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ゲームフリーク新作アクションRPG『ビースト・オブ・リンカネーション』開発者インタビュー。相棒の犬は「しゃべらないこと」が重要だった。セリフやシナリオでなく、ゲームという“体験”の中で描く関係性とは

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シナリオもキャラも、原点は古島氏のスケッチから

──本作が最初に発表されたとき、「ゲームフリークがこんなゲームを作るんだ」という衝撃は強かったと思います。そのあたりの経緯も伺いたいのですが、古島さんとしては以前からこうしたゲームが作りたいと考えられていたのですか?

古島氏:
そうですね。もともと作りたかったものでした。ゲームフリークには、「ギアプロジェクト」っていう制度があるんですが、通常のギアプロジェクトは3人のメンバーが集まってプロトタイプを作るってというものなんです。

ですが私が企画を応募した年は田尻智氏が企画コンテストをやって、そこから選ぶという形式になっていて、そこにちょうど考え終わっていた企画書を出せた、というのがきっかけでした。

──先ほどもコンセプトはすぐ出てきたとおっしゃってましたけど、もともとご自分の中で温めていたというか。

古島氏:
そうですね。自分は新しいゲームを作りたいということはずっと考えてたんですけど、どういうゲームを作りたいのかなっていうのはずっと探っていてですね。思ったのが、別に自分はジャンルとかで作りたいものが決まってるわけじゃないな、ということだったんです

だからコンセプトは、「何らかの感覚を与えたい」っていうところから決めたものです。これはずっと練っていたので、それを言葉にするのは簡単でした。

『ビースト・オブ・リンカネーション』開発者インタビュー:ゲームフリーク新作アクションRPG。相棒の犬は「しゃべらないこと」が重要_006

──本作で言えば「ひとりと一匹」というところだと思うのですが、世界観や物語、キャラクターといったコア要素の原型は、古島さんがおひとりで積み上げていったのでしょうか?

古島氏:
キャラクターのデザインとかは、最終的にちゃんとデザインしていただいたんですけども、腐蝕体やキャラクターも、基本は自分のデザインスケッチが最初にありましたね

プロトタイプを作る前は、「こういう世界だろうな」っていうのを、複数の写真を組み合わせるフォトバッシュっていうやり方で作ったりとかしていましたね。

──それもすべて古島さんがご自身で手がけられたんですか?

古島氏:
そうですね。それをもとに「こういう方向性にしてください」と発注していくようなやり方でした。

──その最初期のイメージ画みたいなものとか、いまお手元にあったりしますか? もし可能なら見てみることって……。

古島氏:
スケッチブック持ってくればよかった(笑)。毎回忘れてしまうんですけど、もしよかったらいま描きましょうか?

──!? 描いていただけるんですか!

『ビースト・オブ・リンカネーション』開発者インタビュー:ゲームフリーク新作アクションRPG。相棒の犬は「しゃべらないこと」が重要_007

『ビースト・オブ・リンカネーション』開発者インタビュー:ゲームフリーク新作アクションRPG。相棒の犬は「しゃべらないこと」が重要_008

──すごい、本当に描いていただけるなんて。これは主人公のエマの初期イメージですよね。三つ編みのイメージはこの頃からあったんですね。

古島氏:
そうですね。髪に植物の力が宿っていくというのは、最初期の頃からもう決まっていました。

相棒は「しゃべらない」ことが重要だった。ゲームフリークとしての積み重ねも、しっかり詰め込まれている

──本作の出発点についてもう少し伺いたいのですが、本作の企画を出された当初、ゲームフリークさんの社内ではどんな反応だったのでしょうか?

古島氏:
「うちの感じじゃないよね」というのは最初はやっぱりありましたね(笑)。「うちってフォトリアルを作る会社なんだっけ?」って。とはいえ、別にうちはスタイルにはこだわってないんですよね。

コンセプトを大事にするという点では、ゲームフリークのものづくりから外れていないと思っています。だからプロトタイプを作ったりするなかで、「今回表現するものにはフォトリアルのほうが合うよね」というのがだんだんと浸透してきたように思います。

──本作ですが、ジャンル的には「アクションRPG」という形になるかと思います。最終的にこの形が定まったのって、どういう流れだったんでしょうか?

古島氏:
どちらかというと、ゲームのほうがどんどん先に出来上がっていったような形ですね。リアルタイムアクションや相棒のクゥのコマンドがあるっていうことも、コンセプトからすれば必然的にこうなるだろうと思っていましたから。

それでいざ、このゲームのジャンルを何と呼ぶか考えたときに「ひとりと一匹のアクションRPG」と決めたんですエマのリアルタイムのアクションと、RPGっぽいコマンドがあるから、そういう定義になりました。

──本作は犬のクゥや、そのほかの腐蝕体など、「人間ではない生き物」の存在がゲームの体験の核になっていますよね。このあたりにはゲームフリークとしての知見みたいなものも活かされたと見てよいのでしょうか?

古島氏:
そうですね。「しゃべらない」っていうことが、実はすごく大事なんですよ。

『ビースト・オブ・リンカネーション』開発者インタビュー:ゲームフリーク新作アクションRPG。相棒の犬は「しゃべらないこと」が重要_009

──しゃべらないことが大事?

