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『うたわれるもの』『ToHeart』のアクアプラスが「プロレスゲーム」で有名なユークスの子会社に──どういう組み合わせ!? と思ったら、両社の“強み”を活かした協力体制が実現しそうだった。2社の社長たちに「なぜ」と「これから」をズバリ聞くインタビュー

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『ToHeart』の続編は「やりたいけど難しい」。2Dと3Dのせめぎ合い

──アクアプラス作品ですと、『ToHeart』の続編についてはいかがでしょう。新しいものが2025年に発売されましたが、続編を望んでいるファンの方も多いと思います。

谷口氏:
じゃあ、やる方針で(笑)。

下川氏:
ちょっと待ってください(笑)。

確かに、『ToHeart』の続編についての要望はあります。そういった声にお応えしたくて、途中まで企画が進んだこともあったんですよ。でもそこで「これ、面白くなる?」という疑問が浮かび一度中断しました。

『ToHeart』については、『1』『2』でたくさんのキャラクターを出してきて、ネタが被らないように、なおかつ妥協のない面白いものをやれたと思っています。

でも、そこからさらに続編や新作となると、過去作を越えられるようなアイデアをキャラの人数分揃えないといけないわけです。デザイン面でも、『ToHeart』だと春っぽいイメージがあって、制服の色はピンクでとなると、シナリオどころかデザインの差別化も結構難しいなぁと。

かといって『ToHeart』というタイトルをつけて、全くイメージの違う学園ものを出すというのも、みんなが求めているものじゃないですよね。ですから簡単に「やる方針で」とはできなくて。

やりたい気持ちはありますし、背中を押していただけるのは嬉しいですけどね。『ToHeart』とは違う世界の学園ものとかならもう少しハードルが下がるのですが……。でも『3』を見たいという気持ちもよくわかります。

ユークス×アクアプラス両社長インタビュー。買収について「なぜ」と「これから」をズバリ聞いた_010

──いつか遊んでみたいです。『ダンジョントラベラーズ』シリーズの続編についてはいかがでしょう。

下川氏:
あの作品はダンジョンRPGということで、ゲーム部分にいつも以上に力を入れた作品なんです。ただ、新作をやるとなると大きな課題がありまして。

というのも、この作品はキャラクターが多いうえに、クラスチェンジで絵柄が変わるということもあって、実はデザイン面でものすごい時間のかかったゲームなんです。新作を出すとしたら、この課題にどう向き合うかですね。

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『ダンジョントラベラーズ』シリーズは、キャラクターの数と“クラス”の多さから、デザインのボリュームが膨大になってしまったそう。

谷口氏:
2Dでは時間のかかるところも、3Dなら解決できる部分がありそうですね。お客さんが望んでいるかどうかを判断してから進める必要があるので、仮定の話ですが。でも、アクアプラスが課題として考えている部分を、ユークスの技術でなんとかできるかもしれないという場面はこれから出てきそうですね。

実はユークス側としては、アクアプラスと一緒にやっていくことにそこまで大きな驚きはないんです。事前に説明していたこともありますし、色々なゲームに携わってきたので、「新しいことがやれそう」と思ってくれているスタッフも多いですね。全く違うことをやってきたように見える2社ですが「人の心を動かすゲーム」を作ろうとしているのは同じなんですよね。

実は我々ユークスも最初、「人の喜怒哀楽」を刺激したいというところからスタートしたんですよ。我々は3Dでプロレスを選び、アクアプラスさんは2Dで美少女を選んだという、大きすぎる違いはありますが(笑)。でも、アクアプラスさんも最近は3D表現にも力を入れていますよね。

下川氏:
これは悩ましいところなんです。2Dの絵でスタートした僕たちのファンって、ゲームの中でも2Dの絵を見たい人が多いのかなと。昨年出した新しい『ToHeart』ですが、これは新しく描き起こした2Dのイラストをもとにして、ゲーム内では3Dで描写した作品でした。

褒めてくれる方も多かったのですが、いっぽうで「2Dのイラストが見たい」という方もいらっしゃって。今後どうしたものかと考えていますね。どちらの表現もやっていきたいと思ってはいますが。

谷口氏:
もともと3D用に描かれていない2Dのキャラクターを3Dにするのって、技術の進化とは関係なく難しい部分もありますからね。不気味の谷に陥りがちですし。いっそ、2社で本気のトゥーン調のゲームを作るというのも面白いかもしれませんね。

下川氏:
最初から3Dを意識してキャラクターをデザインしていくということをやって、さらに今までにないようなものを作れたなら、驚きながらも受け入れてもらえますかね? やっぱり大作クラスのRPGを……(笑)。

──『ToHeart2』のリマスターやリメイクについては検討されているのでしょうか。

下川氏:
『ToHeart2』についてはまずリマスター版をやりたいと思っています。これも現行の多くのハードで遊べない作品になっていますからね。

リメイクをするかはまだわかりませんが、ユークスさんと何かできないか話し合ってみたいです。

アクアプラス作品のCGライブを見られるかも?

