いま読まれている記事

『平成・VSシリーズ』ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏により『ゴジバト』でリブート! 映画のビオランテデザインは3日で決定? 当時の製作経緯とリブートデザインへの想いを聞く【『ゴジバト』5周年インタビュー】

article-thumbnail-260529a

1

2

スーツがなくなったとしても、ゴジラが持っている「愛着」をちゃんと拾い上げて、活かしていくべき

──西川先生に特撮の特徴をお聞きしたいのですが、2次元でデザインされた怪獣は立体のスーツになるわけですが、どのように立体化されていくのでしょうか。

西川氏:
特撮のデザインというのは、少し特殊な立ち位置にあります。アニメのように、描いた絵がそのまま最終的な完成形になるわけではありません。最終的な仕上がりは、造形に委ねられている部分が非常に大きいんです。

とくにビオランテのような複雑で有機的な形になると、平面の絵ですべてのディテールを表現しきるのは不可能です。ましてや当時は時間もありませんでした。デザイン画はあくまでひとつの工程に過ぎず、「造形担当者が形を判断できる、監督がデザインを見て指示を出せる」という段階まで持っていくのが、当時の制作体制の中では精一杯でした。

もちろんデザインの段階で考えられる限りのことは盛り込みますが、すべてを制御しきれるわけではありません。そこは造形の方々を信頼して、バトンを渡すという感覚に近いですね。ですので、スーツは造形家の個性やセンスに左右される面が多分にあります。

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_026

──造形家さんとの共同制作のような形になっていくのですね。

西川氏:
デザインが良いと評価される怪獣は、例外なく造形が良いんです。いくらデザイン画でがんばっても、最終的な造形が良くなければ、キャラクターとして評価されることはありません。

──スーツという物理的な構造から、CGを駆使して実写を介さずとも「ゴジラ」を作れるようになったいま、西川先生の目線から見て怪獣のデザインのあり方は、どう変わってきたと感じていらっしゃいますか?

西川氏:
スーツとは違って、デジタル表現はデザインの自由度がより高くなります。かつてのスーツ製作では、デザイン画を渡したあとは造形家の方が形にしてくれていました。当時はデザインから造形まで数ヵ月しかない中で毎年新作を作る時間的な制約に加えて物理的な限界もあり、デザイナーの思い通りにいかない部分もありました。

そのころに比べると、いまはCG技術を使えば3Dデータを緻密に設計できるわけですから、自分のイメージと違わないものが出来上がってきます。ただ、それが手放しで良いことなのかと言うと、それは別だとも感じています

──と、いいますと。

西川氏:
造形になるときに、自分の思ったものと違う形になることを楽しんでいた部分もあるんです。落胆することもあれば、想像以上のクオリティに驚くこともある。

実写の現場と同じです。爆破シーンの爆発が計算通りにいかなかったときでも、思いもよらない効果が生まれることもある。頭の中で計算し尽くしたものだけが、正解ではないんです。

それに、フルCGなどでスーツがなくなったとしても、ゴジラが持っている愛着のようなものを、ちゃんと拾い上げて活かしていくべきだと思うんです。

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_027
(画像は『ゴジラ VS ビオランテ』 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第17作目より)

──なるほど。その「愛着」とは、どのようなものなのでしょうか。

西川氏:
たとえば、スーツの中に人が入っていることは子どもだってわかっていますよね。でも、それは決して否定的な感情ではありません。

その感情の正体は何かといえば、愛着や自己投影であったりするのではないでしょうか。「ゴジラのようにビルを壊してみたい」と思えるのは、ゴジラがスーツで、動きのベースに人間の動きがあるからです。

もし、ゴジラが本物の動物のような動きをしていたら、獣が食欲などの本能で壊しているようにしか見えず、人間の破壊衝動を投影することはできないでしょう。

──すごく興味深い分析です。

西川氏:
昔からあるソフビ人形の文化も、与えた影響は大きいのではないかと考えています。

怪獣なのに、「人形」なんです。人間が入ることを前提に造形しているからこそ、どこか人型に近い。だからおもちゃになったときに妙に手に馴染むし、愛着が生まれたわけです。

