VR AVの活路は中国にあり?
──Aさん個人は、いま界隈でどんな仕事をされているんですか?
A氏:
いまは中国にどうやって売り込むかというシステム作りですね。AV自体はいろいろなところがすでに中国市場に参入しているので、おもにVRを売り込もうと考えています。
──アダルトVRの需要に関して、日本と中国で違いはあるんでしょうか?
A氏:
売ってみないとわかりませんね。でも、「それをやるなら投資するよ」と言ってくださる方はたくさんいます。
──中国のAVの市場規模がまったく見当つかないのですが……。
A氏:
総視聴時間なら、単純に人口比でいいと思います。ただ、購入している人がいないので、売上は全然ですね。
「もはや反日感情を起こすのは難しい」中国で巨大ゲーマー集団を率いる謎の日本人男性が語る、変わりゆく大陸事情。当局が中国ゲーム産業に抱く思惑とは…?【中国ゲーム事情】
──そうか。ほとんど違法で観ていますもんね。
A氏:
そうです。百歩譲って上海や北京ならまだしも、田舎のショップにアダルトDVDを持ち込むわけにもいかないですし。ましてや、「ネットで買え」といってもまず買いません。
──中国は法律というか倫理的にもアダルトに厳しいですよね。
A氏:
それもあって表立って活動できない状況ですし、動画自体は違法ダウンロードで消費されてしまうので、メインになるのはイベントなんです。
──現地に女優さんを連れて行って……?
A氏:
そうそう、あれはインドネシアだったかな。ある女優の子が空港で「みんな今日はありがとう」と手を振るだけの仕事で100万円と言ってました。1振りで10万、2振りで20万……10回振ってサッと100万ですね。
──スゴいなあ。つまり女優さんにとっても海外の営業はおいしいと。
A氏:
ですが、なんといいますか……「メジャーリーグに行ったら誰でも儲かるのか」みたいな話ですよね。
──なるほど。行くのと売れるのとはまた違うと……。海外でのレジェンドとして、パッと思いつくところでは、やっぱり蒼井そら【※】ですが。
A氏:
中国での蒼井そらさんの存在は、レジェンドも超えた領域だと思います。「Japanese AV=蒼井そら」というイメージが定着していて、もはや「蒼井そら」が固有名詞から普遍的な名詞になっています。
──それほどまでに! 二匹目のなんとかで、各メーカーさんは中国進出に乗り気なんですか?
A氏:
うーん、乗ってくる方もいらっしゃいますし、体裁的に乗り切れないところもあります。
──リスクがある?
A氏:
先ほどの話のように、中国はAVをオープンに売ることをまったく良しとしない文化です。少なくとも日本のコンビニでエロ本を売るような感じではまずできない。
ですから日本のアダルト業界も、当局に目を付けられやすいので、法令を遵守する意識は強いと思います。それを守る必要がどこまであるのかはともかく、「守っていますよ」、「重箱の隅を突かれないようにしていますよ」と皆さん気をつけているのが現状だと思います。
AV業界はサラリーマン的発想に覆われている
──Aさんは、日本の業界を見限ってしまった感じなんでしょうか?
