文化庁は3月3日(月)、令和6年度(第75回)の芸術選奨における文部科学大臣賞と新人賞を発表した。メディア芸術部門では、マンガ『名探偵コナン』作者の青山剛昌氏とゲームクリエイターの桜井政博氏が大臣賞に選出されている。
また、同部門の新人賞には、映画『ルックバック』に携わったアニメーター・アニメーション監督の押山清高氏と、『メタファー:リファンタジオ』での成果を認められたアトラスの橋野桂氏が選ばれた。
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先日、AMDアワードの功労賞に選ばれたばかりですが、新たに文化庁の芸術選奨をいただくことになりました!
— 桜井 政博 / Masahiro Sakurai (@Sora_Sakurai) March 3, 2025
これはもしや、文化人を名乗ってよいということでしょうか…
ありがとうございます! pic.twitter.com/phpT5SOUoQ
昭和25年(1950年)から実施されている文化庁の芸術選奨は、各年度の芸術分野において、国内もしく国内外で優れた業績や新たな方面を開いた人物を表彰する顕彰制度。
部門は演劇や映画、音楽、舞踊、文学、放送など12の部門へ分かれており、原則として各部門ごとに大臣賞と新人賞で2名ずつ選出。受賞者には大臣賞で120万円、新人賞で80万円の賞金も贈呈される。
発表によると、今年度はドラマ『不適切にもほどがある!』で主演を演じた俳優の阿部サダヲさんや落語家の立川談春さんら24名が大臣賞を受賞した。
また、新人賞では押山氏と橋野氏を含む22名およびふた組が受賞者に選出されている。
以下、プレスリリースの全文を掲載しています
令和6年度(第75回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の決定
文化庁では、昭和25年から毎年度、芸術各分野において、優れた業績を挙げた方、又は新生面を開いた方に対して、芸術選奨文部科学大臣賞、同新人賞を贈っています。
この度、本年度の受賞者が決定いたしました。
1. 趣旨
芸術各分野において、毎年、優れた業績を挙げた者又はその業績によってそれぞれの部門に新生面を開いた者を選奨し、芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞をおくることによって芸術活動の奨励と振興に資するものです。
2. 部門・贈賞
演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術A、美術B、メディア芸術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論の12部門(大臣賞・新人賞ともに各部門原則として2名以内)にて実施。受賞者には賞状と、大臣賞には120万円、新人賞には80万円の賞金が贈られます。
3. 受賞者について
今年度の受賞者は文部科学大臣賞24名、同新人賞22名2組になります。
詳細は以下サイトにてご確認ください。
【文化庁報道発表リンク】
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/94177001.html
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【メディア芸術部門文部科学大臣賞】漫画家の青山 剛昌氏
▽令和6年に連載30周年を迎えなお、高い人気を保ち続ける「名探偵コナン」。長期にわたって良質なエンターテインメントを創出し続けている点が評価されました。
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【放送部門文部科学大臣賞】俳優の阿部 サダヲ氏
▽昭和時代をコミカル且つ自然に演じた「不適切にもほどがある!」での名演技が評価されました。
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【メディア芸術部門文部科学大臣新人賞】アニメーター・アニメーション監督の押山 清高氏
▽原作を丁寧に読解した演出に加え、本作の原画の大半を一人で描くことで、「描く人」を主題とする原作の精神を見事に画面に定着させた点が評価されました。
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【映画部門文部科学大臣新人賞】俳優の河合 優実氏
▽難しい役柄を魅力的に演じ作品のクオリティーを上げた「あんのこと」「ナミビアの砂漠」での名演技が評価されました。
「不適切にもほどがある!」では放送部門大臣賞の阿部サダヲ氏と親子共演、メディア芸術部門新人賞の押山清高監督の「ルックバック」では主人公藤野の声優を務めました。
【大衆芸能部門文部科学大臣新人賞】作曲家の渡邊 琢磨氏
