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2022年にサービス終了した『歌マクロス』がクラウドファンディングで復活。プロジェクトを統括するのは、これまで数々の『マクロス』ゲーを手がけている広野啓氏。『歌マクロス』復活の経緯、なぜクラファンという手段を選んだのかを広野氏に聞く

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『歌マクロス スマホDeカルチャー』(以下、『歌マクロス』)は、DeNAが2017年から配信していたスマホ向けのリズムゲームだ。

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1982年に放送されたテレビアニメ『超時空要塞マクロス』から続く『マクロス』シリーズは、「歌」、「可変戦闘機」、「三角関係の恋愛」を柱としており、各作品では物語の鍵を握る歌姫たちが人気を集めている。

『歌マクロス』は「『マクロス』初のリズムゲーム」として登場し、3Dモデルで描かれた歴代の歌姫たちの映像に合わせてゲームが展開。オーソドックスな内容ながら、アニメ本編のライブシーンを再現する背景やキャラクターの振り付け、新録のセリフなどが用意されていたことが話題となったのだが、2022年6月28日にサービス終了となっていたタイトルである。

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(画像は『歌マクロス』公式Xより)

そんな『歌マクロス』が復活することが明らかになった。「『歌マクロス』復活プロジェクト」は、2026年9月~10月末まで、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)にてクラウドファンディングが実施される。

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『歌マクロス』復活プロジェクトの中心人物のひとりとして名を連ねるのは、広野啓氏。コアゲーマーであれば聞いたことのある人物だろう。広野氏は元スクウェア・エニックス執行役員。現在は、AUGUST株式会社(以下、オーガスト)の代表を務めており、『歌マクロス』復活プロジェクトに携わっている。

広野氏は、スクウェア・エニックスにて『ファイナルファンタジーブレイブエクスヴィアス』(以下、『FFBE』)、『FFBE幻影戦争』のプロデューサーを務めていたことで知られているが、じつはもともとバンダイ、そしてバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)で、数々の『マクロス』ゲームを担当していた経験がある。

2025年、広野氏はスクウェア・エニックスを退職し、その後AUGUSTを設立。今回の『歌マクロス』復活プロジェクト発表にいたったというわけだ。そこで電ファミ編集部はプロジェクトのキーマンである広野氏にインタビューを実施。

『歌マクロス』復活の経緯やなぜクラウドファンディングを行うにいたったのかなどをうかがうとともに、『マクロス』愛についても語っていただいた。

『歌マクロス スマホDeカルチャー』復活プロジェクトインタビュー:元スクエニ広野啓氏に、経緯と『マクロス』愛を聞いてみた_004

聞き手・文/豊田恵吾
カメラマン/永山 亘


バンダイへ入社しゲーム業界へ。目指していたのは当初からクリエイターではなくプロデューサーの道だった

──本日はよろしくお願いします。プロジェクトの詳細をうかがう前に、「なぜ『歌マクロス』を広野さんが?」という部分を掘り下げさせてください。広野さんはバンダイ、バンダイナムコ所属時代に、数々の『マクロス』作品を手がけています。まずは広野さんの経歴からうかがわせてください。

広野啓氏(以下、広野氏):
ゲーム業界に足を踏み入れたのは2004年です。現在のバンダイナムコエンターテインメント、まだバンダイとナムコが合併する前のバンダイに入社しました。ゲーム開発をやりたくて当時のビデオゲーム事業部を希望したのですが、大学では会計学を専攻していたので経理に配属されてもおかしくなかったんですよね。

──ゲームとは関係のない部署への配属の可能性もあったと。

広野氏:
入社試験で最後に役員面接があったのですが、そのときにゲーム事業部の担当役員だった鵜之澤さん【※】がいらっしゃらなかったんです。後日、鵜之澤さんと最終面談を行うことになり、おかげさまで入社が叶いました。ですので、鵜之澤さんにはいまでも恩義を感じています。

※鵜之澤伸氏……バンダイ常務取締役やバンダイナムコゲームス代表取締役社長、ディースリー・パブリッシャー取締役などを歴任。バンダイ所属時代には、ガンプラの営業企画や『機動警察パトレイバー』のプロデューサーなどを務めている。