──ユークスさんはCGライブやXRの制作も手掛けていますが、こちらの方面でアクアプラスのコンテンツを活かしていく可能性はあるのでしょうか。かなりシナジーのある分野だとも思うのですが。

谷口氏:
実際にやるかどうかはまだ決まっていませんが、盛り上がりそうなことができるのなら取り組んでいきたいですね。ユークスには「ALiS ZERO(アリスゼロ)」という、モーションキャプチャーデータをリアルタイムかつ高精度にCGデータとしてアウトプットする技術があります。これはもっと使っていきたいと思っているので、アクアプラスのコンテンツでも実現していきたいですね。

CGモデルを作るところはそれなりに工数が必要になると思います。ですが、一度モデルを作れば、衣装を変えるということには対応しやすいんですよ。それに、モデルを作るということは、ゲームにも入れやすくなるはずです。先ほど話題に出ていたリメイクやリマスターのときにも活用できるかもしれませんね。

下川氏:
アクアプラスとしても、いろいろなリアルイベントは継続していくつもりです。CGライブは凄く興味がありますね。もし『WHITE ALBUM2』なんかで実現できたら最高でしょうね。

ちなみにCGのライブとなると、演者が出るライブとはまた違った準備が必要ですよね?

谷口氏:
そうですね。誤解されがちですが、XRライブは「コストを抑えるための手法」というよりも、「クオリティを追求するための表現手段」だと考えています。

声優さんや歌い手さんが実際に現場に立つのはもちろん、リアルタイムで動きを反映させるモーションキャプチャーのスタッフなど、多くの専門スタッフが関わります。その結果、リアルなライブ以上に多くの人が制作に携わります。

また、映像を投影するフィルムも一回限りの使用となる高品質なものを用いるなど、細部までこだわることで、XRならではの没入感や表現力を実現しています。

下川氏:
そうなんですね。ちなみにイベントの収支についてですけど、ウチはイベントをいろいろ開催してきた中で、ライブとかイベントは赤字でもいいかなと考えているんですよ。

そのライブやイベント単体だけを見ると赤字だけど、そのコンテンツ、そのメーカー全体の収益で見るとどうなのかということを見ていく必要があると思っています。

たとえライブが500万円の赤字でも、そのライブをやったことでコンテンツの人気が高まったり、維持できたりして、ゲームが売れてくれるということも多いですから。

谷口氏:
「儲からないからやめる」というのはもっともな判断かもしれませんけれど、エンターテインメントの世界はそれじゃ割り切れないですよね。

下川氏:
IPの息を長くするということにこだわってやるのが大事ですね。ソフトやグッズが長く売れますし。

谷口氏:
アクアプラスのグッズは、どういう方針で作られているのでしょう。ウチもグッズ展開をやったことがあるのですが、そのときは難しい分野だと思いました。

下川氏:
グッズについては、ファンの方々が「欲しいものかどうか」を考えるようにしています。

もちろんクオリティも大事なんですが、いくら高品質でも、欲しくないものだとやっぱり刺さらないんです。極端な話、欲しいものであれば、多少値段が高くても満足していただけるんですよ。例えば複製原画や抱き枕カバー等はそういう側面がある商品だと思います。

ユークスの技術とアクアプラスのIPで新しい価値を生み出すタイトルに挑戦

──今年予定されている動きについても伺います。アクアプラスさんの『うたわれるもの 白への道標』は2026年5月28日発売予定とのことですが、現在の開発状況はいかがでしょうか。

下川氏:
2025年から延期させていただきましたが、発売日に向けて鋭意制作中です。延期して順調というのは変な話ですが、ユークスさんのおかげでNintendo Switch 2でも遊べるようになりますし、楽しみにしていてください。

──『うたわれるもの 白への道標』はシリーズ最新作となりますが、過去作を遊んでおいたほうが良いのでしょうか。

下川氏:
いえ、過去作を遊ばなくても十分楽しめるように作っています。これはシリーズものを作るときにいつも考えていることなんですが「過去作をやっていなくても楽しめるシナリオ」がコンセプトになっています。

僕たちとしては、三国志のような長い歴史の物語を描いていると思っているんです。たとえば、歴史の一部分を切り取ってドラマにしたものってエンタメとして成立しますよね。その感覚に近いです。ただ、過去作を遊んで長い歴史の他の部分を知っていると、新しい気づきがあるという作りになっています。

個人的にはシリーズ第一作の『散りゆく者への子守唄』が好きという方にはぜひ触れてみて欲しいですね。

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『うたわれるもの 白への道標』はシリーズ作品ではあるものの、本作から遊んでも問題なく楽しめる作品に仕上がっているそうだ。

──2015年に制作中止となり、2024年に開発再開が発表されていた『ジャスミン』についてはいかがでしょうか。

下川氏:
『ジャスミン』の制作も順調に進んでいます。シナリオは完成に近づいていますね。『うたわれるもの 白への道標』と違ってノベルゲームなので、ゲームを作るパーツが揃ってから組み上がるまでは早いと思います。

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メインビジュアルが公開されている『ジャスミン』はシナリオがほぼ出来上がっているそう。

