『プロセカ』がボカロファンやミクたちに与えた影響 ― ニコニコ動画が果たしていたような役割を担うかもしれない【開発者座談会】

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KAITOやレンがいる時点で、男女混合ユニットにすることは運命でした

──『プロセカ』に関してはもうひとつ、男女混合のユニットが存在することが、スマホリズムゲームとして大きな特徴だと思います。それについてのユーザーさんの反応はいかがでしょうか? 男性キャラの人気などは、想定外のところがあったのではと思うのですが。

近藤氏:
 先ほどお話ししたように、ユーザーさんの男女比率みたいなものは想定外ではあったんですけど、キャラクターの誰が人気になるとかそういうことも、正直事前にあまり考えたことはなかったんです。そういう意味では、もともと想定していなかったものなので。

小菅氏:
 プロジェクトの最初の頃は、今ここにいる3人で、キャラクターの男女の人数比率だとか、そもそも男性キャラを入れるべきなのか、といったことについてよく話をしていましたね。「大丈夫かなぁ?」と。

佐々木氏:
 もともとウチのキャラクターの中にKAITOと鏡音レンがいたので。彼らが入ることがある程度マストだった中で、オリジナル男性キャラとのバランスが……というのもありましたから。でも一方では、女性キャラクター中心のゲームだと男性キャラを入れるのは難しい、みたいな噂も聞いていたので。

KAITO(画像はAmazon | カイト V3(KAITO V3) | 音楽制作 | ソフトウェアより)

 そんな中でも、KAITOというのが、ウチのキャラクターの中でも相当に謎の存在感があるんです(笑)。ボカロファンの中でもコアな所で、意外とKAITOのファンが多くて根強くて。たとえば、『プロセカ』で小豆沢こはねを演じている秋奈さんとは、これ以前からお仕事をさせていただいていたんですけど「私、ミクも好きですが、特にKAITOが好きなんです。なんでか分からないんですけど。かわいくありません?」みたいなことをおっしゃっていて(笑)。あと、中国の取引先のご令嬢が、KAITOが好きすぎてわざわざ札幌まで来てくださったり…。行動力のある方でKAITOのファンが多いなーと感じています。

 KAITOって“カッコイイ”だとか“可愛い”といった次元だけではないところで愛されている、珍しい特徴のキャラクターなんです。柔らかさや、緩さ、包容力というかツッコミどころも多い…バーチャル・シンガーの中ではミク以上に唯一無二だなと。今回は、そんなKAITOとレンと、新しい男性キャラクターのデザインみたいなところが上手くリンクしてハマったんだと思うんですけど。そこはもう、Colorful Paletteさんの女性スタッフのみなさんの想いみたいなものが強かったんだろうなと。

近藤氏:
 今、佐々木さんがおっしゃったように、KAITOとレンがいる時点で、男女混合にすることは運命というか、絶対にそうしなきゃいけないと思っていました。そうなった時に、男女の比率としては同じぐらいか、多くても1/3ぐらいかなと設計していった形ですね。

 その中で気をつけなければいけないのは、男性向けには女性キャラクターしかいない、女性向けには男性キャラクターしかいないというゲームが多い中で、それらを混ぜることで生まれる良い化学反応と、悪い化学反応があると思うんです。その中の良い化学反応だけを得られるように、かなりセンシティブに考えましたね。

──いち男性ユーザーとして言わせてもらうと、『プロセカ』の男性キャラって、男性ユーザーの視点から見ても反発を生まない、絶妙なバランスが考えられていると思うんです。

近藤氏:
 男性から見てもイヤじゃないし、むしろ好感を持てるキャラクターであるというのは、徹底的に意識しましたね。

──その結果として、『プロセカ』は男女混合のユニットであることで、ストーリーの幅などもすごく広がっていると思います。

小菅氏:
 それは間違いないですね。プロデュースサイドからすれば、本当にチャレンジではあったんです。でも今振り返ると、別に普通のことですよね、男女混合の音楽ユニットなんて。

──実際のバンドでも、ボーカルだけ女性といった編成は普通にありますから。

小菅氏:
 今の子たちを描くという時に、リアリティもあって。僕らの学生時代だと、何かいろいろ考えちゃうかもしれないですけど、今の子たちからすれば当たり前ですから。そのへんの心地良さみたいなものが成立していると、音楽も広がってくると思います。

