eスポーツは絶対にスポーツです──ケイン・コスギが語るゲームにおけるスポーツマンシップと「ナイスゲーム」の精神

eスポーツは絶対にスポーツです──ケイン・コスギが語るゲームにおけるスポーツマンシップと「ナイスゲーム」の精神

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オンラインブラザー爆誕! カオスで安心な配信の舞台裏

──ここからは配信についてお聞きしようと思います。これまでの話を伺っていると、ゲーム配信やゲーム実況自体は前からご覧になられていたようですが、なぜ配信を自分で行うことになったんでしょうか。

ケイン氏:
 『LoL』を始めた当初、どうやってプレイするのかわからなかったので、動画や配信をいろいろと観ていたんですよ。そのうち、「これってすごく面白そうだな」となりまして。

 僕はオンラインで友達を作るのが好きなので、配信すればもっともっと友達が増えて、いろいろな人とコミュニケーションを取れるようになったら、少しでも『LoL』が上手くなれるかなと始めたんですね。

──なるほど! そういう理由だったんですね。

ケイン氏:
 いやー、でも放送を始めて5、6回ぐらいまではすごく緊張しましたね。自分のプレイを配信するという体験が初めてだったので。

 僕としては「50人来てくれれば嬉しい」とか、「少しずつでもいろいろな人とコミュニケーションをとって楽しくやりたいな」と思っていた程度でしたから。だから、まさかあんなに人が来るとは思ってもいませんでした。

──実際に配信をされて、面白かったり、ゲームに対する考えかたが変わったりするような出来事などはありましたか?

ケイン氏:
 面白い出来事と言えば“オンラインブラザー”ですね(笑)。配信をしていると、弟の名前と同じ名前のユーザーさんが入ってきまして。

──もちろん別人ですよね?

ケイン氏:
 そうですね。弟に「配信観てる?」と聞いてみたんですが、「いや、観てないよ」と。
 それで次の回から「あれは本物ですか?」と訊ねられると、「いやオンラインブラザーです」って答えるように(笑)。

──あはは(笑)。

ケイン氏:
 仕事やトレーニング以外は基本的に家にいますので、もうとにかく配信するのが楽しくてしかたないですね(笑)。
 放送を観に来てくれた皆さんとチャットでコミュニケーションを取るのが本当に大好きで、皆さんのジョークとかめちゃくちゃ面白いし、何千人も友達が増えたみたいな感じです。

 何よりありがたいのが、つねに皆さんからすごくいいアドバイスをいただけていることですね。「このチャンピオンはこうしたほうがいい」など、毎回毎回すごく勉強になるんですよ。

──強くなれるオンラインの環境が構築されつつあるわけですね(笑)。そういえば、あの配信環境はどう用意されているんですか?

ケイン氏:
 基本的には自分持ちでやっています。視聴者の方からのご意見をいただいて、どんどん進化させているんです。
 筋トレもそうで、視聴者の方から「負けたら筋トレですね」と言われて始まって、いつしか「勝っても筋トレですね」とか言われるようになって(笑)。

 まさか勝っても負けてもトレーニングをすることになるとは思いませんでした(笑)。

──最初はカメラの外まで移動して筋トレをされていましたが、途中で筋トレ用のカメラを追加していましたよね(笑)。

ケイン氏:
 皆さんから「筋トレ中もカメラが欲しいです」という意見があったので。最初は本当にやっているかどうかわからなかったみたいです(笑)。

 ちょっと早すぎて、「本当ですか?」みたいな(笑)。

──あはははは。確かにそれは疑われますね(笑)。

ケイン氏:
 それから配信環境という意味では、奥さんが毎回毎回グリーンバックのセットアップを手伝ってくれています(笑)。

──ゲームに対して厳しい家庭は多いと思うんですが、自宅でゲームをやっていて、怒られることはなかったんですか?

ケイン氏:
 いや全然(笑)。結婚してからも奥さんはゲームについて何も言ってこないんですよ。

──ご理解があると。

ケイン氏:
 弟や周りの友達など、結婚してからなかなかゲームができないケースは多いんですけど、うちの場合は自分の誕生日にゲーミングチェアをくれたり(笑)。

──めちゃくちゃいいですね。

ケイン氏:
 いやもう、本当にラッキーですよね。『コール オブ デューティ』をやっていたときは、朝から拳銃とか爆弾の音がしてたから、プレゼントでヘッドセットをいただきました(笑)。

──「うるさい」ってことですね(笑)。

ケイン氏:
 「朝から爆弾とかはちょっとやめてほしいから、これ」って。僕はすごくラッキーな男です(笑)。

──もうケインさんを妨げるものは何もありませんね(笑)。そして……今後の話も少し伺いたいのですが、ゲストを呼んだ配信や、たとえばファンミーティングなどの予定はありますか?

