正直、困惑している。
このゲームを何と言い表せばいいのか、分からない。ありのままに起こったことを話すなら、面白そうなSFビジュアルノベルをプレイし始めたと思ったら、いつのまにか“ガチ”の音ゲーをプレイしていた……。
催眠術や超スピードなんてチャチなもんでは断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を体験できるのが、本作『Morpho Reverie』である。
本作の構成要素を、冷静かつ客観的に見れば、これは「音ゲー」に分類される作品だと思う。多分。
なんていったってコンポーザー(作曲家)が豪華だ。さまざまな音ゲーに楽曲を提供しているonoken氏やかねこちはる氏を始めとした、錚々たるメンツが参加している。ゲーム体験としても、一般的な音ゲーと遜色ないシステムで、4鍵式のリズムゲームをたっぷりとプレイすることができる。
だが一方で、本作は壮大なSFストーリーが展開されるビジュアルノベル……でもあるはずなのだ。2040年の近未来を舞台に、「人間とAIで、奏でる音楽にどんな違いがあるのか?」というテーマを明確に打ち出した、実に現代的な題材選び。
音ゲーとして括るにはあまりにも膨大すぎるテキスト量だし、ストーリーは基本的にアドベンチャーゲームと同じような画面で進んでいくし、冒頭から先が気になりすぎる展開のラッシュだ。
キャラクターもただ見た目がイイだけじゃなく、それぞれにしっかりとした物語のバックグラウンドと、フルボイスのセリフが用意されている。構造だけ見れば、音ゲーの方こそ、この良質なビジュアルノベルのミニゲームとして用意されたように感じるのだ。
だが本作は、決して「合間でストーリーが展開する音ゲー」でも、「ミニゲームとして音ゲーパートの用意されたビジュアルノベル」でもない。では一体、『Morpho Reverie』とはどんなゲームなのか?
今回、私は本作のデモ版を先行体験する機会をいただいた。本稿では、このゲームを構成する二つの側面、すなわち「音ゲー」と「ビジュアルノベル」の両方についての感想や、製品版での期待を、先の展開を見越した個人的な妄想なども挟みつつ読者の皆さんに紹介しよう。
なお、ビジュアルノベルという作品ジャンルの都合上避けようのないことだが、記事内には『Morpho Reverie』体験版に関するネタバレが含まれる。完全に初見の状態で本作を楽しみたい人は、まず体験版をプレイした後、記事へと戻ってきていただきたい。
※この記事は『Morpho Reverie』の魅力をもっと知ってもらいたいフォーミライ株式会社さんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
このプレイ感……間違いなく音ゲー。しかも、豪華なコンポーザーを揃え、30曲以上も用意した“ガチ”のやつ。アートコアをメインに据えた本格音ゲー『Morpho Reverie』
ゲーム業界には「ノベルゲームはゲームなのか?」という長年の論争ネタがあるが、少なくとも本作はその手のいちゃもんをつけられる心配はない。なぜならこのゲーム、普通にストーリー無しの音ゲーとして出してもいいぐらいに、曲とシステムがしっかりしているからだ。
何かしら新しい音ゲーが出たときに、音ゲーマーが最も気にするのは恐らく「楽曲の数とクオリティがどれほどのものか」という部分だろうが、『Morpho Reverie』はそのへんかなりしっかりしている。
Steamストアページによれば、本作は「計80曲以上の楽曲」(うち30曲以上がオリジナル楽曲)が用意されており、体験版の時点で10曲をプレイすることができる。
さらに、そのオリジナル楽曲を手掛けるコンポーザー陣もこれまた凄く豪華なメンバーを取り揃えている。公式ページに紹介されているだけでもARForest氏、karato氏、love solfege氏、Noah氏、onoken氏、Osamu Kubota氏、かねこちはる氏という半端ないメンツ。
ネームバリューで作品を語るのもあまりどうかと思うが、実際プレイして楽曲を聴いてみるとやはり有名な方々だけあって、どの曲もクオリティが非常に高い。
また、本作はストーリー設定上の理由から楽曲にピアノを用いている曲が多い。音楽ジャンルとしても、ドラムンベースにピアノやクラシックを組み合わせた、いわゆる「アートコア」がメインに置かれている。
『DEEMO』等のピアノにフィーチャーした音ゲーで活躍されているコンポーザーが数多く参加しているのも、そうしたテーマ故だろう。
……とこのように、楽曲のクオリティ、数ともに“ガチ”な本作は、難易度的な意味でもかなりガチな仕様となっている。
基本的なシステムは上から降ってくるノーツを4つのレーンで処理する非常にスタンダードな作り。操作デバイスは通常キーボードで、4つのキーはプレイヤーで自由に割り当て可能。4つというのは譜面のバラエティと難易度の観点から見てもかなりいい塩梅と言えるだろう。
しかし問題は難易度の方。
基本的に難易度は3つの段階に分かれており、EASY・NORMAL・HARDの3つ。音ゲーについてはもっぱら聞く方がメインである私のイメージとしては、イージーが誰でもできるほど簡単で、ノーマルがフルコンボを目指すならちょっとムズいくらい、そしてハードが上級者向け、という印象だった。
そんなわけで、本作をプレイし始めた私はまずイージーを楽々とクリアし、「ノーマルでフルコンでも目指します…か」とイキっていたのだが、いざノーマルを遊んでみると……。

難しすぎるんじゃあ!!