▽「ナミビアの砂漠」「Chime」「Cloud クラウド」と話題作3作の音楽を担当。クラシカルなオーケストレーションや電子音、ノイズなどの音響系、アンビエントなサウンド・デザインなど様々な手法をイマーシブに駆使した点が評価されました。
「ナミビアの砂漠」の成果により、映画部門新人賞で河合優実氏、大衆芸能部門新人賞で渡邊琢磨氏が受賞されました。
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「リア王」の成果により、演劇部門大臣賞を浅野和之氏、同新人賞を江口のりこ氏が受賞されました。
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【メディア芸術部門文部科学大臣賞】ゲームクリエイターの桜井 政博氏
▽「星のカービィ」「大乱闘スマッシュブラザーズ」などを発案、監督してきた桜井政博氏がこれまで培ってきたゲーム制作の知見を広く共有し、ゲーム業界の発展に大きく寄与した点が評価されました。
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【美術A部門文部科学大臣賞】美術家の塩田 千春氏
▽作家としての充実度の高さを示す内容だった、大阪中之島美術館で開催された個展「塩田千春 つながる私(アイ)」。中国、トルコ、チェコ、国際的にも認知される活躍が評価されました。
2024年12月12日から2025年3月19日にはフランスのグラン・パレで個展「塩田千春展:魂がふるえる」を開催しています。
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【美術B部門文部科学大臣賞】展覧会エンジニアの金築 浩史氏
▽アーティストのビジョンを実現するために最適な機材の選定や設置方法を提案することで、作品の魅力を最大限に引き出す役割を果たし、「カネチック・アート」と呼ばれるほどこの分野で高い信頼を得ている点が評価されました。
なお、展覧会エンジニアの受賞は初となります。
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【演劇部門文部科学大臣賞】歌舞伎俳優の坂東 彌十郎氏
▽線の太い立役として、古典と新作で主役から脇役までますますの活躍が期待され、受賞に至りました。
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【舞踊部門文部科学大臣賞】バレエダンサーの柄本 弾氏
▽「ロミオとジュリエット」と「ザ・カブキ」で、ドラマチックな演技力とキレのあるテクニックで説得力ある作品に仕上げたことが評価されました。
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【大衆芸能部門文部科学大臣賞】落語家の立川 談春氏
▽落語という形式で己の芸を作り、令和6年には芸歴40周年記念興行「立川談春独演会」といった活動でさらに磨きをかけた点が評価されました。
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【大衆芸能部門文部科学大臣賞】落語家の柳家 喬太郎氏
▽ただの人気ネタの再演ではなく、今を生きる世代に伝わるよう工夫を凝らし、圧倒的な引き出しの多さと懐の深さを見せつけた点が評価された。
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【舞踊部門文部科学大臣新人賞】歌舞伎俳優・日本舞踊家の中村 鷹之資氏
▽文部科学大臣新人賞にふさわしい清新な舞台で、爽やかな印象を観客に与え、舞踊界にも大きな刺激となり、受賞に至りました。
【映画部門文部科学大臣賞】映画監督の石井 岳龍氏
▽日本映画の枠を超えた奔放な想像力と映像表現で唯一無二の創作活動を続け、円熟味を増した本作の成果が評価されました。
【映画部門文部科学大臣賞】映画監督の土井 敏邦氏
▽災禍の時代の中で、日本と世界に通底する主題を見事に提示した、その功績が評価されました。
【音楽部門文部科学大臣賞】地歌箏曲演奏家の岡村 慎太郎氏
▽楽器の響きと作品の音楽性を深く追求し、共演者とのバランスも保つ氏の活動の奥行きと幅の広さが評価されました。
【音楽部門文部科学大臣賞】指揮者の阪 哲朗氏
▽オーケストラを室内楽のように響かせ、台本のすみずみまで明快に聴かせることで、作品を「ドラマ」として響かせた点が評価されました。
【舞踊部門文部科学大臣賞】日本舞踊家の尾上 紫氏
▽確かな技術に裏打ちされた「抑制された型の中からの内面描写」に優れ、日本舞踊の魅力を十分に見せた点が評価されました。
【文学部門文部科学大臣賞】詩人の野木 京子氏
▽日常の認識や感覚に生じる亀裂を直視し、不安や哀しみ、違和感や喪失感と向き合う言葉を探究した詩集が評価されました。
【文学部門文部科学大臣賞】小説家の町屋 良平氏
▽妄想とユーモアをたっぷりまぶした作品によって日本文学の「伝統」を刷新した功績が評価されました。
【美術A部門文部科学大臣賞】美術家の石田 尚志氏
