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“ヴァニア”元プロデューサー・IGA氏が「メトロイドヴァニア」を語る──『サムスリターンズ』から受けた衝撃と新作“IGAヴァニア”に注ぎ込んだ想い【インタビュー】

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 海外ではその呼び名がすっかり定着しているアクションゲームのジャンル「メトロイドヴァニア(Metroidvania)」をご存知だろうか。

 いわゆる「サイドビューの探索型2Dアクションゲーム」を指すこの造語は、じつは日本で生まれた2作品が由来となっている……そう、『メトロイド(Metroid)』と『悪魔城ドラキュラ(Castlevania)』だ。

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『悪魔城ドラキュラ』のプレイ画面
(画像はWiiU版バーチャルコンソール公式サイトより)

 今やこのジャンルは、インディーズ作品を中心にフォロワータイトルが数多く発売され、Steamでも「Metroidvania」という検索タグがあるほどに成長している。
 そんな中で、久しぶりにジャンルの始祖である『メトロイド』の最新作が、2017年9月に任天堂からリリースされた。1992年発売『メトロイドII リターン オブ サムス』から25年の時を経てフルリメイクされた『メトロイド サムスリターンズ』【※】だ。

 リメイク作品とはいえ、すべてが3Dで描かれたグラフィックや、「フリーエイム」、「メレーカウンター」といった新システム、原作には登場しなかったボス、そして大幅変更されたマップなど、さまざまな新要素が追加されており、もはや完全新作と言える作品となっている。

※サムスリターンズ
2017年9月15日にニンテンドー3DS用として発売されたサイドビューの探索型アクションゲーム。1992年にゲームボーイ用として発売された『メトロイドII RETURN OF SAMUS』のリメイク作品。惑星SR-388を舞台に、フリーランスのバウンティハンター、サムス・アランの激闘を描く。リメイクにあたって、「エイオンエネルギー」という新要素を追加。このエネルギ―を消費することで、マップのスキャン機能、バリア、強力なビーム攻撃などが可能になる。また、「フリーエイム」機能で、周囲360度の攻撃も実現。

 待望の本家新作の発売を機に、「メトロイドヴァニア」がさらに盛り上がることを願っているファンも多いことだろう。
 もちろん“vania”の生みの親であるIGAこと五十嵐孝司氏も、その中の1人。ある意味誰よりもこのジャンルを愛し、ジャンルの発展を願っている男である。

 実際にIGA氏自身、2017年3月にキックスターターで資金を募った「メトロイドヴァニア」系の新作『Bloodstained:Ritual of the Night』【※】の開発まっただ中にいるという。

※Bloodstained
2018年の上半期に発売が予定されている、IGA氏プロデュースの最新作。RPGの要素もあるサイドビューの探索型アクションゲーム。2015年5月29日にキックスターターで制作資金を募集し、最終的には目標であった50万ドルを大きく上回る550万ドルが集まった。音楽プロデューサーに『悪魔城ドラキュラ』シリーズと関わりの深い山根ミチル氏、ゲストアーティストには多くの『悪魔城ドラキュラ』シリーズに携わった小島文美氏のほか、天野喜孝氏も参加している。

 そんな最中に発売された『サムスリターンズ』に、IGA氏は何を感じただろうか? また『メトロイド』とともに、このジャンルに心血を注いでいる理由とは何なのだろうか?

 いちジャンルを築いたクリエイターの1人である彼の言葉から、「メトロイドヴァニア」の魅力に、改めて迫ってみたい。

取材・文/Ron、城イドム
構成/なかJ
カメラマン/増田雄介


『サムスリターンズ』に感じた「大胆なアレンジを加える勇気」

──2017年9月に、「メトロイドヴァニア」の元祖『メトロイド』の最新作が発売されましたが、プレイしてみて最も感じた特徴は、どんなのものでしたか?

