日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th」が、京都市勧業館みやこめっせにて7月18日から20日まで開催中だ。同イベントは世界各国から集まったインディーゲームの試遊や、物販、ステージなどが楽しめるイベントとなっている。
今回はそのなかから、ドイツのゲームスタジオRadical Fish Gamesが開発する、見下ろし型アクションRPG『Alabaster Dawn(アラバスター・ドーン)』の試遊レポートをお届けしよう。
本作は、MMOをモチーフに製作された高評価2DアクションRPG『CrossCode』のスタッフが贈る最新作である。
筆者は今回のBitSummitを取材するにあたり、本作を取材することを心に決めていた。なぜかというと、本作のグラフィック表現があまりに衝撃的で、かつ不思議だったからだ。
そして実際に試遊して思ったのは……
この緻密なグラフィックからは、“狂気”が感じられる。
「HD-2D」でも「ドット絵風シェーダー」でもない。ドット絵なのに3D、3Dなのにドット絵という狂気のグラフィック
『Alabaster Dawn』をひと目見て驚かされたのは、そのグラフィックである。
一見すると普通のドット絵のように思えるかもしれないが、本作のマップには立体感があるのだ。キャラが動き、マップオブジェクトが視界中央から視界の端に行くと、その側面が見えるような作りになっている。つまり、本作の画面はドット絵のような見た目でありながら、実際には3Dで作られている。
下記のトレイラー映像(0:42~)をご覧いただくと、その表現が分かりやすく伝わると思う。
3Dでありながらドット絵、ドット絵でありながら3Dというのは、不思議な技術だ。
そもそも、そういったことが簡単に実現できないからこそ、3Dモデルにシェーダーをかけてドット絵のように見せる「ドット絵風シェーダー」や、ドット絵のキャラに3Dのマップオブジェクトを合わせてリッチに見せる「HD-2D」のような表現が生まれてきたはずなワケで……。


本作のグラフィックは、「ドット絵風シェーダー」だと必ずどこかで見られるドットの破綻がないし、「HD-2D」のようなドット絵のテクスチャが貼られた3Dモデルというわけでもない。本当に「ドット絵の見た目を維持した3Dのグラフィック」が動き続けるのだ。
これ、本当にどうなっているんだ……?
ブースにいたスタッフに確認したところ、本作ではオリジナルのゲームエンジンを使用しているという。そして、ゲーム自体は3Dで作られているが、通常のドット絵と同じようにスプライトを用意し、カメラを回転させないなど、さまざまな工夫をすることで、このような見た目を実現しているそうだ。
ちなみに、もしカメラを回転させてしまうと、本作ならではのグラフィック表現は、すぐに破綻してしまうとのこと。
そのほかにも主人公に関しては、ドット絵でありながら複数のパーツを組み合わせて3Dのように見えるようにしているほか、2Dのオブジェクトも組み合わせることで、全体的なグラフィックを作り上げているとのことだった。
正直に言うと、筆者の脳では全然理解が追いつかなかったのだが、どうやら「これまでのグラフィック技術では見られなかった凄いこと」が行われているのは間違いないようだ。
ちなみにこの手法については、Radical Fish GamesのTwitch配信でも一端が語られているので、もし興味を持った人はチェックしてほしい。
肝心のアクションも抜かりなし。操作しっかり、歯ごたえばっちり
ついついグラフィックのすごさに目が行ってしまうが、アクション部分にも抜かりはない。
実際に操作してみるとキャラクターはキビキビと動くし、剣やハンマーによる連続攻撃やチャージ攻撃、回避攻撃などなど、さまざまなアクションを楽しめる。
遠距離攻撃も可能で、こちらは右スティックでエイムを行い、Rボタンで撃つという使用だ。ターゲットをある程度自動で狙ってくれるオートエイムの機能も搭載している。
実際、アクションゲームでこの手の操作が盛り込まれると、左スティックや回避ボタンで敵の攻撃を回避をしながら、同時に右スティックで確実に敵狙って撃って……と、やることが増えすぎて操作がおぼつかなくなりがちだ。
オートエイム機能も搭載された本作では、操作が忙しくなりすぎない印象だ。ゲーム全体として、快適な操作感になるよう、巧みに調整されていると感じられた。
今回プレイしたバージョンでは終盤にボスも登場。
本作では敵の攻撃前に赤い光の予兆が見られ、それを見ることで対処がしやすいのだが、このボスに限っていえばディレイが入っていたり、連続攻撃もあったりで、なかなかに苦戦させられた。しっかりと動きを見切って戦う必要があり、アクションゲームとしての手応えをじゅうぶんに感じられた。
最終的には2回ほどコンティニューしつつも、どうにか撃破。
ほどよい強敵感があり、ちょうどよい達成感を得られた。
本作の開発チームが手がけた前作『CrossCode』は2DアクションRPGとして高い評価を得ている。今回のAlabaster Dawnにおいてもアクション面は手堅く作られてそうだ。
ちなみに『CrossCode』ではパズル要素も人気を博していたが、これは今回の試遊では確認できなかった。
そのことについてスタッフに尋ねたところ、本作にもパズル要素はしっかり用意されているとのこと。ただし、本作のパズルは『CrossCode』ほど難しくないように調整しており、より多くの人が遊びやすいものを目指しているとのことだった。
『Alabaster Dawn』は、ドット絵なのに3D、3Dなのにドット絵という、新たな表現に挑戦する意欲作である。筆者としては、今回の試遊を通じて「ゲームの新たな表現」を目の当たりにしたように思えた。
もしかすると今後は、本作のような表現を採用したゲームがどんどん増えていくのかもしれない。