サイバーコネクトツーが、シナリオデザイナーを自社で育成する「シナリオデザイナー養成所」を立ち上げた。
『NARUTO-ナルト-』、『ドラゴンボールZ』、『鬼滅の刃』、『ジョジョの奇妙な冒険』などに代表される版権ゲームの開発を数多く手がけてきた同社が、そのシナリオを担う人材を自ら育てようという試みだ。
昨年実施された第1回試験では、応募総数およそ200人の中から合格者が1名誕生。その合格者は、現在は学業のかたわら、サイバーコネクトツーのスタッフとして業務に携わっているという。
その第2回にあたる「シナリオデザイナー養成所 2026」の試験に向けて、募集受付が現在行われている。
今回は、代表取締役の松山洋氏、養成所の責任者を務める西川裕貴氏、そして第1回合格者の窪木海氏の3名に話を訊いた。
「誰でも合格できるはずの試験で、なぜ合格者は1人だったのか」という第1回の振り返りから、合格者の生の声、さらにはエンタメ企業への飛躍を掲げるサイバーコネクトツーの次の10年まで、余すところなく語ってもらっている。

聞き手・文/kawasaki
「当たり前のこと」ができれば、誰でも合格できる
──まず、昨年実施された第1回試験の内容について、あらためて教えてください。
松山氏:
「シナリオデザイナー養成所」の採用試験は「第一次選抜」と「第二次選抜」に大別されているのですが、そのうち前者はハードルを低く設定しています。
第一次選抜における1回目のテスト内容は、4択クイズです。
しかもこの問題は「カンニング可」と言っています。インターネットで調べながら回答して良い。だから、誰でもちゃんと取り組めば、100パーセント合格できるはずです。
──2回目のテストは、どういった内容だったのでしょうか。
松山氏:
ゲーム内に実装するサブクエストのプロット(※筋書き、構成)を書く、というものです。エクセル用のフォーマットが用意されていて、「これに準拠してご提出ください」と書いてある。4択クイズと同様、難しいことは何一つとしてありません。
──そもそも、いったいなぜ、そのような易しめの難度に設定されているのでしょうか。
松山氏:
サイバーコネクトツーは、このプロジェクトを通じて、シナリオデザイナーになるためのハードルを下げたいと考えているんです。
たとえば小説家の場合は、各出版社が募集しているコンテストがあって、それに応募して受賞して、本が出版されるというケースが多い。しかし、ゲームのシナリオデザイナーになるための道は、明確な形になっていない。
実際、シナリオデザイナーで活躍している人に話を聞いても、「気が付いたらなっていた」という人が多いんです。
でも、仮にシナリオデザイナーになろうと思っても、最初の一歩を踏み出しにくい現状があると考えています。
──なりたい人ほど、入口が見えにくいと。
松山氏:
シナリオデザイナーって、別に特殊な技能があるわけではないんですよ。
むしろ、社会人として当たり前のことを、当たり前にできることの方が大切です。
たとえば、お預かりしている版権の内容を理解する。これは当たり前のことですよね。
そして、版権の扱い方が間違っていないかを確認し、定められたフォーマットにのっとり提出する。これも当たり前のことです。
先ほど話した1回目/2回目のテストで見ているのは、応募者が「当たり前のこと」ができるかどうか、それだけです。それさえあれば、誰でも合格できる設計にしています。
──そのような理由があったんですね。
松山氏:
だから、この記事を読んでいる方も含め、少しでもシナリオデザイナーに興味を持っている人に、「自分でも合格できそうだ」と思ってもらいたい。そうして、この業界への一歩を踏み出してほしいんです。
──しかし、前回のインタビューで話をうかがった際は、1回目のテストで76%が落選していたとのことでした。あれから状況は変わりましたか?
松山氏:
電ファミさんで前回のインタビュー記事を掲載していただいたあとに応募者数が増えまして。最終的に、1/2回目のテストの合格率は50%ぐらいになりました。
ただ、それでも半分の人が、「当たり前のこと」ができていない。
「ネットで調べて回答して良い」と言っているのに間違っている。つまり、ネットで調べすらしていない。また、違うフォーマットで課題を送ってくる人もいる。
ゲーム開発は仕様書に則って行うわけですが、そのルールを守っていただけないと、仕事できないじゃないですか。
──試験というよりは、仕事に対する向き合い方の問題ですよね。
松山氏:
そうです。だから1回目テスト/2回目テストに関しては、いちおう試験という名目ですが、「第0段階」ぐらいのつもりです。
でも、その「当たり前のこと」さえできるのであれば、シナリオデザイナーになれるチャンスはあります。我々がプロになるための道を示して、教えることができますから。
だから体ひとつ、やる気を胸に飛び込んできてほしい。
──昨年の試験で第二次選抜まで行われて、結果はいかがでしたか。
松山氏:
応募総数はおよそ200人で、最終的に合格したのは1名でした。
それが、この場に同席している窪木くんです。
事前の考えでは、少なくとも2〜3人、できれば5人くらい合格させたい、というイメージだったんです。想像していたよりも厳しかった、というのが正直な感想です。
だから、諦めずに今年も2回目の試験を実施します。
「どうすればなれるのかがわからない」と思われがちな、ゲームシナリオデザイナーという仕事に、もっと多くの人に興味を持ってもらいたいですから。
技術は教えられるが、情熱は教えられない
──養成所の責任者を務められている西川さんにも伺います。この養成所を立ち上げようと思った経緯について聞かせてください。
西川氏:
僕がゲーム業界を志した頃、まさに、「どの道に進めばいいのかわからない」状態だったんですよ。
当時の僕は悩んだ末、職種を最初に決めてしまうのではなく、まずはゲーム会社に入り込んで、現場で色々と叩き込んでもらいながら考えようと決めました。そして、専門学校の会社説明会で松山に会って、そこで猛烈にアピールをして入社したんです。
そういう意味で、今回のシナリオデザイナー養成所は、当時の僕のやり方に通じるものもあるのかな、と。まずは飛び込んでほしいと思っています。

