フロム・ソフトウェアが2026年にNintendo Switch 2向けに発売を予定しているマルチプレイアクションゲーム『The Duskbloods』(ダスクブラッド)。先日、本作を試遊できる体験会が実施された。
体験会は6時間以上にものぼり、謎に包まれていた本作の概要や詳細が明らかとなった。また、『ダスクブラッド』プロデューサー・北尾泰大氏によるゲーム紹介にくわえ、ディレクターを務める宮崎英高氏への合同インタビューも行われた。
フロム作品、とりわけ『ソウル』シリーズと呼ばれるジャンルは基本的にはシングル向けタイトルが多い。マルチプレイタイトルとしては、2025年に発売した『エルデンリング ナイトレイン』で本格的に踏み出したばかりだ。そんなフロムが今作では「PvPvE」という、“対人プレイ”を主軸に置いたタイトルにチャレンジする。
「『ダスクブラッド』って、かなり変なゲームだと思います」と宮崎氏は語る。
本作はただ殴り合うのではなく、ボードゲームのような「勝利点」のシステムを搭載し、さらにはTRPGのような要素も備えている。対人間だからこそ“ロール的な楽しみ方”も持たせたいという宮崎氏の考えから、PvPの比重を少し落としているという。
そこで本記事では、宮崎氏から語られた本作の特徴や魅力について紹介する。フロムが贈るPvPvEの独自設計について、メディア合同インタビューに回答した形だ。

※今回遊んだデータは開発中のものです。製品版では仕様や名称、各種パラメータなどが変更される可能性があります。
『ナイトレイン』とタイミングが被ったのは“たまたま”だった
──今日はよろしくお願いします。すでに各所でお答えになっているかもしれませんが、改めて、今回「PvPvE」というゲームスタイルを選んだ理由と狙いをお聞かせいただけますか。
宮崎英高氏(以下、宮崎氏):
よろしくお願いします。
そうですね、まず第一に、本作の最初の情報発信として「PvPvE」というのは、あまり正確ではなかったかもしれません。
私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状「PvPvE」というと、もっと特定のフォーマット、例えば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。
ネットワークテスト版を触って頂ければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。

ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。
何故それを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。つまり「自分たちが面白そうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。
タイミングが『エルデンリング ナイトレイン』と被っているので、そのことについて色々と聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)
我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。そもそもの話として、本作のはじまりは『エルデンリング ナイトレイン』よりも前ですしね。
以前クリエイターズインタビューでお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持って頂いた、というのがはじまりなのですが、その時は、単に自分が面白そうだと思うことを喋っていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。
宮崎氏:
ただ、もう少し深堀りすると、私自身が『デモンズソウル』や『ダークソウル』を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。
『ダークソウル』の誓約が分かりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去色々なアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。
──各キャラクターに近接武器と遠距離武器の両方がしっかり備わっているのが印象的でした。全キャラが遠距離も近距離もこなせる形にしたのには、何か理由があるのでしょうか。
宮崎氏:
基本的には、まずアクションの土台があり、それに合わせて武器種なども調整されています。
本作では、プレイヤーキャラクターは血族であり、超人的な能力を持ち、かなり高くジャンプでき、空中を駆けるような動きも可能です。一言で言うと、今作のアクションはダイナミックなもので、そのベースで戦うためには、近接武器だけでなく、標準で遠距離武器も必要だろうと考えました。
──世界観についてもお聞きします。『ブラッドボーン』を彷彿とさせる部分もあると感じたのですが、今回の『ダスクブラッド』の世界観設定は、なぜゴシック調を選んだのでしょうか。
宮崎氏:
今作のプレイヤーキャラクターである血族のモチーフは、いわゆる吸血鬼です。
なので、吸血鬼もの、として最もストレートな世界観として、最初のマップとしては「ゴシック・ヴィクトリアン」を選択しています。
ただ、今作の世界観はそれだけではありません。ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版では他にもマップが2つ用意され、それぞれ「ゴシック・ヴィクトリアン」とは、また違った世界観を持っています。
