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そもそも、『P5X』ってどういうゲームなの?かなり謎に包まれている『ペルソナ5: The Phantom X』開発陣に、ぶっちゃけどんな作り方をしているのか聞いてみた

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運営型で『P5』を作るのは、正直無理だと思っていた

──『P5X』のゲーム画面を拝見させていただいた時、率直に「ほぼオリジナル版の『ペルソナ5』に近いスタイルで作られている」ことに驚きました。なぜ、『P5X』はオリジナル版に近い形のゲームとして作られているのでしょうか?

和田氏:
ここに関しては、Perfect Worldさんが強いモチベーションを持っていました。

ただ……正直に言うと、絶対に大変だし、無理だと思っていました。企画当初は「難易度がめちゃくちゃ高いから、やめた方がいい」という押し問答もありました。だけど、Perfect Worldさんは「それでもやりたい」と、熱意を見せてくれたんですよね。

そして、現場のメンバーも踏まえつつ、この方向に舵を切りました。
このスタイルを取るのは、正直相当な勇気が必要でしたね。

宇田氏:
でも、実際に完成して触っている限りは、上手くスマホナイズできたというか……しっかりオンラインゲームとしてカスタマイズできていますよね。

『P5』のバトルの触り心地などは、かなりいい形でキチンと落とし込めたと思います。

新田氏:
私がチームに加わったのはクローズドβテスト3(テスト版の3回目)からですが、「このスタイルでやろう」と決めてからは、開発ディレクターとメインシナリオプランナーという両役を担ってでも「『ペルソナ5』を絶対に届ける」「さらにそれを超えたものをユーザーのみなさんに提供したい」という強い思いがありました。

そして、ソーシャルゲームとして、スマホやPCを通し、より多くの方にタイトルとして認知してもらうということは、オリジナル版を超えていかなければいけない……という気概で作り上げていきました。

我々が「オリジナル版からさらに良くなっている」と感じてもらえるような作りにすると覚悟を決めてからは、どんどんクオリティを上げることに注力していきました。『ペルソナ5』というゲームをそのまま体験してもらい、かつそれを超えるようなゲームを遊んでもらうことを目的にしています。

だから、ストーリー的な意味でも、「あの物語をもう一度」というよりは、『ペルソナ5』の物語を超えるようなものを作っている……という意識で、シナリオを作り上げています。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_009

新田氏:
そもそも、ひと口に『ペルソナ5』といっても、いろいろな作品が登場しています。

改めてその違いを説明しますと、『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』は「『P5』の追加要素を加えた決定版」で、『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ』が「『P5』の続編」、『ペルソナ5 タクティカ』は「『P5』の外伝」となります。

そして、『ペルソナ5: The Phantom X』は、「新たな視点、新たな主人公から見る『P5』」というコンセプトになっているんです。

もちろん『P5』の名がつく以上、ファンの方々の中には「ジョーカーが出てこないじゃないか!」「心の怪盗団が出てこないのは……」と感じられる方もいるはずで、それは我々が一番理解していました。新しい主人公を出す以上、そう思われるだろうと。

むしろ、『P5R』以降から、『P5』シリーズのシナリオを担当してきた私としても、「新主人公を出す」ということはやりたくなかった点もありました。ただ、それだと、まだ『P5』を知らない全世界の多くの人には届かないのではないか……という懸念があり、『P5X』では新たな視点と、新たな主人公を登場させる形となりました。

──そういったコンセプトで作られていたんですね。

新田氏:
かつ、新しく触れられる方に「『P5』ってこういうものだよ」と伝えるためにも、オリジナル版と同じ世界観が必要でした。だからこそ、新たな主人公を出しつつも、『P5』と同じ世界観で、ジョーカーを含めた心の怪盗団にも出会える……という三つ巴が、『P5X』のベースとなっています。

他の作品との違いとしては、ここの「従来の『P5』からは新しい視点を持たせることで新しいユーザーさんにも楽しんでいただきつつ、オリジナル版のファンにも楽しんでもらえる」ことを理想として作り上げているところですね。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_010

カレンダーのない『P5』を、どう作り上げた

──お話を聞いていると、やはりコンシューマーの『P5』の遊び心地を再現する形で制作されていたんですね。では、元々コンシューマーだったオリジナル版から、『P5X』を運営型タイトルとして落とし込むにあたり、どのような調整や変更が行われたのでしょうか?

