VRでニトログリセリン爆発実験も!? 未来の教育は”体験=記憶”【対談:N高HoploLens入学式エンジニアMIRO×VR伝道師GOROman】

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理科の時間にHoloLensで、ニトログリセリンを爆発させたい

ところで、他にもHoloLensを教育に使うとなると、どんな可能性が思い浮かびますか?

やっぱり最初に思いつくのは、HoloTourで社会科見学ですね。

世界をバーチャル旅行できるHoloLens用アプリ「HoloTour」
(画像は「HoloTour」公式サイトより)

マチュピチュ遺跡とか「HoloTour」で見ると、ドット感がないから逆にVRよりリアリティを感じるんですよね。家の電気暗くして初めて「HoloTour」やった時の衝撃は今でも忘れられないです。

HoloLensの視野角が今より広がれば、完全に旅行そのものですね。

あの解像感で視野角が広がったらほんとに騙されますよね。授業がすごい楽しくなりそう。地理だって、Google earth VR」でどこでも行けるわけじゃないですか。地球儀や地図帳じゃ絶対に得られない感動がありますよね。

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息子がちょうど塾で「なんとか盆地に何川が流れている」といったことをひたすら覚えている時期なんですが、私も地理けっこう苦手でしたけど、高校時代に青春18きっぷで通った場所のことは全部覚えているんです。Google earth VRはそれに近い感覚があるのでいいなあと思います。

理科の実験も、黒板だけで教わっても頭に入ってこないけど、一度体験したら忘れられないということもありますよね。本当にやったら怒られる実験こそARで見たいですね。ニトログリセリンを爆発させるとか。

(画像は平成29年度 N高等学校 ネット入学式より)

HoloLensで数学の教科書も変わる!?

教科書も拡張したいですよね。教科書オーグメントHoloLensをかぶると教科書に情報が加算される。飛び出す絵本みたいな感じで。

それは今すぐできますね。三角関数とかベクトルとか、図が動けばわかりやすいですよね。

そうそう。私もベクトルや行列が嫌いで、まったく意味わかんなかったけど、ゲームを作るようになって「こんな便利なものはないみたい、ありがとう行列」みたいになったわけですよ(笑)。既存の教科書を拡張してビジュアライズすれば理解できるようになる人も多いと思うんです。それこそHoloLensと相性がいいと思う

私はその逆で、中学生のときにゲームが作りたくて、どうしても知りたくて先生に聞きに行ったんです。「三角関数が必要になりそうなんですけど教えてください」と言って。

すごい中学生ですね(笑)。ああこれ便利だな、って思えた瞬間に身近になるんだと思います。便利だと思えないと、「何のために勉強しているんだろう」とモチベーションも維持できないし。

数学だけでなく歴史とかも、教科書で読むより漫画やゲームを通じて理解すると分かることってありますよね。

物語で覚えるんですよね。穴埋めで暗記しても忘れるけど、ストーリーが頭の中でイメージできると初めて記憶に残る私も『SUPER大戦略』【※】のおかげでポーランドの首都ワルシャワとか覚えましたからね。歴史も『源平討魔伝』のおかげで源平時代のことはよく覚えていますけど、源頼朝が「悪の帝王」みたいな印象がいまだにあります。あ、それはマズいか(笑)。

※SUPER大戦略……1989年にセガから発売されたメガドライブ用ウォーシミュレーションゲーム
(画像はプロジェクトEGGより)

結局物語と体験なんですよね。

なので、教育を全部体験化したらすごく効率がいいし、そういう教材をHoloLensで作れたらすごいなと思います。本能寺の変とか体験したいですね。「信長やる? 明智光秀やる?」みたいな(笑)。

ググれるかどうかが能力を左右する時代

それにしても学校って、対面で集団教育するという教育システムは昔からほとんど変わっていないですよね。「新聞で調べましょう」が「ネットで調べましょう」になったくらいで。もう新聞とかとってないし……。

そういえば「明日新聞持って来てください」ってあまり言われなくなりましたね。

最近は「ググれるかググれないか」のほうが、その人の問題解決能力に影響を与えるような気がしています。ググるべきキーワードをインデックス的に脳に作っておくのは大事ですが、スマホでパッと探せる人と探せない人とでは、問題解決能力や学習能力が雲泥の差だと思います。

問題解決能力はイコール「問題発見能力」なんですよね。問題を問題として定義して、その問題を自分で解決するという思考の流れがそもそもできない人がけっこういる。本来教育で身に着けるべきなのはその思考の流れを作ることなのかなと思います。

イシューをプロブレムにできないということですかね。でも、社会に出たら問題なんて自分で掴んでなんとかするぜというほうが圧倒的に重要なスキルだと思うんですよ。

自らOculus Japanを立ち上げたGOROmanさんが言うと説得力が違いますね。

広島国際大学の石原茂和先生とTwitterで話してても、教え子の中にそういう人が増えてきたみたいですね。

最近N高を卒業した方のインタビューを読んだんですが、プログラミングをどうしてもやりたかったけど、自分が行っていた高校ではできないのでN高に入ったという。 現行の教育に疑問を持っていて、もっと新しいことやりたい人にはN高は向いているのかなと思います。

N高でのやりとりはすべてSlack

ちなみにN高ではどうやって生徒同士がやり取りしているんですか?