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──当初から、ゲームに対する情熱をお持ちだったんですね。

広野氏:
ただ、ゼロからコンテンツを生み出すゲーム制作ではなく、ゲームに関連したビジネスをやりたかったんですね。ですので、「早くからプロデューサーに成れる道はないのか」と考えていました。バンダイは「基本的にプロデューサーしかいない」と詳しく調べたら出てきたので「ここだ!」と思って(笑)。

大学と大学院で学んでいたのがビジネスに関することで、クリエイティブではほかの人に勝てると思っていなかったんですね。プロジェクト全体を統括して、より多くの人に手に取ってもらえるようなエンタメを作り上げること・そういったエンタメコンテンツをプロデュースすることが自分の能力には合っていると感じていました。

自分の得意分野をどう活かすかを考えたときに、ひとつの到達点がプロデューサーだと意識していたんです。「どうやってゲームが作られているのか」を知るにあたり、統括する立場からさまざまな側面を見られるプロデューサーという立場はすごく魅力的だと思っていて。当時のバンダイは「制作もやるし宣伝もやる」、「企画から何でも全部やる」という会社だったので、そういう環境のほうが成長できると考えたんです。

──具体的なビジョンがあったのですか?

広野氏:
「このゲームが好き」というのはありましたが、「ゲームを作っている人への憧れ」はありませんでした。才能のある方たちが大勢いる業界だと思いますが、当時はゲームクリエイターという職種のことをあまりよくわかっていなかったというか。

さきほどお話したように、自分でゼロからクリエイティブできると思っていなかったんですね。経験を積むにつれて、「自分にもクリエイティブの素養が少しはあるんだな」ということに気づけたのでそれはよかったのですけども(笑)。

ロボット系タイトルを担当し、『マクロス』のゲームタイトルも多数手がけることに

──バンダイ入社後、最初に担当したタイトルはロボットものだったのですか?

広野氏:
参加した段階でほぼ出来上がっていたのですが、アシスタントとして最初に関わったのは『時空冒険記ゼントリックス』【※1】というプレイステーション2のタイトルです。香港の制作会社が作った同名のCGアニメーションがあって、それをもとにしたロボット対戦格闘ゲームですね。

最初にプロデューサーとして参加したのは『スクールランブル』をゲーム化した『スクールランブル 姉さん事件です! 』【※2】です。

ロボット関連のタイトルでは『クイズ機動戦士ガンダム 問・戦士DX』【※3】となります。アーケードタイトルのコンソール移植版です。

※1『時空冒険記ゼントリックス』……2005年4月21日にバンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたプレイステーション2用ゲームソフト。

※2『スクールランブル 姉さん事件です!』……2005年7月7日にバンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)より発売されたプレイステーション・ポータブル用のアドベンチャーゲーム。

※3『クイズ機動戦士ガンダム 問・戦士DX』……2006年5月に稼働開始したアーケードゲームをベースに、プレイステーション・ポータブルに移植されたクイズゲーム。

──なるほど。そのあとに『マクロス』作品を手がけられることになったわけですね。

広野氏:
初めて担当した『マクロス』タイトルは、PSPの『マクロスエースフロンティア』【※1】です。このタイトルを皮切りに『アルティメットフロンティア』『トライアングルフロンティア』、さらに『マクロス30 銀河を繋ぐ歌声』【※2】という30周年記念作品も手がけました。

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そのほかにも映像作品とゲームソフトが一体になっているHybrid Pack(ハイブリッドパック)【※3】というプレイステーション3タイトルを担当しています。『劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~』『劇場版マクロスF〜サヨナラノツバサ〜』『超時空要塞マクロス ~愛・おぼえていますか~』の3タイトルです。

※1:『マクロスエースフロンティア』……2008年10月9日にプレイステーション・ポータブルで発売された3Dアクションゲーム。『アルティメットフロンティア』、『トライアングルフロンティア』が続編として発売されている。

※2:『マクロス30 銀河を繋ぐ歌声』……2013年2月28日、プレイステーション3で発売された3Dアクションゲーム。本作オリジナルのキャラクターとともに、歴代『マクロス』シリーズのキャラが集まるクロスオーバーも楽しめた。

