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何も知らず「萌えゲー」を愛でる少女たち、ガラケーの“クソゲー”を2468が擦り切れるほど遊ぶ工員…東南アジアのゲーマー像を識者に訊く

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何も知らず「萌えゲー」を愛でる少女たち、ガラケーの“クソゲー”を2468が擦り切れるほど遊ぶ工員…東南アジアのゲーマー像を識者に訊く_001

 「東南アジア」──それは日本人にとって“近くて遠い存在”だろう。

 数十年先まで人口が増え、中間層が拡大していくことが自明のこの地域。その市場の重要性は日を追うごとに認識されているが、たとえば韓国や中国に比してその「生活実態」はあまり知られていないように思う。

 今回、この世界のゲーマー事情を追う連載「世界は今日もゲーマーだらけ」第三回で取り上げたいのは、まさしくそうした「東南アジア」の実態だ。

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大和田氏:
 あと『Pokémon GO』も、日本ではひとりで回ってモンスターを集めている人が多いですけど、インドネシアでは基本的にみんなでワイワイ言いながらやってますしね。

佐藤氏:
 『Pokémon GO』はアメリカでリリースされた後の1〜2週間くらいの統計でも、インドネシアはトップクラスに遊ばれていましたね。まだ正式なリリースがされていないうちから、なぜかAndroidを持っている人の10パーセント近くが遊んでいました(笑)。どうもインドネシアの現地メディアなどがアメリカのメディアの記事を転載したり、SNSで拡散したりして、それで話題になって一気にダウンロードされたみたいですが。

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──それだけコミュニケーションが文化に根付いていると、コンテンツが話題になったときの広がりかたも凄そうですね。

大和田氏:
 そうした前提を理解せずにゲームやアニメなどの優れたコンテンツを作って供給しても、彼らのマーケットには決して受け入れられないんです。実際にそういうミスマッチはよく見かけます。

 むしろ彼らを見ていると、日本におけるコンテンツって「作品である」という前提が強すぎるように感じますよ。もっとコンテンツを核とした新しいコミュニケーションや楽しみかたにフォーカスしてもいいんじゃないかな、と。

ゲームの持つノンバーバルな普遍性

──とすると、そうした文化の中でのコンテンツとしての“ゲームの強み”っていったい何なんでしょう?

大和田氏:
 それは、バザールを立ち上げるときに突き詰めて考えたことでもあります。というのも、僕らが攻めようとしていた新興国って、宗教も言葉も文化もまるで違う国々の集まりなんですよ。そのときに、「それでも通用する“普遍性”を持っているコンテンツとは何か」を調べていくと──やはりゲームしかないんです。映画などだと言語的な制約がある中で、大半のゲームって、基本的にルールさえ覚えてしまえば言語の制約なしに遊べてしまうわけです。

 昔、テキ屋として北アフリカに行ったことがあるんですよ。そこで、まったく言葉の通じないアフリカ系のお兄ちゃんとスペイン人と一緒に『ウイニングイレブン』で遊んだことがあって。

──はい。……って、テキ屋!?

佐藤氏:
 そのへんは、このあと追い追い聞きましょう(笑)。

大和田氏:
 まあともかく(笑)、そこでは「言葉は通じないけどサッカーのルールは解る」から、ゲームだけでコミュニケーションを取って盛り上がれるんですよね。

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佐藤氏:
 言葉が通じなくても、ゲームって会話ができますよね(笑)。そもそもゲーム自体が一種のコミュニケーションですし、そこはやっぱりほかのコンテンツに比べたときの“強み”となる点だと思いますよ。

大和田氏:
 新興国に限った話で付け加えるなら、娯楽の数が少ないので盛り上がりの“沸点”が非常に低いんですね。だから、日本でクソゲーと言われるようなものでも、ゲームというだけでみんな凄まじく盛り上がれるんですよ。

ゲーム以外のエンタメはない!?

