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カプコンの新作SFアクションADV『プラグマタ』開発者インタビュー。Steam体験版は体験版なのに“2周目”があるらしい

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12月12日に行われた「The Game Awards 2025」において、『プラグマタ』の発売日が2026年4月24日となることが発表された。

同作は、2020年に発表され開発が進められてきた、カプコンの新規IPタイトル。事故にあった月面調査員の男性「ヒュー」と、それを助けたプラグマタ(アンドロイド)の少女「ディアナ」の物語を描くSFアクションアドベンチャーとなっている。

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今回は、メディア合同による『プラグマタ』制作チームへのインタビューが実施。ディレクターの趙 容煕(チョウ ヨンヒ)氏・プロデューサーの大山 直人氏にお話をうかがうことができた。

発売日の発表と共に、PC(Steam)では体験版の配信・各プラットフォームでの製品版の予約も開始された本作。

2人のキャラクターを同時に操作して、ハッキングパズルとシューティングを並行して行う独特なアクション要素や、気になる体験版の内容など、みどころやこだわりについて聞くことができたので、ご一読いただけると幸いだ。

取材・文/なからい
編集/実存


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左からディレクターの趙 容煕(チョウ ヨンヒ)氏、プロデューサーの大山 直人氏

──本作『プラグマタ』で初の体験版が発表されたばかりですが、体験版ではどの程度までプレイできるのでしょうか?また、どういった点に注目して遊んでほしいとお考えですか。

大山氏:
まず、今回公開させていただいた体験版は、本編とは切り離されたものとなっています。
いわゆる「本編の一部を遊んでいただく」という形ではなく、本編のステージなどは使いつつも、違った進め方をするものになっているんです。

また、今までイベントなどで出展していた試遊版からも、進め方や敵の配置などが変更されています。

くわえて、今回は体験版ではあるものの、2周目以降のプレイにも楽しさや驚きがあるようなものになっています。ぜひ繰り返し遊んでいただきたいですし、本作の最もユニークな点である「ハッキングとシューティング」のゲームプレイを楽しんでいただくことを目的としています。

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──ゲームプレイも注目ですが、ディアナの可愛さに惹かれてプレイする方も多そうだと感じます。

大山氏:
ありがたい質問ですね(笑)。「ディアナのかわいさ」という意味においても、みなさんにご満足いただけるような遊びの要素も入れていますので、まずは体験版を満喫していただきたいと思っています。

──TGAでは、Nintendo Switch 2 版の発売も発表されました。Switch 2 版の『プラグマタ』は、マウス操作やタッチ操作には対応しているのでしょうか?また、本作のamiiboが発売されるとのことですが、そちらとの連動特典はどのようなものになりますか?

大山氏:
Switch2版のマウス操作やタッチ操作には対応していません。amiiboとの連動に関しては、ステージの中で読み込むことによって、武器や回復アイテム、また、ハッキング中にユニークな効果を発揮する「ハッキングノード」をドロップするというものになっています。

amiiboは、ステージから一度シェルターに帰還して、ふたたび出撃すると再度読み込めるようになっています。ステージの中でアイテムを入手できて、すこし進めやすくなるといった「おまけ要素」といった形になります。

──今回ディアナのamiiboが発表されましたが、非常に可愛いポーズですよね……!これはどういったポーズなのでしょうか。

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大山氏:
そうですね……(笑)。

趙氏:
これは自分で決めたポーズなんですけども、イメージとしては「ルンルンしてる感じ」ですかね(笑)。

花畑があるようなところで、ルンルンしている感じのディアナを表現したかったんです。そして、それを見ているヒューのイメージをしました。

大山氏:
今回発表したPVでホログラムの海が出るシーンを公開したのですが、波打ち際で遊んでいるようなディアナだったり、時には花畑のようなところかもしれませんが、そういったところでディアナがバランスを取ながら戯れているようなイメージですね。

趙氏:
amiiboの実物を見たんですが、写真で見るよりディテールがすごく、自分でもちょっと驚きました。

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──以前、カプコンの『バイオハザード レクイエム』のSwitch 2版を体験した際、そのクオリティの高さに驚いたのですが、『プラグマタ』のSwitch 2版の手触りやクオリティについては、どのようなイメージを持てばよいのでしょうか。

大山氏:
現時点で開発中のロムにおいても、『バイオハザード レクイエム』と比べても遜色がないレベルにまでは仕上がっているかなという手ごたえは感じています。

趙氏:
開発チームの中でも、初めてSwitch 2版を動かした時に「このクオリティで動くんだ!」という驚きはありましたね。

大山氏:
REエンジン【※】とSwitch 2との親和性が非常に高く、思っていたよりも順調に開発が進んでいます。

余裕を持って間に合いそうだということで、今回のタイミングでSwitch 2への対応を公開させていただきました。発売日もそれに合わせているという状態なので、Switch 2対応で遅れていたり、それに合わせて他のハードに影響が出ているということもないですね。

かなりスムーズに開発が進んでいると言って大丈夫だと思います。

※REエンジン……カプコンで開発されたゲームエンジン。『プラグマタ』でも使用されている。

──Switch 2版の解像度・フレームレートなどに関して、現時点でお話いただける点はありますでしょうか?