──シナリオデザイナーという仕事は、どういった人に適正があるのでしょうか。
西川氏:
シナリオを書く力はもちろんですが、それと同じぐらい大事にしているのが、「作品に対する知識と愛」です。ここは、限りなくファンと近いほうが望ましいです。
『NARUTO -ナルト-』にせよ、『ドラゴンボールZ』にせよ、『鬼滅の刃』にせよ、『ジョジョの奇妙な冒険』にせよ。その作品が好きで携わりたい。その作品を題材にしたゲームのシナリオを、将来自分でも書いてみたい。たとえ今までシナリオを書いたことはないけど、「俺がこの作品を1番好きなんだ!」という情熱を持った方と、ご縁を持ちたいです。
だって、シナリオのライティング技術を教えることはできても、「好き」という情熱は、我々では教えられないですから。
逆に言うと、情熱さえあれば、後はどうにでもなります。シナリオの書き方は、会社の中で仕事をしていただきながら覚えていける環境を用意していますので。
──第1回で合格された窪木さんが、まさにそういった人物だったわけですよね。窪木さんは、どのような経緯で応募をされたのでしょうか。
窪木氏:
私はゲームや漫画や映画が昔から好きで、その中でもシナリオや脚本部に魅力を感じていました。今は大学生なんですが、それとは別に脚本の学校にも通っていて、そこでは映画やドラマについて習っています。
でも、ゲームのシナリオを勉強できる環境は、これまで知りませんでした。
そういったなか、「シナリオデザイナー養成所」の告知を見て応募し、幸い合格させていただきました。今はまだ在学中で、来年の春に卒業予定ですが、学業の合間にサイバーコネクトツーの東京スタジオに来ています。
──実際に業務でシナリオ制作に関わってみて、感想はいかがですか。
窪木氏:
ゲームシナリオならではの難しさとやりがいを、日々実感しています。バトルに繋げるための導入とか、バトル中にセリフを喋らせるタイミングとか、すごく奥が深いです。
映画やドラマの脚本にはない考え方で、その楽しさをすごく感じています。
世界中にファンがいる作品ばかりですから、そういったファンのイメージを壊さずに、作品の魅力をちゃんと出せるようにすることが大切だと考えています。
天才的なアイデアは不要。合格者の課題を、包み隠さず見せます
──第二次選抜も含め、前回の試験で窪木さんが合格した決め手は、どういった部分だったのでしょうか。
西川氏:
「第二次選抜」は、サブクエストのプロットやシナリオを書いていただく内容でした。ルールやフォーマット類を用意して、「これに従って書いてください」と。
その課題のクオリティが高かったこと。そして、面接等のやりとりで「ああ、この人なら、僕らと肩を並べて仕事をしていけそうだ」と感じられたのが、合格の決め手となりました。
──協調性なども重視されていたと。
西川氏:
我々が普段行っているゲーム制作では、お互い膝を突き合わせながら、あるいはリモート業務も行いながら、毎日9時から18時まで一緒に仕事をしています。
そういったなか、きちんとコミュニケーションが取れることや、お互いが言っていることを理解して、目標達成に向けて努力できること。そういった部分も大切だと考えています。窪木さんと接していて、我々と一緒に仕事をしていく関係性を作れそうだという期待感・安心感がありました。
──シナリオデザイナーという職種なので、てっきり、めちゃくちゃ面白いプロットを考えたのかな? と思っていました。
松山氏:
いや、そういうわけじゃないですよ。
実際に窪木くんが最終試験で受かった課題を見てもらうのが、一番わかりやすいかもしれない。
西川さん、第二次選抜はどういった内容だったんだっけ?

西川氏:
『ドラゴンボールZ』と『NARUTO -ナルト-』を題材にしたゲームのサブクエストですね。
前半戦が「アイデア出し+プロット作成をしてください」という課題。後半戦が、弊社が用意したアイデアとプロットを元に、「シナリオ(セリフ、ト書き)作成をしてください」という課題でした。
でも、窪木さんの課題を公開しちゃってもいいのかな?
松山氏:
いやいや、それが一番わかりやすいじゃん。
シナリオデザイナーの仕事もイメージしてもらえるだろうし。「あ、こんな感じでいいんだ」、「ホントにこれでいいの?」と思うかもだけど、実際そうだし。
というわけで電ファミさん、あとでファイルをお渡しするので公開しちゃってください!
※以下、クリックするとpdfファイルが開きます
■窪木氏の回答(『ドラゴンボール』を題材にしたサブクエストのシナリオ)
■窪木氏の回答(『NARUTO -ナルト-』を題材にしたサブクエストのシナリオ)




