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黒い賢人、青緑波紋疾走、青眼の白竜……マンガのルビはロマン満載! 答えられなくても楽しいクイズゲームはどのように生まれたのか、作った人に聞いてみた

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マンガの魅力は多種多彩だ

絵とストーリー、コマ割りという独自の表現で生み出される名作たちは、読者の心をつかんで離さない。マンガの中で描かれる世界観は唯一無二のもので、その作品ならではの独特の設定は、読者を「ここではないどこかの世界」へ連れ出す。そして、こだわりによって練り込まれた設定は、文字のルビ表現にも表れている。

たとえば、週刊少年ジャンプで連載されていた『遊☆戯☆王』では、「決闘」の文字に「デュエル」というルビがふられている。うーん、しびれる。

このように、週刊少年ジャンプのマンガを読んだことのある読者諸兄は、漢字にふられた予想外でワクワク感満載のルビに何度も心を踊らせたことだろう

そんなマンガのルビにスポットを当て、ゲームとして落とし込んだのが『漢字でGO! 集英社マンガ祭』だ。本作は、株式会社集英社と株式会社 Gotcha Gotcha Games が共同で制作した完全無料のオリジナルゲーム。ゲームクリエイターMicelle氏が『RPG Maker』で制作したクイズゲーム『漢字でGO!』がベースとなっている(Micelle氏は『漢字でGO! 集英社マンガ祭』の監修を務める)。

『漢字でGO! 集英社マンガ祭』開発陣インタビュー:呪術、遊戯王、ワンピースなど人気マンガのルビクイズゲームはなぜ生まれたのか_001
画像:ONE PIECE(©尾田栄一郎/集英社)

本作では、集英社の新旧さまざまな人気マンガからルビに関するクイズが出題され、答えを打ち込んでマンガ知識に挑むというものだ。最大の特徴は、答えられない問題が出てきた場合でも、結果画面で作品名や登場話が表示されるため、その場でマンガを読みながら楽しく復習ができること。しかも先述したように、無料で楽しめるという太っ腹タイトルなのである

弊誌では、人気マンガが集結し、答えられなくても楽しめるクイズゲームがどのように生まれたのかを、メールインタビューにて開発陣に話を聞いた。回答いただいたのは、エグゼクティブプロデューサーの伊藤史峻氏と、ゼネラルプロデューサーを務める河原田真広氏

■登場人物プロフィール
伊藤 史峻氏:
株式会社集英社
デジタルコミック第1課主任
プロモーション統括 兼 少年マンガ編集部統括

河原田 真広氏:
株式会社Gotcha Gotcha Games
マーケティング部マネージャー

取材・文/豊田恵吾

※この記事は『漢字でGO! 集英社マンガ祭』の魅力をもっと知ってもらいたいGotcha Gotcha Gamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


──『漢字でGO!』と集英社さんのマンガのコラボレーションは正直「ずるい!」と思いました(笑)。週刊少年ジャンプをはじめとする、著名なマンガのコマがこれでもかと登場する豪華さに驚いたのですが、本作の取り組みの経緯からお聞かせください。

伊藤氏:
私がGotcha Gotcha Games(以下、GGG)の成田社長と10年以上前から親しくさせていただいており、久しぶりに食事会でお会いした際に「いっしょに企画をやりましょう!」という話になったところから企画がスタートしました。

そこからすぐに打ち合わせをセッティングすることになり、「弊社としてはコミックスやマンガイベントのプロモーションに繋げられるなら、『RPG Maker』シリーズを活用した施策が実現できるかもしれない」というお話をさせていただきました。

『漢字でGO! 集英社マンガ祭』開発陣インタビュー:呪術、遊戯王、ワンピースなど人気マンガのルビクイズゲームはなぜ生まれたのか_002

つぎのお打ち合わせの際には、GGGさんから『RPG Maker』で作成されたゲームタイトル一覧を早速ご紹介いただいたのですが、実況者の皆さんがよく扱われているインディーゲーム群の並びに『漢字でGO!』も記載されておりました。

