ゲーム、映画、読書。
これまで親しんできた趣味は、どれも椅子に座ったまま楽しむものばかりだった。変な姿勢で何時間も好きな世界に浸るのは最高にリラックスできる時間だ。
しかし、自分も友人たちもそのツケを支払うときがきた。
全員が「腰が」「目が」「膝が」と口々に漏らしている。慢性的な運動不足が原因なのはわかりつつも、ジムにいくのはめんどくさいし……となんとなく痛みのことを忘却して過ごす。
もう、自分のことは諦める。長年の生活習慣を変えるのは難しい。
だが、勝手なのはわかっていても大切な存在には、ずっと健康でいてほしいと願わずにいられない。運動を楽しめなくても、ジムの入会金に背中を押されてイヤイヤ走るのではなく、なんらか楽しく健康を手に入れてほしい。
『Nex Playground』は、まさにそんな願いを叶えてくれるゲーム機である。
本体に内蔵されたカメラがプレイヤーの動きや位置を感知し、コントローラーを一切持たずに、自分の体そのものを動かして遊ぶ。ちいさくてポップでかわいい正方形の、日本ではまだ見慣れないハードだ。
本機をプレイすると、当然「体を動かすのってたのしい!」という気分にさせてくれる。しかし今回の取材で驚いたのは、そのポップな見た目とは裏腹に、本機の設計は「子どもの安全」へ、どこまでも振り切られていることだ。
ビデオ通話も、クラウドを経由した映像処理も、VCもいっさいない。かわいらしい小箱の中身は、オンライン上の危険を”存在ごと消してしまう”ような、徹底して閉じた設計だったのだ。
しかも本機は、すでにアメリカの家庭に迎え入れられている。2025年のブラックフライデー週末には、米国のコンソール販売台数で堂々の3位。Nintendo Switch 2、PlayStation 5に次ぐ順位で、その週はXboxをも上回ってみせた。
この”かわいさ”と”ガチさ”の正体を確かめるべく、東京ゲームショーで実際に本機をプレイ。あわせて、CEOのデイビッド・リー氏、プレジデント兼インターナショナル統括のトム・カン氏、そして日本法人GMの山本恵美子氏にもお話をうかがってきた。
文/anymo
「子ども向け」だからこそ安全性は超堅牢。チャットもVCも映像中継もナシ
Nex PlayGroundには、カメラを使った体感型のゲーム以外にも大きな特徴がある。それは、「家族向け」であることだ。
リビングルームに設置し、家族や友人で「ソファから立ち上がって」プレイすることをコンセプトとして据えており、子どもから親、そして祖父母までをもふくめた広い世代がプレイできるゲーム機として開発されている。
本機は5タイトルのゲームが内臓されているほか、サブスクリプションサービス【※】に加入することでNex PlayGround向けのすべてのタイトルがプレイできるようになる。
※Play Pass(サブスクリプションサービス)
本体標準の5タイトルに加え、Nex Playgroundの全タイトルとアップデートを利用できるサブスクリプション。広告やアプリ内課金はなく、日本版の仕様・コンテンツは異なる場合がある。
ファミリー向けという設計だからこそ、子どもが遊ぶゲームとしての安全性も凄まじい。
テキストチャットはもちろん、ボイスチャットやビデオ通話も一切なく、オンライン犯罪やグルーミングのリスクを原理的に遮断。モーショントラッキング用に撮影された映像はクラウドを介さず、本体内でのみ処理。
しかもフレンド追加には所有者である親の承認が必須で、極めつけには外部からの盗撮への不安をケアすべく、物理的なレンズカバーまで付属する。
また、本作はゲーム機でありながらもNexが配信するタイトルのみプレイが可能。Nexから提供されるもの以外のソフトウェアは一切インストールできない。つまり、Nex PlaygroundのパブリッシャーはNexのみということになる。
