人気ゲームブログ「島国大和のド畜生」管理人の、島国大和さんによるコラム「島国大和のゲームほげほげ」。第5回となる今回は、先日発売されたNintendo Laboについて、ゲーム開発者の視点で語っていただきました。
特に『Nintendo Labo ROBOT KIT』の“ロボットToy-Con”にベタボレしたご様子の島国さん。彼の熱い語りを読めば、いかにNintendo Laboの登場がコントローラーの革新的な進化であるかが、改めてわかるハズです!?
ジーク!! ダンボール!!(挨拶) どーもお久しぶりの島国大和です。
さて、任天堂のダンボールのアレNintendo Laboイカしてますねー。非常にグっとくる仕掛けがいっぱいです。今回はこれの話をしたいと思います。
これはもう、ただのデジタルガジェット好きのおっさんの感想です。たまにはそういう緩いのもありでしょう!
もしかすると真打登場!?
ビデオゲームとはコントローラーの歴史ですよ。『PONG』や『ブロック崩し』のジョグダイヤルや、『スペースインベーダー』や『アステロイド』のレバー。
その後も、ありとあらゆる変わったコントローラーが出ました。銃、トラックボール、ギター、ダンス床……。
そんな中、任天堂のハードウェアのコントローラーは「今回はこれで行くぞ!」という意志が強く見えます。男らしくてカッコイイ。
たとえばニンテンドー64の3Dスティック。これは、『スーパーマリオ64』のためのコントローラーでした。3Dフィールドの3人称視点アクション+アナログスティックによる全方向移動って、『マリオ64』が決定づけたんですよ(プレイステーションもセガサターンも、アナログスティックに関しては後追いです)。
この後のWiiでは、振り回して使う“Wiiリモコン”。そして爆発的ヒットした“Wii Fit”。WiiUは、えーと、まぁいいや。で、Nintendo Switchは、センサーモンスターの“Joy-Con”です。
自分は以前に「Nintendo Switchは今のゲームシーンに対する挑戦がいっぱいだ」という文章を書いたことがあります。
そして「そのNintendo Switchの挑戦の中心は“Joy-Con”である。なぜならこれはギミックの塊、センサーの塊であるからだ」と。
そのセンサーの塊が、『1-2-Switch』で終わりってわけではあるまい。と自分はずっと思っていました。センサーを活かした、“Joy-Conハンドル”みたいなものが、続々と出るだろう。ほかにも、ガンコンとか太鼓コンとか釣りコンとか弓矢コンとか……。そしていつか、真打の「このゲームのためのJoy-Conだったのか!」という作品が出るのではないかと。
そしたら、ここで満を持しての登場ですよ! モーショントレース型(大げさ)のロボットコントローラー“ロボットToy-Con”を作って遊べる『Nintendo Labo ROBOT KIT』です。
かつて『闘将ダイモス』に熱狂していたちびっ子たちよ! 39年の年月がそれを可能にした!
かつて『ファイブスター物語』のモーターヘッドにあこがれたメカフェチどもよ! 32年をもってファティマは居ないが遊べるぞ!
かつて『機動武闘伝Gガンダム』に悶絶した少年よ! 24年の歳月がとうとうモビルトレースシステムゴッコを可能にしたのだ!
正直、あれから何年経ったのかを確認してて、その歳月の長さに「ウゲェ」と思いましたが……。
あ、『パシフィック・リム』なら5年しか経ってないぞ。
最近ではあれ、「オレはガンダムで行く!」の『レディ・プレイヤー1』ですね。
なんと日本の公開日とNintendo Laboの発売日が、同じ2018年4月20日だったりして。
任天堂は、この夢のコントローラーを、ダンボールを使うことで手が届きやすい価格で発表したのです! わーわーパチパチ!