※3:Hybrid Pack(ハイブリッドパック)……1枚のBlu-rayディスクに「アニメ映画の本編映像」と「PS3専用のゲームソフト」の両方を収録したメディア形式。通常のBlu-ray機器では映画が再生され、PS3にセットすると映像とゲームの選択画面が表示される。

──当時のバンダイナムコは、年間50本以上の新規タイトルを販売しているときもありましたから、担当されるタイトル数も膨大ですよね。

広野氏:
尋常じゃない打席数だったので、めちゃくちゃ鍛えられました(笑)。「毎月1本、プロデュースしたゲームを出す」という経験のおかげでだいぶ成長できたと思います。

広野氏の青春を彩ったアニメ作品のひとつが『マクロス7』。そして数々の『マクロス』ゲームとの出会いがあって『歌マクロス』の復刻へつながる

──もともと『マクロス』はお好きだったのですか?

広野氏:
原体験で言うと、小学校ぐらいのときに『愛・おぼえていますか』を観ていました。

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広野氏:
三角関係の恋愛模様や人の心の移り変わりもそうですし、作画も内容も「大人なアニメだな」という印象がありました。

その後、中学生のときに『マクロス7』【※1】がテレビ放送されていたんですね。当時『マクロス7』と『機動武闘伝Gガンダム』【※2】が同時期に放送されていたので、私の住んでいた名古屋では日曜日は『マクロス7』、金曜日の夕方は『Gガンダム』という1週間のルーティーンがありました(笑)。そういった経験から『マクロス7』には思い入れがあります。

※1『マクロス7』……1994年10月~1995年9月まで、日曜日の11時からテレビ放映されたアニメ作品。可変戦闘機バルキリーに乗り、一切戦わず戦場で歌い続ける異色の主人公”熱気バサラ”は、いまも根強い人気を誇る。

※2『機動武闘伝Gガンダム』……1994年4月〜1995年3月まで金曜日の17時からテレビ放映された。ガンダムでありながら格闘で戦うことがメインという、シリーズの中でも珍しい作品。宇宙世紀以外の世界を舞台とする『オルタナティブシリーズ』の第1作としても位置づけられている。

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広野氏:
担当したゲームの中では、『マクロストライアングルフロンティア』ではオリジナルキャラクターを作らせていただいたので印象に残っています。ゲーム内のモードでオリキャラを制作することになり、美樹本晴彦先生【※】にキャラクターを描いていただいて。

※美樹本晴彦先生……イラストレーター。『超時空要塞マクロス』、『マクロス7』のキャラクターデザインを担当している。

──『マクロス』ゲームを数多く担当する中で、関係者と繋がりや縁ができたわけですね。

広野氏:
バンダイを辞めたあとも継続的に連絡を取らせていただいたのですが、自分で会社を立ち上げたときにビックウエストさん【※】にご挨拶にうかがった際、ちょうど「このプロジェクトについてどう考えるか」とお話をいただいたのが、「『歌マクロス』復活プロジェクト」企画の発端です。

※ビックウエスト……『マクロス』の版権を有する会社。

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『歌マクロス』復活プロジェクトの発端、クラウドファンディングの道を選んだ経緯とは?

──この流れで「『歌マクロス』復活プロジェクト」についてお聞かせください。

広野氏:
偶然といいますか、タイミングと縁があったうえで成り立っているんです。『マクロス』の版元であるビックウエストさんは「『歌マクロス』はとてもいいゲームで、ファンの皆さんによろこんでいただける作品。惜しくもサービス終了してしまい、惜しむ声も多いので復活させたい」とずっと思っていらっしゃっていたそうなんです。

さきほどお話ししたように、ご挨拶にうかがったときにそういったことをお伝えいただき、「興味があったら手伝ってほしい」とお声がけいただいたというのがスタートラインです。

そこで私が代表する形で『歌マクロス スマホDeカルチャー』の開発等に携わっていたメンバーや、当時はファンとして楽しんでいたメンバーたちが集まって『歌マクロス』復活プロジェクトをスタートさせることになりました。

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広野氏:
私自身、『マクロス』は好きですし、クオリティの高いコンテンツを残すことはすごく大事なことだと感じたんです。『歌マクロス』をそこまでやり込んでいたわけではありませんでしたが、ビックウエストさんからの提案はとてもいい取り組みだと感じ、これはやるべきだな、と。

とはいえ、『歌マクロス』は2022年のサービス終了から約4年が経過していますから、「本当にユーザーさんはよろこんでくれるのだろうか?」とか、「遊んでくれるユーザーはどれくらいいるのか?」といったことも含めて準備に時間をかけました。その準備がようやく終わり、このたび正式にお伝えすることができたんです。

──広野さんご自身の会社はどのように関わっていくのですか?