そのうえ、広告も排除されているので、Nex側が意図しない情報がプレイヤーに触れることがない。
つまり、子どもにまるまる「ここで遊んでいいよ」と安心して渡せる、もっとも安全で信頼のおける遊び場として設計されているのだ。
そういえば子どもって体力あったな
最初にプレイしたのは『Starri』。レーンに流れてくるノーツに合わせて腕を動かしたりステップを踏んだりする、オーソドックスなスタイルの音ゲーだ。
音ゲー経験者だと、ノーツの間隔の広さに「ヌルゲーなんじゃないの?」と思ってしまう。ところが、実際に体を動かしてみると話はまったく別だ。タイミングに合わせて自分の体を動かすのが、意外とむずかしい。それでも、運動不足の身だろうとビートには乗りたいので、結局は必死に体を動かすことになる。
そして印象的だったのが、楽曲がフル尺で収録されていること。つまり5分ほどのあいだ、腕を伸ばしたり回したり、左右にステップを踏んだりを繰り返すわけで、「そういえば子どもって体力があるんだった」と改めて思い出させられた。
本機はリビングに置いて家族や友人と遊ぶコンセプトを前面に打ち出しているが、本作は「ひとりでもくもくとハイスコアを目指す」遊び方もしたくなる一本だ。
次にプレイしたのは、『ソニック』のランレースゲーム『ソニックフォース:ライバルラッシュ』。
特に面白いのは「右手を挙げるとアイテムを使用できる」という仕組みだ。
ひと試合だけでは勝つための勘所を完全につかむことはできなかったが、レース中の「いまだ!」というタイミングで手を挙げれば、同じレーンで目の前を走るライバルにアイテムをぶつけられる。この操作が直感的で、試合を大いに盛り上げてくれそうだと感じた。
最後にプレイしたのは『Fruit Ninja』。なお、本作はサブスクリプションに加入しなくてもプレイできる無料のタイトルとなっている。
元はスマートフォン向けのタイトルだが、本機でのプレイに合わせ、自分の影が背景に映し出される仕様になっている。「とにかくフルーツをたくさん切る」という超シンプルなルールなので、小さな子どもでもすぐに楽しめるだろう。
本機を導入した家に友人を招いたときなど、まずこれをプレイしてもらえば「どんな体験ができるのか」がすぐに伝わりそうだ。
「私たちは競合していない」──Nexが解くのは、家族が「いっしょに遊べない」という孤立の課題【インタビュー】
──先ほどのプレゼンテーションでも触れられていましたが、ブラックフライデー週に販売台数がXboxを上回って3位に入っていました。この数字を率直にどう受け止めていますか。また、11月にNexだけが販売台数を伸ばした理由を、どのように分析していますか。
カン氏:
正直に言うと、驚きました。
リー氏:
デイビッドが言ったように、売り上げに関しては私たちも驚いたというのが正直なところです。
まず言えるのは、私たちは他社とはまったく違う存在だということです。私たちはPlayStationやXbox、あるいは任天堂と競合しているわけではありません。別の製品なんです。
人々がそれぞれのデバイスに費やす時間が増えていく中で、私たちは家族や友人がいっしょに集まって遊べるようにしたい。私たちは、家族が抱えている「いっしょに遊べない」という孤立化の問題を解決しています。
子ども・家族向けの市場は、まだ十分に手が届いていない領域だと考えています。彼らのために、専用に設計された製品をつくれば、ここには大きな成長機会があります。
安全のために超クローズドな設計思想で開発。子どもから高齢者まで「健康寿命」を延ばす、安全なゲーム機に
──本機はチャットやビデオ通話、映像中継がなく、レンズカバーも付属することで、オンライン犯罪やグルーミングのリスクを原理的に遮断しています。こうした安全性の部分が、保護者の購買の決め手になっている実感はありますか?