古島氏:
しゃべらないことによって得られるものがあるんです。これ自体はゲームをやって感じていただきたいんですが、しゃべることがしゃべらないことよりメリットがあるかというと、そうではないんです。

たとえばしゃべらないからこそ何かを想像できたり、時間が経過することで心の中に何かが起きるっていうのもあります。そうしたことを大事にしてきた結果、いまの形になったという面はありますね。

──非常に興味深いので、もう少し詳しく伺えるでしょうか。

古島氏:
たとえば純粋にシナリオで、ある種無理やり関係性を構築することっていうのは、できないわけではないんです。でもそれはやっぱりシナリオの力でしかありません。それなら映画でも別にできると思うんですよ。

ただ、私たちはその関係性を築くために「ゲーム」というものを選んだわけです。ゲームを通して関係性を築くこと、相棒になる感覚を育むこと、それをどうやるんだろうっていうのをすごく考えている会社なんです。だから、これまで培ってきたものは、すべて本作に投入されていると思います。

──そう伺うと、ゲームフリークさんが培ってきた強みと、古島さんがおっしゃる「ひとりと一匹」の体験が、深くつながっているように感じます。

古島氏:
そうですね。逆に言うと、シナリオで全部言い過ぎてしまうと、それはもうゲームの力ではなくシナリオの力になってしまいます。だからやっぱりそこのバランスはとりましたね。

すべてを言葉で説明できることが大事。戦闘バランスから設定まで、「必然性」で組み上げる

──本作のアクションで特に感じたのですが、エマとクゥの共同作業という感覚は強かったですね。エマはひとりで戦っているようでいて、常にクゥのサポートが感じられます。

古島氏:
そこも、順番にバランスを考えていった結果ですね。

たとえば敵が強いほうがクゥは頼もしい存在になりますが、その前にエマが倒されてしまってはそれを感じられません。逆に敵が弱すぎたら、その頼もしさを味わうことができませんし、ほどほどのピンチで助けてくれるバランスが必要なわけです。

クゥが完全に自立した行動をしていたら、共同で成し遂げているという感覚が失われてしまうので、指示を出すためのコマンドも必要です。自立性のある知性もあるけども、自分のコマンドにも従ってくれるっていうのは、バランスとしては大事だなと思っています。

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──エマとクゥの関係をゲーム上で体験してもらうために、戦闘バランスの取り方もかなり苦労されているんですね。

古島氏:
「こうやらなきゃいけない」というのを順番に考えましたね。極論ですけど、敵が弱かったらそもそもひとりで倒せてしまうし、敵が強すぎたらシチュエーションが減ってしまう。その答えを得るのに試作したりとか、バランスをずっといじって対応していきました。

──ここまでのお話では、「順番に考えて作る」という言葉が何度も出てきました。本作はそのおかげでコンセプトを変えることなく開発を続けてこれた、ということだと思うのですが、どうしてそれほどズレなく積み上げてこれたのでしょうか?

古島氏:
なんとなくではなく「必然性を持つ」ということが大事なのだと思います。さっきもお話ししましたが、なぜそのバランスでなければならないのか、という理由が必要なのだと思います。それは必ず言葉で説明できるようにしなければいけません。

たとえば「じゃあ何でモチーフが植物なの?」みたいなところも全部説明できるようにしておく。説明できる必然性でつながってるとブレることがなくなるからです。逆に言うと、私の仕事としては、それがすごく大事なんです。

ブレるのは、「ここはなんとなく決めてしまっていたな」という箇所が出てきたときなんですよね。だから「いや、ここにはこういう必然性がある」と考えなくてはいけない。じゃあそれをどの順番で組み立てていくべきなんだろう、というのはやっぱり考えましたね。

──「すべてのことを言葉で説明できるようにする」というのはすごくおもしろいですね。たとえばゲームの中で、エマの住んでいる場所として「小河内」(おごうち)【※】っていう地名が出てきたと思うんですが、あれって実在の地名ですよね?

※小河内
東京都・奥多摩にある地名。小河内ダムによって多摩川がせき止められ、奥多摩湖が作られている。

古島氏:
そうです。実はあの地形も、国土地理院のデータを使って作っているんですよ

──えっ、そこまで実際のデータに基づいて作られていたんですか!

古島氏:
はい。標高データを使っているんですけど、もちろんそのまま使うことはできないので、縮尺を調整して、かつゲームっぽいレベルデザインにしたりはしているんですけど。

──気になったのは、これが実際のロケーションだとすると、実在する小河内を舞台に選んだことにも、何か必然的な理由があるのでしょうか?

古島氏:
あります。

やっぱりロケーションを決めるときに、まず設定として「穢れ」っていうものがあって、ではその世界で、人類はどこに住むことになるのかを考えました。

そうしたら、絶対に水を確保できなきゃいけない。それも海水じゃない水が必要で、ということは、絶対に過去の遺産を活用できるほうがいいだろうから、ダムのあるところだろう……っていうところで、小河内に人が住んでいる設定になっています。

──すごい、こんなところにも明快な理由があるんですね! すべてにきちんと必然を作っていくという積み上げ式の作り方のすごさに改めて驚きました。
限られたお時間のなか、駆け足になってしまいましたが、非常に興味深いお話が伺えました。本日はありがとうございました!(了)

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編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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