マンガのデザイン要素として、「キャラクター」や「背景」と同じぐらいに欠けてはいけない重要なデザイン要素が「文字」で、そこを活かした企画をもともと考えていたこともあり、「マンガのルビクイズを『漢字でGO!』のフォーマットで実現できたら、絶対に話題になると思うのですが、『RPG Maker』で作ることはできそうでしょうか?」と尋ねさせていただいたところ、GGGさんからすぐに「できます!」というお返事がきました。

さらに、GGGさんから原作者のMicelleさんへしっかりとコミュニケーションを取っていただき、マンガのみならず、原作者も原作開発ツールもすべて公式という座組みで、課金要素一切なしの完全無料のオリジナルゲームを作ることになりました

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画像:HUNTER×HUNTER(©P1998-2024)

河原田氏:
成田から伊藤さんを紹介いただいた際に、『RPG Maker』ではRPGを含め、さまざまなタイプのゲームが制作できることを多くのユーザーの方に知ってほしいと考えて、いくつかのタイトル例をご提案させていただきました。その際には、マンガの1タイトルをゲーム化するような取り組みも検討していたのですが、伊藤さんから『漢字でGO!』での取り組みを提案いただき、集英社さんのタイトル全体を使用する企画になりました。

話題になる企画ですし、リリースしたばかりの『RPG MAKER UNITE』を多くのユーザーに知っていただく機会にもなると考え、『RPG MAKER UNITE』を使用しての制作となりました。

──『漢字でGO! 集英社マンガ祭』で取り扱われているマンガは、どれも著名な作品ばかりですが、クイズ問題は集英社さんが制作されたのでしょうか? また、問題を作成するにあたり、どのようにマンガおよび出題するコマを選ばれたのでしょうか?

伊藤氏:
ゲーム内にあるスタッフクレジットをご覧いただければわかるのですが、今回のゲームは少数精鋭で開発しておりまして、問題の選定や作成含め、マンガに関する業務はすべて弊社側でご対応させていただきました。

弊社からデジタル版が発売されているタイトルは5,000作品以上ございますが、日常からそれらを取り扱う業務も担当しつつ、さらに言えば、2024年4月にローンチした『DEAIBOOKS【※】というサービスを立ち上げる際に、じつは少女マンガ・少年マンガ・青年マンガを問わず、全作品を読み返していたので、ある程度は「このマンガには出題しやすいルビがあったなぁ」という作品の目星はついておりました。

DEAIBOOKS:会話を通じてユーザーにマンガをオススメするAI対話型レコメンドサービス。

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今回の企画を進めるにあたり、それらの目星をつけた作品から「そのマンガを読んでみたくなるコマ」を選定するために、改めて数百作品分をチェックし直したので、初期実装されている作品とアップデートで追加される作品を含めて、かなりの量の問題を作成できました。

──問題を作成するうえで、とくに意識されたことがあればお聞かせください。また、この問題は会心の出来栄え、というものがあればぜひ教えていただきたいです。

伊藤氏:
まず前提として、少年マンガを除けば、総ルビのマンガのほうが少ないですし、ルビを使っていたとしても、該当のコマが小さすぎると解像度の都合で問題にすることができないなど、じつは出題対象にできる箇所が限られていることがわかってきました。

そのような制限の中でも、「表現力のすごさ」を伝えられるように、「前後のコマのセリフを読めば、ルビを推察することができる問題」をできる限り増やしていこうというのはつねに意識していました。

わかりやすい例だと、『HUNTER×HUNTER』の「強制的に成長したんだ………!!ボクを倒せる年齢(レベル)まで!!」という有名なセリフがあります。もちろん「年齢」という漢字だけを切り取ると「レベル」とは読めませんが、作中でのこの読み方を知ってしまうと、それ以外の読みは考えられないぐらいにもっとも適切で読者を惹きつける表現だなと改めて感銘を受けました。

ちなみに、前後の文脈から推察するタイプの問題がいちばん多い作品は「スナックバス江」で、すべての読み方を100年後の国語辞典に掲載して欲しいぐらいに表現力がすさまじいので、ぜひ皆さんに読んでいただきたいです(笑)。

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画像:遊☆戯☆王(©高橋和希 スタジオ・ダイス/集英社)

──答えがわからなかったときに、出題されているコマが原作の何巻で描かれたものなのか、またマンガのサイトに遷移するボタンも用意されており、マンガとの一体感を強く感じました。このあたりのアイデアは集英社さんから提案があったものなのでしょうか?