A氏:
そうですね……。先ほどもお話をしましたサラリーマン気質が強くて、ちょっと閉塞感は感じますね。
──サラリーマン気質。
A氏:
細かい例えになりますが、Oculus RiftやGear VRは平気ですが、メガネに対応していないヘッドマウントディスプレイが意外に多いんです。それが説明されていない。
これは普通に考えれば回避できるはずの問題なんですよ。そういうことこそが事前に知りたいことなのに、「説明書に書いたから我々は義務を果たしたんです」という考え。だから、この業界、いまはイノベーターがいないのかもしれません。とても閉鎖的な業界ですし、新しいことに挑戦する人が少ない。
──日本社会全体でも言われることですが、それはAV業界であってもってことですね。
A氏:
AVだからこそかもしれません。たとえば、デパートの店員さんが仕事でミスをしても捕まることはそうありません。でもAV業界で過ちを犯すと一発で捕まってしまことすらある。だから、銀行員のような慎重な性分の人が必要になるんですね。
──なるほど、逆に真面目な人のほうが必要になる。
A氏:
昔であれば、「俺がやるんだ馬鹿野郎」という気質の人たちが業界を革新してきたのですが、最近はそうした頭のイカれた人よりも、「それは法的に……」みたいなことを言う人がいないといけない組織になっちゃったのかもしれません。
──もう30年以上AVを観てきましたが、90年代のように作品に異常さや新奇性を感じることが少なくなった気がします。【※】
※アダルトビデオは80年代冒頭に成人男性のあいだで話題を呼んでいた「ビニ本」のムーブメントと、民生用ビデオテープレコーダーの普及のはじめの流れが合流し、1981年5月に日本ビデオ映像から登場した2本に端を発すると言われている。したがって当初は従来のポルノ映画の撮りかたや、「動くビニ本」のようなスタイルから始まったが、数年のうちにドキュメンタリー調のもの、素人モノ、美少女路線など、手探りのなかいまに続くスタイルのものが登場。それらが定型化した80年代終わりから90年代に突入すると、さらに「エロ」が極端な方向へ向かって過激さや企画性が先行するもの、「エロ」が従で政治的主張が主の社会派ものなどが現れ、混沌を呈するようになるが、バブル崩壊と世紀末的な世相の中で21世紀に突入するころには現在のようなスタイルで落ち着いていくことになる。
A氏:
AV業界ってヒットが1本出ると、同じようなものが延々と出てきますよね。これも一種のサラリーマン的な発想かもしれませんが。たとえばですが「ス○バナンパ」という作品が出てそれがヒットすると、それに続いてみんな「タ○ーズナンパ」とか「ルノ○ールナンパ」などを作り始めます。
要するに新しい風を吹かそうと挑むのではなく、「あれが売れたから」と言い訳になる作品を作っている節があります。これは先ほど言ったように業界内の視線が厳しいという要因もありますが、ぶっちゃけ前時代に独裁的なイノベーターが多かったのも一因だと思いますね。
──AVが急成長していた時代を支えていた人たちですね。
A氏:
上司にそうしたタイプの人が多いわけです。すると部下は「怒られないためにどうするか」という発想になりやすい。だからどんどん業界が保守的になり、文化を守ることよりも責任を逃れることが第一目的になってしまう。だからたとえAV VRが売れないとしても、しばらくは出し続けるわけです。
──ですがさすがにいまでは、3D AVはほとんど見かけなくなりましたね。
A氏:
あれは、何があったんですかね……。まだ業界の前線にドンがいたのかもしれません。ただ、3Dでは相当痛手を喰らったみたいですよ。一度大きな災害を経験すると、次にまた災害が起こったときに対応できることに似ているかもしれません。それが悪いほうに出ている。
──イノベーティブな体験がないから、イノベーションが起こらない。すると、短期的な展望としていまのAV業界の風潮がダラダラと続いていく感じになりますね。
A氏:
おそらくユーザーに関係なく続くと思います。VRもいまの形でここまで来ちゃったら、もう引くに引けなくなっているはずです。
コスパが悪いのは三次元ではなく「二次元」
──お話を伺っていると、少し前に抱いていた輝けるアダルトVRの未来が、そこから始まるテクノロジーの未来が、そう輝ける感じでもないようにも思え……。あえて希望を探そうとすれば、たとえばどんな技術的なブレークスルーがあれば大きな変化が起こると思いますか?
A氏:
以前、アダルトVRフェスタ代表の吉田健人くんが「リアルはコスパが悪い」という名言を電ファミさんで残しました。
ただし、彼は表舞台に立つ人間で、現場の人間ではなかったんですね。我々現場というか裏の人間は、逆に「二次元のほうがコスパが悪い」と思ったわけです。だって、三次元の女性のほうがよっぽど安いわけですから。
──え、生身の人間のほうが安いんですか?
A氏:
極論として、リアルな3Dモデリングを作るくらいなら、リアルな女性と契約したほうが安い。これはつまり、以前に比べて女の子の価値がなくなったことに間違いありません。
──それはなぜでしょう?
