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そもそも、『P5X』ってどういうゲームなの?かなり謎に包まれている『ペルソナ5: The Phantom X』開発陣に、ぶっちゃけどんな作り方をしているのか聞いてみた

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『ペルソナ5: The Phantom X』(以下、『P5X』)……あの『ペルソナ5』が、コンシューマー版のクオリティでほぼそのままスマホゲームに登場することで、ファンの間でも話題を呼んでいるタイトル。

今作は株式会社アトラス・ペルソナスタジオとセガ、『Tower of Fantasy(幻塔)』などで知られる中国のゲーム会社・Perfect Worldが共同で制作をしており、『ペルソナ5』の世界観と設定をベースに、全く新たなストーリーが展開されるのだとか。

ただ、(一応国外では配信されているけど)日本ではまだ配信されてないので、正直どんなゲームなのかわからない方も多いのでは?

そもそもどういう形のゲームなの?
どんなオリジナルストーリーになるの?
新キャラの怪盗団って、正直想像できない。

実のところ、私自身も『P5X』にはそんな印象を抱いていました。
「正体不明」と言えば、ちょっと怪盗っぽいけど。

そこで、今作の制作チームに、改めて「『P5X』はどういうゲームなのか」を率直に聞いてみたのが、今回のインタビューになります。お話の中で出てきたのは、実質的に運営型タイトルとして『P5』をもう一度作り上げるための、苦悩と挑戦。多分、みなさんの想像以上に紆余曲折あって開発しています。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_001

お話をうかがったのは、ペルソナチーム プロダクションマネージャーを務めている和田和久さん、今作『P5X』のチーフプロデューサーを務めている宇田洋輔さん、『P5X』開発ディレクター/ メインシナリオプランナーの新田祐介さん、『P5X』開発プロデューサーの松永純さん、『P5X』運営ディレクターの酒井祐太さんの5名。

今作が立ち上がった経緯とは? 新キャラクターはどう作られているのか? ある種オリジナル版の『P5』と相反する形式でもある「運営型タイトル」を、どう作り上げたのか?

……などなど、『P5X』の気になるところをいろいろ聞いてみました。
今作が楽しみな方も、オリジナル版『P5』のファンの方も、必見です。

『P5X』の新情報というオタカラ、頂戴するッ!!

そんな感じで、読んでいただければと思います。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_002
左から、酒井氏、松永氏、和田氏、宇田氏、新田氏。

聞き手・文/ジスマロック
編集/実存


『P5X』を作る中、アトラスに運営型の知見がまるでないことに気づく

──最初に、みなさんの自己紹介と、『P5X』においてどういった役割を務められているのかをお聞きできればと思います。

宇田洋輔氏(以下、宇田氏):
アトラスの宇田と申します。アトラス内では、第2プロダクション・ペルソナスタジオにてビジネスプロデュース全体の責任者を務めております。

『P5X』では、チーフプロデューサーとして、全体を統括させていただいております。

和田和久氏(以下、和田氏):
アトラスの和田と申します。
普段は『ペルソナ』スタジオのプロダクションマネージャーを務めています。

『P5X』においてはプロジェクトの立ち上げ、制作初期の設定関連、大枠の監修などを主に担当しています。あとは……なぜかグラフィック監修もしていますね(笑)。

新田祐介氏(以下、新田氏):
アトラスにて、『ペルソナ』チームに所属している新田です。
今作では、開発ディレクターと兼任でメインシナリオプランナーを担当しています。

私は開発初期から加入していたわけではなく、先行リリースされている中国語版のテストの3回目あたりから、本格的に『P5X』のチームに参加いたしました。なので、先行リリース版・日本語版におけるアトラス側のディレクターと、シナリオ制作を担当している……というご認識でいていただければと思います!

