1月16日(木)、『変な家』などを手がけるホラー作家・YouTuberの雨穴氏の「世界デビュー」に際して、外国人特派員協会にて緊急記者会見が行われた。
雨穴氏は、白いマスクに全身黒ずくめという異様な出立ちと、ボイスチェンジャーを使ったような極めて高い声が特徴のホラー作家・YouTuber。ウェブメディア「オモコロ」に掲載、自身のYouTubeでも公開した『変な家』は、どこかおかしな間取りに恐ろしい秘密が隠されているという作品構造が大きな話題となった。同作は2021年7月には小説版が発売、2024年3月には映画版が上映されている。
今回の記者会見で、雨穴氏は初めてマスコミ報道陣の目の前に姿を表した。会見は2022年に発刊された『変な絵』が世界30ヶ国(北米、ヨーロッパ、南米、アジア)での出版が決定するという、「世界デビュー」に際するもの。
『変な絵』は、「何かがおかしい」絵の謎に迫るスケッチ・ミステリー小説。消えた男児が描いたという『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥の遺体による『震えた線で描かれた山並みの絵』など、不穏な9枚の絵に秘められた「衝撃の真実」が明らかになる。
会見に登場した雨穴氏は、まさかの英語でスピーチ。お馴染みのミステリアスな声で「My name is Uketsu.」から始まり、自身の著書である『変な家』が小学生などを含む子どもたちにも波及している理由について解説した。
複雑なトリックを説明するために絵や図を多用していることや、第1章の内容をYouTubeの動画にしていること、そして自身の作品が「とにかく怖い」ことを理由に挙げた。
とくに3つ目の「とにかく怖い」については、日本人がホラーにおいて「静かで不気味な、不安な気持ちにさせるもの」を好むことが多く、若い人々や子どもが世の中の不安なムードを感じとってそれらを好んでいるのではないかと予想した。
同氏は、「すべての子どもたちが何も心配することなく成長できればいいのですが、私にはそれを実現する力がありません。だから代わりに、私は良い物語を書いて若い人たちに楽しんでもらいたい」とこの話題を締めくくり、メディアからの質疑応答へと移った。
※インタビューは他メディアとの合同で行われました。
──海外でのプロモーションや、映画化の予定などはありますか?
雨穴氏:
プロモーションとしては、動画の翻訳を考えています。私はもともとYouTuberとして活動していましたが、そこから小説というジャンルで活動するようになりました。
海外の方にも作品を読んでもらうために、まずは自分のYouTubeの動画を他の国の言語に翻訳して、動画を楽しんでいただいたその先で本を買っていただきたいなと考えております。
ぜひ、海外の方々にも私の作品を読んでいただきたいと思っています。
──雨穴さんの本作はページをめくる楽しさがある作品ですが、紙の本で出版することに思い入れはありますか?また、紙の本ならではの工夫はありますか?
雨穴氏:
私は、小説を読むのは紙でも電子書籍でもどちらでも好きです。
ですが、自分が小説を書いて出版するからには、ひとつのマテリアルとしてみなさんにお届けしたい気持ちがあります。
おっしゃっていただいた通り、いちばん気をつけているのは「ページ割り」です。印刷されている画像と、それを説明する文章が、必ず同じ見開き1ページに収まるようにしています。
自分の小説はエンターテイメントですので、リーダビリティ、読者さんの読み心地のよさを常に提供したいと思っています。
──過去、雨穴さんのビジュアルは歌舞伎の黒子を意識しているというお話がありました。海外で作品を出版するにあたって、改めて雨穴氏の出立ちや、ペンネームの「雨穴」の意味を教えてください。
雨穴氏:
たしかに、私の見た目は海外だけではなく、日本の方から見てもだいぶ怖いだろうと思います。これは自分の実感ですが、日本の子どもたちは私のコスプレをしたり、イラストで描いてくれたり、このビジュアルをすごく気に入ってくれています。
第一印象はすごく怖くてビクッ!とすると思うのですが、「慣れると意外と親しんでもらえるのかな」と楽観的に思っています。
また、この「雨穴」という名前については、参考にした人物がいます。
私は「オモコロ」というメディアに所属していて、先輩ライターの「夢顎」さん(夢顎んく氏)のことを尊敬しています。彼の名前は全く関係のない漢字を2文字並べた名前ですので、彼へのリスペクトを表すために私もそうしました。
漢字2文字を選ぶときに、ふと思い浮かんだのが「雨」と「穴」でした。
ジトジトした雨の日はイヤな人もいるんですが、自分は「雨」の日が好きで、「穴」の中のような暗〜くてジトジトした場所が好きなので、「雨穴」にしました。
──なぜ、そのような姿で活動されているのでしょうか?なぜ身を隠すのか、その姿を選んだのか理由を教えてください。
雨穴氏:
私は、仮面を脱ぐと実は国民的大スターだった──ということは全くなくて。おそらく、犯罪者──でもないと思います。
自分の見た目と自分の書く本の内容が離れているのは、私も以前からちょっと気になっていまして……。自分の作風を世の中の人に伝えるには、もしかしたら真面目な格好をした方がいいのかな、という風に思ったこともありました。
ですが、「帯に雨穴の写真を使って以降、売り上げが伸びた」と出版社の方に聞いて、「それならいいのかな」と考えました。
すごく緊張しているので固くなってしまったのですが……。
私のビジュアルに合わせて、一応、踊っておきます。
(突然、立ち上がってダンスを披露)
ありがとうございました。
──海外の小説を読むというのは深いところでの文化交流になると思います。自身の作品や日本のホラー作品がなぜこれほど、海外の方に受け入れられていると思いますか?
雨穴氏:
画像と文章が組み合わさった読みやすいスタイルが理由ではないかと考えます。このスタイルは、海外でも珍しいと聞いています。私はもともとウェブメディアのライターをしていたのでこのスタイルで執筆しています。そういった面で日本の文化を海外の方にも楽しんでいただけるのではないかと思います。
近年、『呪詛』をはじめとしたアジアのホラーが世界中の方々に注目されていると思います。私の本はすごくアジア的な価値観で描かれているので、それも楽しんでいただけたらいいなと思っています。
──海外の作品やライター、YouTuberなどからインスピレーションを受けることはありますか?
雨穴氏:
最近は『ザリガニの鳴くところ』という小説を読んで、すごく面白いと思いました。
海外の音楽も大好きで、ビートルズやローリングストーンズをよく聴いております。
──日本の小説家で特に影響を受けた人はいますか?
雨穴氏:
いろんな方の小説から影響を受けていますが、自分のクリエイティブの基礎になっているのは江戸川乱歩です。彼の作品を昔から読んでいます。
──最後に、何かチャレンジしたいことはありますか?
雨穴氏:
いつか、遊園地のお化け屋敷を作ってみたいと思っています。(了)
『変な絵』文庫版は1月16日(木)より発売。雨穴氏が「私の最高傑作です」と語る本作が、世界各国でどのような反応を巻き起こすのか、期待が高まる。
【作品情報】
作品名:『変な絵』
作者:雨穴
発売日:2025年1月16日
価格:税込858円累計120万部突破!「私の最高傑作です」雨穴
とあるブログに、「あなたが処した罪」という不穏なメッセージとともに、投稿者の妻が描いた「絵」が掲載されていたーー。『風に立つ女の絵』灰色に塗りつぶされたマンションの絵」……いったい何を伝えたかったのかーー。
9枚の奇妙な絵に移められた衝撃の真実とは!?その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!
文庫限定特典として、物話の前日譚『続・変な絵」と『ナゾ解きゲーム』も特別収録!