佐々木氏:
 そもそもボカロ曲だとかネットのクリエイターの人たちが、中性的で魅力的な価値、女性的な感覚やデリケートさみたいなものを、自然にみなさんが身にまとっていて。それの走りがボカロだったという部分もあるんじゃないかなと思うんです。ネットの世界では、リアルの世界より引っ込んだところに性別の意義があって、「男なのか女なのか」より性別の中でのバランスや、繊細かどうかのディテールの方が重要なのかなと思います。

 クリプトンには海外のアーティストから「一緒にやりましょう」といろんな問い合わせをもらうんですけど、特に性的にマイノリティなアーティストが、初音ミクという存在をすごく高く評価してくださることが多く、とても光栄だなと思っていました。ミクたちは人間でない存在なので、ファジーな感覚を可能性として大事にしていきたいんです。

 男女キャラが上手く受け入れられているのもあって『プロジェクトセカイ』って、無属性で多様なんだと思うんです。恋愛だとか、何かしらの解りやすいテーマありきのコンテンツよりも無属性なので、だからニーゴなどのストーリーにおける心が揺らぐ表現も、受け入れやすいんだろうなと。

小菅氏:
 ゲームを作る時、コンセプト作りで無属性になると怖いんですよ。広く万人受けを狙う難しさが必ずあって、通常ではまずやらない手法です。そこを正面からミクさんが牽引してくれるのは大きいですね。

佐々木氏:
 初音ミクだと、古来から「ミクオ」といってミクを男性化して楽しむ方もいますし。ジェンダーみたいなところはある種、ネットの遊びの中で自由に変質されたり、行ったり来たりできるものだという、そういう土台はもともとあったかもしれないですね。

3DMVに関しては今後、質と量の両面で拡張していきたい

──ユーザーさんは今、『プロセカ』をどのように楽しんでいると考えていますか? 

近藤氏:
 ザックリ分けると2つの楽しみ方があると考えていて。まずひとつは、キャラクターの成長やストーリーを見守って応援するという楽しみ方で。もうひとつはリズムゲームとして楽しんでいると。

──その楽しみ方を次の半年に向けて、さらに深めていくような施策は何かありますか? 

近藤氏:
 主体にあるのはキャラクターで、これが根幹の部分だと思っていますから、そこに関連するコンテンツは、これまでと変わらずずっとやっていきます。ただ、半年とか1年のスパンで見た時に取り組んでいきたいのは、コミュニティですね。ゲーム内で同じものが好きな人たちや、同じ遊び方が好きな人たちが一緒に集まったら、それは絶対に幸せじゃないですか。そこをこの半年、1年で強化していきたいというのがあります。なので、フレンド機能も入りましたし、バーチャルライブの待合エリアも拡張しました。

 あとは新しいイベントも予定しているんですけど、それはチームイベントですね。そういうものも含めてコミュニティを強化していって、同じものを好きな人と出会って、仲良くなって。それをけっこう主眼に置いています。

 本当にアクティブな人だと、Twitterで検索してつながったりしているとは思うんですけど、そこで足りない分をゲーム側で上手く補っていければと。『プロセカ』は今後、ゲームの中だけでなく外側の部分も含めて、いろんなコンテンツを提供していくと思うんです。たとえばリアルのライブをやるよ、となった時に、1人で見るよりも、同じものが好きな仲間が集まって見たほうが面白いですよね。そういう未来を目指しています。

──リズムゲームの部分では、シングルプレイの「ひとりでライブ」と、マルチプレイの「みんなでライブ」がありますよね。ユーザーさんとしてはどちらを楽しまれているのですか? 

近藤氏:
 比率で言うと「みんなでライブ」のほうが若干多いかな、という感じですね。でも用途が違いますね。「みんなでライブ」はみんなでいるというにぎやかな雰囲気があると思います。それに対して、自分自身でフルコンボを目指して詰めたいなと思う時は「ひとりでライブ」を遊ぶという、あっちはあっちで需要がありますから。どちらかにすごく偏っているというわけではないので、いい塩梅かなとは思っています。

──他にこういう新しい楽しみ方を加えていきたい、というのは? 

