6月12日より『勝利の女神:NIKKE』(以下、NIKKE)と『Stellar Blade』のコラボが始まっている。両作品は韓国のゲーム開発会社SHIFT UPが手がけた人気タイトルだ。
『NIKKE』側では新ニケとして『Stellar Blade』のイヴ、レイヴン、リリーが実装され、ストーリーイベント「MEMORIES TELLER」がフルボイスで展開されるほか、ボス「エグゾスーツ:プロビデンス」とのバトルも再現されている。
一方『Stellar Blade』側では “背中で魅せる” 『NIKKE』の遊び方を再現したバトルのほか、釣りやかくれんぼの要素が登場。とくに、剣を使うイヴとレイヴンの戦い方は要注目だ。
本コラボの見どころのひとつは、それぞれのキャラクターが同じ姿・同じ声優で登場する点だ。
今回電ファミは『Stellar Blade』よりレイヴン役の行成とあさん、リリー役の松岡美里さん、『NIKKE』よりプリバティ役の竹達彩奈さん、アニス役の岡咲美保さんに個別でインタビューを実施する機会をいただいた。
本稿では『Stellar Blade』レイヴン役の行成とあさんのインタビューをお届けする。

【ご注意】
本稿は『Stellar Blade』ならびに本コラボにおけるレイヴンのストーリーについての言及があります。ご自身で体験されたい方はご注意くださいませ。
『Stellar Blade』の “もうひとりの主人公” レイヴン
──『Stellar Blade』にはイヴという主人公がいますが、レイヴンを “もうひとりの主人公” として捉えているプレイヤーは多いかと思います。レイヴンを演じるにあたって意識していたことはありますか?
行成さん:
最初は自分の任務をまっとうする「頼りになるお姉さん」なんですけど、それが少しずつ歪んでいくんですよね。そのねじれていく過程を出していけるよう演じていました。レイヴンは信じる力が強い人だと思うんです。だからこそ心が折れたときの反動も大きくて。
主人公のイヴとも、違う出会い方をしていれば嫉妬や憎悪の対象にはならなかっただろうな……って。タイミングがズレてしまっただけで本当はいい人なのに……。そんなふうに思っています。
でも、後半はもう振り切って “邪悪さ” を楽しみながら演じていました。「お前のこと、どうしてやろうか」みたいに(笑)。振り幅が大きいぶん、どちらも演じられてすごく楽しかったですね。
──レイヴンは物語序盤では「レガシー」という記録媒体を再生したときに映像として登場します。イヴたちとの関係性も前半と後半で大きく異なりますが、演じていく難しさはありましたか?

行成さん:
ありがたいことに、ストーリーと同じ順番で収録することができたので、感情の起伏も自然と演技ができました。といっても自分のセリフだけを録っていくので全体像は見えてはいませんでした。そのため、ディレクターさんに状況を説明していただいて「なるほど、それは心にくるな」と自分の中で想像しながら演じました。
でも、普段の日常で人に憎悪を向けることはないのでそこは完全に振り切っています。日常生活で復讐することなんてないですよね(笑)。役になっていなかったらこんなに大声を出して人のことを罵ったり罵倒したりしないですから(笑)。非日常を役者として楽しんでいます。
──レイヴンを演じて、印象に残っているシーンはありますか?
行成さん:
終盤の “狂気” ですかね。いちばん印象に残っているのは「なぜだ、イヴ!」と叫ぶところです。じつはあのシーンについて別の現場で会った先輩に「最後すごく叫んでいたね」と言われました。うれしい反面、少し恥ずかしさもあって(笑)。でも、「いい役だったね」「楽しそうにやってたね」と褒めていただけました。
──では、行成さんご自身の中でもレイヴンというキャラクターは印象に強く残っているのでしょうか?
行成さん:
残っていますね。やっぱり演じていると愛着が湧いてしまうんです。幸せになってほしかったなって、収録しながらずっと思っていたので。

コラボではレイヴンの “人間くささ” が表現されている
──今回のコラボによって、1年以上ぶりにまたレイヴンを演じることになったわけですが、最初にお話があったときの感想はいかがでしたか?
行成さん:
また演じさせてもらえることが素直にうれしかったです。レイヴンをもっと深掘りできるチャンスだと思いましたし、もっと彼女に近づける、もっと寄り添える、と思いました。
『Stellar Blade』をプレイすればレイヴンに会えるけど、自分がまたレイヴンとして言葉を発することはないかもしれないと思っていたので、お話をいただいたときはとにかくうれしかったです。
──コラボの詳細が正式に発表されたときの反響はいかがでしたか。
行成さん:
いろんな声をいただいて、すごくびっくりしました。Xでフォロワーさんから「レイヴンって行成さんだったんですね」といったコメントをいただいたので、公式さんを見に行ってみたらものすごく反響があって!