本作では、血族たちは、色々な時代、場所の「黄昏」に呼ばれ、血授をめぐり戦います。戦いの舞台の共通点は、それが「黄昏」、つまり「人類の滅び、衰退、落日の時」であることです。そういった意味で、結構広がりのある世界観かと思います。
──マップについてもお聞きします。残り2つあるというマップも、大きさは今回のものと同じぐらいなのでしょうか。
宮崎氏:
基本的には同じですね。ゲームバランスを考えると、適切なマップの大きさというのは大体決まっており、どのマップのその範囲内に収まるように調整されています。
「上手い人だけが楽しめるわけではない」設計に。美徳、ロール、ストーリーという3つのポイント
──事前の説明で「上手い人だけが楽しめるわけではない」というニュアンスのお話がありました。どういった目的意識や手法で、そこに取り組んでいるのでしょうか。
宮崎氏:
そうですね。大きく3つの点があると思います。
1つ目は「美徳」のシステムです。
美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。
こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。
2つ目は、ロールプレイ的な楽しみです。
本作は、純粋に勝ちを目指すのも、勿論楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。
イベントや烙印、特に後者にその色が濃いでしょうか。
期せずして割り当てられる「受動烙印」には、時にドラマがあるもの思いますし、たまたま、特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。
3つ目は、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。
本作の拠点である「夜の館」には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行われます。
こうした要素は、必ずしもオンラインプレイにおける勝利を前提とするものではありませんので、まずは勝利に拘らず、ストーリー進行とキャラクタービルドを楽しむ、といったことが可能です。
──「美徳」についてお聞きします。プレイしていて「盤面を見て、自分が一番稼げる方法で勝利点を稼ぐ」というボードゲーム感を覚えました。宮崎さんはアナログゲームもお好きですが、この辺りはボードゲームからの発想だったりするのでしょうか。
宮崎氏:
そうですね。美徳のシステムは、ボードゲームを参考にしている部分があると思います。
本作には、美徳を得る手段の一つとして「称賛」という要素もあるのですが、開発中には「ロンゲスト・ロード」と呼ばれていましたからね(笑)
個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。
勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。
──ただ、最後はどうしても「決闘」になりますよね。
宮崎氏:
はい。最終戦のないパターンも試したのですが、どうしても締りが悪く、現状の形に落ち着きました。
ただ、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。
また我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じて欲しいです。率直に申し上げれば、そのために、演出面では、ネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。
──今回はスイッチ2向けの開発ということで、従来のフロム・ソフトウェア作品に触れてこなかった新規プレイヤーを意識した設計については、どのようにお考えですか。
宮崎氏:
お恥ずかしい話ですが、私自身はあまり考えていません(笑)
元々から、特定のユーザー層を想定し、そこに向けて作る、ということが得意ではないこともあり、「まずは自分が楽しいと思えるもの、作りたいものを作る」ということを大事にしています。
ただ、本作はシステムとルールで遊ぶ比重が大きく、また新しい要素も多いので、
それらをしっかりとユーザーさんに伝えることは、過去作よりも重視しています。
そして、その点では、任天堂さんの手厚いサポートにとても感謝しています。
我々が勝手に「当たり前だ」と思っている事柄についても、そうではないよ、と指摘して下さったり。このあたりは、元々、我々が不得手であることもあり、とても助けられていますね。
──フロムファンの中には「フロムのゲームは好きだけど、対戦ゲームがどうしても苦手」という声も見られました。対戦はやりたくない、という人も楽しめる設計になっていますか。
宮崎氏:
そうですね。先ほどお話した通り、純粋なアクションスキルによるPvP以外の幅もあり、また楽しみ方もある、といった設計になっています。
私自身、純粋なアクションスキルは決して高くないプレイヤーなのですが、そんな私でも楽しめるようなゲームだと思います(笑)
ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみ方もできるのかなと。
──では極端な話、マルチプレイで対戦をしなくても、シングルだけで物語を進めることもできるのでしょうか。
宮崎氏:
いえ、そうではありません。ストーリー進行は、あくまでもオンラインプレイを前提にしています。
本作の断片的ストーリーテリングは、オンラインプレイ、特にそのドラマ性を意識して設計されており、それを楽しんで欲しいと考えています。
勿論、ストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。