近藤氏:
 妄想は無限に出てきますけど(笑)。根底にあるのは「『プロセカ』がボカロやインターネットシーンの音楽の入口になってほしい」ということです。その中でクリプトンさんやセガさんとずっと話しているのは、「何かを作るきっかけ」に、もうちょっとなってほしいということですね。

 たとえば今、楽曲の公募をやっていますが、そちらはセミプロというか、アマチュアの中でも経験のある方々が参加しやすい形になっていて。あれはあれでいいと思っていますけど、それ以外に何も作ったことのない人だとか、いろんな人たちが気軽に参加できるものが、もっとあるといいなと思っています。その結果、「作って良かった」と感じてもらえばいいなと。

 そういう意味では、先日開催した「塗りマス!」コンテストとかは、すごく参加しやすいと思うんです。用意された線画に色を塗っていくものなので。

 入賞できるかは置いておいて、そういう何も作ったことのない人でも気軽に参加してみたいと思えて、それが面白いというところに上手くつながっていくと、『プロセカ』らしいし、ボカロらしいし、ここでしか出せない魅力になるんじゃないかなと思っています。

佐々木氏:
 創作にはいろんな形があって。TVなどのメディアからお仕着せの曲を聴く形だと、歌詞とメロディーにフォーカスが当たりやすく作られているところが、ボカロ曲だとイラストがあって、MVがあって、動画もあって、ボカロPさんのこだわっている音だとか詩だとか、世界観のディテールもあって、その立体感が解りやすいだろうと思います。曲を好きになったときに、関連する情報や関係者を掘り下げられる感じ。『プロセカ』を通じて若い人たちに、好きになった曲や、クリエイター達が作った流れを深追いできるんだよと、何ならクリエイターになるのも楽しそうでしょ?と伝えていけたらなという部分もありますね。

 これは『DIVA』の頃からで、まず最初にキャラクターを好きになった子たちや、3DのMVで「歌って踊って可愛い」と感じたファンが、そこからニコニコ動画に流れてきていたというのがありました。『プロセカ』でもやっぱり、セガさんを中心に作っている3DMVが一番お客さんに楽しまれる入口やキッカケになっていて。そこからボカロPさんを追いかけたり、イラストレーターさんを追いかけたりという裾野まで、良い形で広げられている。そこが上手くいくのが重要かなと思うんですけど。

小菅氏:
 3Dに関しては、質も上げたいですし、量も上げたいというのがあるので。今は3DMVが月2本分というペースなんですけど、そこをもうちょっと広げたいなと。みなさんいろんなものを見たいでしょうし。例えば、MVの中でも場面転換させたりできるようになれば、演出の幅がもっと広がるでしょうし。そういったところを将来的に広げていければ、もっともっと援護射撃できると思うので。セガ側では今、そういうところを考えていますね。

──また、バーチャルライブではルームあたりの上限がこの半年間で、15人から100人にまで増えましたね。

近藤氏:
 バーチャルライブに関しては、じつはシステムを根幹から作り直しました。サイバーエージェントのゲーム事業部に研究開発チームというのがあるんですけど、そこが作ったものをベースとした新しいシステムに入れ替えたんです。

 以前は他の会社が提供しているツールを使っていたのですが、どうしても人数制限がかかってしまって。そこを作り直して、今は実質無制限になりました。ルームあたりの上限は意図的に100人にしているんですけど、それが何ルームできてもいいという。さすがにとんでもない数になったら無理でしょうけど、日本で運営するのなら事実上、何の問題もないぐらいには増やせています。

小菅氏:
 基盤の部分を広げたのは、リリースしてからけっこう早い時期ですね。以前のインタビューにもあったと思うんですけど、バーチャルライブは『プロセカ』にとってかなりの武器になりそうだと考えていて、実際にお客さんの反応も非常に良かったので。ここは伸ばすべきだろうということになって、まずはバックヤードを増やしましょうと。

 待合エリアも含めて、やれることをもっと増やしていきたいんです。フレンドの話でも出たと思うんですけど、バーチャルライブでけっこう友達ができるんですよ。待機時間にいろいろ話すじゃないですか。それがライブ後にすぐ別れちゃうのが残念だと思って、それでいち早くフレンド機能を開発したりして。

──バーチャルライブに関しては、0時以降の深夜帯にも開催を検討するという話があったと思いますが? 

近藤氏:
 深夜帯に2回、1時と2時に増えましたね。深夜しか遊べないという人は、ずっとバーチャルライブが見られないことになってしまいますから。

小菅氏:
 セガの他のスマホゲームよりも『プロセカ』は、ピークタイムが1時間ぐらい後ろですね。他のゲームはユーザーさんの平均年齢が30代ぐらいなので、それよりも若いぶん、遅くまで起きている方が多いんだなと。

近藤氏:
 「昼間にもっと開催してほしい」という声もあったんですけど、それはどちらかというと定員の問題が大きかったので。先ほどお話ししたようにシステムを作り直した結果、満員になることがなくなったので、そこは今は一定解決したと思っています。

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