「ゲーム音楽を、音楽史に残る文化に」をテーマに設立された、日本初のゲーム音楽プロ交響楽団「JAGMO」。日本が世界に誇るゲームのメインテーマやBGMをオーケストラに編曲し、パリで開かれた「ジャパンエキスポ」で演奏するなど、国内外で幅広く活動している。
そんな彼らが次の公演のテーマに選んだのは「剣士」だ。3月24~26日の公演「剣士達の交響乱舞」では、『ファイアーエムブレム』『ファイナルファンタジー』『大神』といったおなじみのタイトルのほか、3月3日に発売されたばかりの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』からも多くの曲を演奏する。
電ファミでは、JAGMOプロデューサーの山本和哉氏、音楽監督・編曲の深澤恵梨香氏にインタビューを実施した。JAGMOのメンバーはほとんどが20~30代の若手で、皆大のゲーム好き。「音楽家とゲーマーって似てるんですよ」と語るお2人に、公演への意気込みを話していただいた。
取材・文・写真/透明ランナー
ゲーム音楽で満腹になるオーケストラ
――本日はよろしくお願いします。まずJAGMOさんがどんな活動をしているか教えていただけますか?
山本和哉氏(以下、山本氏):
JAGMOは今年で設立3年目を迎えます。設立当初は室内楽アンサンブルなどの小さい編成でやっていましたが、2015年以降は主にオーケストラ編成を主軸に公演を重ねています。
JAGMOの公演の特徴として、ゲームメーカーの垣根を越えた様々なタイトルを、一度のコンサートだけで満腹になるくらい聴けるということを一つの売りにしています。なにかひとつまとまりのあるテーマを元に公演を組み上げれば、一味違ったコンサートになるんじゃないか、と思っています。
――全部で何曲くらい演奏するのでしょうか。
山本氏:
今回の公演では最新作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の楽曲を始め、『ファイアーエムブレム』や『大神』など、70曲ほど取り上げます。JAGMOで演奏する際のこだわりのひとつとして、音楽を聴いているだけでゲームのストーリーや印象的なシーンを喚起できるような公演づくりを目指しています。一つの作品を取り上げる際にもメドレー形式にすることで、プレイしたその体験を思い出せるような仕組みを作ったり。
ゼルダ新作を予習のため、swichを入手?!
— JAGMO[+♪●]広報部 (@jagjagmo) 2017年3月3日
JAGMOなら『#ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』が、いち早くオーケストラでお楽しみいただけます!
▼チケット詳細▼https://t.co/k2j0u8e7L2
– – –#ゼルダの伝説 #nintendoswitch pic.twitter.com/hd7Z21lD6X
――曲の構成も考え抜かれているんですね。
山本氏:
運営や奏者を含めみんなゲームが大好きなので、ゲームファンのひとりとして純粋に聴きに行きたいと思える内容であるか、という部分は常に意識しています。
メンバーのほとんどがゲーマー!
――ということは、奏者も若い方が多いんですか?
山本氏:
1回の公演に関わる奏者は全部で70人くらいですが、制作チームも含めほとんどが20~30代です。この世代って一般家庭にゲームが普及し出して、日本のゲーム文化の成長と共に育った世代だと思うんですよ。そんな我々がゲーム音楽を演奏するということにこだわりを持っています。
また、文化的な意義として次世代の優秀な音楽家に活躍の場を提供したいという思いもあります。ゲーム音楽の力でクラシック業界をもっと盛り上げていけたらいいなと。
――皆さんゲームがお好きなんですね。
山本氏:
公演直前まで控室でプレイしてたりしますね(笑)。
本日は『大神』をプレイ✨
— JAGMO[+♪●]広報部 (@jagjagmo) 2017年2月18日
公演では、大神独特の和の世界観を表現するために、今回も和楽器を加えた特別なオーケストラ編成でお届けします!?
大神といえば随所で色んなミニゲームに挑戦することができますが…
みなさんどのミニゲームが好きですか?
私は断然釣り派です!? pic.twitter.com/BLVRMvL7gT
――意外です! 奏者の方ってそんなにゲーマー率高いんですか?