ケイン氏:
 将来的にはファンミーティングなどのイベントや、いろいろな人とゲームを遊びながらの配信もやってみたいですね。たとえば『フォートナイト』のチームを組んだり。

 それから配信ではないんですが、ゆくゆくは大会にも出場したいと考えています。

──おお! それはプロゲーマーになるということでしょうか。

ケイン氏:
 いえいえ、プロ大会は無理ですが、アマチュアの大会にはぜひ出場したいなと。
 その足がかりとして、今シーズンの『LoL』で、ランクをゴールドに上げたいと思っていて。皆さんに配信を観てもらっている中でゴールドに上がりたいですね。

──それは楽しみですね! ゴールドに上がる瞬間も大会に出ている姿も直接見てみたいです。

 5月18日、ケイン・コスギさんの率いるチーム「Team Perfect Body」の結成が発表された。同チームは5月25日から27日まで、『LoL』内で開催されたトーナメント「Clash」に挑戦するために結成されたライアットゲームス公式企画のチームだ。

(画像はClash: Team Perfect Body参戦! | League of Legendsより)

 ケイン氏の他に、女優の大久保聡美氏、ストリーマーの石井プロ氏、フリーライター・コメンテーターのハメコ氏、ライアットゲームズ社員の仲尾周三郎氏がメンバーとして名を連ねており、コーチはKatsudion氏が務める。

eスポーツはスポーツなのか

──そろそろまとめに向かいますが、その前にひとつ伺いたいことがありまして。というのも、『LoL』は月間アクティブユーザー数が1億人を超えたと発表されており、eスポーツシーンもかなり盛り上がっています。
 ケインさんご自身は、eスポーツという文化にどこまで馴染みがあるのでしょうか。

ケイン氏:
 結構前から知っていますよ。それこそ『コール オブ デューティ』をやっていたころには、そういう世界大会をよく観ていました。

 『LoL』に関しては、幕張で行われた日本大会“LJL”“ロジクールカップ”、あとは北京で行われた世界大会“Worlds 2017”にも観戦をしに行きました。

 とくに“Worlds 2017”には感動しましたね。あの鳥の巣(北京国家体育場)に数万人が入って、その全員で凄く盛り上がって……どんなスポーツ大会より感動しました。

2008年北京オリンピックの会場となった「鳥の巣」(北京国家体育場)
(画像はNATIONAL STADIUM – BIRD’S NESTより)

 いやー、チケットを買うだけでも大変でしたね(笑)。現地では中国語を使って何とかなりましたけど、帰りはあまりにも人が多かったから歩いて帰りました。10kmぐらいですかね(笑)。

──鳥の巣からホテルまで?

ケイン氏:
 そうです。もう人の数がすごかったから、タクシーも捕まらない。あと北京の渋滞は日本よりヤバいですから。

──そんな大盛況のeスポーツシーンを目の当たりにして、ケインさんはどう感じたのでしょう?

ケイン氏:
 まず、(ビデオ)ゲーム――eスポーツは絶対にスポーツです。僕は昔からそう思っていました。
 そして“Worlds 2017”に行って、観戦という観点からでも「ゲームはスポーツだ」と、より強くそう思うようになりました。

 だってチームがあって、選手がいて、監督がいて、好きなチームや選手ができたら応援しに行きたくなって。
 行ったら周りの人たちとの一体感があって、好きなプレイヤーを実際に見ると、もっと好きになってもっと応援したくなる。そして感動するんです。もうこれはスポーツですよね。

──まったく同意です。それゆえに、いまケインさんの存在は大きいと思っていまして。というのも、たとえば『LoL』は対戦ゲームですから、普通ならば乱暴な言葉などが出がちだと思うのですが、ケインさんはそうした言葉が飛んだりしていても、その対応が凄くポジティブじゃないですか。それを見て、小さな子どもたちにも観せられる配信だなと思ったんです。きっと親御さんにしても、ケインさんの放送なら子どもが観ても大丈夫だと判断するんじゃないですかね。

ケイン氏:
 NHKでの教育番組での体験もありますし、もともと子どものころから両親が厳しくて、よく悪い言葉は使わないよう言われていたんです。

 またゲームに対しても、先ほども言ったように、僕はゲームをスポーツだと思っているので、スポーツマンシップをすごく大事にしています。

 ただ、凄く負けず嫌いなので、内心はめちゃくちゃ悔しがっているんですよ。それこそ自分が負けると眠れないときもあります(笑)。

──本当ですか!?