私はてっきり「へええ、コラボするんだね」くらいの感じかと思っていたのですが、YouTuberの友人からも「レイヴン出るまでガチャを回す」と連絡がありました(笑)。今回のためにガチャ貯金していたそうです。演じることもうれしかったけど、こういった反応をいただけることもすごくうれしかったです。
──コラボ収録のときはまだレイヴンのビジュアルはまだなかったそうですが、発表時に初めてご覧になったのでしょうか?
行成さん:
そうなんです。Xで初めて見ました。パッと見はすごくかわいいけど、動いているところを見るとあざ笑うような顔をしていて。ちゃんとレイヴンなんです。
でも、『Stellar Blade』を知らない人が見たらきっと「主人公パーティのうちのひとりの女性」と思うだろうとニヤニヤしていました(笑)。まさか敵側の人だと思うまい、と。実際「この人かっこいい、主人公の仲間かな」みたいなコメントもありました。ふふふ、いつ知ることになるのでしょう。
──今回のコラボをきっかけに『Stellar Blade』をプレイされる方もたくさんいると思います。
行成さん:
あっ、それでいうと今回のコラボ収録のとき「どっちのレイヴンでいくか」は話し合いました。
── “どっちの” というと?
行成さん:
前半のレイヴンか後半のレイヴンか、です。
──なるほど。
行成さん:
序盤はハキハキ話していてそこまで湿度がないんです。でも堕ちたあとはねっとりと上から「なんでだよ」みたいな話し方になるので。それで、どちらがいいか聞いたところ「後者で」と言われて。
どっちのレイヴンも演じていて楽しいのですが、後半のレイヴンを深掘りしてみたい気持ちがありました。ただ、あのかわいい見た目で傲慢な感じだと、知らない人が見たときにそのギャップに驚いてしまうのではないかと心配しています(笑)。
──(笑)。コラボ収録ではいろいろなキャラクターとのやり取りがあったと思いますが、いまご心配されていた部分は大丈夫でしたか?
行成さん:
コラボのストーリーは、邪悪で傲慢な態度のレイヴンが見せる “人間くささ” があるんですよ。こういうところがまだ彼女にはあったんだと安心しました。
──『Stellar Blade』のファンからすると、本家では敵役のレイヴンが『NIKKE』ではプレイアブルかつ『NIKKE』側のキャラクターとどういうやり取りがあるのか気になります。また、イヴとの関わり方についても言える範囲で教えていただけますか?
行成さん:
あまり詳細なことは言えないですが、イヴに対しては「この感じ、すごく久しぶりだな」と思って演じました。レイヴンってすごくクールなのにイヴを見ると感情があふれちゃう。その危なっかしさが「そうそう、この感じ」と(笑)。
でもどちらかというと今回は『NIKKE』側との関わりのほうが多かったです。
──先ほどおっしゃっていたレイヴン人の “人間くささ” はそこで出てくるのでしょうか?
行成さん:
そうなんです。『NIKKE』のキャラクターとのやり取りで私はグッときました。変わらず、歪んではいるんですけどね(笑)。ただの悪ではない、ということが確認できました。
『Stellar Blade』でのレイヴンと『NIKKE』でのレイヴンの違いは?
──コラボで印象に残っているセリフやシーンはありますか?
行成さん:
それでいうと、レイヴンの「復讐」に対する持論です。これもあまり詳しくは言えないですが、今回のストーリーに出てくる相手に対して「人に頼って行う復讐のなにが復讐だ」みたいなことを言うんです。復讐をするのであれば、自分の手を汚せとレイヴンが導いていくシーンがあって。
やっぱりレイヴンはまっすぐな人だと思いました。ねじ曲がったあとでも譲れないものがある。そこがすごくレイヴンらしい。でももっと平和に解決すればいいのに、とも思いますけど(笑)。
──『Stellar Blade』も『NIKKE』もSHIFT UPが手がけていることもあり、共通点が多い作品となっています。コラボのシナリオを読んでどんな印象を受けましたか?