伊藤氏:
こちらも私からご提案させていただきました。問題を作成する際に「そのマンガを読んでみたくなるコマ」を優先的に選出しているのですが、それがどこに掲載されているかも合わせてプレイヤーに提示することで、すでに読んだことがある方は読み返したくなりますし、読んだことがない方もそこまで読んでみたくなるだろうと考えていました。

もともとは「マンガ自体を攻略本代わりに使用できるゲームを作れば、ユーザーが能動的にマンガを読んでくれるのでは?」という構想が私の中でありましたので、『漢字でGO!』に当てはめて、「ゲームを楽しんでもらうためにマンガを読んで予習・復習ができるスキームにする」というコンセプトをすぐに思いつきました。

実際に、今回のゲームのリリース前後を比較すると、各作品が試し読みされた回数もコミックスの売上も増加しておりますし、SNSでも「『漢字でGO!』で知った○○がおもしろくてイッキ読みしました!」等のポジティブなコメントが溢れているため、プレイヤーの皆さまにさまざまな作品に触れていただけるキッカケを作れたかなと思います。

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画像:【推しの子】(©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社)

──『漢字でGO!』開発者であるMicelleさんはどのように本作に関わっているのでしょうか? Micelleさんの監修で、意外なご指摘・おもしろいご指摘がございましたらお教えください。

河原田氏:
Micelleさんには、『漢字でGO!』としての全体のプロデュースを手伝っていただいております。今回の『漢字でGO! 集英社マンガ祭』は『RPG MAKER UNITE』で制作していますが、原作となる『漢字でGO!』は『RPGツクールMV』製のため、再現性が難しい部分などに関してもアドバイスをいただきました。

指摘いただいた中で「さすが!」と感じた点としては、音や背景等の演出へのこだわりの部分があります。フレーム単位でのちょっとしたズレ等も正確にご指摘いただいたときには、しっかり監修いただいていると実感するのと同時に、Micelleさんだからこそ『漢字でGO!』をあそこまでの形に仕上げられたのだと感じました。

伊藤氏:
何の前触れもなく「マンガの本文を使ってルビを読ませたい」というご相談が突然届いて、絶対に戸惑われたはずです(笑)。

それにもかかわらず、快く御了承いただけたので、企画をご進行することができました。『漢字でGO!』には、もちろんマンガの本文やロゴを使った演出はないのですが、Micelleさんからさまざまな事項に関するアドバイスをいただいたからこそ、『漢字でGO!』の世界観を踏襲しつつ、違和感なくそれらの演出を組み込むことができました。

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画像:ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース(©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社)

──本作は実況映えするタイトルだと強く感じました。SNSでの口コミや動画での広がりという部分も意識されて制作を行われたのでしょうか?

河原田氏:
原作の『漢字でGO!』は、多くの配信者の方にもプレイされているゲームですし、集英社さんとお話ししていく中で、「本作も、配信者の方にもぜひプレイしてほしいですね」という話はさせていただいておりました。

原作の『漢字でGO!』との違いとして、マンガのコマを表示する点がありますので、マンガ好きの方を中心に、SNSなどを通じても興味を持っていただける仕様になったと思います。すでに多くの配信者の方にもプレイしていただけていますので、これからも配信や動画を通じて、広く愛されるゲームになってほしいですね。

── 東京ゲームショウでの出展にて、ブースに大勢の来場者が訪れたとうかがっています。実際に遊ばれた方のご意見、反応はいかがでしたか?

