100個提案して、通るのは1個。それでも諦めない理由
──今回はせっかくの機会ですので、サイバーコネクトツーがどのように版権ゲームのシナリオ制作を行っているのかについても聞かせてください。
松山氏:
新たなシナリオを作るときに必要なことは、まずは当然ですけど、作品が持つ物語や世界観に合っていること。そのうえで、世界中のファンが期待するであろう「名シーン」や「名ゼリフ」を、最高の状態でゲーム内でお届けすること。
これは版権ゲームを作る以上、絶対に果たさなければならない“ファンとの約束”です。
その上で、作品のいち要素を膨らませたり、複数の要素から想像できたりと、さまざまな展開を考えていきます。
例えば「作品では出会っていないけど、このキャラクターとこのキャラクターが仮に出会うとしたら、どんな話をするだろうか」とか。「死んでしまったあのキャラクターが、もし再び目の前に現れたら、なんて言うんだろう」とか。
さらにゲームという媒体なので、プレイヤーが直接操作で介入することを踏まえ、“夢の展開”を作ってファンの期待に応えていく仕事ですね。

──そういった新たな展開を行う際は、サイバーコネクトツーだけで決めるわけではなく、原作者やIPホルダーとの調整が必要になるんですよね。
松山氏:
ええ、もちろんです。
作品ごとに版元や製作委員会、あるいは原作者の漫画家先生のところにまで出向いて、許諾をいただく必要があります。また、完結している作品もあれば、未完結の作品もある。アニメを放送しながら、それと並行してゲームを作ることもある。
作品ごと、あるいは出版社ごとに「ここまではやってもOK、ここから先はやっちゃダメ」というラインが全部違います。さまざまな状況を踏まえて、ちょうどいい塩梅を模索しながら、シナリオやイベントを作らせていただいています。
──原作者や版元にとって大切な作品に対し、ある意味外部から手を加えるわけで、一筋縄にはいかないように思えます。
松山氏:
そうですね。実際のところ、100個のプロットを提案して許可が下りるのは10個とか、下手すると1個とか。それくらいのレベルです。
でも、どのプロットが通るか分からないから、100の展開を考えることを諦めはしません。
──そのあたりの苦労話も色々とありそうですが、話せる範囲でお聞かせ願えますか。
松山氏:
我々シナリオデザイナーも、どうすればこの作品世界がより盛り上がるかを考えるわけですが、その結果、原作の作家さんと同じことを考えていた、ということがたまにあります。
あるとき、自信満々のアイデアがあって、「この展開は世界中のファンが喜ぶので、ぜひやらせてください!」とお願いしたけど、通らないんです。食い下がると、「実は、提案されたこのプロットは、原作で今後、先生がこの展開を行う予定があるからダメなんです」と言われたことがあって。
さすがにあのときは、「失礼しました、原作の展開を楽しみに待っています」と返すしかありませんでしたね。

「めんどくさい開発」であることの誇り
──100個提案して、1つしか通らないかもしれない。それでも提案し続ける原動力は、どこにあるのでしょうか。
松山氏:
版権作品をお預かりしてゲームを作る以上、そのファンの期待に応えるのは当然です。
さらに言うと、熱心なお客さんにとっては、その作品が好きであるが故に、「こうあってほしい」という祈りや、期待や想像を超える新たな展開を求める声だってある。それに少しでも応えてあげるために、我々作り手は努力せねばなりません。
作品にある「設定A」と「設定B」の隙間に、新たな「設定C」を見出す。
それこそが、この仕事の面白さのひとつのキモだと思っているからです。
──松山社長がおっしゃられたように、それを実行するのは大変そうです。実際、大昔の版権ゲームといえば、版権を借りただけで投げやりな内容のモノも散見されました。
松山氏:
私はそういったゲームがイヤだから、サイバーコネクトツーで仕事しているわけですよ。
ただ、これが仮に逆の立場のことを考えると、悩ましい面もあって。だって、もし我々が製作委員会の人間や原作者だったら、そういう提案をしてくる開発会社って、正直めんどくさいと思うんですよ(苦笑)。
「原作者自らが判断しないと、マルかバツか判断できないじゃないか」とか。「我々だけで事を済ませたいのに、なんでこいつらは毎回、先生を動かさなきゃいけないような質問ばかりしてくるんだ」とか。
だから弊社のことは、きっと「めんどくせえな」と思われていると思います。
でも、それでも毎度、やらせていただいている感じですね。
──その積み重ねが、ファンからの信頼につながっているのだと思います。
松山氏:
ええ、そこは弊社が誇っていい部分だと思います。
いまは世界中のアニメファンや漫画ファンから、「サイバーコネクトツーで、この作品をゲーム化してほしい!」というお便りが、毎日のように来るんです。そういったメッセージのひとつひとつが、我々にとっての励みになっています。
「サイバーコネクトツーって、もうただのゲーム会社じゃないね」
──サイバーコネクトツーは今年、設立から30周年を迎えられました。世界中のファンから期待を寄せられる会社になるまでの30年、どのような歩みだったのでしょうか。
松山氏:
ゲーム業界って、「10年一区切り」みたいなところがあって、サイバーコネクトツーもその例に漏れず、10年ごとに大きく立ち位置を変えてきた会社です。
設立からの最初の10年は、誰にも知られていない無名の、福岡の田舎にあるスタジオでした。わずか10人でスタートして、何も持たないところから始めて。途中で私がサイバーコネクトツーの代表になり、そこからやり方を大きく変え、「少年漫画」のゲーム開発に振り切りました。
『.hack』シリーズなどがヒットして、10年かけて人数を100人にして。
業界内で“ちょっと尖ったデベロッパー”と認知されるようになったのが、最初の10年です。
──日本での認知を確立した最初の10年。次の10年はいかがでしたか。
松山氏:
さらなる仲間集めをして、東京スタジオも作りました。そして「少年漫画を題材にしたアニメ版権でゲームを作らせたら、サイバーコネクトツーが世界一」と言ってもらえる会社になろう、と。
その象徴として生まれたのが『NARUTO ナルティメットストーム』シリーズです。これまで、ナンバリングの『ストーム』~『ストーム4』のほか、『ROAD TO BORUTO』、『コネクションズ』と発売されていますけど、ワールドワイドで累計3000万本を突破しています。これは、胸を張って誇れる数字です。

──世界への認知を広げた10年だったわけですね。そして直近の10年は?
松山氏:
単なるデベロッパーではなく、自社パブリッシングも行う、「作って売る会社」になろうと考えました。
具体的には、『戦場のフーガ』を筆頭にパブリッシングもやる。ゲームだけじゃなくて漫画部署を立ち上げ、自分たちでゼロからIPを生み出していく。さらに、それをドラマ化して映画化する。多方面に取り組んできたのが、直近の10年です。

──では、設立30周年を迎えたサイバーコネクトツーにとって、次の10年は。
松山氏:
我々の使命は、ゲームを中心としつつも、漫画、アニメ、映画──そういったものを「日本で作って、世界に届ける」というエンタメ企業になること。それに向けた飛躍を、この10年でやっていきたいと考えています。
最近、よく会う人から言われるんです。「サイバーコネクトツーって、もうただのゲーム会社じゃないね」と。もちろんゲーム開発もやっていますけど、パブリッシングも、漫画も、アニメも、ドラマも、映画もやる。面白いと感じたら、自分たちで何から何までやる。
これまでのような「ゲーム会社:サイバーコネクトツー」だけでなく、「エンタメ企業:サイバーコネクトツー」を目指していきたいですね。