A氏:
簡単な話、供給が過多になった以上に需要がなくなったんです。女の子とデートするためだけに、12月24日に赤プリ【※】を取る人なんてもういないわけです。
──バブル期と比較すれば間違いなくそうですね。
A氏:
さらに言えば、昔のAVには本当に可愛い子なんていなかったじゃないですか。言いかたが悪いですが、落ちに落ちない限りはAVには出ませんでしたよね。
それがいまでは、女の子が愉しそうにAVに出るようになった。そうなると女の子に価値はさらに下がります。いまでも女の子は「私が借金したら風俗に落とされるんじゃないか、AVに落とされるんじゃないか」と言っているのを耳にすることがありますが、僕からしたら「来たって稼げないよ」と思っちゃいますね。
──うーん。芸能人と境目がなくなるくらい、みんな綺麗になっていますもんね……。
A氏:
実際に脱ぐか脱がないかの選択肢は別として、女の子は「私が脱ぐこと、抱かれることに価値がある」といまだに思っているんです。でもその幻想はいま崩れていますね。そうなると、男女の価値の話になるわけですが、結局は男性も女性も等しく価値がないんです。
A氏、突如として人類の未来を語り始める
A氏:
というのも、だいぶ脱線しますが、これってつまり個人主義と全体主義の話になってくるんですよね。「一人の命は地球よりも重たい」時代なんて、本心ではみんなあり得ないと思っているけど、誰も言えないのが現在です。
権利、平等などのキレイな建前が前面に出る世の中では、出る杭は打たれます。VR AVにブレークスルーは起きないでしょう。ブレークスルーが起こるのは、本音が言えるようになったときじゃないですか?
──ええと。確かに、だいぶ脱線している気がしますが(笑)、どういうことでしょう?
A氏:
本音を言う時代になると、サラリーマンを守ろうとする文化もなくなるはずですから。そこでブレークスルーが起こります。サラリーマン的な発想をしている人は消えるか、いまよりさらに奴隷のような存在になるでしょう。もしくは前時代の独裁者が全滅するのかいずれかでしょう。
──抑圧がなくならないとブレークスルーは起きないと。
A氏:
ええ。私が思うにこのまま行くと、いま勝ち組と呼ばれているような「俺がやるんだ、俺が責任を取る」という層が全滅して誰も責任を取らない世界になるか、勝ち組がそのまま勝って、責任逃れをするだけの人たちが淘汰される世界かのどちらかに至ります。
そうなると、男性も女性も関係なく、一部の人間によって他の人間は自由に使われる全体主義の世の中になると思うんです。
たとえば、いまAV1本は3000円程度ですが、人間の価値が下がり続けると、今後は「AVを買うより女性を抱いたほうが安いじゃん」となる時代が来る可能性すらあると思うんです。そうなると、本来AVなどリアル寄りのものの代替品であったはずの二次元のほうが高くなってしまう。
──手間がかかっていますからね。かなり極端かつ大きな話になってきましたね(笑)。
A氏:
これって、「兵士は畑で取れる」【※】と言っていた大戦中のソ連の発想なんですよ。「人間なんかいくらでもいるんだから、豚のほうが貴重だ」なんて過激なことさえ言われていた時代です。
※兵士は畑で取れる
第二次世界大戦中、ドイツ軍の侵攻に対して人海戦術を取ったソ連の手法のことを指す。この言明は戦闘経験のない農夫を大量に徴兵し、多数の戦死者を出したソ連軍を揶揄するためにも用いられることがある。
──それがさっき触れていた全体主義の話ですね。
A氏:
ええ。ですので「アダルト産業だけは無くならない」といった自惚れも危ないと思います。それには何の根拠もありませんから。
──確かに現在DVDを買うなど、AV業界にお金を落としている世代より下になると、そもそもメディアの購買習慣がなかったりしますよね。
A氏:
ラブホ産業なども、「広い意味でセックス産業だからなくならない」と思っている風潮があります。「人口が減っているから規模が減っている」という発想なんですよね。でも僕はそうじゃないと思うんです。
──ラブホじゃなくても、たとえば民泊でもなんとかなるんじゃないかとか考えるわけですね。
A氏:
それもあるでしょうし、そもそも日本における総セックス数は絶対に減っています。
昔、農家の方が「米作りは絶対になくならない仕事だ」と言っているのを聞いたことがあります。確かに米はなくなっていませんが、そのときに比べて米作りの農家は1/10くらいになっている。ほとんどが機械に置き換えられてしまったから。つまり、米産業はなくならないけど農家は消えるという話なんです。
──それがアダルト産業にも当てはまると。
A氏:
セックス産業がなくならないのは、セックスがなくならないのとは関係がないってことです。AVに関して言えば、もはやAV鑑賞するための可処分所得も可処分時間もなくなりつつあります。
『アナ雪』という全体主義からの、人類史的転回(!?)