山本氏:
JAGMOはゲーム音楽のオーケストラなので、ゲーマー率は高いですね。そういう人の方が演奏するときにも思い入れが強くなって、それが演奏に表れるな、と聞いていて感じます。もちろんプロなので、たとえ知らない楽曲だとしてもしっかり演奏してくれていますが。
音楽業界全体でいうと、個人的な感覚ではゲーム好きの音楽家は多いと感じています。僕はゲーム音楽に携わりたくて音大に入ったんですが、練習へのアプロ―チってゲームのレベル上げを黙々とするのと似てますよね。自分との戦い、みたいな(笑)。
大人になっても思い出せるあのゲーム音楽
――ちなみに、お二人は最近どんなゲームをプレイされていますか?
山本氏:
最近はPS Vitaと3DSの二刀流で遊んでますね。特に今は公演前なので、公演で取り扱うゲームをプレイし直しています。最後までプレイしないとプログラムノートを書けなくて……。「ファイアーエムブレム」は『覚醒』も、『if』は暗夜も白夜もクリアしました。先日リリースされた『ヒーローズ』ももちろんやってます。今は『アークザラッド』に苦戦中です(笑)。
――公演前はお忙しいですね……。普段はどんなゲームをされるんですか?
山本氏:
人生で一番プレイしているゲームは『スーパーマリオ64』です。何百周もしました。もうとにかく音楽が大好きで。「マリオ」シリーズの音楽ならすべて弾けると思います。小学生のときからよくピアノで弾いていました。
「ボムへいのせんじょう」や「バッタンキングのとりで」で流れる『スーパーマリオ64』のテーマ曲が、『スーパーマリオギャラクシー2』の「懐かしの砦」というコースでビッグバンド【※】アレンジされて出てきた時は感極まって泣いてしまいましたね。昔からのファンを楽しませてくれるような、そういう遊び心があるところが好きです。
※ビッグバンド
管楽器を主体にした15名以上のジャズのオーケストラ、またはこうしたバンドが演奏するジャズ音楽を指す言葉。サックス、トランペット、トロンボーンをメインに、リズム・セクション(ドラム、ベース、ギター、ピアノ)という構成が一般的。
――大人になってキャラクターの名前やストーリーは忘れてしまっても、最後まで残っているのが音楽なんですよね。ハイラル平原のBGMが流れればハイラル平原の様子が蘇ってきますし……。
山本氏:
そうですよね。ゲーム中での音楽の役割はとても重要なんだなと改めて思います。ゲーム音楽にオーケストラが使われることも今となっては一般的ですし、最近はスマホゲームでも印象に残る音楽が数多く使われています。逆に、昔のゲームをプレイすると、これだけ少ない音数でよくこんな音楽が作れたなと感動します。
――「ゼルダ」のメインテーマも少ない音数で作っていますものね。
山本氏:
ちょっとずつアレンジされて毎回出てきますよね。変わるところと変わらないところ、歴史の重みを感じます。
――深澤さんはどんなゲームがお好きですか?
深澤恵梨香氏(以下、深澤氏):
私は「ファイナルファンタジー」(以下、FF)の音楽が強く記憶に残っています。中でも『X』かな。JAGMOでも『ザナルカンドにて』はもちろん、『雷平原』 や『Otherworld』など、なかなか他ではやらない曲を演奏させて頂きました。「この曲をオーケストラで演奏するとは!」と驚きの声を頂きましたね。『XⅢ』も大好きです。JAGMOの次回公演でも『閃光』を演奏しますが、本当にかっこいい楽曲です!
――『閃光』はかっこいいですよね! そのような思い出が編曲に生かされているわけですね。
「ゼルダ」新作の音楽は……?
――今回の公演の一つの目玉が、3月3日に発売されたばかりの新作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』です。今までの「ゼルダ」の楽曲との違いはどのように感じましたか?
