みなさま、こんばんは。黒木ほの香です。
先月の二十一日はちょうど実家にいたので、公開ほやほやであるエッセイの感想を直接両親から…聞けることはほとんどなく、代わりに、仕事はどうなのかばかりを質問されました。
く~、エッセイの感想戦と旅行の思い出話ができると思っていたのに!
しおしおと心がすぼんでいくのが自分でも手に取るようにわかり、わたしはいまだ両親に褒められたいコドモなのだと実感した。
というわけで今回も、まだまだ話し足りない石川旅行の続きを少々。
前回のエッセイを読み逃している方は、先にそちらからお目通しいただけますと楽しめるかと思います。
二日目の朝を迎えたわたしたちは、前日夜にささっと調べて見つけた素敵なパン屋さんへと、朝ごはんを食べに行くことにしました。
マップアプリを立ち上げて店名を入れると、ホテルからは徒歩十五分ほどとの表示が。
個人的には、都内だったらタクシーを考える距離なんですが、散歩がてら歩いて向かうことに。
というか母は「徒歩二十分圏内なら迷わず歩く!」な人だから、わたしに意見する隙はなかった。

朝九時半ごろにお邪魔したのですが、店内はすでに賑やかで、ご家族で来られている方や海外からのお客さんもいたりと、人気の高さがうかがえました。

なんと華やかなワンプレート!
生野菜が好きな癖に、野菜を洗うという行為が億劫で普段サラダを食べないわたしにとっては、楽園みたいな景色でした。
そのボリューム感に二人で声を上げながら、この後の予定をどうするか、改めて話し合いながらゆっくりとお腹を満たしました。
レジにて店員さんに感謝を伝えて、本日の目玉である『金沢21世紀美術館』を目指します。
ガイドブックに絶対に載っている、「金沢といえば」なスポット。
すかさずマップアプリでルート検索してみると『ひらみぱん』からは徒歩十八分。
あぁ惜しい、あと三分ほど遠い距離にあれば。
もちろんそんな態度はおくびにも出さず、道すがら出会う緑やお店に目をやりながら歩きました。
実はわたし、旅先で目に入ったお店の看板を読み上げるやつ、めちゃくちゃやっちゃうんですが、みなさんはどうでしょうか?
目の前に現れた『金沢21世紀美術館』はほとんどの壁がガラス張りで、なんだか不思議な形をしていました。
涼しげだし、なんともオシャレで、期待が膨らみます。
観光客はもちろんのこと、学生さんの団体もいたので、入り口はかなり混雑していたけれど、チケットは事前にWEBで購入していたため、かなりスムーズに入館することができました。
美術展示を見ている間中、うちの母は
「なんやこれ…?」
「どういう気持ちで描いたんやろ」
「いや~変わってるわぁ!」
この三ワードを繰り返し呟いていて、次第にそれがツボに入ったわたしはこみ上げる笑いをこらえるのに必死でした。
芸術にあまり触れてこなかったらしい母には、少し難しかったのかもなぁ。
まぁ、わたしにとっても難しかったんですけど…。こういうのは、フィーリングですっ!
そんなわたしたちでも無邪気に楽しめたのは、レアンドロ・エルリッヒの『スイミング・プール』という展示。
薄く水が張られたガラスが、キラキラとした幼い日の夏を思い出させてくれるようで心が躍りました!
上から下の空間を見下ろすこともできるし、予約制の地下プールに入れば、上からのぞき込む人を観察することもできます。
いぇ~い

いぇ~~い
少し休憩をはさみながら館内を堪能した母とわたしは、すぐとなりで限定開催されていた『MINIATURE LIFE展2 in 金沢』も急遽見ていくことに。
ここが、とっても楽しかった!
ミニチュア写真家の田中達也さんの作品はダジャレがふんだんに盛り込まれていて、親子そろってずっとニヤニヤが止まりませんでした。

他にも、ダンボールで作られた田んぼで、ミニチュア人形たちが畑を耕している『田んぼーる』というものや、お米を空に浮かぶ雲に見立てた『ハブ ア ライス トリップ!』なんて作品もあったり。
遊び心が満載で、特に気に入ったものたちをたくさん写真に収めました。

