なぜ私がオーディションに受かったの? シナリオ担当にキャスト本人が聞いてみた
──せっかくの機会ですので、おふたりからもシナリオ担当さんにご質問があれば。事前にもお伺いしていましたが、なにかありますか?
小島さん:
はい! 私はもう率直に、なぜ私がラインクラフト役にえらばれたのかを聞いてみたいです! ものすごく気になります。
佳原さん:
私もなぜフサイチパンドラが私だったのかぜひ聞きたいです! パンドラは歌のオーディションもなかったので、セリフのオーディションでどう判断いただいたのか、すごく気になります。
──まずラインクラフトからお願いできますか。
シナリオ担当:
ラインクラフトの物語を描くうえで、もっとも重視したのは「声の中に光がある人がいいな」ということでした。
これは感覚的な話になりますが、経歴や経験値よりも、とにかく光を持っている人に演じてほしかったんです。
──光、ですか。
シナリオ担当:
はい。オーディションで声を聴かせていただいた中で、小島さんの声がとくに輝きを感じました。
オーディションにおいてスタッフ間で意見が分かれることはあるのですが、「声に光がある人」という軸で意見を募ったところ、満場一致で小島さんだったんです。
小島さん:
もったいなきお言葉……! いやあ、嬉しすぎます。ありがとうございます……はあぁ……。
──噛み締めて反芻してらっしゃる……。では、フサイチパンドラはいかがでしょうか。
シナリオ担当:
そうですね……パンドラ役のいちばんの決め手は「世の中舐めてる感」でしょうか。もちろん、佳原さんご本人が、ということではないですよ。「自分ならなんでも上手くやれるでしょ!」と信じ切っている感じが伝わる演技が良いなと。
そのうえで、どんな発言をしても、嫌味なく響く「愛嬌」がにじみ出ている声というのがなにより大事でした。
──ただ舐めているだけでなく、その裏にあるかわいげや憎めなさが感じられる声というわけですね。
シナリオ担当:
はい。パンドラは特徴的なキャラクター設定をしていることもあり、一歩間違えると、嫌われかねないキャラクター性をしているので、そこを声や演技の愛嬌で押し切ってもらおうと考えたわけです。その点で、佳原さんにはすばらしい演技をしていただきました。
佳原さん:
よかったです……! とても意識したところなのでうれしいです。
やはりセリフだけを見ると、口だけは達者で、人が一生懸命にやっていることを見ても何も思わないような子に見えるところがあるので、本当に嫌な子にならないようにしたいと思って、演じていました。
ウマ娘キャストとして活動しだしてから怒涛の日々を振り返る
──おふたりが『ウマ娘』のキャストとして担当を発表されてから、1年ほどが経ちました。その中でとくに思い出に残っていることを教えてください。
小島さん:
私がラインクラフト役を務めることが発表されたのが2024年2月だったのですが、去年のこととは思えないくらいに、濃い1年でした。そのなかでもとくに印象に残っているのが「Twinkle Circle!(クルクル)」への出走ですね。
──クルクルは全公演に出走されていましたよね。函館公演ではMCも担当されて。
小島さん:
そうなんです。MC担当だと知らされたときは、今年加わったばかりの新参者の私が、そうそうたるキャストさんの中でMCだなんて……と、プレッシャーがすごすぎて、前日の夜はまったく眠れませんでした。
──大舞台でのMCですもんね。
小島さん:
はい。ずっと気を張っていたからか、イベントの最後のほうでは重圧から解放されて泣いちゃったんですよ。
でも、函館には同期のみんなや、キングヘイロー役の佐伯伊織さんをはじめ、頼れる先輩方がたくさんいらっしゃったので、なんとか走り抜けることができました。
──佳原さんはいかがでしょうか? 2024年のクルクルは、大阪公演の出走でしたよね。
佳原さん:
そうなんです! じつは大阪公演で、こじななちゃん(小島さん)と初めて会えたんですよ。
小島さん:
ね! 収録ではお会いする機会がなかったので「本当にやっと会えたね」という感じでした。
──まさにリアル「GIRLS’ LEGEND U」ですね。
佳原さん:
ただ、私たちは裏で大盛り上がりしていましたが、当時のトレーナーのみなさんは、パンドラのことがどんな子かよくわからない状態だったと思います。なので、ステージ上で私たちが仲よくしていても「???」だったかもしれないです(笑)。
小島さん:
うんうん。だから今回、私たちふたりの関係性をみなさんにわかっていただいた状態でお話できるのは、すごくうれしいです!
「世の中を舐めている」フサイチパンドラの育成シナリオがついに読める
──いま振り返ってみて、担当キャストとして発表された瞬間は、どんなお気持ちでしたか? SNSでかなりの反響があったと思いますが。
小島さん:
「5th EVENT -YELL-」DAY2で、メインストーリー第2部 前編のティザーPVが公開されて、そこでラインクラフトの情報も発表されることは知っていました。
なので、リアルタイムで配信も追っていたのですが、もう本当に緊張しすぎて……その時の記憶がほとんどないんです(笑)。唯一、『ウマ娘』公式アカウントから引用して、「ラインクラフト役の小島菜々恵です!」とポストしたことだけは覚えています。
──お祝いの反応がすごかったですよね。
小島さん:
本当にすごかったです。一瞬でリポストといいねの通知が止まらなくなってしまって……。『ウマ娘』が多くの方々に愛されているコンテンツだということをあらためて実感しました。
ラインクラフト役の小島菜々恵です!
