「戦車ゲーを作ってる人たちって、やっぱり戦車が好きなんだ……」
これは、『World of Tanks: HEAT』(以下、『HEAT』)制作陣への取材中に、筆者がしみじみと抱いた感想である。
『HEAT』は、2010年にサービスを開始した戦車ゲーム『World of Tanks』のスピンオフ的な立ち位置として、2026年5月にリリースされた新作ゲームだ。2025年のgamescom ONL(オープニング・ナイト・ライブ)で発表された本作が、翌年のgamescomでは、ゲームのリリースを経てメディア向けのブースを出展した。
そのことに奇妙な縁を感じながら、筆者はgamescomへ訪れ、『HEAT』の制作陣にインタビューをおこなった。聞きたかったのはズバリ、「あなたたちは、どれほど戦車が好きなのか?」だ。
なにせ、『World of Tanks』と言えば、世界的にも有数の戦車ゲームであり、今でも多くのユーザーを抱えてサービスが継続されている人気作である。そのスピンオフとして出てきた『HEAT』が、今度はヒーローシューターの要素を加えた戦車ゲームなのだから、「この会社、戦車が好きすぎないか?」という疑問は、ある意味で当然のものだろう。
今回インタビューに応じてくれたのは、『HEAT』のマーケティングリードを務めるJohn Peck氏と、コミュニティ運営の責任者であるLuke Nicholls氏。どんな返答が返ってくるものか、内心ドキドキで「皆さん戦車がお好きですか?」と聞いた筆者に対し、彼らの答えは想像以上のものだった。

「ええ、私たちは戦車に触れ、戦車の匂いを嗅ぎ、戦車の音を聴くのが好きです。」
「私たちは社内のサマーパーティですら、戦車を運転しにいきました。」
なんと、社内行事で戦車を運転していたというのである。彼らはチェコ共和国の首都・プラハ郊外で体験したというレオパルト戦車の思い出を嬉々として語ってくれた。ほかにも、『HEAT』の画面をズームしながら「博物館で戦車をスキャンし、溶接跡まで再現した」という衝撃のこだわりまで披露してくれた。
本稿では、「戦車ゲー作ってる人たちって、やっぱり戦車が好きなんだ……」という冒頭の感想を抱かせてくれた『HEAT』制作チームのガチすぎる戦車愛とともに、『HEAT』の新シーズンへ向けた意気込みや、その未来の展望などを深堀りしているので、ぜひ最後までお読みいただきたい。
『HEAT』リリースから3か月。9月からのシーズン2を前に、ユーザーからのフィードバックを受け様々な部分が改善
──昨年のgamescom ONLにて『World of Tanks HEAT』が発表されてから、およそ1年が経ちました。今年はゲームがローンチされ、シーズンも動いている状態でのgamescomとなったわけですが、率直に現在のお気持ちをお聞かせください。
John Peck氏(以下、John氏):
「素晴らしい」の一言です。ゲームをローンチできて、よかったと思います。
本作は5月26日にリリースされました。それ以来、私たちが新しいゲームモード、新しいシーズン、新しいエージェント、そして新しい戦車を投入するたび、プレイヤーは多くのフィードバックを送ってくれました。
こういったフィードバックを受けるにあたって、ゲームが稼働している状態にあることは、それ自体が非常に大きな価値を持ちます。ユーザーの皆さんが実際に遊んでいる様子を見ることができるおかげで、人々がこのゲームのどこを楽しんでいるのか、またどんな改善を求めているのか、本当に理解できるようになりましたし、数か月後へ向けて、ユーザーへのサプライズを計画することもできます。
Luke Nicholls氏(以下、Luke氏):
私としては、コミュニティからのフィードバックに基づいて実施した変更点に対して「実際にコミュニティがどう反応しているのか」を見られたのが、とてもよかったです。
例を挙げると、シーズン1ではアルティメット・アビリティを使用した際に表示されるカットシーンについて、表示のオン/オフを切り替えられるオプションを提供しました。カットシーンは本当に見栄えがするのですが、一部のプレイヤーは「戦況がわからなくなるから」ということで、その表示を好まなかったのです。そこで、オン/オフをユーザーに選んでもらうようにしました。
ほかにも、ガレージで戦車を購入する前に、検討中の戦車を試乗することができるようになりました。これは、ユーザーが「本当に楽しめる車輛」へとたどり着けるようにするための措置です。
──本作は、Wargamingにとって初となるマルチプラットフォームへの同時展開がおこなわれた作品でもあります。この取り組みをしたことで、過去作と比べゲームの開発はどのように変化しましたか?
John氏:
マルチプラットフォーム展開は、いくつかの面ではチャレンジでありつつも、同時に大きなアドバンテージでもありました。
「あなたがどのような環境にいても、『WoT HEAT』をプレイできます」と言えるのは、重要なセールスポイントになります。これは、複数の環境で遊ぶ場合も同様です。ある日はSteamで遊び、次の日はWargaming Game Centerで、そしてまたPlay Stationで遊ぶ、ということができるのは、クロスプログレッションに対応したからです。
一方でこれは、「あらゆる環境へ向けてゲームを最適化しなければならない」ということでもあります。チャットのような一部のソーシャル機能は、登場させるのが少し難しくなります。「すべてのプラットフォームで動作する」ことを担保しなくてはいけませんから。
とは言え、全体として見れば、これは素晴らしい経験でした。
── オリジナルの『World of Tanks』と並行して、別のゲームとしてプレイヤーを集めコミュニティを築いていくことについては、どう考えていますか?