リー氏:
はい。それに、Nex PlayGroundのすべての処理は、クラウドを介さずにデバイス内で行われています。だから、Wi-Fiに接続しなくても遊べるんです。
自分でソフトウェアをインストールすることもできません。存在するソフトウェアは、Nexが供給したものだけです。つまりクローズドなシステムであり、コミュニケーションもチャットもビデオも一切ない。私たちはその部分を、非常にシンプルに作っています。
このデバイスのプライバシー・安全性・セキュリティについて、私たちは完全な責任を負っています。
私たちのビジネスモデルは「サブスクリプション」です。これは、私たちの顧客こそが本当の顧客であって、顧客が商品にされているのではない、ということを意味します。
カン氏:
ここで非常に重要な言葉が「信頼」です。日本の家族にも、世界中の家族にも、このプラットフォームを、子どもがアクティブに使えて、危険がなく、害を及ぼすものが何もない場所として信頼してほしい。
ただ健康的に、楽しく遊べるものなんです。
──保護者がNex PlayGroundを選ぶ主なポイントは、その安全性なのですね。
カン氏:
はい、それは私たちのメッセージの重要な部分であり、保護者がこの製品を買う理由の核心でもあります。
子どもはゲームで遊びたい。だから私たちは、これを世界で最も安全なゲームプラットフォームにしたいんです。
──日本では少子化が進んでいて、超高齢社会になっていきます。そんな中で、本機は孫のいる高齢者だけでなく、より幅広いシニア層のボケ防止や運動の需要にも応えられるのでは、と感じました。子ども向けだけでなく、高齢者施設などへの展開は視野に入れていますか。
リー氏:
シニア層への広がりは、アメリカではすでに始まっているんです。高齢者向けの施設がNext Playgroundを導入して、みなさんがボウリングを楽しまれています。
シンプルで素晴らしいものを作れば、小さな子どもはもちろん、高齢者の方も同じように楽しめる。
そして私たちは「健康寿命」を強く意識しています。ただ長生きするのではなく、より長く健康でアクティブでいること。それを、私たちがお届けする家族のために実現したいと考えています。
カン氏:
もう一つ重要なのが、世代をまたいで一緒に遊ぶ「クロスジェネレーションプレイ」です。
祖父母はいつも孫と一緒にできることを探しているものです。だからこれは、シンプルで、一緒にできるものなんです。
──本機は相互同意モデルであればオンライン対戦もできるとのことでした。子どもに安心してプレイさせられる安全性を担保しつつ、ソーシャルな熱量や楽しさを、どうやって成立させているのでしょうか。
リー氏:
まず第一に、私たちは同じリビングルームで一緒に遊ぶ「ソファ協力プレイ」を強く推奨しています。リビングでみんなで遊ぶということですね。2人、3人、4人とデバイスの前に集まって、最大4人が同時に一緒に遊べます。これがひとつめです。
ふたつめは、私たちが取り組んでいる「コネクトプレイ」です。2台のNext Playgroundを繋げていっしょに遊べるもので、ふたつのリビングルームがひとつになるようなイメージです。
ただし、そのつながりは「信頼されたコネクション」として確立したい。双方のデバイス、双方の親同士が、お互いを承認して初めてつながりが成立する、という仕様にしています。
カン氏:
見知らぬ人は入れませんし、知らない人とはつながらない。あなたが知っていて、信頼している人だけとつながることができます。
リー氏:
この機能は開発中で、現在はパイロット版・ベータ版の段階です。
──本機のデザインは、子どもがいる家に入れるものとしてとても安心感がありますよね。この、子どもに触れさせるハードとしての安心感を、デザイン面でどのように作り上げていったのですか?