ケイン氏:
 子どものころから、何事も勝つまでやりたいタイプなんですよ(笑)。
 昨日も結構遅くまで『クラッシュ・ロワイヤル』をやっていましたから……。「もうなんで勝てないんだろう」という感じで3時間ぐらいずっと。

──そのぶん勝ったときは嬉しいですよね。配信を見ていてもケインさんが勝ったときの雄叫びが凄く好きです。

ケイン氏:
 いやもう、やっぱり嬉しいですよね。たとえば30分ずっと負けていても最後の逆転ひとつで楽しくなれる。チームでみんなひとつになって、いいプレイをして勝つのはやっぱり嬉しいですね。

 あとポリシーとしては、あまり味方に「ナイスプレイ」「サポートグレイト」とは言わないようにしています。
 というのも「褒めすぎると逆に相手チームに失礼かな」と思っていまして、僕はみんなに「ナイスゲーム」と言うようにしています。

 だって自分が負けたときに、「ナイスプレイ」や「サポートグレイト」という声が飛び交っていたら、すごく悔しいので(笑)。

──本人は喜んでいるつもりでも、煽りに取られるかもしれないと。

ケイン氏:
 「できるだけ言わないほうがいいかな」と思いますね。

──そのあたりもスポーツの経験が活かされているのでしょうか?

ケイン氏:
 そうですね。子どものころから武道をやっていたり大会に出たりしていまして、勝っても負けてもちゃんと相手をリスペクトしなければいけないし、悔しくても人のせいにしてはいけないと学んできました。
 その精神や経験が活きているのは間違いないです。

 ただ、人生というのは、あらゆる体験が自分の糧になるものです。当然、ゲームの経験がスポーツや他の分野で活かされることもあります。
 だから、ゲームだけでもスポーツだけでもなく、いろいろなことに挑戦したほうがいいと思っています。それは自分の人生にとって絶対にプラスになるはずなので。

──そういう意味では、自分はケインさんの放送を観て、筋トレを始めました(笑)。放送でいろいろと解説してくださるので大変ありがたいです。

ケイン氏:
 僕はそれしか教えられませんからね。たとえば、ゲームで意外と酷使するのが指です。指を動かす筋が張ると肩や首に来るので、指のストレッチをオススメします。

 あとは腰ですね。ポイントは腹筋と背筋の両方をやること。腹筋だけだと逆に腰を痛めやすいんです……という感じで、ちょっとでも役に立てればいいなと。逆に皆さんからは『LoL』のアドバイスをいただいていますので。

──なんだかケインさんが“eスポーツのお兄さん”に見えてきました(笑)。でもそういうスポーツマインドとそれを支える体、そしてゲーム愛がどれもそこまで強い方ってなかなかいないと思うんですよ。
 だからケインさんがそれをやろうとしているのは、じつはすごいことなんだと思います

ケイン氏:
 そんな大層なもんじゃないですよ(笑)。でもチャットで「ケイン兄さん」と書いてくれる方が増えてきていて、それはすごく嬉しいですね。

 「ちょっとでも役に立てているのかな」って自信になります。僕は皆さんのことをオンラインフレンドだと思っていますから。

──オンラインフレンド……いい響きですね。いかに仲間を大切に思っているのかが伝わってきます。

ケイン氏:
 皆さんとコミュニケーションを取るのが本当に楽しいんですよ。何度も言いますが、配信して皆と時間を共有しているときがすごく楽しくて……僕の配信は3時間とか長めなんんですが、みんなちゃんとそれを観てくれるので、本当に感謝しかないです。

 これからもずっと……それこそ80歳になっても、皆と楽しく『LoL』をはじめゲームを楽しんで、どんどん上手くなっていきたいですね。

──80歳ですか! そのために必要なのは……。

ケイン氏:
 PERFECT BODY!ですね(笑)。

──本日はありがとうございました。(了)


 アジア競技大会や国民体育大会など、各種スポーツ大会でのエキシビジョン採用によって、いよいよeスポーツが、我々ゲーマーだけではなく、より広い世間にも知られるようになりつつある。
 だがそれにともない、「果たしてビデオゲームはスポーツなのか?」という議論はこれまで以上に尽くされていくことだろう。

 そういう時流にあって、ケイン氏のようにスポーツ分野において著名な人物の「(ビデオ)ゲーム──eスポーツは絶対にスポーツです」という発言は、非常に意味のあるもののように思える。
 氏の過去の活躍はもちろん、ゲームに接してもスポーツマンシップを重んじ、それを実践して見せるその姿は、間違いなくビデオゲームやプレイヤーの地位を向上させる足がかりになることだろう。

 それはじつは高橋名人が、その明るいキャラクターでビデオゲーム全体の広報的役割を担い、ビデオゲームの普及に一役買った1980年代の功績にも似て見える。遊びがより幅を拡げ、スポーツにもなりつつあるいま、今後その役割を担っていくのはケイン氏なのかもしれない。

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インタビュアー・著者
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai

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