの弁護士は、itch.ioではそんな「法廷では言葉にすることをはばかられるゲーム」が配信されていることを指摘。そんなマーケットプレイスのアプリを自社ストア(Epic Games Store)で配信するということは、Epic Games Storeが審査をしていない性的にセンシティブなコンテンツにアクセスを許可していることと同義である。Apple側の弁護士はそう主張しているようだ。
Epic Games側は「ただitch.ioアプリだけを配信している」とし、その主張を否定している。itch.ioアプリがEpic Games Storeで配信されることが決まったとき、itch.io側も「Epic Games Storeとは完全に独立しています」と、アプリの配信以外でEpic Gamesのインフラを使っていないことを伝えていた。
Epic Gamesは「Itch.ioは開発者にとって素晴らしいコミュニティであり、当社も全面的にサポートしています。彼らはオープンプラットフォームを採用しているので、Epic Games Storeとは異なるモデレーション基準を設けています」とやはり独立性を主張。一方、「私は、いかなる種類の性的なコンテンツも支持しません」と、性的コンテンツについて見解を示した。
海外メディアThe Vergeは、そのやりとりの様子を文章で報告しているので、興味があれば確認してほしい。
ここまでは法廷での出来事だが、ここからは法廷外の出来事だ。まず、期せずして当事者となったitch.ioは「みなさん、Appleの弁護士から連絡を受けました。私たちはすべてのゲームを削除しなければならないそうです。今やゲームは違法です(泣)」とツイート。
guys, Apple's lawyers just called. They said we need to turn off ALL the games 😭
— itch.io (@itchio) May 7, 2021
Games Are Now ILLEGAL
しかし、そのあとすぐ「私たちは”Sensitive Content”フィルターの名称を”Unspeakable Games”に変更しています」とツイート。実際にすべてのゲームを削除しなければならないと警告を受けたかは不明だが、この事件をちょっと面白がっている様子だ。現在ストアには「unspeakable」タグが追加されている。
Latest from itchio Press Room: We are renaming our "Sensitive Content" filter to "Unspeakable Games"
— itch.io (@itchio) May 7, 2021
また、itch.ioにゲームを投稿しているゲーム開発者のworzalla氏は、「The Unspeakable Jam」を開催。70人近い参加者を集めている。現地時間6月12日まで提出期間を設けているので、上手くいけばE3 2021が開催されるころ、無数の「Unspeakable Game」がitch.ioに投稿されているはずだ。
ゲーム業界全体を巻き込んで回っているようにみえるEpic GamesとAppleの訴訟だが、果たしてどのような結果を生むだろうか。少なくともitch.ioでは、ゲームジャムを通じていくつかの新作ゲームがリリースされるという影響が出そうだ。