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そもそも、『P5X』ってどういうゲームなの?かなり謎に包まれている『ペルソナ5: The Phantom X』開発陣に、ぶっちゃけどんな作り方をしているのか聞いてみた

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「更生と反逆」に対する、「無欲と生命」

──『P5X』では、全く新しいオリジナルストーリーが展開されるとお聞きしました。率直ではあるのですが、どういったストーリーが展開されるのかをお聞かせください。

新田氏:
『P5X』のストーリーは、基本的にはオリジナル版から地続きの東京を舞台としたお話なのですが、『P5』の「歪んだ欲望を抱く大人がいる世界」とは真逆となっています。つまり、「なぜか、人々から“欲望”という意識や概念が消えゆく世界」として描かれています。

その詳細はストーリー中に明らかになるのですが、『P5X』の世界の人々は、とある原因によって心が奪われるという状態になっています。そして、究極的に欲望がなくなってしまうと、気力がなくなるどころか、「生きたい」という意欲をなくしてしまい、自死を引き起こしてしまったりする。

そこで、主人公たちが人々から奪われた欲望を取り返す・盗み返すために怪盗になります。それが、『P5』と大きくストーリーが違うところですね。

──逆に、欲望がなくなってしまう世界なんですね。

新田氏:
そこに付随するのですが、今作のテーマは「無欲と生命」となっております。「生命」と書いて、「いのち」と読みます。これは、『P5』のテーマでもある「更生と反逆」のセルフオマージュでもあって……今作は「無欲と生命」が、各キャラクターのペルソナ覚醒のきっかけと、深くリンクしています。

『P5』は歪んだ大人たちから理不尽に搾取された少年少女たちが、反逆の意志によってペルソナを覚醒させる形となっていました。一方、『P5X』は欲望のない世界の中で、自分たちが捨てていった欲望を自覚し、それを捨てない決意をすることで、もう一人の自分である心の力(ペルソナ)を手に入れる流れになっています。

そこがストーリーにおいて大きく違うところですが、「怪盗としてペルソナを覚醒させる」「パレスに入って悪人を改心させる」という流れは、オリジナル版と同じですね。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_013

──「捨ててしまった欲望を自覚する」とは、中々現代的なテーマですね。

新田氏:
現代的……と言い切れるかは分かりませんが、意識はしています。

老若男女、皆が皆、成功者ではありませんし、捨ててしまった意志や想いや心も沢山あっただろうなと。それは夢や誇り、愛や友情といった様々なものがあると思いますし、泣く泣く手放すことも絶対にある。

でも、それが人間だと思うんです。意志を捨ててしまったり、諦めたり、強い心を持てないのは当然ですし、都合の良い話なんてどこにもない。

ですから本作は、そんな「捨ててしまった人」にでも、ほんの少し勇気が届くような作品になればいいなと思っています。

『ペルソナ』シリーズは、普遍的なテーマでかつ、ユング心理学における「ペルソナ」を意識していますし、自分らしく生きたい人々にとっての「偽りの仮面」を剥ぎ取っていただけるような、きっかけ、気付きに繋がったり、勇気の一端になって頂けると嬉しいです。

キャラクターも、ほぼ監修を超えています

──今作の新キャラクターについても、お聞きできればと思います。『P5X』の主人公となるワンダーとそのペルソナであるヤノシークは、オリジナル版のキャラクターデザインを務められている副島成記さんが担当されているとお聞きしましたが、副島さんが担当した理由などはございますか?

