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“太もも”に心を奪われてイラストの勉強を始めたイラストレーターが、“太い太もも”に魅入られ、『勝利の女神:NIKKE』アートディレクターとなり、新作『MIRESI:視えない未来』でスレンダーとむっちりの両立に挑戦するまで

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『ライザのアトリエ』は「むっちり感」を追求する立場として参考になった作品

──ヒョルラさんのイラストは独特の世界観を持っていらっしゃるように見えるのですが、ヒョルラさんが憧れていたり、自身の作風に影響を及したクリエイターっていらっしゃるのでしょうか。

ヒョルラ氏:
まず、イラストに興味を持つきっかけでもあり、SHIFT UPでの先輩でもあったヒョンテさんの名前を挙げさせてください。

私がまだ10代のころ、韓国のゲームイラストは、実写に基づいたリアルなスタイルが主流でした。そのため、私には魅力的な色合いの作品があまり多くないように見えました。

美術的、光学的原理に基づいていながらも魅力的な色合いを見せてくれるヒョンテさんのスタイルは、イラストを学んでいくなかで多くの参考になりました。

──ヒョンテさん以外に、影響を受けたクリエイターはいらっしゃいますか?

ヒョルラ氏:
絵を描く技術が高く、センスがあり、確固たるスタイルをお持ちの方の作品は見るのが好きですし、自分にとっての刺激にもなりますね。MandRillさん、Rellaさん、零さん、摸鱼斋さんのイラストはとても勉強になります。

──そういった方々のイラストをご覧になる際、どのような点に注目されているのでしょうか。

ヒョルラ氏:
キャラクターのイラストだけに限定しても、魅力的な顔を描くことはもちろん、身体をどのように表現するのかも大事です。

そのためには、人体への高い理解度が必要不可欠になります。本来は動くべきではない角度に動いてしまうと違和感が出てしまう。人体の構造を理解していないと、自然なポージングは描けません。

ほかにも、色彩設計、光と影のコントラスト、構図など、見るべき点は多岐にわたります。ただ、どんなに実力のある方でも、それらすべてを高いレベルで満たすのは極めて難しいことです。

この方は顔の表現に注力している、この方は配置が得意など、どのイラストレーターの方も、自分の得意領域があります。そこを重点的に見るようにしていますね。

──なるほど。それぞれのイラストレーターの強みに焦点を当ててご覧になっているわけですね。

ヒョルラ氏:
あと、イラストではないのですが、作品作りをするうえでの自身の価値観に影響を受けたと言えるのが、寺沢大介先生の『将太の寿司』と島本和彦先生の『吼えろペン』でしょうか。

──どちらも漫画作品ですよね。どのような描写から、どのような影響を受けたのでしょう。

ヒョルラ氏:
『将太の寿司』は、全国大会編での大年寺三郎太との対決エピソードで、石に匹敵する硬さを持つあわびをすりおろしてとろろを作るシーンです。

ひとつの料理(作品)に信じられないほどの手間をかける姿を見て、「ああ、絵もこのように描かなければ」と強く感じました。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。

──では、『吼えろペン』についてはいかがでしょうか。

ヒョルラ氏:
『吼えろペン』は、完璧主義的なミュージシャンに、主人公が「駄作を作る勇気を持て」と一喝する場面です。

自分が納得するまで修正を重ねる私のスタイルは、どうしても完成までに時間と手間がかかり、自身の作業の遅さにもどかしさを感じることも多かったです。

とはいえ、仕事で締め切りの日程が決まっていれば、時間内で納得できるクオリティにまで持っていき、作品を完成させなければいけませんよね。そんなとき、いつも思い出しては勇気をもらっているエピソードなんです。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。

──影響とは少し意味合いが変わりますが、ヒョルラさんの目から見て「キャラクターの見た目が魅力的」に感じるゲームがあれば教えていただけないでしょうか。

ヒョルラ氏:
見た目というか、服飾デザインが優れていると感じるゲームになりますが、KURO GAMESの『パニシング:グレイレイヴン』とHoYoverseの『ゼンレスゾーンゼロ』です。『パニシング:グレイレイヴン』はSFベースのデザインがとても素敵で、『ゼンレスゾーンゼロ』はコンセプトがよく感じられます。

日本のゲームですと 『ライザのアトリエ』はとても印象に残っています。一説には、キャラクターデザインひとつで売り上げを大きく変えたと言われるほどのビジュアルはすごく魅力的です。「むっちり感」を追求する立場としても、あのような試みやこだわりはとても参考になりました。

新作『MIRESI:視えない未来』では、スレンダーとむっちりの両立に挑戦している

──そんなヒョルラさんが、現在アートディレクターを務めているのが『MIRESI:視えない未来』という作品とのことで、ここからはゲームについてお話をおうかがいできればと思うのですが……本作に登場するキャラクターたち、率直にむちむちな質感がすごいことになっていますね。