──ちなみに、怪獣は空を飛ぶタイプ以外、すべて地に足をつけています。つまり、「立って歩く」ということで、「重心」を考える必要がありますよね。さらにいえば、怪獣は大きいからこその「重さ」も表現しなければならないわけで……。

西川氏:
私は美術大学で講師もしているのですが、その講義でよく重心について話しているんです。若い人たちに対してスーツ怪獣のデザインを通して伝えるのは、やはり重心のことですね。

スーツというのは、どんなに出鱈目なデザインであっても、中に人が入った瞬間に立てるようにバランスを取るわけです。

ですがCGは何もしなくても、どんな形であっても画面の中で立つことができてしまいます。しかし、それが観客にとっての違和感に繋がることがあるんです。「このバランスでは物理的に立てないだろう」という、無意識の認識からくる違和感ですね。

私は自分が描いたデザインが実際にスーツになり、中に人が入って動く様子を見てきたので、「この形なら重心はこのあたりになる」という肌感覚がありますが、これは誰もがすぐに理解できることではないかもしれません。

──なるほど。

西川氏:
重心がズレているのに立っているというのは、その世界に実在していないのと同じです。いわば幽霊のようなもので、実在感が損なわれてしまう。人間はそうした違和感を感覚的に察知してしまいます。だからこそ、そのなんとなく感じるものをしっかりと言語化し、論理立てて再構成できるようになるべきなんですね。「たとえCGであっても重心は大事だ」という話を、学生たちにしています。

──すごくよくわかりました。

西川氏:
もちろん、いまのCG技術は本当にすばらしく、『ゴジラ-1.0』などを見ても「ここまでできるようになったのか」と驚かされます。それは単に技術が進歩したからではなく、作っている人間がそれだけ深く観察し、情熱を反映させていることが伝わってくるからこそ、すごいと感じるんです。

CGに昔のスーツと同じものを求めても仕方がありません。そういった作り手の努力や意図が透けて見えるという点では、実写もCGも本質的には同じなのだと思っています

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_028
(画像は【予告】映画『ゴジラ-1.0』《大ヒット上映中》より)

──実際に制作の現場に携わってこられた西川先生から見て、時代の変遷とともにゴジラという存在はどのように変わっていったと思われますか?

西川氏:
変遷というよりも、むしろ「変わっていないこと」こそが強みだと思っています。

ゴジラが古代の恐竜の生き残りであるように、映画というジャンルにおいて、まさにシーラカンスのように進化せずに残っている部分があると感じるんです。

ゴジラが優れているのは、原点である第1作の時点でドラマやテーマを完璧に盛り込んでいた点にあります。だからこそ、いまでも高く評価されているのだと思うんです。

特撮映画の進化の歴史とは、その溝をどう埋めるかという試行錯誤の歴史でもあると思います。怪獣映画には「人間ドラマとリンクさせにくい」という構造的な課題がつねにあります。怪獣とは意志の疎通ができませんし、スケールの差も大きすぎるからこそ、人間ドラマと怪獣の場面が分断されてしまう。

怪獣と人間の意志を仲介する存在として「モスラ」が生まれ、ドラマを牽引する人間自身が巨大化して戦う『ウルトラマン』という形が生まれ、さらに『仮面ライダー』のように、変身によって見た目が変わるもののスケール自体は人間と同じ大きさになる。そのほうがドラマは作りやすく、ファン層も広がりやすいんです。

──おっしゃる通り、ゴジラは圧倒的に人間とは違う存在ですよね。

西川氏:
ほかのヒーローや怪獣が人間に歩み寄り、ドラマを作りやすい存在へと変化していった中で、ゴジラだけはずっと「人間と相容れない圧倒的な存在」のままです。これはいまやゴジラにしかできない役割になっています。一時期、人間に寄り添った時期もありましたし、それはそれで愛されている要素ではありますが(笑)。

ですが、手に負えないほど圧倒的な存在に対して人間が「何を考え、何をするか」という世界を描ける。そんな作品は、もうゴジラしか残っていないのではないかという気もしています。

