サバイバルホラーの金字塔『バイオハザード』シリーズの最新作、『バイオハザード レクイエム』(以下、レクイエム)。
東京ゲームショウ2025では大きな注目を集め、日本ゲーム大賞2025の「フューチャー部門」も受賞した本作は、『バイオハザード7』以来の恐怖路線を継承しつつ、新たな主人公グレース・アッシュクロフトの視点を通して、シリーズ初心者でも楽しめるよう工夫がなされている。
本稿では、レクイエムの開発者へ行った合同インタビューの内容をお届けする。極度のビビりだという主人公グレースの人物設定や、恐怖表現へのこだわり、そしてレクイエムが目指すサバイバルホラーのありかたなどを語っていただいた。
バイオシリーズの入門用としても適しているそうなので、ホラーゲームに興味はあるけど、怖いから尻込みしていたような未経験者も、ぜひ一読してほしい。

文/kawasaki
非常に“ビビり”な主人公・グレースのキャラクター設定について
──レクイエムの主人公のグレースは怖がりという設定です。ホラーゲームって、人によってはとことん苦手なジャンルだと思いますが、そういった人でも親近感を抱けそうだと思いました。未経験者も遊んでもらいたいという狙いがあったのでしょうか?
中西氏:
狙い、というと嫌らしい言い方ですが(苦笑)、主人公のグレースが“怖がり”という設定は、ホラーゲームに不慣れなプレイヤーが共感しやすく、今作におけるポイントのひとつです。
グレースはゲーム序盤では、めっちゃビビって逃げたり隠れたりすることが多いのですが、次第にさまざまな形で戦う手段を見つけて乗り越えていくようになります。なんなら、ちょっとキレるぐらいに(笑)。
そういった経験を経て、最終的に強敵を倒す気持ちよさは、今作ならではの大きな魅力だと思っていて。初心者やホラーゲームが苦手な人でも、グレースと一緒に成長していってくれると嬉しいですね。
──いっぽうで、レクイエムのバックグラウンドストーリーでは、従来シリーズとのつながりも意識されています。「熱心なファンじゃないと楽しめないのかな……?」と敬遠されてしまうことに対しては、どのようにお考えですか。
中西氏:
これはキッパリと明言しておきますが、レクイエムはバイオハザードの過去作を一切知らなくても、ストーリーやゲーム体験を100パーセント楽しめます。そのうえで、過去シリーズ作の設定や登場人物などを知っていると、より深く楽しめる造りにしています。
ですので、レクイエムをきっかけにバイオシリーズ興味を持って、ほかの過去作に触れてほしいですね。あるいは、過去シリーズ作を今のうちに予習することで、レクイエムをプレイしたときに、「あの時のアレか!」といったふうに楽しめるでしょう。
──デモ版で見られるグレースは動きがたどたどしいですが、ゲーム中盤以降になると、モーションそのものが変わったりするのでしょうか?
中西氏:
急にダッシュが超早くなる、なんてことはないですが、走る速度などは若干変わりますね。
──体験版のデモプレイを見た人のなかには、「ずっとこのスピードなのかな?」と思った人もいたかもしれませんが、そうではないと。
中西氏:
従来のバイオシリーズ作にもいえますが、ホラー的なシチュエーションでは、もどかしさを演出するために動きを少し遅めにすることがあります。たとえば、悪夢のなかって走るのが遅かったりしますし。それぞれのシチュエーションの体験を楽しんでいただくために、速度なども含め細かく調整しています。
──グレースのFBI分析官という設定が、ゲーム内の何かしらのシステムに関与しているのでしょうか?
中西氏:
FBI分析官という設定は、どちらかというとゲーム内におけるグレースの立ち位置を表す情報です。たとえばホラー的な状況を、いろいろと頭を使って少ないアイテムを駆使して乗り越えるのは、プレイヤーが考える領域だと思いますので。
レクイエムにおけるゲーム体験について
──今作の舞台はラクーンシティとのことですが、昔のロケーションが変わり果てた光景で登場する、といった状況は起こりうるのでしょうか?
中西氏:
誤解されてる方がいるので、この場を借りて申し上げますと、今回のデモプレイにおける舞台はラクーンシティではありません。現時点で詳しくお伝えしてしまうと、プレイヤーの楽しみを失ってしまうので詳細は伏せますが、全然違うロケ―ションです。
──登場する武器のバリエーションについて、話せる範囲でお願いします。
中西氏:
先日公開した2ndトレーラーのなかに、いかつい銃が登場しますが、あれは今回のレクイエムを象徴する武器として作っています。華奢でビビりの女の子が、あの男臭い銃で戦うのって、ある種のロマンがあるというか(笑)。
──ちなみに近接タイプの武器は登場しますか?
中西氏:
ええ、ナイフのような定番アイテムは当然出てきますし、それに類するようなものも、いろいろと用意しています。
──武器のカスタマイズ要素はありますか?
