暴露配信を開始した動機と、「辞めたい」と思いながら活動していた
高橋氏:
当時、暴露配信を始めた動機はなんだったんでしょうか。
東谷氏:
借金で首が回らなくなってYouTubeをやらざるを得ない状況になったというのは、取り調べや裁判でも言っています。
高橋氏:
借金は、本当の動機のひとつとしてはあると思います。でも、よりその動機に迫りたくて。「被害者の怒りが乗り移った」というようなお話もあったじゃないですか。
東谷氏:
実際、暴露配信を始めた時には「これほどのタレコミが来るのか」とも思いました。もちろんほとんどは嘘で、事実なのは3割もなかったと思います。エビデンスつきでくるタレコミはほとんどありませんでした。
それでもやっぱり、被害に苦しんでいた方がいたのも事実です。それに対しては、先ほども言った通り、私設警察でもなんでもない僕がやるべきじゃなかったと思っています。
高橋氏:
当時やられていたことについては今は反省されているじゃないですか。動機については本当に大切なポイントだから、もうちょっと深く聞きたいです。「借金を返したい」という気持ちはもちろんあったと思いますが、暴露配信をやっていた時の思いはどんなものだったんですか。
東谷氏:
本当になにもないですよ。配信に関しては、僕はずっと辞めたかったので。
川上氏:
それに関して言うと、僕の方にもいろいろとタレコミがきています。もちろん真偽はわかりませんが、中には東谷さんの関係者だという人からもタレコミがあったんですよ。
話としては「東谷さんが配信するのを嫌がっていたら、翌朝になって殴られた痕跡がある東谷さんが配信を始めていた」というものです。真偽はわかりませんが、本当に自分がやりたくてやっていたとか、正義感のもとにやっていたのとは別の構図があったんだろうと思います。
高橋氏:
仮説として、その構図というのはどういったものがあると思われますか。
川上氏:
東谷さんの影響力は大きかったんですよ。東谷さん自身はただ暴露配信をしているだけであったとしても、その周辺の人たちは明らかにその影響力を利用していましたよね。
これは根拠のない一般論ですが、東谷さん自身が知らなくても、「ガーシーさんに口を利いてやるよ」と言ってお金を取っていた人はいたんじゃないでしょうか。
そうした詐欺行為を東谷さんの周囲でやっていてもバレないと思うので、そのようなことをしていた人というのは多分いたと思うんですよね。
高橋氏:
なるほど。そうすると、あくまで東谷さんの動機としては、借金の問題があったと。
東谷氏:
とっかかりとしてはそうですね。そこから、配信を進めていくうちにタレコミをしてくる被害者の方がたくさん出てきたので、そこに対する怒りでやっている部分もあったんですけど、僕自身としてはずっと辞めたい気持ちでした。
高橋氏:
怒りが憑依はしていたけど、辞めたいと思っていた?
東谷氏:
そうですね。自分自身、決して良いことをしているとは思っていなかったので、1日も早く辞めたかったです。
高橋氏:
なんでそう思っていたんですか。
東谷氏:
やってみたらわかると思いますが、ずっとキレながら配信を続けていくというのは人間には無理なんですよ。笑顔も見せたいですし、楽しいこともしたい気持ちの中で、永遠に怒り続けて配信をするというのは、よほどの恨みでもない限り、普通の人間にはできないんです。
僕にはその恨みの根底がないから、必死で自分の中から怒りを絞り出して配信をしていたわけで、それでは限界がありました。
高橋氏:
パトロンのような方も現れ、配信自体の収益も十分あったと思うので、動機となったお金の面は解決したと思うんです。そこから「辞めたい」という気持ちになったのにも関わらず、配信を続けていたのはなぜなんですか。
東谷氏:
その時点でタレコミがたくさん来ていたので、辞めるに辞められなかったんです。「どのタイミングで辞めようか」という話をするなかで、1日も早く辞めたいということはスタッフにもずっと言っていました。
5億の借金を抱えることになったギャンブル依存症
高橋氏:
ちなみに、配信を始めるきっかけとなった借金はどれくらい抱えていたんですか。
東谷氏:
5億ぐらいですね。
高橋氏:
そんなにあったんですか。それらはもう、全部返済されたのでしょうか。
東谷氏:
ほぼ全額返しました。まだ返していない人もいますが、それは昔からの知り合いなどで「分割でいい」と言われているので、徐々に返済しているところです。