ヒョルラ氏:
ありがとうございます。アートチーム全体としては、高いクオリティなのはもちろん、我々だからこそ作れる個性的なキャラクターを届けられるように開発を進めています。

──その個性こそが、このむちむちな質感なわけですね。たとえば、エンデというキャラクターは、上半身はスレンダーなのに対して、下半身は対照的にボリューム豊かになっているのが印象的です。

ヒョルラ氏:
人間は、キャラクターを見るとき、顔から下へと視線が移っていくと思います。もし、上半身の主張が激しかった場合、最初の印象から「むっちり感」を抱きやすいですよね。

そこで、上半身はスレンダーに見せつつ、下半身をしっかりと肉付けして描くことで、私の追及するアートスタイルと、スレンダーなキャラクターが好きな方にも刺さるシルエットを両立させようと試みました。

私自身は「むっちり感」を押し出しているイラストレーターですので、その画風と多くの方の好みをうまく融合できたデザインだと、自分としては思っています。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。

──実際にキャラクターをデザインしていく際、具体的にはどのような工程で作り上げられていくのでしょうか。

ヒョルラ氏:
アプローチの仕方はさまざまですが、そのキャラクターによって「背景(内面)」が重要なのか、「能力」が際立っているのかなど、そのキャラクターにおいて強調すべき要素を、見極めることから始めます。

たとえば、花に関連するキャラクターであれば、その花をどう衣装やヘアスタイルに落としこむかが大事になってきますよね。

なにより、目、鼻、口の形はもちろん、身体の各パーツ、服装やアクセサリに至ってまで、そのキャラクターの特徴を際立たせられるようにデザインを考えていくことが大事だと思います。

──では、本作のキャラクターを例に、具体的なデザインプロセスを教えていただけますか? たとえば、エンデはどのようにデザインされたのでしょうか?

ヒョルラ氏:
エンデは「森の魔法使い」という初期設定なのですが、実際には時間を操る能力を持った魔法使いなんですよ。

通常、「森の魔法」となると、緑色を基調にしたり、木のモチーフを多用したりするのが定番なのですが、今回はあえてそういった表現は避けているんです。

彼女の性格は、普段は落ち着いていつつも、主人公が関わると冷静な判断ができなくなる二面性を持っています。

そこで、ネイビーを基調にすることでクールさを演出しつつ、森の魔法を使えるギミックとして木のデザインを取り入れました。ちなみに、これは私の頭の中にある裏設定ですが、彼女の頭についている白い花はヘアピンではなく、彼女自身から生えているものとして描いているんですよ。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。
エンデ。

──おもしろい裏設定ですね。他のキャラクターはいかがでしょうか? たとえばイツカは、かなり現代的なデザインに見えますが。

ヒョルラ氏:
イツカは「元気はつらつなギャルで忍者」という初期コンセプトでした。ギャル要素と忍者要素のどちらを際立たせるか悩みましたが、彼女の元気な性格を前面に出すため、「ギャル」をメインに据えることにしました。

オーバーサイズのジャケットや派手なマスク、リボンやネイルといったギャルファッションの要素をふんだんに取り入れつつ、忍者の要素として着物のテイストや網タイツを加えてキャラクターを完成させました。

──網タイツが忍者要素なんですか……?

ヒョルラ氏:
じつはこの網タイツは現代のコスプレ衣装を参考にしたんです。

なぜ忍者と網タイツが結びついているのか調べてみると、忍者が服の下に着ていた「鎖帷子(くさりかたびら)」のイメージから来ているのではないか、という説があるそうなんです。

意外にも「鎖帷子(くさりかたびら)」というクラシックな要素がベースにあったので、そこから発想を広げて、網タイツとして積極的に表現してみることにしたんです。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。
イツカ。

── 勉強になります。では、ティエリアについてもデザインの意図を教えていただけますか?

ヒョルラ氏:
彼女の初期設定は「修道女」でした。

彼女は、重い病にかかり、当時の技術では治療が難しかったためコールドスリープ状態に入りました。そして時を経て、「未来の疑似科学を信奉する教団の技術」によってサイボーグ手術を受け、再び蘇る──そんな背景を持っています。病を患っていたことから、身体の一部パーツは「細胞」をイメージして描いています。

また、ティエリアはすごく礼儀正しく話すから気づきにくいんですけど、実は精神的には幼くて、すごく女の子らしいところがあるキャラクターなんですよ。この精神と身体のギャップを表現するため、あえて身体のシルエットやパーツは大きくデザインしました。

性格は基本的に臆病ですが、主人公と話したり戦闘になったりすると、目が赤くなるなど豹変する一面も持っています。ヘアスタイルは全体的に落ち着かせ、対照的に武器は非常に大きくすることで、そのミスマッチ感をデザインに落とし込んでいます。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。
ティエリア。

まずキャラクターを好きになってもらえるのが「いい露出」。露骨な露出ではなく、フェティシズムを刺激するキャラクターのビジュアルを目指す

──本作は日本市場も意識されていると思いますが、ヒョルラさんから見て、日本のユーザーにはどのような特徴があると思いますか?