和田氏:
やはり、「主人公のデザイン」は、本当に重要で、作品のテイストの軸となる要素になります。だからこそ、主人公は副島が描くということに意義がありましたし、実際に僕らとしてもどんなデザインが上がってくるのかを楽しみにしていました。

結果として、『P5X』らしさもありつつ、今までにない主人公が作られたと感じていますね。僕も、ワンダーが好きです。かわいい系ですよね。

宇田氏:
副島には、『P5X』の世界観を決めた後に、今作のテーマなどを伝えた上で、「じゃあ『P5X』に合う新たな主人公はどうなるか」ということをディスカッションしつつ決めていきました。これは、いつもの『ペルソナ』シリーズの開発と変わらないフローでしたね。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_014

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_015

──主人公以外にも、『P5X』には多くの新キャラクターが登場しています。『P5』のキャラは怪盗としての姿を含め、デザインもかなり重視されていると思うのですが、今作で新規のキャラをデザインするにあたって、どんなことを大切にされていたのでしょうか?

和田氏:
まず、ストーリーを作る際に、メインキャラクターの設定も僕らアトラス側で制作しています。

そして、メインキャラクターはナンバリングタイトルと同様に、基本的にはその設定に準じたデザインを作っていくような形になります。アート面に関しては、自分と副島と何人かのスタッフで、Perfect Worldさんから上がってきたものを……そうですね……だいぶ監修を入れて……。

宇田氏:
「メロペ」とか、めちゃくちゃ往復していましたよね(笑)。

新田氏:
当初は、美少年・美少女しか上がってこなかったんですよね……。
だからどうしても、「こんなやつは現実にいないよ」と感じてしまうというか。

和田氏:
だから、そもそもこちら側で描き直してしまうこともありましたね。そんな調整を入れつつ、メインキャラクターと、そのキャラのペルソナに関しては設定とデザインを作っていきました。

ただ、「怪ドル」【※】などはPerfect Worldさん側で完全にデザインを担当してもらっています。キャラクターの中で「メイン」と「サブ」を切り分けて、デザインの担当をそれぞれ持っているような感じですね。

宇田氏:
あとは、セガのデザイナーさんにガッツリ入ってもらっている部分もありますよね。

運営型タイトルはキャラクターも多く登場しますから、それぞれのキャラが並んだ時のデザインの差別化であったり、キャラごとのパラメーターのバランスなども協力していただいています。「こういうパラメーターのキャラがいると、運営型としては盛り上がるよね」といった点は、セガさんと協議しながら作り上げています。

和田氏:
そもそもキャラクターがたくさん必要になるコンテンツですから、「アトラス側が監修しきれない部分はある」ということは明確にわかっていましたし、そこは最初から線を引いていました。

ただ、むしろ「僕らが絶対に出さないようなデザイン」が、Perfect Worldさんからガンガン上がってきています。結果として、いい感じに振り切ったキャラがたくさん生まれて、『P5X』のキャラデザはかなり幅のあるものになったのではないかと思います。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_016
※「怪ドル」
今作のキャラガチャから排出されるメンバーのこと。主人公の知り合いや有名人などの、「認知存在」がこの姿になる。詳細な設定などは続くインタビューでも触れているので、そちらも要チェック。『P5X』公式サイトより

──メインキャラクターをデザインする際の「アトラス側で入れていた監修」というのは、「もっとオリジナル版の絵に寄せる」といった方向の監修だったのでしょうか?

和田氏:
なんでしょう……突拍子もないというか、文脈が見えにくいデザインが結構出てきがちだったというか……。

すみません、Perfect Worldさんを悪く言うつもりはないのですが、我々はキャラを作り上げていく際に一定の文脈をもとにデザインしていくので、そこの有無で、結構ペルソナらしくなるかどうかが決まると思っていまして、そういう意味での監修になりますね。

宇田氏:
『ペルソナ』シリーズのキャラクターたちって、もちろんモデルやアニメーションに合うようにもデザインをするのですが、「こういう人が現実世界にいるかも」とリアリティを感じてもらえることを重要視したデザインに落とし込んでいるんです。

正直、Perfect Worldさんにそこの機微が上手く伝わらず、苦労した時期はありました。ですが、「『ペルソナ』のキャラだったらここはもっとシンプルに。もっと装飾を減らそう」とやり取りを重ね、少しずつ意識を統一していくことができたと思います。