ほぼすべての連絡でSlackを使っています。

(画像はN高等学校のホームページより)

Slackのチャンネルがひとつの教室みたいな感じですか?

そう。各クラスごとのチャンネルでホームルームをやったりするんですよ。その他にも部活動とか、好きな話題とか、地域とかのチャンネルがあって、そこでみんな雑談したり。雑談チャンネルを見ていると若いな、まぶしいなって思いますね(笑)。

いろいろなコミュニティに気軽に所属できるのはいいですね。

閉じたコミュニティに縛られていてもいいことないですからね。私やGOROmanさんなんかは学校の外部にパソコン通信というコミュニティを持っていたので、全然苦じゃなかったわけです。

むしろ学校で寝てたし(笑)。単一のコミュニティしか知らないと死活問題ですよね。グループをクラスタリングしちゃうから、新しい外敵が現れたら、集団を維持するために全力でブロックかミュートしないといけない。

クラスという概念をよりオーグメントして、外のコミュニティにつないであげることは、生徒にとっても救いになると思うんですよね。でも問題は、さっきの話に戻るけど、自発的に何かに興味を示すタイプの人じゃないと外のコミュニティってなかなかつながらないんですよ。

そこでパッシブ(受け身)になっていると新しいコミュニティって入り込めないですよね。

結論としては、みんなオタクになろうということですね(笑)。オタクになればそういう外のコミュニティとつながる心理的障壁はずいぶん減るので。

オタクといえば、私も昔は「アニメージュ」とか「月刊OUT」【※】とか隠れて買っていたし、パソコンなんて知りませんというキャラで中学に行っていたので、隠れキリシタンみたいな生活でしたね。でも逆に仲間意識は強くなるんですよ。毎朝私の家に来て「三国志」を30分やって登校する友達とかいました。

※月刊OUT……1977年から1995年にかけて発行されていたサブカルチャー雑誌
(画像はAmazonより)

規則正しいですね(笑)。

今思うとすごいですよね。部活の朝練かよみたいな。まあ当時はパソコンを持っている家がレアでしたからね。クラスに1、2人とか。

それが今ではパソコンを持っていないほうが珍しくなったわけで、将来的にはHoloLensもそうなる可能性があるわけですよね。

理想の教育は「脳にダウンロード」?

でも教育の理想を言えば、サボっていても頭にガンガン入るシステムがほしいですね。お菓子を食べている間に脳にダウンロード完了みたいな。私たちは情報を波形にして鼓膜に当てたり、光を網膜に当てたりしてデコード(エンコードされたデータを元に戻す)しているわけですよね。A/Dコンバーターを噛ませて。それってすごい効率悪いですよね。

たしかに、そういう意味では情報効率悪いですよね。

まさにモデム(デジタル通信の送受信装置)ですよ。音声にして送って、音声からまたデジタルに戻す。

しかもそのすごく遅い経路で入力した情報を、すぐ忘れちゃう脳というDRAMに何度も何度も繰り返し入力して。

SRAMに入らないから、キャッシュで消えちゃうんですよね。ハードディスクに入れるには5回くらい書かないといけない。もっといい方法ないですかね。目とか耳とか使わずに、いっそUSBつけてほしい(笑)。

丸暗記するというよりは、脳には情報のインデックスがあればいいんですよね。

“ひろみちゅ”もお怒り!? 便利さに負ける人類

世界の情報を全部脳に入れたらそれはそれで辛いので、インデックスを構築しておいて、視覚野の裏側にウインドウ開いて、いつでもググれるようにしたい

ググるのってめんどくさいじゃないですか。スマホを起動するその2秒がもったいない。何だろうって思った瞬間に答えが知りたい。

ですよね。何を知りたがってるかAIが察してくれればいいですね。

Googleのカードはそれをやろうとしてますよね。明日の天気とか、今自分がいる場所の周辺のお店とかが、言われる前から出てくる。こわいと便利の境界線というか、高木浩光先生【※】的な話になってきますよね。