五十嵐孝司氏(以下、IGA氏):
 ひとことで言うと「敵が痛い」ということですね(笑)。敵に当たったときのダメージが意外と大きいなと感じました。

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IGA氏

 ただし、主人公サムスの残りエネルギーがギリギリになっても、その場を生き延びさえすれば、敵が湧く場所で倒し続けてエネルギーをチャージすることで回復できますよね。この点はFPS【※】の自動回復にも近い仕組みに思えました。

 あと、「今回のマップは広いなあ!」と。

※FPS
First Person Shooterの略。プレイヤーもしくは主人公の一人称視点でゲーム内の世界を任意で移動する3Dのアクションシューティングゲーム。

──前作に比べて4、5倍はあるかもしれませんね。マップも違うしアクションも追加されているしで、リメイクというよりは「完全新作」というイメージです。

IGA氏:
 スーパーファミコン版の『スーパーメトロイド』【※1】のように、今回も探索するエリアが分かれていますよね。僕も『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』【※2】で、似たような手法を使ったことがありました。

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※1 スーパーメトロイド……1994年3月19日にスーパーファミコン用として発売されたサイドビューの探索型アクションゲーム。『メトロイド』シリーズの3作目に当たる。銀河連邦の宇宙科学アカデミー襲撃の謎と、奪われたベビー・メトロイドを追って、主人公・サムスは宇宙海賊が待つ惑星ゼーベスに向かう。ぶら下がって移動をする「グラップリングビーム」、隠れた通路などがわかる「Xレイスコープ」といった新機能を搭載。
(画像は任天堂公式サイトより)

 エリア分けをするのはマップのつながりをわかりやすくするためなんです。この手法を『サムスリターンズ』で再度やってみたんだな、と思いました。

 そして今回、いちばん驚いたのは、隠れた壁などが見えるようになる「スキャンパルス」【※3】のシステムを採用したことです。これはマップが広いからできることでしょう。もしマップが狭ければ、細かいところまでプレイヤーに自力で探索してもらおうとするはずですから。

※2 悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印
2008年10月23日にニンテンドーDS用として発売された『悪魔城ドラキュラ』シリーズの1本。移動や攻撃、防御などのさまざまなスキルが備わった「グリフ」と呼ばれる呪印を、メイン・サブ・バックの3か所に装備することが可能。単独で使えるほか、組み合わせるとまったく異なるスキルを発動できる。Wii版『悪魔城ドラキュラ ジャッジメント』の隠しキャラクターが最初から使えるようになるなどの連動要素もあり。

※3 スキャンパルス
エイオンエネルギーを消費することで、主人公の周囲のマップに隠された壁やアイテムの存在などが確認できる新機能。

──スキャンパルスの採用は、マップの広さと構成に対する自信の表れなんですね。

IGA氏:
 僕も『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』(以下、『月下の夜想曲』)【※】のときは、城の地図を用意して、おおまかな構造を見せることはしましたが……『サムスリターンズ』で、あそこまで細かく確認できるようにするとは思いませんでした。
 
扉の種類の違いがわかりますし、重要なアイテムのある場所もわかったときには、「ここまで丁寧に作るの!?」と感心しましたよ。

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※悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲……1997年にKONAMIが発売したアクションゲーム。『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』の続編。もともと横スクロールアクションだったシリーズに、ステージ内を探索しながらアイテムや技能を集め新しいエリアに進んでいく「探索型アクションゲーム」としての要素が導入され、「メトロイドヴァニア」の語源となった。また今作から「経験値」システムが導入され、主人公のレベルアップが可能になっている
(画像はソフトウェアカタログより)

──初心者向けの配慮なのでしょうか?