松永純氏(以下、松永氏):
セガの松永と申します。
今作では開発プロデューサーを担当させていただいています。

関わり方としては、オンラインゲームの形でもペルソナらしさを出すための、仕様まわりの監修サポートと、セガ側の開発チームのチームアップを担当させてもらっています。

酒井祐太氏(以下、酒井氏):
セガ側で運営ディレクターを務めております、酒井と申します。

ペルソナシリーズ初のPCとモバイルとのデータ連携や運営型のオンラインゲームという中で、『P5X』をどう日本のユーザーさんにお届けするか、など、担当しております。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_003

──まず、『P5X』がどういった経緯で立ち上がったのかをお聞きかせください。

和田氏:
最初に、Perfect Worldさんから熱烈なオファーがあったことが今作の始まりとなっています。ただ……我々(アトラス)としても、「ペルソナの魅力をもっとたくさんの人に届けたい」「もっと気軽にペルソナを楽しめる状態にしたい」という考えから、PC・モバイルコンテンツの開発を検討していた時期ではあったんです。

そんな中で、さまざまな紆余曲折がありながらも、現在の「アトラス・セガ・Perfect World」の共同開発という形になりました。

やはり三社が集まって制作をするとなると、どうしても会社間の話になってくるというか……僕らとしても開発プロダクションの意向だけでは済まないことが山のようにあり、現在のチームを作り上げるまでにいろいろと時間がかかった部分もありました。

ただ、そんな中で各社の強みを最大限に生かせるような体制を目指し、日々工夫や改善を重ねて、現在の最適な開発体制を構築することができました。もちろん、三社とも良好な関係で進めている状態です!

──そういった経緯があったんですね。今作においてアトラスは「監修協力」という形で参加をされているとお聞きしていますが、具体的にはどういった監修を行っているのでしょう?

和田氏:
まず、この三社の最適なチーミング……つまり、「『P5X』においてアトラスの担うべき部分はどこなのか」と考えた時に、絶対に僕らが担当をしなければ行けない部分は「世界観・シナリオ」「キャラクターデザイン」だと考えました。

そこの『P5』の文脈の部分などを、主に担当する形で進めていき、徐々にチームを補強していったのが、現在のアトラス側の体制になります。

宇田氏:
そんな流れでアトラス側のチームを補強していったんですが……想像以上にPerfect Worldさんの熱量がすごく高くて!

正直、僕らの想定を上回る圧倒的な物量で監修や開発をオーダーしていただいたんですよね。だから、徐々に「アトラス側が見られる範囲・見られない範囲」が明確になっていき、最終的に「ヤバい、自分たちのチームにはオンラインゲームの知見がまるでない!」ということに気づきまして……。

やっぱりアトラスは、ずっとコンシューマーを作ってきた会社です。だから、『P5X』のようなオンラインゲームもコンシューマーの作法で作ってしまう可能性があり、最終的に僕らが目指したい形に辿り着けなくなってしまう恐怖を感じた……開発中、そんなフェーズが来た瞬間がありました。

そんな時に、「セガさん!」と泣きついて(笑)。

一同:
(笑)。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_004

宇田氏:
いざ泣きついたら、こんなトップクリエイターのおふたりがジョインしてくれるとは思わず、正直驚きました(笑)。

松永氏:
それが、去年の春くらいの話ですよね(笑)。

元々私と酒井は、『チェインクロニクル』をずっと開発・運営していて、『チェンクロ』でアトラスさんと最初にコラボをさせていただいたのが『ペルソナ』シリーズだった…という繋がりがありました。

その際に和田さんたちともガッツリお話をさせていただいた縁があり、「なにかお力になれることがあるなら……」と思い、参加させていただきました。

当初は、「『P5』における各シナリオをオンラインゲームに落とし込む場合はこの置き方でいいのかな」「コンテンツのワンプレイのボリュームはこれくらいでいいのかな」といったアドバイス的なお話を一緒にさせていただいたんです。

ただ、メインストーリーはアトラスさんの方でガッツリ制作されている状態だったので、自分たちも「サブストーリー」を担当していく形になりました。

というのも今回、サブストーリーまわりは、運営的なゲームサイクルが関わる部分でもあるんです。アップデートによって「シナジー(今作のコープ要素)」が増えたり、日々ログインしてコツコツ進めていく遊び方にもなるので、運営型タイトルでシナリオを書いている人間のほうが適した部分もあるだろうと。