河原田氏:
東京ゲームショウ2024では、GGGのブースにて本作のデモ版をプレイアブル展示し、非常に大勢のユーザーのみなさまに試していただくことができました。インディーゲームコーナーでの展示だったのですが、2台の試遊台に対してつねに試遊待ちの列ができるなど、思った以上の反響をいただくことができたと思っています。

何度も並んでプレイされる熱心な方がいたり、グループで「おれは『ヒロアカ』ならいけるから、お前は『ONE PIECE』な!」、「あー、これ何だっけ!?」などワイワイ盛り上がってくれる方々がいたりと、プレイスタイルもさまざまでした。

ユーザーのみなさまの生の反応を見ることで、『漢字でGO!』のとっつきやすさと、集英社マンガの人気やコンテンツ力を強く実感できる経験になりましたね。試遊していただいた方の意見をお聞きすると、TGS版は、私たちが考えているより問題が難しかったようで……(笑)。本リリースに向けて、集英社さんとは問題の難易度の調整を行いました。

──『漢字でGO! 集英社マンガ祭』の反響によっては、また別の展開もあるのでしょうか?

伊藤氏:
『漢字でGO! 集英社マンガ祭』をリリースしてから、「この作品も実装してほしい!」などの作品追加を熱望する言葉を多くいただいております。じつは、初期実装作品を決定するタイミングで、アップデートで実装する作品もいっしょに決定しており、SNSで言及されているほとんどの作品の問題も事前に作成しておりました。そのため、まだプレイができていない方にも、リリース直後に遊び尽くしたプレイヤーの皆さんにも、改めて本ゲームをお楽しみいただきたいです。

河原田氏:
これから集英社さんとの相談にはなりますが、本タイトルに限らずいろんな展開ができればと思っています。具体的な展開検討はこれからですね。

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画像:呪術廻戦(©芥見下々/集英社)

──『RPG MAKER UNITE』を使った新たな展開がまさに本作だと思うのですが、『RPG MAKER UNITE』を使って今後実現してみたい取り組みなどがあればお聞かせください。

河原田氏:
本作は『RPG MAKER UNITE』を使って作成しているわけですが、『RPG MAKER UNITE』はRPGを作るだけでなく、工夫次第でこんな違ったタイプのゲームも作れる、ということをアピールする良い機会になったとも思っています。

『RPG MAKER UNITE』はUnity上で動くツールですので、作ったゲームは、Unityの特性を活かして、PC向けだけではなく、コンシューマー機向けに展開することもできますし、本作のようにモバイル向けに展開することもできます。アップデートを重ねて、より使いやすいツールになっていますので、ぜひコンシューマー向けにゲームを作られるユーザーさんにも利用していただきたいですね。

──最後に本作を楽しんでいる方、これから遊ぼうと考えている方々に、ユーザーへメッセージをお願いします。

河原田氏:
まずは多くの方に本作をプレイしていただき、本当にありがとうございます。

今後、作品追加のアップデートも進めておりますので、引き続き遊んで頂ければと思います。合わせて、インディーゲームに興味を持たれた方は、本作を制作した『RPG MAKER UNITE』についても、ぜひチェックしてみてください。

伊藤氏:
弊社には多種多様なマンガがあり、本ゲームを通して、いままで読んだことがない作品と出会えたプレイヤーもいらっしゃるかと存じます。本ゲームは、『年末年始 集英社マンガ祭』という弊社の大規模マンガイベントに合わせてリリースさせていただきました。

2025年1月31日までの開催期間中に各電子書店でマンガを購入して応募するだけで、『ダイヤモンドの功罪』コラボのダイヤモンドや、『ふつうの軽音部』『君を忘れる恋がしたい』コラボのエレキギター入門セットなど、マンガにちなんだ豪華賞品が抽選で当たりますので、本ゲームをキッカケに、読みたい作品や読み返したい作品が出てきましたら、ぜひこの機会にお得にイッキ読みしてみてください!

詳細については、『年末年始 集英社マンガ祭』公式サイトをチェックいただけますと幸いです。

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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