広野氏:
ちょっとだけ自分の会社の話をさせてください。スクウェア・エニックスを辞めたあと、「AUGUST(オーガスト)」という会社を設立させていただいています。私はこの20年間、プロデューサーを中心にやってきました。しかも、ゲームプロデューサーは少し特殊なスキルだったりしますので、オーガストは「ゲームをプロデュースする会社」です。

『歌マクロス』は復活プロジェクトになりますが、会社としてはゼロからゲームを作っていくことも視野に入れています。インディーのパワーが強い時代ですので、パブリッシング事業も含めて幅広くやれる環境を整えたいなと。今回の『歌マクロス』復活に関しては、オーガストがパブリッシュを担当します。

──広野さんがプロデューサーであり、会社としてパブリッシュも担当すると。

広野氏:
はい、そういうことになります。プロデューサーとして、コンテンツの全体を形にする動きを取りながら、パブリッシャーとして版元さんといっしょにゲームを作り上げていくものとなります。

──開発はどちらが担当されるのでしょうか?

広野氏:
オリジナルの『歌マクロス』と同様、xeen(ジーン)さん【※】に開発いただいています。本プロジェクトは移植に近い形ではありますが、『歌マクロス』はもちろん、「マクロス」の作品に対しても深い理解と愛情をお持ちのスタッフの方たちがいらっしゃるxeenさんの力を借りるというのは大前提として考えていました。内容を変えてしまうと「復活」からかけ離れてしまい、よくはならないという判断もありました。

※株式会社xeen(ジーン)……アーケードゲーム、家庭用ゲーム、スマートフォン向けアプリの企画・開発などを幅広く手がけるデベロッパー。

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──オリジナルの『歌マクロス』の配信元はDeNAですが、本プロジェクトにDeNAはどう関わるのでしょうか?

広野氏:
ゲームのプログラミングなどは過去にDeNAさんがxeenさんといっしょに作られたものですので、権利表記に「オリジナルゲームはDeNAさんの作品です」と残させていただいています。

DeNAさんからは「応援します」というスタンスで関わっていただいています。こうした方法でコンテンツの継続に向けた取り組みを可能にしてくださったことは、たいへんありがたいことだと思っています。

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──ビックウエストからお願いされていることはあるのですか?

広野氏:
『歌マクロス』を復活させて今後も残る作品にするという目標に向かって、ガッツリと協力いただいて制作にあたっています。どのような形でパッケージングするのがいまこのタイミングでのベストな選択なのかをつねに議論をしながら、展開方法などをいっしょに検討しています。

実際、ユーザーさんから復活を望む声は、これまでいろいろなところで目にしています。「『歌マクロス』をまたやりたい」ですとか、「やっぱり『マクロス』の歌っていいよね」ですとか。『マクロス』好きの方たちが『歌マクロス』の話題をSNSで取り上げていたり、YouTubeに残っている『歌マクロス』の映像を観続けてくれていたり。

また、潜在的なファンもたくさんいると感じているんです。今回、クラウドファンディングという方法をとらせていただくことになったのは、ファンの方の声を形にしつつ、より大きなうねりとして『マクロス』という作品やゲームの魅力が伝わっていくひとつのきっかけになればよいな、と思ったためでもあります。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。元ファミ通.com編集長。1990年代からゲームメディアに所属しており、これまで500人以上のゲーム開発者、業界関係者、著名人インタビューを手がける。1970年代後半からアーケード、PC、コンシューマーゲームにのめり込み、『ウィザードリィ』のワイヤーフレームで深淵を覗き、現在に至る。
Twitter:@Famitsu_Toyoda

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