とても良い展示を見させていただいたので、思わずポストカードを買っちゃいました。
母も同じく『雨あけパンチ』を含む三枚をお買い上げしていた気がします。
美術館周りを余すことなく堪能したところで時刻を確認すると、おやつ時をすぎた絶妙な時間。
そろそろ旅館に向かわないと夜ご飯の懐石に間に合わなくなる可能性があるので、わたしたちはのんびりと移動することにしました。
バスで金沢駅へ戻って、そこから電車に揺られること、一時間四十分。
今夜泊まるお宿は、和倉温泉駅にある『のと楽』さんです。
能登に行くのは初めてでしたが、テレビでは、何度も見ておりました。
旅行を計画していた春頃にも、「まだまだ復興作業が続いている」とニュース番組で取り上げられていて、ドキッとしたのを覚えています。
実際、和倉温泉駅周辺の旅館を調べてみると、二十ある温泉旅館のうち、観光客向けに営業を再開しているところは四、五軒でしたし、営業中の宿でも、部屋数を絞っていたり、サウナや宴会場はまだお休み中だったりしました。
ネットでもいろいろ調べた上で、いいなと思うお宿に電話でたくさん質問をしたのですが、『のと楽』さんはとても丁寧に答えて下さいました。
旅館初心者のわたしはわからないことが多かったので、親切に教えていただけたことがかなり嬉しく…。
その優しさが予約の決め手となりました。
そしてその選択は、間違っていませんでした。
旅館に泊まった経験はそこまで多くないですが、わたしの人生で、一番素敵な場所でした!

趣がある入り口に、天井が高く高級感のあるロビー、極めつけは『どうぶつの森』でよく見るようなアーチ状の小さな橋!
ほの、アーチ状の小さな橋、だぁいすき!
部屋のふすまを開けると海が目の前に見えて大興奮!そして部屋の中も広い!
い草のいい香りを放つ畳へと腰を下ろして、しばしの小休憩。
荷物を整理したり、部屋中のふすまをあけたり、客室露天風呂に歓声を上げたり。
そんなことをしていたらあっという間に時間が経ってしまったので、晩ごはんの会場である『茶寮 宵待』へ急いで向かいます。
和倉温泉駅は海がかなり近いので、近海で採れたであろう魚や海産物がふんだんに使われていました。このお刺身、本当に美味しい。
天ぷらも美味しかったし、お肉のしゃぶしゃぶもとっても柔らかくて美味しかった。
はぁ~、思い出すだけで幸せな気持ち。
この食事会場には、他にも宿泊されている方がちらほらと来ており、楽しそうにお喋りをしている声が聞こえてきていました。
ただ、親子っぽい二人組はわたしたちだけで、照れくさいのと同時に「うちら仲いいでしょ!」と得意げな顔をしてしまった気がして、すぐに表情を戻します。
別に、誰にも見られてないんですけどね。
豪華なお料理に舌鼓を打ちまくった後は、お風呂です。
最大の難所。難関。難儀。難難難。
常日頃からみなさんにお伝えしている(過言)と思いますが、わたしは人とお風呂に入るのがかなり苦手です。
それがたとえ母とだとしても、変わりません。
裸だよ!?そんなの…照れちゃうよ!!!!!!
修学旅行の時、クラスごとに大浴場に入らなきゃいけなくて、脱衣所で「みんな先に行ってくれないかな…」と、かなりゆっくり服を脱いだあの瞬間を思い出しながら、母を先に風呂場へ送り出します。
ちなみに、わたしは目が悪く、眼鏡がないと人の顔が判別できないのですが、そんなわたしより遥かに視力が低い母は大浴場の中で常に娘を見失っていたので、恥ずかしがる必要がないことに気が付きました。
そこからの温泉は、大変気持ちのいいものでした。
お湯の温度がかなり高く、ずっと浸かっているのは個人的に難しかったものの、露天で寝ころびながら入る『寝湯』は、少し温度が低めに調整されており、いくらでも入っていられそう。いい湯だなぁ。
海を眺めながらの露天風呂、最高です。
翌朝は五時に起きて、また大浴場を楽しんで、部屋の露天風呂にも入ってと、体がふやけるのも時間の問題かと思われましたが、『のとじま水族館』に向かうバスの方が早くに来たため、なんとかふやけずに済みました。
bath(風呂)からbus(バス)へと乗り継ぎ完了、ってね。
書いておいてアレだけど、別に何もうまくはない。
この二泊三日の旅行中、八百枚近くも写真を撮っていたんです。わたしにしては、かなり多い。
それほどに魅力的な場所だったぜ、金沢!
ほんであんたと一緒やったから楽しかったで、おかん!

旅行プランを練っている時は、お互いに「最初で最後の親子旅行やな」と言い合っていたのですが、帰りの『能登かがり火』の車内では「次の目的地はどこにしよか?」なんて話しちゃうくらい楽しくて、ずっと喋って、同じくらい笑っていました。
「今度は東北とか?」と言うわたしに向かって、母は懲りずに「次は小笠原諸島に行くで!」と、去年から行きたい場所として挙げている島をゴリ押してきましたけどね。
まぁ、わたしも行ったことないし、行ったことのない場所に行く楽しさにも気が付いたので、母の『四十七都道府県制覇』に付き合ってあげてもいいかなぁなんて思いました。
小笠原諸島は、東京都なんですけどね。
編集:川野優希