これはもう明確に言えることなのですが、これらの借金は全部バカラで作りました。僕はカジノですべてを失ったんです。
高橋氏:
ギャンブル依存症って、どういった過程でなってしまうものなんですか。
東谷氏:
これはもう、依存する人たちみんながわかっていないと思うんですよ。僕自身、まさかこんなにハマるとは思っていませんでした。ニコチンでも、アルコールでもドラッグでも、まさか自分が依存症になると思って始める人っていないじゃないですか。
やっているうちに依存症になっていくわけで、自分の中での意識ってないんですよ。僕も気づいたら、寝る間も惜しんでギャンブルをしていました。
高橋氏:
最近だと、大谷翔平選手の通訳の水原一平さんが話題になりましたよね。
東谷氏:
だから本当に、僕はあの人の気持ちがわかります。
高橋氏:
それってどういう気持ちなんですか。たとえば資産の2倍くらい負けていたら、「ちょっとそろそろやばいな」とか思わないんでしょうか。
東谷氏:
いや、もう止まらないんですよ。勝ちたいとかお金儲けがしたいのではなくて、ただ「ギャンブルがしたい」だけなんです。
これはギャンブルにハマったことのない人にはたぶん理解できない部分で、ギャンブルをしている最中ってある種のドーパミンが出るというか、興奮状態になるんです。その興奮状態が欲しくてやっているんだと思います。
川上氏:
そういう意味では、薬物依存症に近いですよね。
東谷氏:
そうですね。僕はお酒も飲みませんし、タバコも吸いません。ドラッグをしたこともありません。僕の中で唯一依存性があったのがギャンブルだったんです。
高橋氏:
どうしてギャンブルにハマってしまったんでしょう。何かストレスがあったんでしょうか。
東谷氏:
それすらもわからないんです。
川上氏:
逆に言うと、お酒とかも飲んだほうが良かったんじゃないですか。
東谷氏:
そうなんですよ。違うことをしていれば分散されたかもしれないのに、ギャンブルだけに集中してしまったからおかしくなってしまったんだと思うんです。
川上氏:
ドーパミンに対する耐性がなかったのかもしれませんね。
東谷氏:
女の子と韓国に旅行に行ったとして、最初は「よっしゃ、好きな子と来ているから楽しもう」と思っていても、カジノに入った瞬間どうでもよくなってしまうんです。
僕はそれで、女の子をスパに8時間放り込んだことがあります。カジノで邪魔をされたくないので、女の子に「スパに行ってきたら?」と言って、担当の人に「8時間入れといて」と話をして。
カジノに対する耐性がなかったんでしょうね。「こんなにハマる人種だったんだ」と、自分の中で思いました。
高橋氏:
そうすると、目に見えるようなストレスがあったわけでもなく、単純にのめりこんでいってしまったということなんでしょうか。
東谷氏:
いや、ストレスはかなりありましたよ。ギャンブルで負けるたびに「死にたい」と思いました。
高橋氏:
それでもギャンブルを続けてしまうんですね。
東谷氏:
そうですね。「使ったらあかんお金を使ってしまった」とか、「明日からの生活はどうしよう」といったことを常に考えていました。
でも、一度寝て起きたら、またギャンブルに行きたくなっていますし、そのためのお金を作り出すことばかり考えているんです。
高橋氏:
そういうときって、メンタルクリニックなどの専門家のもとに通って治療しようとは思わないんですか?
東谷氏:
僕のイメージとしてですが、メンタルクリニックに通って治った人って見たことがないんですよ。ギャンブルに限らず、一時的にはよくなるかもしれないけど、基本的には治らないと思っています。
高橋氏:
入り口がどうであれハマってしまう可能性があるんだとしたら、東谷さんとしては、ギャンブル的なものにはもう触れない方がいいという考えなんですね。
東谷氏:
そうですね、近づきたくないです。自分では大丈夫と思っていても、1回でもトランプに触ってしまったら、気づかぬうちにまたハマってしまう可能性があるので、僕はそういったところには行きたくないと言っています。
ガーシーがハマったバカラの魅力
高橋氏:
僕が「ちょっとそこのパチンコ屋さんに寄っていこう」と言ったら、そこから再発してしまうかもしれないということですか。
東谷氏:
いえ、僕、パチンコは大丈夫なんですよ。「ギャンブル依存症」と言っていますが、実際は「バカラ依存症」なんです。競馬など、他の公営ギャンブルは何をやってもハマらないんです。
高橋氏:
バカラってどういうギャンブルでしたっけ?