IGA氏:
 もともと難しいゲームではあるので、そういう配慮はあるでしょうね。マップが広いほど、探索が大変になってしまいますから。

──じつは「リメイクだろう」と自信満々で『サムスリターンズ』に挑んだのですが、新要素がてんこ盛りすぎて、ゲームの攻略法も変わっている。結果、昔の記憶はまったく頼りになりませんでした……。

IGA氏:
 (笑)。新要素自体はあったほうがいいし、入れるべきだと思いますね。さらに言えば、これだけの老舗タイトルのシステムの根幹部分に手を入れたことが「大胆だな!」と思いました。

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メレーカウンター……敵の一部の攻撃に有効な技。敵の攻撃が当たる直前に繰り出すと攻撃を跳ね返し、敵をひるませられる。
(動画はメトロイド サムスリターンズ 紹介映像 より)

 ただ、バトルに関しては、新要素の「メレーカウンター」を軸とした内容に変わってしまったかな、と思います。そのあたりのフィーリングが旧作と違う。
 具体的に言うと、メレーカウンターを使うために、敵と対峙したときにサムスが“待ち”の姿勢になるゲームになったな、と。

──メレーカウンターは、他のゲームで言うと、攻撃を受け流す「パリィ」【※1】に近いアクションと考えればいいんでしょうか。

IGA氏:
 ええ。使うとダメージを与えやすくなりますし、成功すればエネルギーやミサイルをより多く回収できるから、優先的に使いたくなりますよね。

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 中には出会いがしらに突進してくる敵もいて、プレイヤーの動きも自然と慎重になるし。そのために防御用の『ライトニングアーマー』【※2】があるのかな、とも思います。

※1 パリィ
英語のparryのこと。意味は「かわす」「受け流す」など。ゲームでは相手の攻撃が当たる瞬間に防御や攻撃をすることで受け流し、隙を作るアクションに使われる。アクションゲームではないが、古くは『ロマンシング サガ』の剣技としても登場。最近では『ダークソウル』シリーズの「パリィ」や『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の「ガードジャスト」がそれに当たる。

※2 ライトニングアーマー
エイオンエネルギーを消費することで、電撃のバリアをまとう防御方法。ダメージを受けてもエイオンエネルギーの消費だけで済む。

──「主軸が変わる」というのは、アクションゲームにとって本当に基礎となる部分ですよね。悩みなどしなかったんでしょうか。

IGA氏:
 もしかしたら……今作では戦闘にそれほど主軸を置いていないのかもしれません。どちらかというと「探索要素を重視して、その過程に戦闘がある」と開発チームは考えているようにも思えます。探索をするための戦闘というか、戦闘が探索の副産物になっているというか……。だからこそ大胆なアレンジができたのかもしれませんね。

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 僕自身、『月下の夜想曲』を作るときに、今までのシリーズで踏襲してきたステージクリア型のシステムをガラリと変えた経験があるので、そういう大胆なアレンジを加える勇気がどれほどのものだったか、開発チームの苦悩は想像に難くないです。その勇気に賞賛を送りたい。

『サムスリターンズ』は、『キャッスルヴァニア』を手がけた実績があるスペインのチームが開発

──その『サムスリターンズ』は、奇しくも『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』【※1】も手掛けた、スペインの開発会社マーキュリースチームエンターテイメント【※2】との共同開発だそうですね。

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※1 キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ……2010年12月16日にPlayStation 3・Xbox 360用として発売された『悪魔城ドラキュラ』シリーズの1つ。3Dのアクションゲームで、コナミのヨーロッパ支社(KONAMI DIGITAL ENTERTAINMENT B.V.)がマーキュリースチームエンターテイメントとともに開発。日本の小島プロダクションが監修を担当。舞台は西暦1047年で、これは外伝も含めて『悪魔城ドラキュラ』シリーズの世界では最古の物語になる。主人公は各地の魔物の調査や退治を行う燈光教団の戦士、ガブリエル・ベルモンド。
(画像はKONAMI公式サイトより)

※2 マーキュリースチームエンターテイメント
ゲームのブランド名はMercury Steam。スペインのマドリード州、サン・セバスティアン・デ・ロス・レイエスにあるゲームの開発スタジオ。2004年にロボットたちの世界を舞台としたアクションアドベンチャー『ScrapLand』を発表以降、特殊部隊を率いて戦うFPS『Clive Bakers’s Jericho』(2007年)などを制作。のちに『キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ』の1・2作目の開発などを担当。最新作は『メトロイド サムスリターンズ』。