谷口氏:
早いタイミングで、ノベルゲーム向けのエンジンを我々ユークスで新しく作ろうと思っています。アクアプラスが得意としているノベルゲームを出すときに効率化が図れるでしょうし、制作費の面でも助けになるはずです。

こうした仕組みを作ることで「早くて安い」開発ができるのもユークスの強みだと思っています。大手さんがすごいお金をかけて作るようなものでも、仕組みづくりや効率化が得意なユークスは「早く安く」仕上げてきています。

下川氏:
「早くて安い」って、「安かろう悪かろう」みたいな安いものには裏があるみたいなイメージもありますが、ゲーム業界の制作費に関しては「早くて安い」って技術がないと無理なんですよ。技術力がないと逆に「遅くて高い」になりがちですから。

──アクアプラスの強みは変わらず、両社で新しいことにも挑む姿勢が伝わりました。ファンの皆さんも安心できそうです。

下川氏:
僕たちアクアプラス側も、対話することで安心していったような部分もあるんです。最初は本当に「プロレスゲームの会社がどうして?」というところからのスタートでしたし。

あ、でも『封神領域 エルツヴァーユ』は知っていましたよ。ストーリーに力を入れているゲームで、声優さんの揃え方などが、当時印象的でした。

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初代プレイステーション時代に発売された『封神領域 エルツヴァーユ』(1999年)。ドラマティックなストーリーと独自性のあるルールの格闘ゲームが融合した作品だ。

谷口氏:
『封神領域 エルツヴァーユ』は、ユークスが成長軌道に乗り始めた時期に挑戦したタイトルのひとつです。当時やりたかった表現やアイデアを詰め込んだ意欲作でした。結果として国内での売り上げは大きく伸びませんでしたが、この経験を通じて、自社IPや自社ならではのものづくりに取り組みたいという想いは、より一層強くなっていきました。

そうした想いを抱き続けながら、長年ゲームの自社IPに取り組んでこなかったユークスにとって、強いIPを持つアクアプラスさんが加わってくれたことは、大きな刺激であり、非常に心強い存在です。

まずはユークス側から「こういうことができる」という強みをしっかり伝え、アクアプラスさんが思い描く表現や挑戦を形にしていきたいですね。さらに、将来的には両社でまったく新しい価値を生み出すタイトルにも挑戦していければと考えています。

下川氏:
技術力のあるユークスさんがいてくれるのはありがたいですね。「もう少し早いタイミングで一緒になっていればあんなこともできたかな」と思うこともあるくらいです。

親会社が変わったことで、アクアプラスやユークスさんの意思とは関係なく変えなければならないことはいくつかありましたが、発売予定の作品などに悪い影響はありません。むしろ、より良いものになると思います。

これからは、この2社だからこそできる新しい体制だからこそできることを考えていくのが楽しみですね。

──ありがとうございました。今後の発表にも期待しております。(了)

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ユークスとアクアプラス。歩んできた道があまりにも異なるため、買収のニュースを目にした際は「今後どうなってしまうのか」と心配したゲームファンも多かったのではないだろうか。しかし、谷口社長と下川社長の対話は実に和やかで、明るい未来を予感させる時間となった。

一見すると交わることのなさそうな2社のタッグだが、インタビューを通して、極めて理にかなった補完関係にあることが見えてきた。3D開発のノウハウと効率化の技術を持ちながら自社IPの創出を課題としていたユークスと、強固なIPとシナリオ制作力を持ちながら現代の多様なプラットフォーム展開や3D表現に課題を抱えていたアクアプラス。「どういう組み合わせ?」という当初の疑問は、話を聞くうちに「なるほど」という納得へと変わっていった。

とくに印象的だったのは、谷口社長が下川社長の話をとても楽しそうに聞いていたことだ。「シナリオは複数人で数年かけて制作する」「『ToHeart』の新作を作る難しさ」といったアクアプラス特有の文化に驚きつつも、深く頷き、理解を示し、時には熱心に質問を投げかけていた。

本インタビューでは、ユークス側から「アクアプラスの個性や良いところを奪うようなことはしない」という言葉も語られた。それぞれの持つ個性はそのままに、従来の持ち味を活かした作品は今後もリリースされていくだろう。

互いの「できないこと」を補い合い、「やりたいこと」を実現していくという、純粋なゲーム作りの姿勢がそこにはあった。

「お互いにやってきたことが違う会社だからこそ新しいことができる」。それぞれの強みを損なうことなく結成されたこの理想的なタッグが、次にどんな新作を見せてくれるのか。両社の今後の動向に、大いに期待が高まる。

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ライター
ゲームを最大限に楽しむ集団「Goziline」主催。ゲーム記事の執筆、イベントの企画などを行う。格闘ゲーム、RPG、ギャルゲー好き。ゲームライターと見せかけて、本業はインテリアデザイン。
Twitter:@asabataiga
編集・ライター
『The Elder Scrolls』や『Dragon Age』などの海外RPGをやり込むことで英語力を身に付ける。最も脳を焼かれたゲームキャラは『Mass Effect』のタリゾラ。 面白そうなものには何でも興味を抱くやっかいな性分のため、日々重量を増す欲しいものリストの圧力に苦しんでいる。

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