それで一緒に制作することになり……もう二人三脚というか、「三人四脚」のようなスタイルで作っていきました。

新田氏:
松永さんのおっしゃられた通り、シナリオに関しては本当にセガさんに助けていただきましたね……。ただ、もちろんサブストーリーや、「シナジー」のストーリーも、最終的にはアトラス側で確認をさせてもらい、「ペルソナらしさ」を大切にしています。

また、そういった体制が整ったからこそメインシナリオからサブシナリオに至るまで、非常にクオリティの高いものを揃えることができましたし、「新しさ」と「ペルソナらしさ」を両立したストーリーを制作できたと思っています。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_005

「監修協力」とは言っているけど、明らかに「監修協力」を超えている

和田氏:
だから、急に松永さんから「飲みに行きませんか?」と言われて、僕としても「何の話かな?」と思っていたんですよね……(笑)。

松永氏:
そうそう、そこで「『P5X』の相談をもらったんですけど……」と話をして、帰るころにはセガも精一杯やります!という返事をして。

でも、本当に開発体制としてはとてもエキサイティングな形で、三社でいいキャッチボール……もしくは殴り合いをしてますよね。

一同:
(笑)。

松永氏:
たとえば、サブストーリーひとつ取っても、我々の感覚からすると「サブストーリーは、こんなキャッチーお話の方がサブとしては映えるだろう」という形があったりするのですが、一方で新田さんたちからは「いや、ペルソナで世界観を見せるにはこのリアリティは外せない」と、調整をいただいたり。

はたまたPerfect Worldさんからは「もっとドラマを増やしましょう!もっと!」って熱が飛んできたり(笑)。そうやってできていくのがすごく刺激的です。

新田氏:
でも、松永さん側のチームも、皆さん1人1人の熱意と技量が本当に高くて……毎回素晴らしいものを上げていただいています。お互いに敬意を持ちつつ、切磋琢磨しながら作り上げていく。そんなコンセプトで『P5X』を制作して……いや、これってコンセプトかな?(笑)

松永氏:
いやいや、これはもうコンセプトだと思います!
「3社で切磋琢磨して作る」というコンセプトなのではと。

それとすごく感じるのは、『ペルソナ』というタイトル自体の強さです。セガもPerfect World さんも、このシリーズが好きな人が集まっていて、「御旗」がわかりやすいと言いますか。

なにか問題にぶつかっても、「従来の運営型タイトルだったらこうなるはずだけど、でも『ペルソナ』だったらこうするべきだな」と考えると、チームメンバーも飲み込みやすいんですよね。だからこそ、チーム内の「一緒に作れている」連帯感が1~2段は上がっている気がします。『ペルソナ』だから、ひとつになって作れてるんだろうと。

正直なお話をしてしまうと、「国外の会社も含めて3社でゲームを作る」って、普通は絶対に何を作ればいいか途中でわからなくなって、変なキメラみたいなものになると思うんですよ(笑)。

でも、「みんなで『ペルソナ』を作るんだ」という御旗があるからこそ、大きなところは迷わず、本当にいいチームで作れていると思いますね。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_006

──少し細かい質問になってしまうのですが、『P5X』の制作の流れとしては、主にPerfect Worldがゼロイチの部分を作り上げ、それをアトラスとセガが監修するような流れなのでしょうか?

宇田氏:
そこは、パートによってまちまちですね。

たとえば、シナリオに関しては「このくらいのボリュームで、こんなことができます」という大枠はPerfect Worldさんからいただいているのですが、メインシナリオの内容は新田を中心としたアトラス側のチームがほぼ制作しています。

和田氏:
一応公式では「(セガとアトラスの)監修協力」と書いているのですが、実際はもはや「協力」に留まっていないです。

宇田氏:
もう、普通にセガさんとアトラスは「開発」もしていますよね(笑)。

最終的にゲームとして完成させるのはPerfect Worldさんの領域ではあるので、彼らが実現できる物量は常に精査しながら作り上げているのですが、基本的にシナリオやキャラクターに付随するものは、すべてアトラスとセガさんが一緒に制作をしています。

新田氏:
今作のシナリオを大きく区分けをすると、まず大筋になる「メインストーリー」があり、もうひとつ「コラボストーリー」というものがあります。これはオリジナル版『ペルソナ5』とのコラボレーションを描いたシナリオとなっています。