IGA氏:
 マーキュリースチームさんは「メトロイドヴァニア」系好きのスタッフが多いと聞いているので、とてもいいパートナーだったのではないでしょうか。『ロード オブ シャドウ』も成功しましたから。

──ここでお訊ねしづらい質問なのですが……『ロード オブ シャドウ』の成功がIGAさんに独立を決意させた、という記事も見かけましたが……。

IGA氏:
 それは違いますよ(笑)。確かにあの作品はプロデューサーではなくなった理由の1つではあります。ただ、それ以降もしばらく会社にいましたし、それは大きな要因ではないですね。

──では、何がキッカケだったのでしょうか?

IGA氏:
 独立しようと決断するキッカケになったのは、comceptの稲船さん【※1】が手がけられた『Mighty No.9』【※2】のキックスターター【※3】の成功です。

※2 Mighty No.9
サイドビューで展開する『ロックマン』タイプのアクションゲーム。Dr.ブラックウェルの起こしたサイバーテロにより、暴走してしまった仲間のロボットを救うべく、暴走を逃れた主人公・ベックの活躍を描く。2013年9月1日に北米で最大級のゲームショウ「PAX PRIME 2013」においてタイトルを発表、同日キックスターターで資金を募り、400万ドルの獲得に成功。以降、日本のクラウドファンディング「Makuake」などでも追加の開発資金を調達した。

 あの様子を見て、あれだけの数のバッカー(支援者)が支援するほどの市場が「2Dアクションゲーム」にあることがわかり、「自分も2D探索型のゲームを作りたい!」と衝動が湧いたんです。
 僕たちゲームクリエイターは、ゲームを作ってそれを発表し、世の中に評価されてナンボですし、ね。

※1 comceptの稲船さん
株式会社カプコンを退社後、株式会社comceptを設立した稲船敬二氏のこと。現在は株式会社LEVEL5とともに大阪に設立した「株式会社LEVEL5 comcept」のCCO(Chief Contents Officer)も務める。

※3 キックスターター
2009年にアメリカで設立されたクラウドファンディングサイト。自主制作の映画、音楽、舞台、漫画、食関連など、多種多様なプロジェクトの資金調達を行っており、ゲーム業界でも数多くのプロジェクトが成功した。Kickstarterの特色として、もし目標金額に届かなければ資金を受け取れないシステムになっている。

──当時の会社の方針に対して思うところがあったわけではないと。

IGA氏:
 (笑)。まぁ、それとは別の話として──大きな会社について言えば、僕は「1人の人間が同じゲームにずっと関わること自体は、あまりいいことではない」と思っているんです。

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 これまでに3Dのゲームも手掛けたけれど──僕は2Dの探索型ゲームを長く作ってきましたから、自分に求められるゲームも、自然とそういうジャンルに偏ってくるんですよね。すると、そのジャンル以外のゲームについては、なかなかうまく立ち回りができなくなってくるんですよ。
 一方、大きな会社にとっても、ずっと1人の人間が関わっていると発想の転換が容易にできなくなって、その結果、IP【※】としては縮小してしまいますから、大胆なテコ入れが必要になるでしょう。

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『キャッスルヴァニア ロードオフシャドウ』のゲーム画面
(画像はKONAMI公式サイトより)

 ですから、『ロード オブ シャドウ』のときに海外の開発会社と組んでテコ入れしたことについては、良かったことだと思っていますよ。

※IP
知的財産。“Intellectual property”の略で、ゲームではタイトルやオリジナルの世界観、キャラクターなどシリーズを構成する要素を指す。

──IPの存続には必要なことだったと。ちなみに、それ以降の前職在職中には、新規タイトルへの挑戦はされていたのでしょうか。

IGA氏:
 世の中の流れがソーシャルゲームに向いてきていたこともあって、独立する前の3年間ぐらいは、結局何もゲームを出せませんでした。
 僕自身、コンソールでゲームを長年作ってきたためか、操作中に自分の指で画面が見えなくなったりするタッチパネルだけの操作があまり好きではなく……。