※高木浩光
産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター主任研究員。インターネット上での個人情報やセキュリティに対する“活発”な啓蒙活動で知られる。愛称は“ひろみちゅ”。

でもそれはいずれ便利さのほうが強くなっていくでしょう。テクノロジーって最初はこわいですけど、便利さに触れた瞬間、もうどうでもよくなって、「Google様に一生ついていきます」みたいな(笑)。

Googleフォトなんか完全にそうですよ。最近まで、絶対Googleフォトだけは使わないようにしようと思ってたけど、1回写真アップロードしたら「もうダメだこれ、すいません、負けました」ってなりました(笑)。

便利は麻薬ですよ。今でいうGoogleマップがないと死んじゃうみたいな気持ちになるんでしょうね。今はまだサジェストされてレコメンドされたものを買うか買わないかの判断は人間が下しているけれど、そのうちイエス・ノーの判断までAI化されて、人間は判断すら下さなくなる。

気が付くとキャンセルするのもめんどくさくなって、気が付いたらすべてAIがやってくれているという状態。

そのうち食べる場所から泊まるホテルから、移動手段から、ありとあらゆるものがGoogleのデータベースに登録され、そこからAIがサジェストして勝手にチケット買って、経済活動も回すようになる

そこに今日のランチとしてサジェストされる割合を1%増やすのにいくら、という広告の入札が入ってくるわけですよ。

一見レコメンドだと思いながら、実はアドだったという。

でも幸せでしょ? って言われると、まあ幸せかもしれないですね。

「お前の購買履歴からすると98%の確率でこれ買うじゃん」みたいなことを言われたら、たしかにそれでいいですよね。中国で急速に広がっているWeChatペイやAlipayもまさにそれだなと思っています。何を買ったかがデータベース化されているので、それでもう次に何を買うかだいたいわかりますよね。

「カタカナも書けないし、娘の名前も漢字で書けなくなってきた」(by GOROman)

そういえば、僕は最近あまりにも字を書かなくて、漢字はけっこう前から書けなくなってきたんですけど、ついにカタカナが書けなくなりました(笑)。自分の名前と住所以外書くことってほとんどなくないですか?

たしかに、言われてみればそうですね。

完全に退化して、この前カタカナの「フ」とか一瞬忘れていて焦りました。漢字も自分の娘の名前とか書けなかったりしますから画数が多くて。スマホで検索して「あーこうだった」とか言いながら(笑)。

いやいや、それは(笑)。

スマホの電池切れたらおしまいですね。待ち合わせとかもGoogleマップ見られなくなったら終わりです。Googleマップがなかった時代はどうやって待ち合わせしてたか、もう思い出せない。駅の掲示板にxyz書くとか(笑)。ほんとに奇跡的ですよね。ハチ公前とかどこだよという。

坪倉輝明さんが作った「Myハチ公」【※】みたいな(笑)。

※Myハチ公……混んでいてハチ公を探せないならハチ公を召喚してしまえばいい! というHoloLens用アプリ。VR空間内に待ち合わせの目印を設置するというもので、「Myハチ公」は、待ち合わせの相手にしか見えないという
(画像はHoloLensアプリ「Myハチ公」: HoloLens App “My Hachiko”より)

みんなが好きなところに「Myハチ公」を作れば楽しそうですね。そもそも待ち合わせする必要があるのかという。

現実で会うということのコストが高くなって、レアな体験になりつつある気がします。

私は昔パソコン通信をやっていたというのもあって、相手が生身の人間であるかどうかって、あんまり本質的に意味がないと思ってます。波長が合うかどうかは会ったことなくても分かりますからね。

もはや生身の人間より、AIの友達の方がハッピーかも

さっきのGoogleフォトやレコメンドの発展を考えると、自分にとっていちばん心地いい返答を返してくれるのって、必然的にAIになるんじゃないかと思います。

要はNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)ですね。

今は人間かAIかは応答の質で区別がつきますけど、この精度が上がっていったら、AIが友達のほうがハッピーかもしれないじゃないですか。

そこで『Emmy』【※】ですよ。人工無脳。今日なぜかたまたま『Emmy』のTシャツを着てるんですけど(笑)。

※Emmy……1984年、「人工知能型ゲーム」と銘打って発売されたゲーム『Emmy』。美少女との会話をデータベース化してその後の会話に反映させていく、当時としては画期的なシステムだった

なんでそんなもの着てるんですか(笑)。

まさかここで話がつながるとは……。まだまだお二人のお話は尽きないと思いますが、そろそろ時間なのでこのへんで帰りましょう(笑)! 今日はありがとうございました!

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著者
電ファミニコゲーマー編集部員。映画を観るのとアナログゲームをするのが好き。
Twitter:@_k18

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