──ここまでの話を総合すると、人類に閉塞感を感じずにはいられませんね……(笑)。逆にいま光明が見えているものは何かありますか?
A氏:
技術的なブレークスルーは必ず起こります。ただ、それが普及するかどうかはまた別の話。クルマを発明した人間よりも、クルマを売ったフォードのほうがお金持ちになりました。普及には、ブレークスルーが起こった後に、それを産業にする人間が出てくる必要があるわけです。ゲームもそうですよね?【※1】 これはまさにVR AVにも言えることだと思います。
僕が光明を見出したのは、じつはディズニーの『ズートピア』【※2】なんですよね。
『アナと雪の女王』【※3】はご覧になりました? あれって、女性と子どものための映画なんですよね。女王が国をめちゃくちゃにして逃げ出し、それを戻したことで評価される。自分で壊したものを直すだけで評価されるのって、女性的な評価軸ならではといいますか。
あと、あの作品に出てくるハンス。彼は悪役として描かれるのですが、男からするとめちゃくちゃかっこいい奴なんです。 女がボロボロにした国家を自分が悪役になってもいいから、なんとか維持しようと奮闘する。要するに正義か悪かは置いておいて、人が生き残ればいいという発想なんです。
※1 原子力研究機関のオシロスコープ上で製作されたウィリアム・ヒギンボーサムの『Tennis for Two』、大学や研究機関のコンピューターを扱う若者のあいだで人気となったスティーブ・ラッセルの『スペースウォー!』、ラルフ・ベアによる初のテレビ用ゲーム機ブラウンボックスなど、切り口によってゲームの起源はいろいろある。だが「ゲーム産業の父」と呼ばれるのは、『スペースウォー!』をヒントに世界初のアーケードゲーム『コンピュータースペース』を作り、ブラウンボックスとそれに続くマシンのオデッセイをヒントに『ポン』を生み出し、これらを商業ベースに乗せて大ヒットさせたノーラン・ブッシュネルその人だ。
※2 ズートピア
ディズニー制作の米アニメ映画(2016年公開)。多種多様な動物の暮らす「ズートピア」と呼ばれる大都会を舞台にしたコメディ・アドベンチャー映画。全世界合計の興行収入は10億ドルを超えた大ヒットを記録した。
──な、なるほど。ハンスをそういう視点で見るのは、新しいですね。少なくとも『アナ雪』には近年のディズニー映画が追求してきた、ラディカルなフェミニズムの思想が、もっとも顕著に表れているのは事実でしょうね。
A氏:
うがった見かたをすれば、あれは現代の全体主義におもねった「女性はすばらしい、男は悪だ」という映画であり、ディズニーはそれでお金を稼ごうと思ったわけです。
ところがその次の作品の『ズートピア』ではこの図式が真逆になるんです。女性が役立たずで、カッコいい男がいないとどうしようもない、という話になっている。
──ジュディーとニックのことですよね。そう来ますか(笑)。
A氏:
簡単に言うと、『ズートピア』には「権利・平等・自由大好き! 頑張る!」というような『アナ雪』を引きずった女性警察官のジュディーってキャラが出てくるんです。ですが彼女がとてもポンコツに描かれていて、詐欺師の悪いキツネが優秀なキャラとして登場する。
さらに言うと、「私たち人を咬むこともできない可哀想な羊です」と言っている奴が悪なんです。
僕はこれを観たときに、本音を隠しながら出る杭を打ち、無能な多数が有能な少数を殺す時代がキチンと批判されていると思いましたね。「人権や平等を追求したら本当にみんな幸せになれるのか?」と、みんな徐々に疑問を抱くようになっているとは前から思っていました。
その疑問をディズニーが描き、しかもヒットしたことで時代が確実に変わりつつあると思ったんです。おりしも、その後にトランプが大統領に当選するわけですよね。