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 ソーシャルゲーム自体を否定しているわけではないんですけれど──ゲームパッドで遊ぶゲームの開発にチャレンジしたかったんです。一応、操作性改善のため、スマホでもゲームパッドに近い仕組みも考えてはいたんですけどね。

──長年培われたアクションゲーム制作の真髄は、ゲームパッドでこそ活きるということですね。

「メトロイドヴァニア」というジャンル名について思うこと

IGA氏:
 それから、じつは僕、「メトロイドヴァニア」という言葉は独立後に初めて知ったんですよ。

──! かなり最近ですね。

IGA氏:
 この言葉の存在を知ったとき、「『メトロイド』に対して失礼だろう!」と思いました(笑)。あのスタイルを世に放ったのは、『メトロイド』が先ですからね。

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 僕たちは2Dの「メトロイド」シリーズの新作がしばらく出ていないときに「悪魔城ドラキュラ」シリーズを展開しただけですから。

──とはいえ開発中、『メトロイド』を意識しなかった、というわけではないですよね?

IGA氏:
 当時の開発スタッフは、もちろん『メトロイド』が好きな人も多かったんですけれど、それ以上に『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』【※】が好きな人が多かったですね。

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※ゼルダの伝説 神々のトライフォース……任天堂より1991年にSFC版として発売されたゲーム。「ゼルダの伝説」シリーズ3作目にあたる。従来の「ゼルダの伝説」よりも謎解きの要素が増え、リンクのアクションも強化されるなど、大幅にゲーム性が向上。本作をもって今日の「ゼルダの伝説」の基盤を作ったとも言える。2013年には3DS版として本作の数百年後かつコンセプト的続編でもある『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』が発売された。
(画像は任天堂公式サイトより)

 『ゼルダ』のように探索をしながらいろいろな場所を行ったり来たりする内容にすれば、『ドラキュラ』も「もっと長く遊べるよね」という話を彼らとしていました。
 ですので最初は「『ゼルダ』ライクなゲームを作ろう」と言っていたんです。結果的には、探索の要素をサイドビューアクションの『月下の夜想曲』に落とし込んだわけですが。

──『月下の夜想曲』の発端は、「メトロイドヴァニア」というより「ゼルダヴァニア」だった、と。いずれにせよ『Castlevania』が支持されているからこそ、造語の由来になっているわけですよね。

IGA氏:
 そう言っていただけて嬉しい限りですが(笑)、パイオニアではありませんから。ただ、ジャンル名に使われていること自体は、本当にありがたいと思っています。

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──「メトロイドヴァニア」という単語が生まれたのは『月下の夜想曲』が登場してから、とも言われていますし、もっと誇ってみてもバチは当たらないと思います!(笑)

IGA氏:
 (笑)。でも、商標の問題もありますので、僕のほうからあまり声高に「メトロイドヴァニア」と言うのも……(笑)。
 ということで、僕の周囲にいる者が「IGAvania(イガヴァニア)」という造語を考えて、キックスターターの時にはこれを使いました。

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画面右側の白文字の記述冒頭に「IGAVANIA」とある
(画像はKickstarterより)

 “vania”は、『Castlevania』だけではなく、もともとトランシルヴァニア【※】から来ているところもありますから、これは問題ないだろうと。

※トランシルヴァニア
東ヨーロッパの特定の地域を指す地方名。国の境界線が変更される前からの呼び名であるため、現在はルーマニアの北部、ウクライナの西部、ハンガリーの東部など、国を超えて広範囲に渡る。ちなみに、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』に登場するドラキュラ伯爵のモデルとなった、ヴラド・ツェペシュ公が統治していた地方がトランシルヴァニアである。

──なるほど(笑)。そもそも「アクション」のジャンルの中で、こういった造語で「メトロイド」と「ドラキュラ」だけが細分化されたのは、なぜだと思いますか?

