『ウィッチャー3 ワイルドハント』の発売から、もう11年が経つ。 そんな本作に、なんと新たなDLC「追憶の調べ」が登場する。
物語の主役は、ゲラルトの隣にいつもいた吟遊詩人・ダンディリオン。「また」行方不明になる彼が何者なのか、どこから来たのか──シリーズがこれまで語らなかった彼の素性へ踏み込む物語だという。
今回話を聞いたのは、ダンディリオン役の英語版声優John Schwab氏と、『追憶の調べ』をCD PROJEKT REDと共同で開発するFool’s Theoryで、ヴィジョンディレクターを務めるKarolina Kuzia-Rokosz氏。自身の息子が生まれる前からこの役を演じてきた声優と、かつて『ウィッチャー3』に関わったメンバーが集う開発会社だ。
この両者に、ダンディリオンというキャラクターの素顔や、彼の故郷・レッテンのことなどを聞いた。

息子が生まれる前からダンディリオンを演じてきた
── 自己紹介と、『追憶の調べ』でのご自身の役割を教えてください。
John氏:
はい。僕の名前はJohn Schwabで、ダンディリオンを演じているよ。もう何年も何年も、ダンディリオンを演じてきた。
Karolina氏:
すっかり馴染んできましたか?
John氏:
うん、ほとんど一緒に育ってきたようなものだね。息子が生まれる前からダンディリオンを演じ始めたんだ。その息子が2週間後には大学に進学する。それくらい長く、ダンディリオンを演じているんだよ。
Karolina氏:
では息子さんもゲームで遊べるわけですね。
John氏:
うん、遊んでるよ。
── 息子さんはゲームの中のあなたに気づきますか?
John氏:
気づくよ。僕はけっこうな数のゲームに出ているから、息子が居間にいて僕が夕食を作っていると、「父さん、また父さんを殺しちゃったよ」って言ってくるんだ。
Karolina氏:
私の名前はKarolina Kuzia-Rokoszです。Fool’s Theory【※】で『追憶の調べ』のヴィジョンディレクターを務めていて、CD PROJEKT REDとともに、さらなる拡張をお届けします。
※Fool’s Theory 『追憶の調べ』の開発を担うポーランドのゲームスタジオ。
John氏:
Fool’s Theoryがこうして関わっているのが本当にいいよね。このコラボレーションが好きだし、広がっていくのが好きだ。すごくいいと思う。
── 2つのスタジオのコラボレーションは、どんなふうに進んでいますか?
Karolina氏:
学生時代の同級生と、また一緒に仕事をしているような感じです。Fool’s Theoryを立ち上げたのが11年前で、そこで一度分かれて、それぞれ自分たちのタイトルを手がけてきました。そして、よく言うように「星が並んだ」というか、タイミングが合って、さらなる拡張でのコラボレーションが始まったんです。
この構想はCD PROJEKT REDの中でしばらく温められていて、彼らのほうは「ちょうどいいパートナーが見つかった」と言ってくれています。
うちには『ウィッチャー3』のフランチャイズに関わっていた人間が何人もいて、私もその一人です。だから精神性は今も残っていると思います。そしてCD PROJEKT側でも、同じステークホルダー、同じスーパーバイザー、同じ意思決定者と一緒にやっています。
だから、まるで一度も離れていなかったみたいなんです。何も変わっていない。何も変わっていないように感じるというか、昨日別れて今日また戻ってきた、みたいな感覚に近いですね。今は本当に入り込みやすいです。人のことも分かっていますし、ツールのことも分かっていますから。
この道に戻ってこられたのはいいものです。完全になったような感じですね。
ダンディリオン「についての」物語とは言い切れない
── 今回の拡張はダンディリオンをめぐる物語だと伺いました。ゲラルトの物語がダンディリオンの物語で締めくくられることについて、どう感じていますか?

John氏:
これはダンディリオンが関わる物語だね。ダンディリオン「についての」物語かというと、必ずしもそうとは言い切れないと思う。ウィッチャーシリーズを通して、ダンディリオンはいつもそこにいる存在だからね。
それに、こういうことなんだ。ダンディリオンは「また」行方不明になる。いつものことだよ、彼は姿を消す。それがダンディリオンのやることで、ゲラルトはいつも助けに行かなきゃいけない。
だから僕が一番楽しみにしているのは、ウィッチャーシリーズのファン、ウィッチャーの世界全体のファンが、ダンディリオンについてもう少し知ることができるということ。彼が何者なのか、どこから来たのか、もう少し踏み込んでいくんだ。
デモは見た? 美しいよね。この田園風景は美しい。でも少し暗い部分もあって、そこを探索していくことになる。
Karolina氏:
まさに古典的なウィッチャーの物語ですよね?
── 11年を経てこのDLCに関わることになって、率直にどう感じていますか?
Karolina氏:
すごくいい気分です。でも同時に、愛されていて、しかもある意味で完成している……というか、「定義づけられている」と言うべきでしょうか、そういうフランチャイズに何か新しいもの、何か新鮮なものを持ち込むという難しさもあります。
だからすごくワクワクします。私たち自身も、その過程でたくさん学んでいます。大変ですが、いい意味で大変なんです。
経験やノウハウとともに今も成長していますし、あのキャラクターたちや世界についてはもうこれだけ語り尽くされているなかで、それでも何か新しくて面白いことを言おうとしています。もちろん、すでに確立されたものには忠実であり続けますが。
憂いを帯びたダンディリオンに、試練と成長の機会を
── では、特に難しいと感じるのはどんな点ですか?
Karolina氏:
まさに今言ったことが、いい意味での挑戦だと思います。制約があるのは、いいことなんです。制約は自分を助けてくれるもので、やるべきことにより集中させてくれます。私たちには確立された世界があり、確立されたキャラクターがいて、多くのプレイヤーが長年親しんできた愛すべきキャラクターたちがいます。
れが制約で、その上で、すでに知られている彼らについて常に何か新しいことを語る、というのが挑戦なんです。
たとえばダンディリオン。みんな彼のことを知っていますよね。面白い男ですが、同時にもっと……悲しいというほどではないけれど、憂いを帯びた一面もあります。そこを掘り下げたい。
彼は今もゲラルトの親友で、ゲラルトの一番いい部分を引き出せる存在です。ゲラルトはとても自分の内に閉じこもった、厳格で、感情表現が得意ではない男ですから。そこでダンディリオンが壁を壊して、感情を引き出してくれる。二人は不思議な形で補い合っているんです。
デモの中でも感じられたと思います。いとこが「その奇妙な友情はどうやって生まれたのか」と尋ねる場面がありましたよね。「あなたは口数が少ないほうで、うちのいとこは喋りっぱなしなのに」と。
そして彼についても何か新しいことを語りたい。もっと人間味のある存在にして、彼自身にとっても試練となる何かを経験させたいですから。
彼を彼のままに保ちたい。でも同時に、成長する機会も与えたい。ゲラルトとの友情や、二人のダイナミクスに基づいて決断を下す機会を、です。だからこれは挑戦であると同時に、これまで語られなかったことを語るチャンスでもあるんです。