山本氏:
楽曲に使用されている楽器が非常に印象的でした。ピアノを中心とした楽曲にアコーディオンや木琴などの音色が重なり、いつもの「ゼルダ」シリーズとは少し違った、広大な自然の美しさを感じるような繊細で綺麗なサウンドだなと思いました。
深澤氏:
『ブレス オブ ザ ワイルド』は成長したリンク、というようなイメージを持ちました。とても美しい音楽にあふれています。今回の公演では『時のオカリナ』の曲も演奏するので、聴き比べていただくのもいいかもしれませんね。
――発売から公演まであまり間がないですが、どのように準備していったのでしょうか。
山本氏:
とても興味のあるタイトルだったので、トレーラーなどで前々からよく耳にはしていました。任天堂さんともご相談して、構想を練り始めたのは2月です。発売前タイトルだったので楽曲へのアプローチがいつもとは違いましたね。
「お客様の思い出を呼び起こす」のではなく、「新たな作品への出会いにウキウキしてもらえる」ようイメージをしていました。公演は発売から3週間後なので、是非事前にプレイして予習してきてもらえると良いのではないでしょうか(笑)。
深澤氏:
今までのコンサートでは「懐かしい」と感じてもらえる楽曲を多く扱ってきましたが、今回は新作を演奏させていただけるということで、とても光栄な機会をいただいた事に感謝しています。新作なので、まだ楽曲に馴染みのない方にも、聴いていて客席で思いを共有できるような、楽しくなるようなJAGMOならではの仕掛けをたくさん入れていきたいと思います。
――編曲にあたって心がけたことはありますか?
深澤氏:
今までのタイトルなら、ゲーム内のストーリーや、どういうメドレーにするかなど、山本さんと話し合う事が多いのですが、今回は新たなタイトルへの挑戦ということで、「きっとこういうゲームなんじゃないか」というイメージや、音楽的なアプローチを大切にしています。新作の作曲家さんが過去に手掛けた作品を聴いたりもしました。
アンケート回収率6割
――今回の公演では、「ゼルダ」以外にもいろんなタイトルを演奏されますよね。2016年12月の公演では『大神』のテーマに和太鼓や尺八を取り入れていましたが……。
山本氏:
3月の公演でも和楽器は使いますよ! 12月の公演で初めて日本の伝統的な音楽とゲーム音楽を融合させた演奏を行ったのですが、ご好評をいただいたので、今回はさらに編成をパワーアップさせてお送りします。
深澤氏:
前回の公演後、「JAGMOさんバージョンのあの『大神』をもう一度聴きたい!」という声を頂きました。会場で生音の良さを体験してもらえたことと、「JAGMOならではの音楽」が確立してきたことへの喜びを感じました。
あぁ…。JAGMOさんのクリスマス公演Ver.の大神もう一度聞きたい…(´・ω・`)
— ぐうたら嫁@Goo (@katsunoyome) 2017年1月10日
延々サントラ聞いても物足りない(T-T)
テイクアウトライブカードの対象外なのがホンっっっっっトに残念(T△T)
ゲームは年末年始にクリアした!
ムズいとこもあってけど面白かった~(*´∀`)
山本氏:
そういう声を聞くと、すごくやりがいを感じますね。
――お客さんの反応もしっかりチェックされているんですね。来場者向けのアンケートも実施していると伺いましたが、どのような内容なのでしょうか?
山本氏:
アンケート項目には「演奏してほしいほしいタイトル・楽曲」の項目があるんですが、それら全てに目を通してランキング化しています。それを元に次回公演の組み立てを考えたりします。「ゼルダの伝説」や「モンスターハンター」、「大神」、「キングダムハーツ」などは毎回トップ10入りする人気の定番曲です。
――お客さんはどんな方が多いですか?