— 小島菜々恵 (@KJnanae) February 4, 2024
皆さんにご報告できた事、とっても嬉しく思います✨✨
トレーナーさん、これからよろしくお願いしますね!!☺️🌸#ウマ娘 #ゲームウマ娘
#ウマ娘5th東京D2 https://t.co/5rpUbR3gE5
──フサイチパンドラの情報が発表されたのは、それから約半年後でしたが、佳原さんはどのようにキャスト発表のタイミングを迎えたんですか?
佳原さん:
私の場合は、発表より先にボイスが実装されていたので、「(パンドラの担当は)私です」と言えることをすごく楽しみにしていました!
──中編の最後にフサイチパンドラが登場して驚いているトレーナーの方も多かったです。
佳原さん:
その子を演じたのは私なんです~!! 私! 私! って言いたくて仕方がなかったんです(笑)。なので、プレッシャーよりは楽しみの感情のほうが強かったですね。
そしていざポストしてみたら、こじななちゃん(小島さん)と同じようにものすごい勢いで反応があって、そこで「本当に私、『ウマ娘』の役を演じられることになったんだな……」という実感が追いついてきました。
◎お知らせ◎
— 佳原萌枝 (@moemoe_K_) September 27, 2024
改めまして『#ウマ娘』にて、フサイチパンドラ役を担当いたします、佳原萌枝です❣️
メインストーリー2部中編が公開されてから、1週間ずっとドキドキしていました😳
やっと言えたよーーーっ!
自称天才ラブリーギャルウマ娘のフサイチパンドラをよろしくお願いします🐎💕#ゲームウマ娘 https://t.co/dXoWEvnC3a
──本日はいろいろとお話をお聞かせいただきありがとうございます。それでは最後に、トレーナーのみなさんへひと言メッセージをいただけないでしょうか。まずは小島さんから。
小島さん:
メインストーリー第2部は、「繋ぎ、残していく」というテーマが一貫している物語になっています。クラフトが何を残し、何を繋ごうとしたのか、その結末をぜひ見届けていただきたいです!
──ラインクラフトの「光の声」にもぜひ注目していただきたいですね。
小島さん:
そうですね……「光の声」、初めて言われました。私自身はかなり根暗で陰キャでインドアな性質なので(笑)、クラフトとは正反対です。役作りの段階では「こんな子を演じられるのかな」と不安がありました。
でも、私のお芝居で、みんなを照らす太陽のようなクラフトを少しでも表現できていたなら、本当に嬉しいです。
──ありがとうございます。では佳原さんからもひと言お願いします。
佳原さん:
パンドラがゲーム内で登場してから約1年、ふわっとした印象のまま時間が過ぎていったかと思います。
私としては、ウマ娘のフサイチパンドラをどんな子か知ってもらえることを、すごく楽しみにしていました。ぜひ、たっぷり見て、たっぷりかわいがってあげてほしいなと思います。
──第2部後編での活躍だけでなく、育成ウマ娘としても実装されましたし、楽しみが続きますね。
佳原さん:
育成シナリオでは、このインタビュー中で何度も言っている通り、本当に「世の中を舐めている」パンドラを見られます(笑)。
けれど、やっぱりどこか「もうしょうがないな、この子は」ってなっちゃう、本当に魅力的なキャラクターです。
私も精一杯、持てる限りのかわいさを思いっきりぶつけました。いろんな方の力が集結してでき上がった「最強かわいいラブリーウマ娘フサイチパンドラ」を、皆さんにも愛していただけることを願っております。メインストーリーと合わせて、楽しんでいただけたら嬉しいです。
──フサイチパンドラのピックアップガチャ、全力で狙っていきます。本日はありがとうございました!(了)
今回のインタビューを振り返ってみると、『ウマ娘』というコンテンツが生み出す熱量の源泉に触れるような、そんな時間だった。
メインストーリー第2部の主役、ラインクラフトとフサイチパンドラ。その物語の裏側には、キャストの並々ならぬ苦悩と、制作陣の妥協なきこだわりが満ち溢れていた。
また、インタビューの場で、役を演じるキャスト陣とシナリオ担当が席を同じくすることじたい、なかなかないケースである。それに加えて、「なぜ私がオーディションに受かったの?」と直接質問をする場面は非常に珍しい。
小島さんは「(声に)とくに輝きを感じた」
佳原さんは「愛嬌がにじみ出ている声と演技」
それぞれ、現在演じる役に選ばれた要因をかみしめるように聞くおふたりの表情が印象的だった。
メインストーリー第2部は、史実で繋がることのなかった想いを「繋ぐ」物語だ。それは、キャストから開発スタッフまで、作品に関わる人の情熱が「繋がって」生まれた結晶でもあるのだろう。
そんな『ウマ娘』の物語だからこそ、読んでいて心が揺れ動かされるのかもしれない。
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