難易度調整をバリバリの音ゲーマーがやっているのか、難易度ノーマルの時点からいきなり譜面が難しくなる。
初心者としては「バカッ…! 刻むだろっ…! 普通もっと、段階を…!」と恨みがましい気持ちにもなってしまったが、3段階しかない難易度で2段階目からヌルさを捨てるというのも音ゲーとして見た場合「ありそう」な調整である。
これも音ゲー界隈的な「信頼」の証なのかと思うと、これはこれでいい難易度調整なのではと思わないこともない。少なくとも腕に自信のあるゲーマーはかなり手ごたえを感じられるだろう。
ちなみに、本作に収録されている『Piano History』という楽曲は、実に演奏時間10分という、音ゲーとしては異例と言えそうな長さとなっている。ノーツ数は圧巻の3900over。ここまでくると、もはや体力や集中力が保つかどうかさえも問われるような、強烈な一曲だ。
曲はピアノのみのシンプルなメロディから始まり、そこから壮大なオーケストラへ、そしてジャズやモダンを経て、最後はアートコアへと変化していく。まさにピアノという楽器の歴史を辿っていくかのような構成となっており、本作を象徴する楽曲と言えるだろう。背景映像も、ロココ期の優雅な肖像画から印象派、モンドリアンのコンポジションをイメージさせる抽象画等々…と移ろっていき、芸術の歩みを目でも耳でも感じさせてくれる、壮大な構成となっていた。
色々と紹介したが、結局のところ私が言いたい結論は次のようなものになる。
楽曲、難易度の面から見て、このゲームは「ガチの音ゲー」である。
そして、ガチのビジュアルノベルでもある。
実質ゲーム2本分……ってコト!? AIと人間の演奏を巡る、明らかに壮大さを感じさせるビジュアルノベルパート
冒頭から述べているように、本作は音ゲーでありながら同時にビジュアルノベルでもあるという、シンプルに異質な構造を持っている。今回プレイした体験版では、楽曲を選んで遊ぶ「アーケードモード」の他に、メインストーリーを描いたビジュアルノベル形式で進む「ストーリーモード」が用意されていた。
普通音ゲーのストーリーモードと言ったら、ちょっとしたキャラクターの短いコミュがあるとか、あるいは一本の物語があるといってもそこまで大層なものではなく、あくまで楽曲間のスパイス程度になることが多い印象だ。
しかし『Morpho Reverie』のストーリーモードはそういう「音ゲーの味変モード」ではない。むしろこちらがこのゲームの本質といっても良いぐらい、“ガチ”なものになっているのだ。
物語の舞台は2040年、かなりテクノロジーが発展した未来。主人公は「レイン」という少年/少女(開始時に性別選択可能)だ。
レインにはレゾピアノ(ピアノをベースとした未来の楽器)の演奏家である「キーヴァ」ちゃんという親友がおり、二人はレインが作曲を、キーヴァが演奏を担う、コンビとして描かれている。
とある事情で数年に渡って表舞台から遠ざかっていた二人だったが、ある日、キーヴァちゃんはひとつの音楽コンテストに参加する。
どうやら天才的なレゾピアノの演奏家であるというキーヴァちゃんは、もちろん最優秀クラスの成績を挙げるのだが、彼女が演奏を終えると、次なる演奏者として自分と瓜二つのAIレプリカ「キーヴァα」が乱入してくる。なんという急展開!