──大和田さんについての謎は深まるばかりですが、ともかくここまでの話で、「コミュニケーションがいちばんの娯楽で、かつゲームも遊ばれている」というのはわかりました。それ以外の娯楽ってどうなんでしょうか? 日本でいうところの雑誌とかテレビとか……。

大和田氏:
 いや……ないですよ! たとえば、コンビニなどに雑誌は置いていませんし、あっても高くて買えないんです。インドネシアの感覚での“ワンコイン”では買えないような雑誌しかなくて、エンタメとしては成立していないんです。

 テレビも、基本的にエンタメとしては面白くないし、チャンネルの支配権は親が握っていることが多い。だから子どもたちは、家にいても面白くないから遅くまでコンビニの前やマックにたむろして、ワーワーお喋りするわけです。そしてもしお金があったら、たまに映画館に行くかなという感じですよ。

佐藤氏:
 新興国に限らず、新興国でも確かに昔はテレビ文化があったといえばあったんですよ。昔の日本のように、持っていない人も含めて「テレビがあるところに集まって観る」みたいなこともありました。でも、いまはもうテレビ離れが進んで、完全にお喋り+αをするSNSに取って代わられていますね。

命よりも大事(?)なSNS事情

──なるほど。だとすれば、SNS事情を徹底的に訊く必要がありますね。

大和田氏:
 SNSへの執着は……もう“異常”ですね。たとえばバイクタクシーに乗っているときって、普通は危ないから落ちないようにつかまるものですが、若い子など両手スマホでチャットしていたりするんですよ。もう自分の命よりもチャットのほうが大事なのか、と(笑)。

佐藤氏:
 基本的にバイクタクシーって事故率が高いので、確実にスマホ由来の事故は起きていますね。

──ちなみに、そこでのトークアプリって何が使われているのでしょう?

佐藤氏:
 東南アジア各国で違って面白いですよ。ベトナムだとZaloタイLINEが頑張ってるんですが、最近はWeChatが攻めてきています。インドネシアではLINEと、あとはBlackBerry MessengerのAndroid版が頑張ってます。LINEなどが広告をバーッて打つんですけど、昔作ったグループなどがあるから、長く使っているユーザーほどすぐにBlackBerry Messengerへ戻るみたいです。

大和田氏:
 最近になってスマホを持ち始めた若い子など、10代後半から20代の主流はFacebookのメッセンジャーとLINEを使っていますね。インドネシアのキャリアとFacebookが組んで、「Facebookを見るのは通信料無料」というようなこともやっていて、「そりゃ無料のほうに流れるよな」という状況です。

──ちなみに、Twitterはどうなんでしょう? 昔、堀江貴文さんがインドネシアに行ったら「Twitterですごい話しかけられた」という話などがありましたが。

佐藤氏:
 東南アジアだとTwitterはかなり強いですね。東南アジアに限らず、中東だろうと中南米だろうと、東ヨーロッパのいくつかの国を除けば、新興国ではどこでもTwitterが良く使われていると思います。なんだかんだ言って、コンタクトを取るときに「じゃあTwitterで」となるところがやたら多いです。

大和田氏:
 あとSNSと言えば、インドネシアでは子どものFacebookに親が友達申請してきて、拒否すると「なんでAcceptしないの!」と怒られるという話をよく聞きます(笑)。

佐藤氏:
 そのへん、親に監督責任がある社会だからかもしれませんね。少なくとも、ほかの地域ではあまり聞かない話です。

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大和田氏:
 だから、本当に言いたいことがだんだん言えなくなっちゃうみたいで、SNSを乗り換えていくスピードが速いんですよ。

 インドネシアでは、最初はFacebookが流行り、そのつぎにPathというクローズドSNSがものすごい伸びたんです。ところがPathの友達の上限が150人から無制限になった途端、また親からの申請が来ることになって(笑)。そこからInstagramに移って、それからSnapchatに行って、使いづらいからまたInstagramに戻ってくる……という感じですかね。

 だからSNSのトレンドなどは世界の先端に近いと思いますよ。日本だとあまりSnapchatは使われませんでしたが、インドネシアではある時期、みんなが使っていたので。

──なるほど。それにしても親が使っているというのも凄いですね……。新興国の娯楽を理解するうえで、いかにコミュニケーションが重んじられているかというのもよく解りました。

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