Luke氏:
『HEAT』のプレイヤーを見たとき、まず気づくのは、「私たちの作ったほかのタイトルをプレイしている方が、『HEAT』も楽しんでくれている」という大きなクロスオーバーです。これは、これまでの作品と共通した、なじみのある要素がいくつかあるからです。
その一方で「本当によかった」と思えるのは、これまで戦車ゲームをプレイしたことのない、よりダイナミックでスピーディなゲームを好むプレイヤーが、『HEAT』に惹きつけられていることです。
『World of Tanks』は素晴らしいゲームですが、『HEAT』で私たちが提供しているのは、『WoT』とは明確に異なる体験なのです。
── プレイヤーからのフィードバックをゲームに反映する際には、どのようなことを考えて検討しているのでしょうか。
Luke氏:
私の観点から言うと、「その変更がどれだけの人数に影響するのか?」を考えることが非常に重要です。
開発リソースには限りがあるので、実装できる要素が5つあるとしても、最も多くのプレイヤーへ、最大限ポジティブな影響を与えられる機能の実装を優先するようにします。
実は、このインタビューの実施20分ほど前に、シーズン2で適応されるQoL(クオリティ・オブ・ライフ=快適性)改善についての記事を公開しました。そこで記された調整内容は、すべてプレイヤーからのフィードバックに直接基づいています。
丹精込めて作っても、ユーザーからの反応が悪ければしっかり調整。「私たちは自分たちのためでなく、プレイヤーのためにゲームを作っている」
──ローンチ以降、多くのアップデートが配信されてきましたが、プレイヤーから最も大きな反応があった変更はどれですか?
Luke氏:
おそらく、アルティメット・アビリティのカットシーンをオン/オフ可能にする仕様変更だと思います。これは、社内でもかなり議論の対象となりました。当然ですが、私たちはこのカットシーンをインパクトあるものに見せるため、多くのエネルギーと情熱を注ぎました。

しかし最終的に、「プレイヤーがそれほど楽しめていないのであれば、必要かどうかはプレイヤー自身に決めてもらうべきだ」と気づいたのです。なぜなら、私たちは自分たちのためにゲームを作っているのではなく、プレイヤーのためにゲームを作っているからです。
──マーケティングの観点から見て、『HEAT』のどの要素が、もっともプレイヤーに響いたと考えますか?
John氏:
私たちはこのゲームを、一方に戦車戦ゲーム、ビークル戦闘ゲームがあり、もう一方にヒーローシューターがある、その組み合わせのようなものとして捉えてきました。
戦車らしい重量感は健在で、重く、装甲があり、砲弾があり、レースゲームのようなものにはなっていません。ですが、重量級のビークル戦ゲームでありながら、もう少しスピーディです。
そしてシューター的なメカニクスとゲームモードによって、1プレイの長さを少し短くすることもできますし、ゲームプレイの種類にも多くのバリエーションを出すことができます。
「戦車戦ゲームとヒーローシューターの組み合わせ」というのは、ゲームにとっても、私たちにとっても、多くのユーザーにとっても、新しいものですが、その組み合わせはおおむね機能していると思います。
実際、戦車ゲームを一度もプレイしたことのない、シューター側から来た多くのプレイヤーが、それでもこのゲームを楽しみ、活躍しているのを目にしてきました。これは私たちにとって非常に大きな励みとなっています。
より広い層に届くものを作れたのだ、そして「自分は戦車ゲームを楽しめない」と思っているような人でも『HEAT』を楽しんでもらえるのだ、という手応えを得られました。
──多くの新規プレイヤーが存在するとのことですが、新規プレイヤーへ向けた最良のアドバイスを伝えるなら、どんな内容になりますか。
Luke氏:
新規プレイヤーへの最良のアドバイスは、「初期に入手できる3輌のスターター戦車をすべて、時間をかけて試す」ことでしょうね。
『HEAT』では、アタッカーが1輌、ディフェンダーが1輌、スナイパーが1輌、それぞれ手に入ります。これらをプレイすることで、異なるロールの立ち回りを非常によく理解できるようになりますし、「最初にどの戦車をアンロックするのか」を考えたとき、自分が本当に楽しめるものを選べるようになります。
ぜひ3輌の戦車をプレイして、自分にとって何が一番楽しいのかを見極めてください。大きくて重く、中央を支えられるようなものを好む人もいれば、小さい暗殺者のような軽戦車で、敵の周囲で立ち回りながら削っていくプレイを好む人もいます。
プレイヤーによって、楽しみ方は様々です。
John氏:
私から今の話に付け加えておくと、ローンチ後の数か月で、それら3輌の車輛とエージェントに向けたミッションを追加しました。Lukeが勧めるように、それらをプレイして試していけば、より多くの通貨を獲得して、さらに多くのものをアンロックできるようになります。
ミッションでは、新しい戦車のためのクレジットを獲得できることもあれば、戦車を強化するためのテックを獲得できることもあります。自分の兵器庫とロスター(一覧)を埋めていきながら、ゲームについての知識も自然と得られる、いい方法だと思います。
Luke氏:
3人のエージェントによる3つのスターターミッションは、かなりすぐ終わります。それをプレイすれば、少なくとも戦車をもう1輌アンロックできるだけの通貨が、すぐに手に入ります。