まるっきり2Pカラーなキーヴァαは、レインとキーヴァが丹精込めて作ったはずのオリジナル楽曲を見事にコピーしてみせ、会場は騒然となる。
コンテストの主催者でありテック企業の社長でもある、見るからに悪役チックな「ゼルダン(CV:宇垣秀成さん)」曰く、「AIが発展しきって人間のコピーとなれるなら、演奏家には一体何の価値があるのか?」。それを計るためにキーヴァαを生み出したということらしい。
まさに生成AIが各界で猛威を振るっている2026年の今、こういった物語は一層のリアルさを伴っていると言える。
ゲーム中の人物たちも、各々AIに対しては思うことがあるようで、コンテスト会場は喧々諤々の大混乱。だが、レインにとって気になるのは、なによりもキーヴァの心情だ。自分のコピーが、自分と寸分たがわぬ演奏をしてみせた、とあれば、それも当然のこと。
だが無情にも、キーヴァを探すレインの目に飛び込んできたのは、ディスプレイに映された「オリジナルのキーヴァが自殺する映像」だった……。
と、序盤からトップスピードで飛ばす怒涛の展開が繰り広げられる。
その後もう少しストーリーは展開するが、最終的には「キーヴァに何が起こったのか?」を探るミステリー的な導入が描かれ、デモのストーリーは終了となった。
おそらくこれがシナリオ全体の大きな筋だろう。音楽の絡むストーリーということもあり、青春的な要素や恋愛的な要素を予想していたが、本作はまさかのSFミステリーだったのである。

ここまで手の込んだ音ゲーを用意しておきながら、ADVパートのためなら「音ゲーをプレイしなくてもいい」という選択を容認する狂気的なデザイン。このゲームの開発陣、どうかしている(誉め言葉)
シナリオの今後が気になりすぎるという部分は一旦さておき、ここからは本作の際立った特徴を紹介したい。
まず、このビジュアルノベルパートは完全に音ゲーとは分離されて作られている。もちろんシナリオ途中にはシナリオにちなんだ楽曲が登場し、それをプレイすることになるのだが、この音ゲー部分のプレイ正否が全くシナリオに影響しない。
ぶっちゃけた話、めちゃくちゃ下手でほとんどノーツを叩けなくてもクリア扱いでゲームが進行する(なんならオートモードをONにできる)。
つまり「音ゲーにシナリオがついてるんじゃなくて、これ自体をひとつのビジュアルノベルとして遊んでください」ということである。
かといって道中が一本道というわけではなく、しっかりとシナリオ分岐まで用意されている。こちらの分岐にも音ゲーのスコアは影響せず、もっぱら選択肢で変化するようである。このあたりの明確さも、本作が一つの独立したビジュアルノベルであることを強調している。
圧倒的テキスト量、多数のボイス付きキャラクター、そしてゲームプレイの進行など、すべてが音ゲー抜きでも成立するレベルで高いクオリティを持っている。本作はビジュアルノベル部分も“ガチ”なのだ。
単体で成立しそうな音ゲーと、単体で成立しそうなノベルゲームを用意して、一本のタイトルに仕上げる。それだけでもすごいのに、輪をかけてすごいのが、音ゲーをクリア不要にしているところだ。ふつう、わざわざ作ったゲームは余すところなく遊んでもらいたくなるものだ。
しかし、ノベルゲームを好むプレイヤーが、必ずしも激しいアクションや複雑なリズムゲームを得意とするわけでもない。もしかすると、そういったプレイヤーのことを考えた結果の、ある種の配慮なのかもしれない。
……いや、言葉では理解できても、そこまで割り切れるものか!? もし私の推察が当たっていたなら、尋常ではないサービス精神である。このゲームの制作陣、どうかしている(誉め言葉)。
そして余談だが、主人公レインの性別を選ばせるというのは、なかなか示唆に富んでいると思う。
AIが重要なキーワードとなっているし、キーヴァαなんてものが出てきたところを見ると、もしかしたら選んでない方の性別が「レインα」として登場するんじゃ……? などなど、かなり妄想しがいのある設定で、個人的にはたまらない。

音ゲーもビジュアルノベルもどっちも妥協したくない。そういったパッションを本作からビンビンに感じる。そしてそのパッションがゲーム内でしっかりと実現できているのも、『Morpho Reverie』のとても優れた点だ。
ジャンルを聞かれたら何と答えていいのか分からない本作への困惑は、記事を書き終わるこのタイミングになっても変わらない。これから名づいていくジャンルなのかもしれないし、本作だけの特別な体験なのかもしれない。
ストーリーが付いてる音ゲーなの? NO。
音ゲーが付いてるビジュアルノベルなの? NO。
本作は音ゲーでありビジュアルノベルだが、そのどちらかに収まる作品でもない。そんな禅問答のような不思議で濃密なゲーム体験を、ぜひ本作で味わってみてほしい。