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_029
(画像は「ゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第1作目より)

──その「人間と相容れない圧倒的な存在」であることに、我々は惹きつけられているのでしょうか。

西川氏:
そこには、人間の非力さを痛感する一種の「気持ち良さ」のようなものがある気がするんです

なんでも自分の責任でコントロールできるわけではない、自分たちはちっぽけな存在なんだと感じたい……。時として人は、そうやって自分がちっぽけであることを再確認する時間を求めているのではないでしょうか。

──たしかに、それは圧倒的な存在であるゴジラにしか叶えられないことですよね。

西川氏:
怪獣対怪獣の戦いというのも、いまやゴジラでしか見られないものではないでしょうか。基本的には「怪獣対ヒーロー」になってしまいますから。

怪獣と怪獣が戦うというのは、先ほど言った「人間ドラマから離れていく」ことの極致ですよね。怪獣どうしが戦い始めたら、もう人間には成す術がない。それをただ呆然と眺めているしかないという状況です。

ゴジラや怪獣が持つ強さは、メディアの違いを超える力を持っているはず

──お話を『ゴジバト』に戻しますが、佐藤さんは5年間を振り返ってどのように感じられていますか?

佐藤氏:
映画等、お客様に届く新しい映像や怪獣がいない期間にいかにゲーム側で「ゴジラ」というIPを盛り上げ続けるか、という点についてとても苦労しました。

例えば新作映画が公開されるタイミングでは、映画の力がもの凄いですから、その波に乗っていくことでゲーム内での盛り上がりも自然と作ることができます。

しかし、そうでは無い時期にゲーム内の施策でどうやってお客様に楽しんでいただくか。また、既に遊んでいただいているお客様だけでなく、ゴジラファンはありつつもゴジバトにはまだ触れたことのない、という皆様にいかに興味を持っていただくか。
また、怪獣の実装についても毎月実装しては翌月の準備に追われる…という様な日々ではありますので、大変ですね(笑)。

ゲームバランスやその怪獣を出撃させた際の楽しさ、というものを実装怪獣が増えていく中で考えていくのは、月を追うごとに難しくなっていきますが、同時に楽しさでもあると感じています。

──怪獣の追加ペースがものすごいですよね。

佐藤氏:
現在は毎月およそ2~3体の新怪獣を実装していますので、年間で30体前後ほどのペースで増え続けています。

──『ゴジラバトルライン』という作品はプレイが1回3分と短いこともあり、「ゴジラ」というIPに初めて触れる、あるいは日常的に接するための「接点」としてすごく間口が広いように感じています。

佐藤氏:
手軽に触って、好きになるきっかけを提供できることこそがスマホゲームの良さですし、これからもそういう存在でありたいですね。

まさにいま、小学生や中学生が『ゴジラ-1.0』や新作の『ゴジラ-0.0』をきっかけにゴジラに興味を持ってくれている時期だと思います。最初はゴジラが好きで、プレイするうちにほかの怪獣のことも好きになって、ゴジラ・ストアでその怪獣のグッズを買うような流れが生まれるのであれば、このゲームの意義として100点満点だと思います。

──往年の「ゴジラ」ファンにとっても、ゴジラや怪獣に日々触れられるコンテンツでもありますからね。

佐藤氏:
すでに『ゴジバト』を遊んでくださっているお客様には、今回のリブート企画で「自分たちがこの新しい姿をいちばん最初に知ったユーザーなんだ」と誇りに思っていただけたら、企画した甲斐があったと言えるかなと思います。

西川氏:
いまはゴジラもCGで製作されたり、アニメ版が作られたりしているので、以前ほどではないかもしれませんが、古くからの「ゴジラ」ファンの中には「特撮」という技術そのもののファンであり、特撮以外の表現にはあまり興味がないという方もいらっしゃいます。そういった方々にも響くものになればと思っています。

ゴジラ、あるいは怪獣というキャラクターが持つ強さは、メディアの違いなどを超える力を持っているはずです。今回のリブート怪獣デザインがきっかけとなって、ジャンルやメディアの枠を超えて興味を持ってもらえるようになってくれればうれしいですね。

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_030

──ちなみに、『ゴジバト』の海外での反響はいかがですか?