大山氏:
フレームレート等に関しては、現在絶賛開発中となります。体験版発表のPVでもお伝えしましたが、後日にコンソール版の体験版配信も予定していますので、続報をお待ちいただければと思います。

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──2026年の4月に発売ということで、発売まで5ヶ月ほどに迫ったタイミングで体験版が配信されました。限られた時間のなかですが、ユーザーからはどのようなフィードバックを期待していて、どのような部分を優先的に調整していく方針なのでしょうか?

大山氏:
まずお話したいのは、PC(Steam)版の体験版だけを先行して配信させていただいていることについてです。

PC環境では、CPU・GPUといったスペック面だけではなく、モニターとの組み合わせや、同時に起動しているアプリケーションなど、ユーザーさんごとに環境が千差万別です。そのため、個別の調整の難度が非常に高いんです。

そうした面もあり、Steam版だけを先行してプレイしていただくことによって、より完全な形で製品版をリリースできるようにしたいという意図があります。

われわれ開発チームとしても、ユーザーのみなさんのフィードバックには大いに関心を寄せて、コメント等を随時チェックしているような状況になります。

趙氏:
この取材の少し前にも、フィードバックを確認していました(笑)。

大山氏:
くわえて今回、「マウス・キーボード操作への対応」という点でも、初めてみなさまに触っていただくことになります。そういったPCならではの手触りも確認していただけたらと思います。

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──体験版でのパフォーマンスという点に言及がありましたが、同時に今回は『プラグマタ』という作品を初めて遊んで「どういうゲームなんだろう」という点に触れてもらう機会でもあると思います。制作陣としての「一番のウリ」であったり、どういったユーザーに向けた作品となっているかといった点をお聞かせください。

大山氏:
まず本作はゲーム性に新しさがあるので、「新しいもの好き」の方にいち早く触っていただきたいと思っています。

とくに、ハッキングとアクションの組み合わせと言ったところは、実際に触ってみないとなかなかイメージがつきづらいと思います。「興味は持っていたんだけど、触ってみないとわからない」という、様子を見ていた方にもぜひインストールして遊んでほしいと思います。

趙氏:
それ以外にも、SFの世界観が好きな人であったり、バディものが好きで、ふたりの掛け合いが見てみたいような人たちに好かれるような内容になっています。

「ディアナがかわいい!」というのが動機でも良いと思いますね。

大山氏:
今回の体験版のタイトル画面も、ディアナがなにかを描いている背中の姿から始まりますしね。キャラクターに興味があるという方にも十分楽しんでいただけるものになっているかと思います。

趙氏:
実は、僕自身はどちらかというと、少女のキャラクターより男性キャラの方に興味があるんです。ディアナは自分が作ったキャラではありますが、周囲の人が「めっちゃ好き!」と言ってくれることが多く、おどろきましたね。

大山氏:
チームとしてはもちろん、ディアナの方が好きというメンバーも多いんです。双方のキャラに愛が注がれた結果、今の形になったということですね。

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──戦闘システムでは、ハッキングシーンのパズル要素がたいへんおもしろそうだと感じました。パズルに関しては、プレイの歯ごたえなども期待できるものになっているのでしょうか?

趙氏:
本作の「シューティングをしながら、同時にパズルをする」という形式は、初めて遊ぶ人には難しい印象を持たれると思います。

達成感を得られることも重要なので、今回の体験版ではパズルの難度をかなり下げたものになっています。ただ、ステージ後半になっていくにつれ、そのぶん難度も上がっていく形になっているので、そうした変化を楽しみにしていただければと思います。

大山氏:
そうしたユーザー目線の手ごたえや難易度という意味では、体験版なので抑えめにしています。ただ、パズル部分の出来栄えに関しては、開発チームとして一番時間をかけていると言っても過言ではないので、十分に満足していただけるようなものになっていると思います。

趙氏:
そうですね。パズルってやっぱり好き嫌いすごい分かれるジャンルだと思っていて。難度が上がったとしても、それが楽しさにならず、だるさだったり「やらされている感じ」に繋がってしまうことがあると思います。

本作ではそういった感覚にならないように、何度も繰り返し調整して、ちょうど良いバランスが取れたと思いますね。

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──以前に発表されたアナウンストレーラーや、今回発表された部分でも気になっていたのですが、本作の舞台や世界観についても、どういったものなのかご説明いただけますでしょうか。

趙氏:
『プラグマタ』は月面を舞台とした作品ですが、月というのは「色のない世界」ですよね。最初から最後まで色のない世界でプレイするというのは、ビジュアル的にもすぐ飽きてしまうと思いました。