山本氏:
非常に幅広いです。子供の付き添いで来られた親世代の方から「ゲーム音楽は全然知らなかったけれどとても楽しめました」という感想をいただいた時は嬉しかったです。一方で私たちと同世代の若い方は、裏面までびっしり感想を書いてくれたり、ゲームキャラクターのイラストを描いてくれる方もいたりして、熱量をすごく感じます。
――それは熱量を感じますね! それだけ若い世代にはゲーム音楽が身近だということですよね。
山本氏:
ゲーム音楽を通じてクラシック音楽を知ってもらうことを意識しています。若年層のクラシック離れは最近よく耳にすることですが、「JAGMOで初めてオーケストラを聴きました」という意見を目にすると、この仕事をやっててよかったなと思います。
Twitterでも「ドレスコードはあるんですか?」といったリプライがあって、そんな時は「やっぱりオーケストラって一般的にまだ近寄りがたいイメージがあるんだな」と感じますね。
ご質問有難うございます。服装につき、JAGMOの公演にはラフな格好でご来場くださるお客様が多くいらっしゃいます。同時に、洋装・和装など、普段着る機会のない晴れ着を着られる場所でもございますので、公演前後のお食事などもふくめ、楽しめるスタイルでご来場いただければと考えております。 https://t.co/fIhXgfYvER
— JAGMO[+♪●]広報部 (@jagjagmo) 2017年2月25日
――やっぱりオーケストラって初めてでは行きづらいイメージがありますよね。
山本氏:
JAGMOの公演は、お客様が楽しめる服装でお越しいただきたいですし、少しでも不安なことがあれば、何でも聞いてもらいたいですね。僕らもなるべく答えるようにしています。そうやって、少しずつでも間口を広げたいと思っています。
プレイを思い出させるような編曲を
深澤氏:
編曲では、お客様にプレイしていた時のことを思い出してもらおうと、さまざまな工夫を凝らしています。ボタンの操作音を入れたり、鳥が鳴いている場面ではバードホイッスルを使ったり……。
『FF X』の「雷平原」を演奏したときは、”サンダーシート”という大きな金属板を叩いて雷のような音を出す特殊な楽器を使いました。「ドーン、ガシャーン」という大きな音が鳴るので、お客様の中には、驚く方、ステージ上を見て音の発信元を探す方や、つい笑い出す方もいらっしゃいました。
――YouTubeで聞いてみたんですが、確かにこれが壇上から聞こえてきたらびっくりしますね(笑)。
深澤氏:
公演中は私も客席から見ているのですが、そういう反応を引き出せて嬉しかったです。そのときも「雷平原で雷が落ちてくるトラウマが蘇った」という感想をいただいて、してやったりと思いました(笑)。
――曲を再現するだけではなく、プレイヤー目線でスト-リーをどう再構成するかという編曲を意識しているんですね。
深澤氏:
他にも、例えば「ゼルダ」なら、リンクがオカリナを吹いて成長する一連のシーンを音楽で表現したかったんですが、「ゼルダ」シリーズがすごく好きなピッコロ奏者に「リンクになりきって」と指示するだけで、見事に意図を読み取って吹いてくれるんですよ。
――さすが同世代ですね(笑)。
深澤氏:
エスプレッシーヴォ【※1】とかカンタービレ【※2】とか書かなくても「なるほど、ああいう感じね」と分かってくれるのはJAGMOならではのコミュニケーションだと思います。
※1 エスプレッシーヴォ(espressivo)
表情豊かに、感情を込めてという意味の音楽用語。イタリア語に由来する。
※2 カンタービレ(cantabile)
歌うように、という意味の音楽用語。イタリア語に由来する。
曲の中にさまざまな仕掛け
深澤氏:
2016年8月の公演「伝説の交響組曲」で『スーパーマリオカート』を演奏させて頂いた際には、チューバとトロンボーンに「エンジン音」と指示しました。
誰もがスタートシーンで「ブンブン」とエンジンを鳴らしたと思います。本番ではステージ上でレースが始まるかのような、とんでもない音がしていました。『スーパーマリオブラザーズ』を演奏したときも、コインの音や、1UPの音をこっそり曲中に入れたりしましたよ。
――そういう仕掛けがあると、演奏している人も本当にゲームが好きなんだというのが伝わってくるから、お客さんも嬉しいですよね。
深澤氏:
効果音の他にも、演奏してる曲の中であえて違うキャラクターの曲を入れることで、キャラクター同士が会話しているのかな? とお客様に独自で想像を広げてもらったり、とにかくいろんな仕掛けを入れて情景が浮かぶようにしています。
山本氏:
今回の公演もいっぱい仕掛けていますよ!
――音楽に酔いしれる以外に、仕掛けを読み解く楽しさもあるわけですね。
山本氏:
そう思っていただけたら嬉しいです。楽しみにしていてください。
卒業試験直前にたまたま呼ばれ……
――お二人の経歴についてお聞かせください。山本さんはどういうきっかけでJAGMOに参加されることになったんですか?
