アメリカ・ロサンゼルスに拠点を置くテクノロジー企業のEmergeは1月28日(金)、超音波でVR空間内の触覚を再現する開発中のメタバース向けシステム「Emerge Home」を正式発表した。
「Emerge Home」は、独自デバイスの「Emerge Wave-1」および「Emerge Home Quest 2」、「Emerge Home mobile」のふたつのアプリからなる複合型システム。近くブランド名が改称されるVRヘッドセット「Meta Quest 2」(旧称はOculus Quest)と組み合わせて使うことで、物理的な触覚フィードバック体験を実現するという。
手に触覚を再現するという点では、弊誌で2021年11月に「Meta」が開発するグローブ型触覚デバイスを取り上げているが、今回の「Emerge Home」はデバイスを身にまとう必要なく、素手で直接バーチャル空間を感じられるのが特徴だ。
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※2021年7月に公開されたイメージ映像
仕組みとしては、13インチサイズの板状端末「Emerge Wave-1」がVR空間内の触覚情報を超音波に変換。デバイスの上部に空いた無数の穴を通じて空中へ超音波を送出し、高さ最大約91センチ、周囲120°の領域にインタラクティブな触覚フィールドを作り出す技術が採用されている。
超音波のため実際に視認することはできないようだが、モニター参加者によるデモ映像では、まるで空間に透明なオブジェクトが存在しているかのような驚きと興奮がカメラに収められている。フィードバックは単に素手で感じるだけでなく、超音波への反応をコントローラー代わりにバーチャル空間内へ操作を還元できる模様だ。
デモ映像ではアバターどうしで握手をしたり、チェスを指したりして楽しむ姿も確認できた。VR空間ならではの技術として、手から喜びや好意といった感情表現を信号として送ったり、水やレーザーを放つなど想像力に満ちた触覚体験も再現が可能となっている。
「Emerge Home」は2022年2月中にクラウドファンディングサイト・Kickstarterにて資金調達のためのプロジェクトを開始するとのこと。500ドル(約5万7800円)からリターンの対象となる予定で、Riot Gamesのマーク・メリル氏やTwitchのケビン・リン氏といった名だたる業界企業の共同経営者らも、有望な投資先として熱い視線を注いでいる。
執筆時点ではEmergeの独自アプリ以外への対応は伝えられていないが、他のサービスやゲーム作品にも応用されればバーチャル世界の可能性はさらに広がりを見せるだろう。コロナ禍によりVR空間におけるテクノロジーへの期待が高まりつつある今、どのような形で楽しめるようになるのか関心が集まるところだ。