例を挙げるとするなら、「このキャラをハイソックスにするか、それともニーソックスにするか」といった点でも、リアリティが変わってしまうわけです。そこで「ハイソックスの方が、このキャラはリアリティがあるし、かわいい」といった判断を、アトラス側で行うような形でしたね。

新田氏:
「現代にいる子を登場させる」という、「地続き性」と「共感性」は重要視していますね。

あくまで現実にいそうな子が、自分の弱さを受容し、偽りの自分を脱却して、仲間と共に強大な何かに立ち向かっていく……そんな『P5』の構図が現代の人たちに響くと考えているからこそ、「この子はこんな服は着ないだろう」といったリアリティの部分は、しっかりとチェックしています。

そして、キャラクターはその姿形にも、すべて意味があります。なぜこんな服を着ていて、こんなものを持っているのか。それはこういったトラウマを抱えていて、この形でペルソナの覚醒に至る。そんな「そのキャラの覚醒の条件」も意識した上で、さきほどお話した「無欲と生命」というテーマを組み込んでいます。

彼ら・彼女らが捨ておいた欲望はこういうものだから、こんな怪盗の姿になってペルソナが顕現している……という、テーマに合わせたデザインは重要視しています。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_017

──さきほど少しお話に出ていましたが、「怪ドル」を含めたガチャ周りのシステムはどういった形になっているのでしょうか?

宇田氏:
まず、「怪ドル」は主人公であるワンダーが街中や学校で出会い、「認知」したキャラクターがメメントスやパレスの世界にて「認知存在」として登場する……という設定ですね。ちなみに、「怪ドル」というワードは、「怪盗」と、「アイドル(偶像)」のダブルミーニングを合体させた造語です。

この設定を通し、ガチャから排出されるキャラクターをたくさん出せるような形としております。つまり、「怪ドル」はメインストーリーに出てくる怪盗とは別軸で登場する存在となっています。

新田氏:
「怪ドル」はすごく不思議な力で……今作のベルベットルームの案内人として登場する「メロぺ」が、主人公の記憶から認知存在を顕現させているという形になりますね。

ただ、本来の怪盗ではない怪ドルまでがみんなペルソナを使えてしまうと、ペルソナ使いのバーゲンセールになってしまうんですよね(笑)。なので、怪ドルたちが使うペルソナは、「ペルソナⅡ(デュオ)」という形になっています。これは本物のペルソナではないけど、ペルソナ使いの仲間としては、十分力になってくれます。

そして、メロペが力を貸す形で怪ドルが顕現しているので、怪ドルたちは「本人が一番強く欲望を抱いていた時期」で登場するようになっています。たとえば、とある中年女性のキャラをワンダーが認知し、怪ドルとして登場することになると……「最も欲望を抱いていた若い頃のギャル姿」として顕現したりします。

実はこのガチャ周りの設定も、シナリオに大きく関わる伏線が仕込まれていますので、そこもお楽しみにしていただければと思います。

──えっ、ガチャがストーリーの伏線になっているんですね。

松永氏:
怪ドルって、「主人公が認知している存在」という枠を超えて、ド派手なキャラクターも出て来たりするんですよね。だから、キャラクターとして魅力的だと思いつつ、「設定的には……いいのかな?」とも感じていました。

でも、実はその奥に、その疑問すらも覆すような物語がちゃんと用意されていて。
最初に新田さんからその話を聞いた時、もうめっちゃシビれました。

新田氏:
あと、これは我々の夢と言いますか……「もしかしたら、他のナンバリングの主人公にも会えるかも……?」といった設定も、一応用意しておきたかったんですよね。そこも含めて、ガチャは非常に凝った設定になっています。

【P5X】『ペルソナ5: The Phantom X』インタビュー:開発チームが明かす、「監修協力」を越えた開発スタイル_018

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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