リー氏:
私はAppleで8年間働いていました 。「安全性」は、額に入れ墨で刻まれているほど大切なことです。私たちが作るすべての製品は、プライバシーレビュー、安全性レビュー、セキュリティレビューを何度も通します。細部のすべてを正しく仕上げるために、製品の一部を何か月も遅らせたこともあります。
そして、Nex PlayGroundから感じる親しみやすさや安全性は、意図的にデザインされたものです。
Next Playgroundのデザインは、サンフランシスコの工業デザイン会社が手がけました。デザイナーは女性で、母親でもあるんですよ。
アジア市場最初の一歩に、日本を選んだ理由
──すでにゲームタイトルとして『パックマン』と『ソニック』の参入が発表されていますが、日本で展開する際のIPのラインナップについて、現時点でお話しできることはありますか。
リー氏:
『パックマン』は2〜3週間のうちに本機に登場します。ソニックは来月、10月にリリースされる予定です。
いま、日本の開発会社4社と組んで開発を進めていて、日本のIPもローンチしていく予定です。非常にわくわくするラインナップを用意しています。
カン氏:
これからローンチする日本のIPは、見ればすぐに分かる、子どもや家族にとって最大級のタイトルです。日本では、BTSも非常に人気ですね。
リー氏:
私たちはアニメも大好きです。だから、私たちのスポーツゲームのいくつかはアートスタイルがアニメ調になっています。
野球のゲーム などを見ていただくと、アニメの影響が分かります。そういったタイトルもまだまだ登場しますよ。
──アジア市場を開拓するにあたって、最初に日本を選んだのはなぜでしょうか?
リー氏:
私たちは、日本の市場が決して簡単なものではないと予想していました。だからこそ、なおさら愛とリスペクトを持って、ここに来ています。私自身は香港で育ち、幼い頃からアニメ を見てきました。
私たちが日本市場に参入するときの姿勢は、ただ製品を日本で発売するということではありません。私たちが愛と尊敬を抱く日本の文化を、日本そのものをNext Playgroundに招き入れて、それを世界に持っていくという考え方をしています。
そして、その点で私たちには素晴らしいチームメイトがここにいます。山本恵美子さんです。
カン氏:
恵美子さんは、ディズニーの作品を日本に持ち込むこと、そして日本で作られたディズニー作品を日本の外に持っていくという経歴を持っており、グローバルなIPの出入りについて非常に経験豊富です。
彼女は、日本市場を理解し、日本の家族にとって最良の体験を生み出すのに、まさに適任なんです。
リー氏:
私たちは長期的な視点も掲げています。すぐに成功か失敗かが決まるものではありません。長い時間をかけて、日本の家族にとって可能な限り最高のものにし続けたい。
それに、日本のコンテンツが中に入った製品は、グローバルな視点で見ても、より良い製品になるんです。
──山本さんにお伺いします。国内での開発、グローバルIP、そして流通プラットフォーム。まさにNext Playgroundが日本で必要とする3つの領域を、すべて歩んでこられたご経歴かと思います。この経験を、日本参入の際にどのように束ね、活かしていくのか、ビジョンをお聞かせください。
山本氏:
そうですね。いろいろ悩んで、いろいろ考えて、今まさに戦略を作っているところです。
先ほども申し上げたように「価格をどうするか」「どこで売るか」そういった点が非常に大事なポイントで、とても日本に特化した戦略を今作っています。アメリカの戦略をそのまま持ってくるのではなく、売り方や流通についても、日本向けに今組み立てているところです。
本機は体験していただくことが非常に大事です。なので、そのための場所を作ることこそが、いちばん大事だと思っています。
それから、「開発」に関しては、私自身ずっと長く経験してきたことです。Nex PlayGroundでいっしょにお仕事をするデベロッパーさんも、昔からお付き合いのある、品質に非常に留意してくださるところと組ませていただきます。
日本のIPについて具体的な名前はまだ申し上げられませんが、いちばんベストな形で日本に入っていけるように、今考えています。
──トイザらスに行ったときに子供が遊んでいるような、あの感じでしょうか。
山本氏:
まさにそういうイメージです。ワイワイ遊んで、楽しいと思っていただいて、お家で買ってもらう。本機は4人までいっしょに遊べるので、お子さんのお友達ともプレイできます。
いま、日本の夏はすごく暑いですよね。外に出られないお子さんも結構いらっしゃるので、そういうご家庭にも相性がいいんじゃないかと思います。
子どもがひとりでiPhoneなどで遊んでいるのではなく「みんなで遊ぶ」。もちろん、ご高齢の方にもぜひ!と思っています。