佐藤氏:
海外のお客様も非常に多く、現在は日本と海外で、ほぼ半々くらいの比率で遊んでいただいるんです。SNSなどで「昭和の怪獣を出してくれ」と英語でコメントをくださったりするんですよ。

西川氏:
現地へ行ってファンと交流すると感じるのですが、彼らも私と同じように人類の味方としてのゴジラを観て育っているんです。ゴジラ映画はライセンス料が安かったこともあって、昔の海外のケーブルテレビなどで頻繁に放送されていたようなんですね。

そうやって子どものころから刷り込まれてきたというか、いわば日本の特撮ヒーローのような感覚で愛されているんです。そうした幼少期からの体験は、やはり大切なものなのだと改めて思います。

──では最後に、改めて今回のリブート企画の見どころをお話いただくとともに、ゴジラファン、そして『ゴジラバトルライン』ファンの皆さんへ、おふたりからメッセージをお願いします。

佐藤氏:
リブート企画は5周年の目玉ですが、ビオランテとデストロイアで終わりではありません。継続的に、お客様とともに育てていく企画だと思っています。『ゴジバト』でぜひリブート怪獣に触れていただきたいです。

また、この企画に限らず、今年の秋には『ゴジラ-0.0』の公開、そして来年はハリウッド版の新作が控えているなど、「ゴジラ」の動きは今後ますます活発になっていきます。本作もスピード感を持ってユニットを実装し、日々のコンテンツ改修や改善も含めて注力していきます。

『ゴジバト』は毎日ゴジラと接することができる、現状唯一の運営型のゲームです。日々愛されるコンテンツになるよう精進してまいりますので、引き続きプレイしていただけるとうれしいです。ぜひ、ゴジラたちの姿を見に来てください。

西川氏:
今回のリブートが「普段ゲームはしないけれど、ゴジラは好き」という方々への呼び水になればいいなと思っています。

いまはCGで映画が作られ、アニメやゲームなど、多様な形でゴジラが展開されるようになりました。これは、どのメディアであっても怪獣の魅力をしっかり表現できるようになったということだと思うんです

手描きアニメのころは「アニメの怪獣はスーツの迫力には敵わない」と感じることもあったかもしれませんが、現在はそれぞれのメディアが特徴を活かし、魅力的な怪獣を描ける時代です。ですから、こうした「ゲーム発の怪獣」というものも楽しんでいただきたいです。

こうした間口の広さがあるからこそ、新しい怪獣が生まれる余地も出てきたと思います。いろいろな場所から新しい怪獣が誕生することを期待していただきながら、温かく見守ってほしいですね。

私はこれまで、スーツや造形物になることを前提とした怪獣を手がけてきましたが、そうした経験から培った魅力をこの新しいフィールドでも活かしていければと思っています。ぜひ、それを楽しんでいただければうれしいです。

『ゴジバト』5周年インタビュー:ビオランテ&デストロイアが怪獣デザイナー・西川伸司氏によりリブート_031


物語を背負わないゲームオリジナルの存在だからこそ、出自や設定に対して納得のいく裏付けを徹底して用意する──。西川伸司氏が真摯に描き出した新しいビオランテとデストロイアの姿は、ゴジラが歩んできた70年の歴史をすべて飲み込んで進化し続ける「器」の広さを象徴している。

「新しいことをやっても、過去のゴジラが否定されることはない」 。その懐の深さがある限り、怪獣たちはこれからも世代やメディアの壁を飛び越える。

スーツからCGへ、そして運営型ゲームへ姿形を変えながらも、ゴジラという文化は常にリアルタイムのキャラクターとして更新され続け、私たちに「抗えない圧倒的な存在」としての畏怖と喜びを与え続けてくれるはずだ。

1

2

副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda
編集者
3D酔いに全敗の神奈川生まれ99’s。好きなゲームは『ベヨネッタ』『ロリポップチェーンソー』『RUINER』。好きな酔い止めはアネロンニスキャップとNAVAMET。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ

インタビュー

インタビューの記事一覧