山本氏:
僕がメンバーに加わったときは、まだ音大生だったんですよ。卒業のかかった実技試験の直前にたまたま友人に呼ばれて、JAGMOの運営を手伝ってくれないかと言われたのが始まりです。
――卒業試験直前ですか!
山本氏:
僕は学生時代からイベントやコンサートを企画していたので、そこを見込まれたみたいで。公演って想像以上に関係者といろんな調整をしなければならない大仕事なんですよ。ありとあらゆるトラブルにもすぐ対応しないといけないし。
実は声をかけられる前にJAGMOの公演のチケットを買おうと思っていて。でも気がついたら運営側の人間になっていたという……。進学するか迷っていた時期だったのですが、気づいたらこういう感じでプロデューサーになっていました(笑)。
――それはまた不思議な縁ですね(笑)。コンサートの企画の経験を見込まれたわけですね。
山本氏:
僕は音大の打楽器科出身なんですが、打楽器はたくさんの楽器を使用するので、舞台まわりとのやりとりも多く、他の楽器に比べて舞台の裏側の仕事を学生時代から経験している人が多いんです。
――深澤さんは東京音大の映画・放送音楽コース出身ですよね。実は私も高校のとき作曲を勉強していて、進路のひとつとして考えていたんですよ。
深澤氏:
そうなんですか! 私は高校生のときに舞台音楽に携わる事があり、劇伴音楽、総合芸術に興味を持ち、進学しました。今は劇伴音楽に加え、映画やCM等の仕事にも携わっています。
JAGMOではストーリー性を大切にしているので、何・誰にスポットを当てて曲を構成するのかという事や、曲の背景の画を想像させる編曲をする、という意味では、どちらの仕事にも生かされていると思います。
――音大は課題が大変だと聞いたことがありますが……。
深澤氏:
それはもう大変でしたね。1年時の授業では構成やジャンルが指定されて1週間で4曲作ったり、ラテンもやればジャズもやるし、時間制限がある中でどうクオリティを高めていくかが大変でした。
山本氏:
でも今やってる仕事もそんな感じですよね(笑)。
深澤氏:
そうですよね。こういう現場に出てすぐ対応できるような実用的な授業の経験は、今の仕事にとても生かされていると実感しています。
――映画・放送音楽コースには小六禮次郎【※1】先生がいらっしゃいますが、小六先生はすぎやまこういち【※2】さんの弟子に当たります。
深澤氏:
すぎやま先生の話は授業でよく出てきました。私のクラスにはゲーム音楽を作りたいと希望する人は多かったですね。
※1 小六禮次郎(ころく・れいじろう)
1949年生まれ、岡山県出身の作曲家。作・編曲分野の第一線で活動し、映画、テレビ、ミュージカル、CM作品からオペラ、交響詩まで幅広いジャンルの作品を手がける。『ゴジラ』(1984年、東宝)、『功名が辻』(2006年NHK大河ドラマ)、『伝説巨神イデオン』(映画版・編曲担当)などが有名。
※2 すぎやまこういち
1931年生まれ、東京都出身の作曲家。日本作編曲家協会(JCAA)常任理事、日本音楽著作権協会(JASRAC)評議員を務める。「ドラクエ」シリーズの楽曲を第一作から手がけている。かなりゲームをやり込んでいるゲーマーとしても有名。
海外ファンに大好評だった「イントロクイズ」
――JAGMOの今までの活動についてお聞かせください。2015・16年はパリで開かれた「ジャパンエキスポ」でも公演されましたよね。
山本氏:
日本のゲームの海外人気はすごいです。海外の人はより感情をストレートに出すので、リアクションが気持ちいいですし、どういうものが求められているのかとても刺激になります。ゲームへの熱量の高さをダイレクトに感じます。
――日本と海外で人気曲の違いはありますか?
