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え? これがプラモデル!? まるで生物のような肌の質感を生み出した“バンダイ脅威のメカニズム”

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 このお腹を見てほしい。

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執着のある腹筋
(画像はFigure-riseLABO ブランドPVより)

 突然すまない、あまりにも美しくて思わず取り乱してしまった。

 これはバンダイの新ブランド「Figure-riseLABO」の製品、いや作品だ。フィギュアを塗装したものではない。驚くことなかれ、これはプラモデル。

 ガンプラのようにパーツごとに色分けされていて、それを組み立てることで完成する。……にしても、この肌の質感表現はどのようなテクノロジーが隠れているのだろうか。

 Figure-riseLABOは、バンダイの成形技術を発展させた、フィギュア・プラモデルの新しい表現を追求するプロジェクトで、胸像であるFigure-riseBustの系譜。今回発表されたFigure-riseLABO第一弾キャラクターは、ホシノフミナ。アニメ『ガンダムビルドファイターズトライ』のヒロインだ。

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Figure-rise LABOの前身となるFigure-riseBustシリーズのホシノ・フミナ。肌の質感の違いに注目してほしい。
(画像はFigure-riseBust ホシノ・フミナ エンディングVer.|バンダイ ホビーサイトより)

 この“肌表現”への執着。とてもガンプラと同じようなプラスチックには見えない。

 もちろんプラスチックであっても、塗装次第で無限の表情を見せることはできる。しかしFigure-riseLABOは無塗装だ。無塗装でありながらこの質感。つまり箱から取り出してパーツをランナーから切り離し、ゲートを処理し、組み立てればいいだけなのである。

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(画像はFigure-rise LABO | バンダイ ホビーサイトより)

 まさに“バンダイ脅威のメカニズム”。目を疑うような質感を実現しているわけだが、本物の人の肌の構造を考えるとどうだろう。
 人の肌は完全な不透明ではなく、表皮、真皮、皮下組織と3層になっている。半透明の表皮を通して、下層の色が見えるという構造だ。

 このホシノフミナの肌も、オレンジやピンクのパーツの上に透けのある肌色パーツを重ねることで、光を当てたときの、肌独特の透明感を再現している。

 つまりバンダイの新技術は、人の肌の構造を観察した結果生まれたものだったのだ。

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オレンジのパーツとピンクのパーツ、その上に肌色のパーツを重ねて透かすことで肌を表現している。
(画像はFigure-rise LABO | バンダイ ホビーサイトのスクリーンショット)

 3Dゲームの世界でも、人肌の透明感の表現は課題となる。完全に不透明にしてしまったほうが描画は簡単だが、不自然に見えてしまう。
 人の目は人の表現に厳しい。リアルな人物描写にはリアルな肌が必須であり、質感がチープであれば不気味の谷に落ち込んでしまう。

 半透明の皮膚を描画するためには、皮膚の下に入った光の散乱をシミュレートする必要がある。これを愚直に計算すると描画が大変重くなってしまう。
 ムービーならまだしも、リアルタイムに動き回るキャラを美しく、それでいて快適なスピードで見せるのは難しい。肌の構造がわかっていても、ゲーム上で再現するためには、さまざまな工夫、労力が必要になるのだ。

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『FINAL FANTASY XV』のゲーム画面。明るい光のもとで、肌の赤みを表現している。
(画像は| スクリーンショット | FINAL FANTASY XV (ファイナルファンタジー15) | SQUARE ENIX
より)

 プラモデルの話に戻ろう。「プラモデルなんだから単に薄いパーツを重ねればできるんじゃないの?」、「どうしていままでこの表現ができなかったの?」という疑問を持つ方もいるだろう。

 しかし大量生産で成形されるプラモデルの、それも曲面のパーツが、組み立ててぴったり合うという現象についてよく考えてほしい。

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RG 機動戦士ガンダムUC MSN-06S シナンジュ 1/144スケール 色分け済みプラモデル。脚部の曲面に注目
(画像はAmazonより)

 この技術は一朝一夕に生まれたものではない。RG シナンジュの曲面成形、フィギュアライズメカニクスのドラえもんのパーツ分けなどに代表されるように、バンダイは曲面パーツの造形を発展させてきた歴史がある。

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フィギュアライズメカニクス ドラえもん 色分け済みプラモデル
(画像はAmazonより)

 ここまでの精度の積み重ねがあればこそ、この顔が、目が、膝が、腹筋が、この手でピタリと組み立てられるという確信を生んでいるのだ。

 足のつけ根や顔をよく見てほしい。肌色にもグラデーションがかかっている。ということはつまり、パーツの厚みが場所ごとに違うということ……なんだその技術は!

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ひざ裏、足のつけ根などが赤くなっている (画像はFigure-rise LABO | バンダイ ホビーサイトより)

 塗装ではなかなか生み出せない、パーツの透け自体で表現した肌の表現には、もうひとつ重大な特徴がある。
 従来のフィギュアやプラモデルでは、塗装やシールによってディテールを表現していた。Figure-rise LABOではどうだろう。無塗装だ。つまり、手で触っても指紋がつくだけ。ベタベタ触っても塗装を剥がしてしまう心配がない。よく考えてほしい。これは革命だ。

 人物プラモデル・フィギュアの歴史に残る、エポックメイキングな商品となるだろう。

 「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」は2018年6月に発売を予定。
 残念ながら応募多数により、予約はすでに終了となってしまっているので、再販・追加生産を期待しよう。

 ちなみに公式ブログによると、Figure-riseLABO第2弾はグラデーションにこだわった初音ミクだという。そんな……困る! 電ファミニコゲーマー編集部……いや、筆者はFigure-riseLABOを追い続けることを決意した。

文/しば三角

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著者
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しば三角
アプリのデザイナーを経て2017年11月に電ファミニコゲーマー編集部に。好きなインターネットはよく喋るインターネット。

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