▽絵画と映像、物質とイメージ、空間と光の関係をめぐる40年に及ぶ考察と実践を展示空間において鮮やかに示したことで、評価されました。
【美術B部門文部科学大臣賞】現代美術家の開発 好明氏
▽「一人一人の存在が社会を動かし、変え得る原動力となるという気付き」をもたらした展覧会が評価されました。
【放送部門文部科学大臣賞】プロデューサーの村瀬 史憲氏
▽事件を振り返ると同時に、現代での和解への希望を描いたドキュメンタリーが評価されました。
【芸術振興部門文部科学大臣賞】指揮者の広上 淳一氏
▽避難所、病院、小学校、交流施設、道の駅など、被災者の日常に音楽を届ける活動を被災後直ちに展開し、継続する姿勢が多くの示唆を与え評価されました。
【芸術振興部門文部科学大臣賞】横浜国際舞台芸術ミーティングディレクターの丸岡 ひろみ氏
▽横浜国際舞台芸術ミーティング(YPAM)のディレクターとして日本における舞台芸術の更なる発展とプレゼンスの向上に寄与した点が評価されました。
【評論部門文部科学大臣賞】香雪美術館学芸部長の有木 宏二氏
▽アジア発の新しいゴーガン像を誕生させた点が評価されました。
【評論部門文部科学大臣賞】慶應義塾大学教授の片山 杜秀氏
▽近代の価値観をも再考させる示唆に富む一書が評価されました。
【演劇部門文部科学大臣新人賞】演出家の藤田 俊太郎氏
▽ 「リア王の悲劇」では現代の価値観とコンプライアンスに依拠した明快なアップデート版を提示してみせた点が評価されました。
【映画部門文部科学大臣新人賞】映画監督・脚本家の三宅 唱氏
▽ 「夜明けのすべて」では、若者たちの群像劇をみずみずしく描き出してきた作品世界の一つの到達点を示した点が評価されました。
【音楽部門文部科学大臣新人賞】ピアニストの北村 朋幹氏
▽録音においても公演活動においても抜群のセンスが評価されました。
【音楽部門文部科学大臣新人賞】都山流尺八演奏家の長谷川 将山氏
▽超絶技巧と高い表現力を駆使した演奏で想像を超える尺八の可能性を広げた点が評価されました。
【舞踊部門文部科学大臣新人賞】振付家・ダンサー・演出家のスズキ 拓朗氏
▽驚くべき独創性と同時代性やユーモアをもって古典を再解釈し、大きな成果を挙げた点が評価されました。
【文学部門文部科学大臣新人賞】小説家・詩人の井戸川 射子氏
▽言語芸術としての小説にしか表現できないものを絶えず追求しようとする姿勢が評価されました。
【文学部門文部科学大臣新人賞】俳人の西村 麒麟氏
▽図太い心と細やかな表現力で、俳句に新しい世界をもたらす可能性をもった作者として評価されました。
【美術A部門文部科学大臣新人賞】美術家の青山 悟氏
▽絵画や彫刻という分野には収まらない刺繍表現を目覚めさせ、現代の芸術まで昇華させた功績が評価されました。
【美術A部門文部科学大臣新人賞】漆芸家の笹井 史恵氏
▽布や和紙貼りした土台となる形状に漆を塗り磨き上げる乾漆の技法により、生命感溢れる造形を生み出し、受賞に至りました。
【美術B部門文部科学大臣新人賞】アーティストの金仁淑氏
▽歴史認識や社会的背景の枠組みを超えて、私たちが目前の事象や個人と真摯に向き合うきっかけとなるような作品が評価されました。
【美術B部門文部科学大臣新人賞】現代美術家のNerhol(田中 義久氏、飯田 竜太氏)
▽グラフィックデザインを基軸とする田中義久氏と彫刻家の飯田竜太氏という、専門領域の枠を超えた二人の対話を起点とする表現活動が展開され、受賞に至りました。
【メディア芸術部門文部科学大臣新人賞】ゲームクリエイターの橋野 桂氏
▽瞬く間に全世界で100万本を突破した王道ファンタジーの完全新作が評価されました。
【放送部門文部科学大臣新人賞】ディレクターの上田 大輔氏
▽弁護士であるディレクターならではの視点で切り込み、独自の作品に仕上げた点が評価されました。
【放送部門文部科学大臣新人賞】ディレクターの大島 隆之氏
▽15年にわたる取材の到達点を示し、今後、特攻を論じる際に必ず参照されるべき作品が評価されました。
【大衆芸能部門文部科学大臣新人賞】活動写真弁士の坂本 頼光氏
▽寄席定席公演に映像投影を持ち込んだ努力により「活動写真弁士」を身近に感じさせ、受賞に至りました。活動写真弁士の受賞は初となります。
【芸術振興部門文部科学大臣新人賞】Art Center Ongoing代表の小川 希氏
▽御岳渓谷を会場に、急流を下る観客に現代美術家や詩人らが作品発表を行う従来の展覧会の枠組みを超えた活動が評価されました。
【芸術振興部門文部科学大臣新人賞】ヘラルボニー代表取締役/Co-CEOの松田 崇弥氏、松田 文登氏
▽障害のある作家が自立する道を開くという一見困難な挑戦を積極的にしている点が評価されました。
【評論部門文部科学大臣新人賞】北海学園大学准教授の高橋 義彦氏
▽巧みな構成、飾らない文章、物語る力が批評文芸の優れた達成として評価されました。
【評論部門文部科学大臣新人賞】京都文化財団主任の林 淳氏
▽日本の近現代書道史を総合的に俯瞰することで新たな歴史認識を打ち出し、受賞に至りました。