ヒョルラ氏:
日本市場のユーザーのみなさんは、かわいらしい漫画的なビジュアルが好まれているように見えます。

私自身、『デスティニーチャイルド』や『勝利の女神:NIKKE』に参加したときと比べて、漫画的なビジュアルを意識して調整している部分はありますが、依然として私の絵柄は独特なのもあります。

そのため、本音を言うと、日本のユーザーのみなさんに受け入れてもらえるか期待半分、不安半分といった感じです。

──間違っていたらすいません。本作の魅力の核として美少女キャラクターのビジュアルがあり、衣装の過激さがセールスポイントのように感じたのですが、その認識であっていますでしょうか?

ヒョルラ氏:
ゲーム全体の方針としては、大人の事情もありますから、キャラクターによって露出が多いキャラ、露出が少ないキャラ、それぞれいます。

ただ、私個人としては、露骨な露出表現はしたくないと考えています。それよりも「フェティシズムを刺激する」方向性を目指しています。

──「フェティシズムを刺激する」とは、具体的にどのような表現を指すのでしょう。

ヒョルラ氏:
先ほど紹介したティエリアをご覧ください。一部、露出が激しい部分もありますが、じつは全体としてみると露出は抑えられているんです。これは彼女の臆病な性格を考えて、「隠すところは隠す」チラリズムを意識した結果です。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。
たしかに肌と服の割合だけ見ると「隠れている」。

──なるほど。キャラクター性を表現するための露出、ということですね。

ヒョルラ氏:
ええ。たとえ、露出面積じたいが激しい衣装のキャラクターがいたとしても、キャラクター性がまず連想できるデザインであれば、ユーザーは露出よりもまずはそのキャラクターを好きになり、その後に露出という要素に気づく。この順番こそ、露骨ではない「いい露出」だと考えています。

──いい露出ですか……高度な概念ですね。他にもどのようなキャラクターが登場するのか楽しみです。それでは最後に、日本のユーザーに向けてのメッセージをいただいて締めの言葉とさせてください。

ヒョルラ氏:
『MIRESI:視えない未来』は「タイムトラベル」が中心に物語が展開される作品です。

このテーマに対してデザインとして、どのようにアプローチするかは、非常に難題でした。悩んだ末、「時間旅行」によって、本来なら並存するはずのない他の時間帯の文明が混ざった表現はどうか? と思うようになりました。

「異なる時代の交差」を意味する「クロスエラ(Cross Era)」。これが私たちのデザインにおいて重要な概念となっています。

もしかしたら『MIRESI:視えない未来』のコンセプトやビジュアルは、少し見慣れないものに感じる方もいるかもしれません。ですが、この世界観やキャラクターに少しでも興味を持っていただけたなら、本当にうれしく思います。

本作はまだ準備中のタイトルですが、これからも日本のユーザーのみなさんに好んでいただけるようなものを作っていきたいと考えています。みなさんに愛される作品を目指して全力を尽くしますので、どうぞよろしくお願いします。

『MIRESI:視えない未来』アートディレクター・ヒョルラ氏インタビュー。


今回のインタビューは、太ももに心を奪われてイラストを描き始めたひとりのイラストレーターの人生に焦点を当て、太ももへの想いや狂気的なまでのこだわりに迫るものとなった。

とくに印象に残っているのが、ヒョルラ氏がイラストの勉強を始めたきっかけを作ったのが、『デスティニーチャイルド』や『勝利の女神:NIKKE』のキャラクターデザインを担当したことでも知られるキム・ヒョンテ氏のイラストだったという事実だ。

その後、ヒョルラ氏はキム・ヒョンテ氏が代表を務めるSHIFT UPに入社。『デスティニーチャイルド』や『勝利の女神:NIKKE』の制作に携わるようになる。太ももを媒体としたこの出会いに、運命の巡り合わせを感じた。

さて、そんなヒョルラ氏が現在アートディレクターを務め、2026年リリース(予定)に向けて制作中なのが、『MIRESI:視えない未来』。公式Xアカウントも開設され、今後、作品の最新情報が更新されていくはずだ。気になる方はフォローしておくといいだろう。

近年、刺激的なビジュアルを携えてリリースされる中国、韓国発のゲームは、日本でも強い存在感を放っている。恐らく本作もそのうちのひとつにカウントされる作品となることが予想される。

ヒョルラ氏が目指す「フェティシズムを刺激する」方針のもと、今後どのようなキャラクターがその姿を見せてくれるのか。いちメディアの人間としても、紳士的な目線でも、楽しみだ。

なお、『MIRESI:視えない未来』は9月25日~9月28日に幕張メッセで開催される東京ゲームショウ2025(TGS2025)への出展を発表している。8月29日より特設サイトもオープンしているので、気になった方はあわせてチェックしてみてほしい。

© Smilegate. All Rights Reserved.

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編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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