そこで最初に考えたのは、「ルナフィラメント」という物質を使った3Dプリンターの設定です。それを用いて、月面に地球と似たような場所を作ろうというアイデアが出てきました。

そこから猫のキャラクターであったり、ニューヨークのような見た目の場所だったりと、いろいろな地球の要素を足して、カラフルな世界で「ここで楽しく遊びたい」と感じるような空間を作り出したということですね。

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──本作は、何度かの発売延期を経て今回の発売日発表に至っています。当時、延期という決断に至った背景にどういった苦悩があったのかをお聞かせいただけますでしょうか。

大山氏:
延期の一番の理由としては、ゲームをみなさんにお届けするのに十分なクオリティに達していなかったというのが背景になっています。

新しい作品なので、中途半端な状態で出しても受け入れられないだろうというところがありまして、「それだったら時間をかけて、おもしろいものを作ってお届けしよう」ということで延期させていただきました。

発表初期の2020年に公開されたトレーラーでわかるように、当時の時点でディアナとヒューという主人公2人を同時に操作して、ハッキングとアクションで戦っていくというコンセプト自体は決まっていました。

「それをどうゲームシステムとして落とし込むか」といったところに試行錯誤を繰り返した結果、今のパズルとシューティングを組み合わせたスタイルになったという背景があります。

そして、そのシステムの実現や、くわえてそこからのバランス調整というところに、延期の理由のほとんどが占められていたという状態です。

趙氏:
ディレクターの立場から言いますと、今は開発チームとしても、会社全体としても、「ユーザーに新しいゲーム・体験を届けよう」という気持ちがとても強いんです。

単純なアクションゲームであったり、どこかで見た要素があるゲームとなると、新規IPとしての意味があまりなくなってしまうので、そこを何度も悩んで、社内のみんなが納得できるようなゲームにするまでに時間がかかったという感じですね。

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──公開された体験版をプレイしたのですが、かなり快適に動作している印象がありました。各ハードでの最適化を行っていく過程において、こだわった部分や難しかった部分はありますでしょうか。

大山氏:
逆に言うと、こだわりを捨ててでも快適度を優先しようというのはあったかなと思います。

ゲームのグラフィック面にこだわっていくと、それだけ画質は綺麗になるのですが、処理がどんどん重くなってしまいます。

チームのメンバーとしては「より良いものを見せたい」という気持ち自体は強いのですが、その気持ちを一旦おしこめて、まずは幅広いPC環境で遊んでもらえるような最適化を十分にしていきました。

なので、クオリティのラインとしては一旦下げて、フレームレートを十分に担保できる状態にしてから、そこからグラフィックを上げるような作り方にシフトしていったのが本作になります。

趙氏:
そうですね。最適化というのはどうしても一番後半の過程になってしまうんですが、そのときに「これをやるとフレームレートが下がってしまう」だとか、「これをやるなら、これを諦めるしかない」という判断をする期間でした。

ディレクターとしては捨てにくいところもたくさんあって辛かったのですが、やはり一番大事なのはフレームレート・最適化の部分なので、そこを最優先として、現状はとても安定しているという感じです。

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──体験版をプレイすることで、製品版に引き継ぎできる特典のようなものはあるのでしょうか?ないのだとしたら、体験版2周目で手に入る「あるアイテム」も本編で手に入るのでしょうか。

大山氏:
体験版をプレイしたことによる特典であったり、セーブデータの引き継ぎなどの仕様は用意していません。

理由としては、今回Steamのみで体験版を先行配信させていただいているので、特典の条件にしてしまうとコンソール版のみなさんとフェアではなくなってしまうと考えたからです。

2周目で手に入るアイテムに関しては、現状はチームとしての遊びとして体験版用に作ったものになります。もし気に入った方がいらっしゃったら、ぜひSNS等で積極的にコメントしていただけると嬉しいですね(笑)。


「パズルとシューティングを同時に行う」という新たな体験を提供するために、ゲーム部分の調整はもちろん、パフォーマンス面においても余念のないチューニングが施された『プラグマタ』。

短時間ではあったが、丁寧に時間をかけた開発陣の自信がうかがえるインタビューだったと感じた。特に驚いたのは、体験版にもかかわらず“2周目”の存在が明らかにされたこと。お試しプレイの範囲であっても、プレイヤーに楽しんでもらいたいという気概が感じられた。

ぜひご自身でダウンロードし、記事内で言及された2周目専用アイテム探しや、月面でのバディ物語の一旦を体験してみてはいかがだろうか。

『プラグマタ』は、2026年4月24日発売予定。予約購入が開始しており、対応プラットフォームはPC(Steam)、PS5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch 2。現在はSteam版のみ体験版がプレイ可能で、コンソール版でも後日、体験版が配信予定だ。

©CAPCOM

ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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