山本氏:
人気タイトルの中からお客様の投票で1曲だけ演奏しますと募ったときに、『大神』がダントツの人気だったんですよ。そうそうたるタイトルの中でもほぼ満場一致で決まったので、和風なゲームデザインやサウンドがクールだと思われたのかもしれませんね。
――たしかに和風なゲームデザインですよね。
山本氏:
イントロクイズもやったんですが、これ絶対分からないだろうという曲も誰かしら必ず知っていて感動しました。懐かしいゲームから、発売直後の最新作まであらゆるタイトルから出題したのですが……。有名タイトルだと1秒もかからずに当てられてしまいました(笑)。
――予想以上の浸透度ですね(笑)。今後も海外展開を続けていく予定ですか?
山本氏:
いろんなお話をいただいているので、2017年は積極的に海外に目を向けていきたいです。日本発祥のゲーム音楽を日本人が世界で演奏することに意義があると思っています。
NHK出演でネットの話題を独占
――2016年1月には「闘会議2016」にも出演していただきました。
深澤氏:
私たちの主催以外での公演はあれが初めてでしたね。
山本氏:
普段なかなか会場には来れない方にも初めて見ていただけて、JAGMOの存在をたくさんの方に届けることができました。闘会議後の3月に公演「伝説の狂詩曲」を開催したんですが、闘会議で見たのをきっかけに来てくれたお客様も多くいらっしゃいました。
――2016年11月にはNHK BSで公演「シンフォニック・ゲーマーズ ~僕らを駆り立てる冒険の調べ~」が放映されました。私も見ていましたが、あれは反響が大きかったのではないですか?
山本氏:
本当に大きな反響をいただきましたね。Twitterのトレンドの1位から10位まで全部関連語句で埋まって、関係者内でも「これはすごすぎる」と驚いていました(笑)。演奏内容への反応が良くて自信につながりました。今回の公演でもたくさんのお客様にお越しいただき、生演奏の良さを体験していただければと思っています。
深澤氏:
放送を見ていなくても、Twitterのトレンドが昔懐かしのゲームタイトルで埋まっているのを見て、何があったのかと慌ててテレビをつけてくれたりした人も多かったみたいです。NHKでの放映や海外進出を通じて、会場に足を運んでくださる方の層がどんどん広くなっているのは嬉しいことです。
JAGMOがテレビに!!感動です!!
— 山本 和哉@JAGMO Producer (@cholikazuya) 2016年11月6日
みんなで頑張って本当によかった。
皆さんの反応にも感動です!!ツイッターのトレンドがゲーム音楽一色!笑
ゲーム好きでよかった!奏者の皆さんブラボーです!#jagmo #シンフォニックゲーマーズ
「絶対外してやる!」
――ちなみに、今回の公演のテーマを「剣士」としたのはどうしてですか?
山本氏:
RPGってジョブがいろいろありますよね。その中には魔法使いがいたり戦士がいたりしますが、公演企画を始めた時に最初に思いついたのが「剣士」だったんです。というのも、主人公が剣士のRPGってすごく多いんですよね。たくさんの感動的なストーリーを持つゲームがありますが、それぞれのゲームの素晴らしさにフォーカスしつつ、大テーマとして網羅的に共通項をまとめていくと面白いなと思って。
コンサートホールの中でいろいろなキャラクターが闘い合っているような、そういったイメージでお客様に楽しんでもらえたら夢があるなと思いました。
――最後に公演に向けての意気込みをお願いします。
山本氏:
今回もたくさんのタイトルを取り上げます。名作ゲームの人気剣士たちの魅力を”JAGMOサウンド”でお届けできればと思っています。
前回の公演で好評だった『大神』の再演の他にも、和楽器とのコラボ楽曲をたくさん予定しています。「和楽器が入るならこの曲かな」と予想しながらお越しいただければと思います。
深澤氏:
その予想、絶対外してやる! って思って編曲してます(笑)。
――そう言われると当てに行きたくなりますね(笑)。
深澤氏:
この音は何の楽器を使っているんだろうという意外性のある音がたくさん出てきたり、指揮者や奏者の演奏の熱量もあり、目で見ても楽しい公演になっていると思います。何より大好きな素晴らしいゲームタイトルの数々の楽曲を「生音」で体感しに、遊びにいらしてください。
山本氏:
特殊楽器や擬音楽器って借りられるところがないから見つけるのが本当に大変なんですよね……(笑)。奏者も全力で演奏しているので、よろしくお願いします。
――まさに総合エンターテイメントですね。公演楽しみにしています!