──どんどんお話のスケールが大きくなってきていて、もはやアダルトVRの話題に戻ってこれるか不安なのですが(笑)、確かに世界的にオバマ政権以降のリベラリズムは退潮しているでしょうね。
A氏:
『アナ雪』からの『ズートピア』というディズニーの手のひら返しを目の当たりにして、彼らが時代を正確に捕捉しているのを感じました。両作品で言っていることが真逆。にもかかわらず、同じ人たちが「わー、すごい」と映画を楽しんで観ている。これは凄まじいことです。わずか2年のあいだにかなり時代が変わりました。
──そのような見解は初めて聞きました。しかも、全世界的に「羊たち」は手のひら返しで支持をしたと……いうわけですね?
A氏:
いままでのグローバリズムは基本的に権利、平等、自由を称揚する運動でした。その反動としてトランプが大統領になり、イギリスがEUを離脱した。フランスがミスをするとドイツが暴走し、イギリスが怒るという流れがヨーロッパの歴史ですからね。
このように個人主義に立ち替わらなければ、人間の価値はどんどん安くなる。そうなれば、「AVを買うよりも女の子を抱くほうが安い」時代になってしまうだろうと思います。極論すれば、コミケで売っている同人誌を買うよりも、そのへんにいる女の子を誘ったほうが安い時代になりかねない。
──おお、話がアダルトに戻ってきた。そこはやっぱり、本当に危惧されているんですか。
A氏:
ええ。理想としてはそうなってほしくないですけどね。(了)
記事の冒頭では「アダルトVRの没入感が増して触覚が加われば、リアルなセックスはある程度置換されていくのではないか」という、取材の端緒になった予測について触れた。だが、ここまで読まれた方は、それが希望的観測に過ぎなかったことに気づいただろう。
VRはリアルに近づけば近づくほど、むしろ男性がAVに求める理想型から離れてしまうからだ。“カニカマ”という喩えでA氏が解説したように、どこまで精巧でも本物と仮想のあいだには容易には超えられない壁があり、「フィクションを楽しみたい層は、そもそもリアルを求めていない」のだとすれば、誰がアダルトVRを一回性の体験ではなく日常で求めるというのか。
こうなると、リアルな性を指向しないアダルトVRはどうした道を進むべきか。二次元の世界を拡張して再現するという道筋も浮上するが、そう単純な話でもない。今回のインタビューでは、「え?」と驚く発言がいくつも飛び出たが、なかでもいちばん衝撃を受けたのは「コスパが悪いのは三次元ではなく二次元である」という指摘だ。二次元の世界でシャングリラを求めれば、必ずコストの問題に行き当たる。
そして、最後のA氏の話。呆気にとられた読者も多いと思うが、とりあえず氏のアダルトVRに懸ける静かで激しい情熱を感じ取っていただければ幸いだ。電ファミとしては、この先VR全体のキーとなりうるアダルトVRの、黎明期の関係者の一見解としてここに書き記しておく。
ただ、現場で氏の語り口に徐々に熱の籠もる感じに、「確かに性産業全体に変化の兆しがじつは表れているのかもしれない」と、なにやら気圧されるような謎の迫力が満ち溢れていたことは付け加えておこう。ある意味で極めて黎明期の猥雑な場所・瞬間らしい、奇妙な時間が流れていた取材現場であった……。
ともあれ今回の話からは、技術的な側面だけではこの「アダルトVR」は決して語り尽くせないことだけはよくわかった。電ファミ編集部、そしてライターのわたし長谷川は、この難物に今後どう挑んでいくべきだろうか……。
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