中西氏:
はい、あります。
もっとも、それらの情報をインタビューのやりとりだけで説明しても、正直いって物足りないですよね。それらの関連動画を公開するタイミングで、あらためて説明するほうがいいんじゃないかなと思います。いずれお伝えしますので、ぜひご期待ください。
──今作におけるアクションとホラーの比率は、どれくらいのバランスなのでしょうか。
中西氏:
今回の試遊台はゲーム序盤で、主人公のグレースが戦う手段がなく、逃げるか隠れかするしかないような状態です。つまりホラーに特化した内容になります。そして、その後のグレースは武器などで戦う手段を手に入れます。
ゲーム全体として見ると、どちらかというと、じっくりと探索を楽しみつつゾンビとの戦闘を行うサバイバルホラーになりますね。
──先日開催されたgamescomの来場客と、今回の東京ゲームショウの来場客の反応を見比べて、目立った違いなどはありましたか。
熊澤氏:
レクイエムでは主人公のカメラワークを、一人称視点と三人称視点でチェンジできます。これに関してですが、東京ゲームショウの来場客のほうが、三人称視点を選ぶ人が若干多い印象ですね。
──それは、どういった理由からなのでしょうか?
中西氏:
想像ですが、それぞれの国の皆さんが培った、ゲーム経験の違いがあるのかなと。
たとえば、中高生の頃に遊んでいたのがWindows PCの『DOOM』だったのか、あるいはファミコンで『ドラゴンクエスト』だったのか。そういった違いは大きいのかなと思います。
──海外ではFPSに慣れている人が多いから、レクイエムでも自然と一人称視点でプレイする人が多い、と。
中西氏:
でも、いまどきの日本の若い子は、『マインクラフト』や『エーペックスレジェンズ』を普通に遊んでますよね。
こういった世代が年齢を重ねることで、ゆくゆくは変わってくるんじゃないかなという気もします。これに関しては個人的に興味があるので、どなたかきちんと分析してもらえると嬉しいですね。
──gamescomのフィードバックで印象に残ってることはありますか?
中西氏:
海外でフィードバックくれるお客さんって、ものすごく細かい部分を見ていただいてるんですよ。「この場面で使ってるテクスチャについて詳しく教えてください」とか、「電球の明かりによる曇り加減の描写がパーフェクトだ!」とか。
そういった声をいただくのは開発者として嬉しいですね(笑)。
──気が早い話ですが、クリア後の周回プレイや、やり込み要素についてはいかがでしょうか。
中西氏:
従来のシリーズ作で実装されているものは、同じように用意しています。
それと、レクイエムならではという意味では、同じストーリーラインでも、一人称視点・三人称視点でプレイフィールが全然違ってくるんです。なので、クリア後は違う視点でもプレイしてもらえると、新しい発見があるかと思いますよ。
グラフィックスやマルチプラットフォーム面の技術面について
──今作はマルチプラットフォームで展開されますが、映像表現などがハードによって違いが出ないように、特別な工夫はされていますか?
中西氏:
現在のカプコンのタイトルは、最初からPCを含むマルチプラットフォーム展開を前提で考えています。つまり、ゲームの主な要素や体験は、プラットフォームによって違いはありません。そのうえで、プラットフォームに応じて、解像度やフレームレートなどを調整しています。
とくにPCは、人によってマシンスペックが全然違うんです。このように幅広いプレイ環境ても、ゲームの主な要素を同じように楽しめるように気を付けています。
──グラフィックス面では、どういった部分に特にこだわっていますか?
中西氏:
ぱっと見で分かりやすいのは、光や闇の表現ですね。
ひとくちに“暗闇”といっても、光の見え方とか、階調の加減とか、結構いろいろな違いがあるんです。今作ではレイトレースやパストレーシングを使うなど、従来のシリーズ作よりこだわっています。
熊澤氏:
グレースは非常にビビりで、緊張で油汗を流すことがあるんですが、このときの映像表現はプレイヤーの感情を存分に煽ってくれると思いますよ。
2026年2月にバイオシリーズは30周年
──以前のインタビューで、“レクイエムは1つの区切り”、といった意味合いのことをおっしゃってました。そして本作の発売予定となる2026年2月は、バイオシリーズの30周年です。大きな節目となる見通しですが、これに向けて今後何かを行う予定はありますか?
熊澤氏:
えーと、そうですね……。
今回のTGS期間中に、レクイエムのステージイベントを行うので、ぜひ、それをご覧いただきたいです(笑)。
──30周年を迎える本シリーズで、今後行いたいことはありますか?
中西氏:
いまは、レクイエムを完成させることに専念しています。
その先の展開について考える余裕は、いまは無いですね。
熊澤氏:
私としては、30周年を迎えても、バイオシリーズを末永く展開していきたいです。
また、それ以上に、プレイヤーに“新しい体験”を届けたいという気持ちが強いですね。
<了>