他にも、さきほど松永さんがお話されていた「サブストーリー」や「シナジー」などなど、いろいろな種類のストーリーが用意されています。そして、アトラスはセガさんと協力しながら、メインやサブも含め、ストーリーのゼロイチの部分を担当しております。

理由としては、我々の方でしっかりとキャラクターを扱う必要があると考えていましたし、ペルソナというタイトルで出す以上、「ペルソナチームを主体として制作・進行」しなければ、プレイヤーの皆さんもご納得いただけないかと思いまして。ですので主体となるストーリーはもうほぼアトラスとセガさんが担当していると思っていただけると。

逆に、街の中で出会う個性豊かなNPCストーリーはPerfect Worldさんにシナリオ制作を頂いている点もあったり、それ以外のゲームシステム的なところはPerfect Worldさんの用意した開発資料を提出いただいて「こんなゲームの展開はどうでしょうか」という提案をいただき、そこに対してアトラスとセガさんが話し合ってシナリオを出していく。

これが『P5X』のある意味「監修」という枠組みを超えたスタイルでもあり、「一部監修、一部制作」とも言えるスタイルですね(笑)。

宇田氏:
システム周りは、主にPerfect Worldさんからご提案をいただきます。

その提案に対して「これは世界観と合わないのでNGです」とお答えすることもあれば、「こう変えたら世界観に合うのでどうでしょうか」と、こちらから逆提案をすることもあります。セガさんからの提案があることも、もちろんありますね。

だから、「常にこの流れで作っています」という明確なルートがあるわけではなく、流動的に必要に応じたスタイルで作っているような形です。

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──先ほどおっしゃられていた通り、まさに「三人四脚」の体制なんですね。

松永氏:
まさに、3社が得意なところをそれぞれ担当している感じです。

特に、キャラクター周りは一番面白い形になっていますよね(笑)。
本当に、3社の意向が全部入っているのですよ。

キャラクターを作る時、やっぱり最初は運営やビジネスの計画に基づき、Perfect Worldさんからキャラクターの原案が上がってくるのです。

ただ、新田さんたちを中心に「ストーリーの展開を含めて、こういう設定にした方がいい」とお返しをしたり、今作のストーリードリブンな部分を担当している我々セガ側は、「たくさんキャラが出るから、こうした方が映える」といった調整をすることもあります。

そして最後に完成したイラストを和田さんがチェックし、「ここを直した方がいい」という話になったところにセガのキャラクターデザイナーが入って、最終的に完成する……改めて考えてみると、ゴチャゴチャになっていますね(笑)。

一同:
(笑)。

宇田氏:
かなりごちゃごちゃとしつつも、和気あいあいとはしていますよね。
一応、楽しくやっています(笑)。

松永氏:
もちろん、大変なこともありますけど……(笑)。

──Perfect Worldさんとのコミュニケーションは、割と円滑に行われているのでしょうか?

宇田氏:
どうしても言語の壁があるので、必ずしも円滑ではない時もあるのですが、基本的にはセガとアトラスを含め、非常にお互いをリスペクトし合えています。だから、コミュニケーションが全然取れていない……のようなことは一度もありません。

和田氏:
Perfect Worldさんもしょっちゅう日本に来てくれますし、逆にこちらも結構中国に行っています。

新田氏:
僕は北京に2回行きました。

宇田氏:
そうそう、Perfect Worldさんは北京に本社があるので、会社には「今月も北京に行ってきます」と言って……(笑)。僕は3回行きましたね。

でも、松永さんはもっと行っていますよね?

松永氏:
なぜかもう5回行きましたね。

一同:
(笑)。

酒井氏:
さきほど宇田さんも「言語の壁はあるが、非常にリスペクトいただいている」と言っていましたが、Perfect Worldさんの通訳の方も含めて、本当にみなさん『ペルソナ』をプレイされているんですよね。だから、言語の壁を挟んでも用語や固有名詞などスムーズに伝わるのは、非常にありがたいなと感じます。

宇田氏:
そう、みなさんちゃんと固有名詞が通じるんですよね。
普通に「メメントスが~」と話しています(笑)。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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