行成さん:
そうだそうだ、『NIKKE』の世界も荒廃していますね。そういえばレイヴンが「もとの世界と似すぎていているな、反吐が出る」と言っていました(笑)。
──レイヴンは『NIKKE』でもクールビューティーのままなんですね(笑)。1年以上ぶりに演じてみて変わったことはありましたか?
行成さん:
今回のコラボでレイヴンの人間くささが垣間見れて、より好きになりました。でも、彼女に対する印象は劇的には変わっていません。というのも、『Stellar Blade』のときに彼女の心の痛みを理解することができたんです。
大なり小なり人に対しての嫉妬や恨みってだれにでもあるじゃないですか。レイヴンはそれが大きく出てしまっただけなんです。自分の中にもとからある気持ちを増幅していけば彼女の気持ちも理解できる。
レイヴンに対しての違和感は最初からなかったので、1年以上ぶりに演じてもあまり変わってなかったです。少し理解が進んだことがうれしいですね。
──『Stellar Blade』でのレイヴンと『NIKKE』でのレイヴンのビジュアルでそれぞれ好きなところを教えてください。
行成さん:
『Stellar Blade』のほうは目です。覚悟の決まった目。物語後半の迷いのない目。敗れても抗う、必死な表情も好きでした。あんなに綺麗な人なのに眉間にしわを寄せて、顔から伝わる熱量があるから演じやすい。声をあてる前から心の叫びが顔と表情に出ているので、映像に助けられた部分はすごくあります。
『NIKKE』のほうは、どこって言われたらそれはもうボン・キュッ・ボンのスタイルでしょう(笑)。もはやアートです。
衣装もこれ、大丈夫なんですか!? いろんな紐がアミアミになって、布が足りていないですよ。髪があってよかった。なかったら丸見えですからね。
私、剣道をやっていたので剣士が好きなんです。こういう長くて細い剣ってドストライクで好きなんですよ。すごく細かいところだと、顎引いた感じも “レイヴンみ” がすごい。
──『Stellar Blade』でのレイヴンと『NIKKE』でのレイヴンを演じるうえで意識の違いはありましたか?
行成さん:
少しだけあります。憎悪の出し方がちょっと違ったと思います。気持ちは変わらないけど味付けが違う、みたいな。
『Stellar Blade』のときは3次元の生身に声をあてる、吹き替え的な芝居をしていました。一方で『NIKKE』のほうは2次元のアニメに声をあてる芝居でした。
感覚なので言葉で説明するのが難しいのですが、生身の人にあてる芝居をアニメでやってしまうとバランスが崩れてしまうので、私の場合は気持ちはそのまま「ギアチェンジ」をしないといけなくて……。
『Stellar Blade』は収録時にムービーを用意していただいていたので、映像が補助としてついていたんです。血圧の高い芝居をしていても、それに耐えうる画があるわけですね。でも、ムービーがないときにその芝居をしてしまうと聞いているほうは疲れてしまうと思うんです。
声しか情報がないときは、芝居で情報量を増やすしかありません。状況をわかりやすくするように伝える必要があると思っています。
──それは、ご自身のキャラに対する理解度や想像力で補うということでしょうか?
行成さん:
はい。たとえば剣を扱うシーンにしても、剣を抜いているのか振り下ろしているのか、筋肉のどこを使っているのかを想像しながら演じています。
──見る側の情報量によって伝え方の差があるということですね。ちなみにレイヴンの声はどのようにして役作りされたのでしょうか?
行成さん:
私が考える芝居は、そのキャラクターの気持ちや性格を考えたうえで最後に声が着地するんです。声から作ると破綻してしまうので。
「レイヴンはずっとこの音を使わなければいけない」「ここからはみ出してはいけない」といった呪縛があると破綻してしまうのですが、レイヴンの気持ちが伴っていれば、どんな音でもレイヴンになれるんです。……というかこれはもう役作りというより、私がただただ芝居が好きなのかもしれません。
芝居が楽しくて、芝居が趣味になっているというか(笑)。
──だからこそ、レイヴンの演技はプレイヤーに強く響いているのだと思います。それでは最後にコラボを楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
行成さん:
約1年ぶりにレイヴンをやらせていただいてとても光栄でした。新たな魅力が伝わるとうれしいです。
じつは私、けっこう課金してしまうタイプなんです。だからみなさんも気をつけてください(笑)。みなさんのもとにレイヴンが訪れることを祈っています。『Stellar Blade』ではなかなか見ることができないうしろ姿を見てください。
そして今回のコラボの感想などをXで教えてもらえたらうれしいです。楽しんでくださいね。(了)