松永氏:
大きなところで言うと、「カレンダー」を中心とした遊びではなくなっていることでしょうか。

それに伴い、ゲーム内での都市生活のパートも、決められた時間の中だからこそ楽しいという遊びではなく、プレイヤーのみなさまのリアルな生活に合わせて、自由なペースで遊べるようになっています。そこは、大きく設計が変わっている部分かなと。

あとは、キャラクターの成長のバランスなども、運営型タイトルとしてより長く楽しめるような調整がされています。その分、やりこみコンテンツなども、コンシューマー版より多くなっています。

全体的に、「運営型タイトルとして、長く遊んでもらうためのゲームバランスの工夫」が、コンシューマー版から大きく調整されている部分なのかなと。

──「カレンダー」のシステムがなくなっているということなのでしょうか?

宇田氏:
正確に言うと、「朝・昼・夜」といった1日の中での時間経過のシステムは残っているのですが、「〇月〇日」といった、カレンダーのシステムはなくなっていますね。

新田氏:
やはり、「カレンダー」のシステムと『P5』の遊びはイコールになっている部分もあり、我々もシステムを抜いてしまうかどうかは、結構迷いました。そこで一応の補足をすると、『P5X』でカレンダーのシステムをなくしたのは、ふたつほど利点があります。

まず、運営型として遊んでくれるユーザーのみなさまに、時間的な期限による「束縛のストレス」を与えないため……という理由です。

そして、今回のオンラインゲームはスマホとPC双方で遊べるので、常にプレイヤーの手元にあり、毎日続けてプレイをしていくものですよね。だからこそ、「期限がある」という世界観ではなく、あえてそこをなくすことで「ずっと楽しみ続けられる『P5』」というものを提供したかったんです。

結果として、3社で話し合い、カレンダーは一旦撤廃して繰り返し続けられるようなシステムを作り上げていきました。ただ、『ペルソナ』はどんなシステムにもなにかしらの「意味」が付与されていますので、「カレンダーシステムがなくなった意味」もストーリー的には用意していたりします。そこも、物語として楽しんでいただければと思います。

酒井氏:
『P5X』は運営型のオンラインゲームですので、メインストーリーの追加や季節的なイベントもあります。そのためユーザーさんごとに、メインストーリーの物語進行と、季節的なイベントを体験するタイミングが変わってきてしまいます。

厳密にしすぎてしまうとプレイや進行を強制されてしまうような状況や、「どうしてもこの日にやらなきゃいけないこと」といった制限を感じてしまうこともあるので、なるべく多くの方がストレスなく楽しめるような形を、アトラスさん、Perfect Worldさん含めて目指した結果になります。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_011

新田氏:
また、『ペルソナ5』ファンの方に安心していただきたいのは、ちゃんと「怪盗団の予告」はあります。

『P5』の核となっている「この日までに改心させる」といった遊びは、可能な限り再現度を高くして実装しているので、『P5』のゲームサイクルそのものはしっかり楽しんでいただけるような作りになっています。

宇田氏:
システムとしての「カレンダー」はなくなっているのですが、それによって『P5』の遊びがすべて損なわれているようなことはありませんし、そこを再現できるような形で設計しています。

──ということは、「日常生活でパラメーターを上げる」「メメントスに入って、怪盗団として戦う」というゲームサイクルは、しっかり全部入っているということなのでしょうか。

新田氏:
もちろんスクールライフや季節のイベントもありますし、毎日の学園生活の中で放課後のアルバイトなどを行い、人間パラメーターを上昇させることもできます。その他にも、『P5』のコープに相当する「シナジー」で、誰かとの関係を深めたり……。

そういったものもすべて入っているので、実装できる限りは『P5』らしさを担保しています。

宇田氏:
あとは、細かいUIなどもしっかり『P5』らしさを保ちながら、スマートフォン向けにアトラス側のデザイナーがガッツリと改修を行っています。やはりUIは『P5』のウリでもありますから、スマホでプレイした時にもしっかり映えるように調整を行いました。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_012

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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