IGA氏:
 僕は普通に「探索アクション」と言っていたので、理由を探るのはなかなか難しいですね。
 というのも、もともと「ドラキュラ」シリーズは、僕たちが「アクションRPGではないよ」とずっと言い続けていたこともあって、海外ではアクションアドベンチャー扱いになっていましたし。

──それは、アクションゲームから始まった『悪魔城ドラキュラ』のファンに対する配慮でしょうか?

IGA氏:
 そうです。昔からのファンは「アクションゲームをプレイするなら、自分の腕を磨いてナンボ」だという考えがあるんですよ。
 それに対して『月下の夜想曲』以降は、その考えとは正反対──RPG寄りのゲームを作りました。

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『悪魔城ドラキュラX月下の夜想曲』のゲーム画面
(画像はソフトウェアカタログより)

 でも、往年のファンのことを慮って「RPGというよりもアクションゲーム寄りです」とアピールしなければいけないな、と思ったんですね。実際、ゲームを説明する場合にも、アクションRPGという言葉をほとんど使ったことがないんですよ

──「RPGの要素もありますよ」ぐらいのニュアンスでアピールしていた、と。

IGA氏:
 はい。「アクションがあまり得意ではない人でも、この要素を使ったらゲームをうまく進められます」という程度のアピールですね。
 ですからRPG要素は、「難易度を自分で調整するためのシステム」と理解してもらおうと考えました。
 個人的には難易度を選べるゲームはあまり好きではありません。ただ、遊んでくれた人全員にクリアしてほしいので、その苦肉の策としてRPG要素を入れたんです。

インディーズのメトロイドヴァニアはライバル?

──最近はインディーズで「メトロイドヴァニア」作品がたくさん出ています。プロのクリエイターとして、これらの作品をどう見ていますか?

IGA氏:
 「プロとして」というのは難しいです。「俺の畑に来るなよ!」という気持ちはありますね。まあ、建前ですけれど(笑)。
 僕はファミコンやスーパーファミコンの時代が大好きだったんですよ。

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 あの時代はそれこそ有象無象のゲームがたくさん発売されて、そのなかから自分の好きなものを選ぶことができましたよね。「買って失敗した」と思うこともありましたが、そういう状況も含めてすごく好きだったんですよ。
 ですから「メトロイドヴァニア」に限らず、アクションだけでもさまざまなタイプのゲームが発売されていることに関しては、すごくおもしろいなと考えています。インディーズのそういう現状は、すごくいいと思います。

──増えることは歓迎なんですね。

IGA氏:
 そうですよ。ファミコン時代は楽しくありませんでした? さまざまな種類のゲームが驚くほどたくさん出ていて、「なんでこんなにあるんだ?」と思いましたよ。
 ああいう状況を見ると「この市場、活気づいてる!」って思いますよね。ファミコン末期の「ひと月に新作が1本出たらいい」みたいな状況って、寂しいじゃないですか。

──それは本当にそう思います。一方で、いま活気づいてる「メトロイドヴァニア」系のゲームの中で、IGAさんとして気になる作品などあるんでしょうか?

IGA氏:
 『LA-MULANA』【※】はちょっと気になっていますね。ゲームがたくさんありすぎて、ほかに挙げるのが難しいんですけれども。

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※LA-MULANA……元は2006年にPC用のフリーゲームとしてリリースされたアクションゲーム。その後インディーズゲーム制作集団・NIGOROによってWii版、PC版が作られた。すべての文明の始まりと言われる巨大遺跡「ラ・ムラーナ」に眠る“生命の秘宝”を求め、遺跡の中を探索する。ピグミースタジオ開発・販売のPSVita版も発売中。2014年にはキックスターターで続編の制作資金の調達に成功。現在『2』が制作されている。
(画像はSteamより)

 じつはいま、あまりゲームをやれていないんですよ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で忙しかったので(笑)。僕はPCではあまりゲームをしないんですよ。

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