東谷氏:
いわゆる「丁半博打」のようなもので、プレイヤーが勝つか、バンカー(胴元)が勝つか、2分の1に賭けるギャンブルです。
配られたカードの点数が9点に近い方が勝ちというゲームなんですが、至極単純な分、ハマりやすいところがあるんです。
高橋氏:
単純な分、ヒートアップしてしまう感じなんですね。
東谷氏:
そうです。だから僕は、バカラ以外のギャンブルには一切ハマらないんです。パチンコなんかはこの前も暇つぶしで行きましたが、面白いとも思わないですし、「タバコが煙いな」くらいにしか思わないです
「ギャンブル依存症」とひとまとめにして言っていますけど、僕の依存症はバカラだけなんです。
高橋氏:
バカラを断つことができたのは、ドバイに行ったことが要因なんですか。
東谷氏:
そうですね。自分としては、ドバイに行ったことで2年間トランプに触れなかったことが大きいですね。
スピリチュアルな話になってしまうんですが、ドバイに行く前、一度沖縄の祈祷師の「ユタ」の人に見てもらったことがあるんです。その時に、糖尿病になることと、バカラで命を落としかねないということを忠告されたんですよ。
じつはその時点ですでに糖尿病にもなっていたし、バカラにもハマっていたので、「なんでわかったんや」と思いました。
高橋氏:
なにも言っていないのに知っていたんですか。
東谷氏:
はい、「左腕が全部、トランプになっている」と言われました。
高橋氏:
……そのユタの人、紹介してほしいですね(笑)。
東谷氏:
その後、ドバイに行って政治家になった時に久しぶりに電話をして、「あの時に死ななくて良かったね」と言われました。
実際に僕は一度、自殺しようとしたことがあるので。自分の中では、「死ななきゃ治らない」とさえ思っていたんです。
高橋氏:
苦しかったんですか。
東谷氏:
めちゃくちゃ苦しかったです。
川上氏:
バカラの「ハマるポイント」ってどのあたりにあるんですか。僕自身は理系の人間なので、バカラが正常なゲームには思えないんですよね。
あの、ベットした人が自分でトランプをめくるシステムというのはやはり重要なんでしょうか。
東谷氏:
あれを覚えたせいでハマりました。これが、ディーラーがトランプをめくるのを外から見ているだけのゲームだったらハマらなかったと思います。
川上氏:
バカラの面白いところなんですが、本当はカードをパッとめくれば結果はすぐわかるんですよ。ただ、バカラプレイヤーの人はそれをせずに、ちょっとずつ端の方からめくるんです。その過程で、伏せてあるカードが何か予想するんですよね。
東谷氏:
そうですね。その動作を「絞る」と言うのですが、それを覚えると、寝ている時に夢の中でもトランプを絞っているような感じになるんですよ。
高橋氏:
「絞る」動作の中でドキドキするんですね。聞いているだけでちょっと楽しそうです。
川上氏:
しかも、絞ってカードを確認する権利が、一番多くベットした人に与えられるんですよね。
東谷氏:
そうなんですよ。そのせいで、自分が絞りたいから多くベットしてしまうんです。
高橋氏:
でも、絞ったとしても結果は変わりませんよね。
東谷氏:
一緒ですね。たとえば、僕が絞っても、高橋さんや川上さんが絞っても結果は変わらないのですが、知らない人がたくさん座っている中で、「あいつは幸が薄いから、あいつに絞らせたら負けるで」とか、勝手に思っちゃうんです。
川上氏:
それで、みんなの勝ち負けを記録して、「そろそろ来るんじゃないか」って期待するんですよね。
東谷氏:
来るわけないんですよ(笑)。
高橋氏:
期待値の問題でしかないですからね。
東谷氏:
「人間罫線」という用語があって、座った席にいる人によって勝ち負けが決まる、という考えかたがあるんです。
端から見ていても、なんとなく虫が好かない人っていますよね。「こいつ、ガムばっか噛んでるな」とか、「タバコばっか吸いやがって」とか。
そういった人とは逆に賭けてしまって、それで負けることがあったりするんです。そういったことも含めて、僕はハマっていきましたね。
高橋氏:
そうしたやり取りや、席順の妙とかも含めて、バカラにハマっていったんですね。
東谷氏:
そうですね。僕は一度、5万円を30分くらいで3600万円にしたことがあったんですよ。そういったことも経験して、余計にはまり込んだというのもあるんです。
高橋氏:
はじめの頃にそういった成功体験があると、余計にダメかもしれませんね。
東谷氏:
僕はシンガポールで6000万円負けたことがきっかけでぬかるみにはまっていったんですが、その6000万円も、1時間くらいの間に負けました。
高橋氏:
でも、その時にはもう思いとどまれないような状況になっていたんですね。
東谷氏:
なってましたね。そのころはコロナ禍で、あまり人と遊べない時期だったので、韓国などでひとりでカジノばかり行って負けていました。