Nintendo Laboとはなんぞや? おさらいしたい
Nintendo Laboとはなんぞや、といえば。
Joy-Conのセンサーモンスターぶりを活かした、ダンボール工作とJoy-Conを組み合わせたちょっとしたゲームです。
小学館の学年誌、学研の科学と学習、ああいう雑誌の付録の“スゲェいい奴”だと思うと、しっくりくると思います。
Joy-Conは、ジャイロセンサーでその角度が拾えます。
モーションIRカメラでは、赤外線反射シールの位置を拾えます。
これらはダンボール工作と組み合わせれば、バイクや釣り竿型のコントローラーを簡易に実現できます。
そして、なんとモーショントレース型(大げさ)のロボットコントローラーにもなります。
「ゲームにダンボールがついて8000円もする?」だのと言われていますが、コントローラーを作る楽しみの値段なんですよ、これは。
さらに、自分で簡易なプログラムも書けます。まったくオリジナルのコントローラーで遊ぶこともできるわけです。
特に『ROBOT KIT』を語ります
本当はいろいろ書こうと思っていたんですよ。
「モーションIRカメラの使い方がスゴイ」とか。「組み立て説明のわかり易さがハンパない」とか。
「ウチの小学生の子どもでも作れた」とか。「これは間違いなくユーザーテストを繰り返した成果であろう」とか。
「どこにコストをかけるか、どういう研究開発をするか、みたいな攻めの姿勢」とか。
「研究開発へのお金の使い方がマジカッコイイ」とか。「軽いプログラム組んでみて、こりゃ楽しー」とか。
実際遊んでみて、「この方式ならアーケードの体感筐体の簡易版を作れるんじゃないか。とりえず、『ハングオン』とか『スペースガン』とか『ギャロップレーサー』とかぜひ出して欲しい」とかね。
ですが、それは置いておいて。ロボットコントローラー“ロボットToy-Con”が、すべてを吹っ飛ばしてくれました。
ホント、なるべく多くの人に一度ゲンブツを触ってもらいたいものです(任天堂の回し者じゃないよ)。これはスゴイ。ビビる。
“ロボットToy-Con”とは、両手両足を使って、TV画面のロボットをコントロールするシステムで、ダンボールのコントロールボックスを背中に背負い、そこから紐でつながれたダンボール製グリップを手足に着けるというものです。
コントロールボックスの中にはヒモでぶら下げられた重りがあり、これがヒモを引っ張る手足の動きに連動して上下します。その重りに張り付けられた反射シールを、背部に取り付けたJoy-ConのモーションIRセンサーで読み取ることで、「手を伸ばした、足を伸ばした」という四肢の情報を読み取ります。
さらに、頭部バイザーに付けたもうひとつのJoy-Conで、顔の角度やバイザーのon/offを読み取るのです。
これで、手足の動きから、パンチや歩行、しゃがんでクルマに変形したり、両手を伸ばして空を飛んだり、車状態でパンチをするとビームを撃ったり……というツボを突いたアクションができます。
さらに、頭部の角度から進行方向を変えたり、バイザーのon/offで、1人称視点と3人称視点を切り替えることができるのです。
そう。モーションIRカメラ+ジャイロセンサー+ダンボール+ハトメ+紐+シール=“ロボットToy-Con”なのです。
これはもう本当にグっときました。夢が広がるにもホドがありますね。
もちろん、細かい動きのトレースをしているわけでもなければ、ほとんどデジタルで行動が決定されるシンプルさですし、ゲームが面白いかといえば、非常に良く練りこまれていますが、「まぁ、こんなもんでしょう」ぐらいのゲームです。
でも、こんなにテンションが上がるゲームなんて最近ないですよ。技術的にも、発想的にも、完成度的にも、まぁわかる。あり得る。思いつく。
だがしかし、これをこの完成度まで練り込んで、商品としてこの単価で発売するのは、ちょっとやそっとじゃできないですよ。流石の任天堂。そこにシビれる憧れる。
コントローラーとしては、もう“コントローラーオブザイヤー”総舐めでしょう。
“ロボットToy-Con”最高!
ハイルダンボール! ハイルロボットコントローラー!
実はちょっと前に、特許サイトでネタバレしていたんですよ。
でも、これほどまでの完成度で、こんなに早く出てくるとは思っていませんでした。網羅的に取っている特許のひとつかな? と思っていたもので。
こういう、なかなか思いついても実現に持っていくことが大変なネタを、見事な練度で商品にまで積み上げていく任天堂はほんとカッコいいですね。イカス。素晴らしい。あやかりたい!
もうなんでもいいですよ。まとめ放棄。“ロボットToy-Con”最高。
キモはまさに、コントローラーです。
大人は恥ずかしくて装着できないので、ウチではもっぱら子ども用ですけど。
しかも、ウチの子ども大興奮でドスドスやかましいので、めったに使えませんけど。
さらにいうと、ウチの子ども根性なくてピアノ完成させてませんけど。
そんなことを吹っ飛ばす、豪快な一発芸です。“ロボットToy-Con”は。
自分は、Nintenodo Laboを入手する前、事前情報からそのキモは「Toy-Conガレージであそびの発明」つまりノード型プログラムだと思っていたんですよ。
これもかなり優れもので、ウチの小学生の子どもたちにも、教えてやるとなんかちょっとしたものは作れる。
でもですね、“ロボットToy-Con”のような、一発芸の破壊力にはもうホントかないません。あれは、動画や写真で見るのと違って、その場で使っているバカバカしさを見ると、魂が叫びますよ。
ほんと、久しぶりに開発者が羨ましくなるゲーム&コントローラーでした。
それでは今回はこの辺で。ダンボールと共にあらんことを!
【あわせて読みたい】
『レディ・プレイヤー1』のVRワールド「オアシス」は、現時点で構築するにはどのくらい難しい? ゲーム開発者視点で考えてみた【「島国大和のゲームほげほげ」第4回】この記事を執筆した島国氏に、2018年4月20日に公開された“VR世界”を舞台にした映画『レディ・プレイヤー1』(監督:スティーブン・スピルバーグ)について、ゲーム開発者の視点で語っていただきました。開発者的に難しいのは、ハリウッドならではのあの部分だった……。