理想の教育が「脳にUSB挿してDL」とかやばみ…。「未来の教育」を語るN高HoloLens入学式エンジニアMIRO氏とVR伝道師GOROman氏の対談を掲載!

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 今年4月5日。ドワンゴが運営する通信制高校「N高等学校」(N高)の入学式で広がる、異様な光景が話題となった。式場に集まった生徒が皆、MicrosoftのMR(複合現実)デバイス「HoloLens」を着用しているのだ。その数およそ75台。

なかなか見られない異様な光景が広がっていたN高入学式
(画像はN高ホームページより)

 式では、遠く離れた沖縄本校から校長が3Dホログラムでステージに登場したほか、特別来賓としてウルグアイ前大統領のホセ・ムヒカ氏がやはりバーチャルで登場するサプライズもあった。

 この入学式のためにドワンゴでは、複数人が広い空間でコンテンツを共有できるHoloLens向けシステム「DAHLES(ダレス)」を開発した。学校の教室で多くの生徒が一斉にMR体験を共有できるようになり、N高の授業でも活用される予定だ。

N高授業での「DAHLES」活用イメージ。分子構造が立体で目の前に現れる
(画像はドワンゴホームページより)

 1台約33万円するHoloLensが75台集まれば、そのお値段は約2500万円。これほどのHoloLensが一堂に会する機会は、世界を見渡してもそうそうないだろう。

 この入学式に興味津々なのが、日本のVRムーブメントの先駆者として活躍してきたGOROman氏だ。

濃すぎる経歴のVRエバンジェリストがOculus VR社を退社! GOROman氏が初音ミクと歩き出すVRの未来とは?

 かつて電ファミでも紹介したが、2013年にOculus Rift DK1と出会い、「これからはVRだ!」とOculus Japanを立ち上げ、個人でもVR上で初音ミクと会える「Mikulus」など、数々のVRコンテンツを開発してきた。昨年末に退社し、現在は株式会社エクシヴィの代表としてVRコンテンツ開発を行うという異色の経歴を持つ。

 そんなGOROman氏は、今年日本で発売されたHoloLensもいち早く入手。ファミコンを魔改造してHoloLens上で遊べるようにする「MRファミコン」を自作してしまうなど、ここでも先駆者ぶりを発揮している。

 そんなVRエバンジェリストのGOROman氏と、DAHLESを開発し、世界初の「HoloLens入学式」を成功させたドワンゴVR部MIRO氏。VR/AR/MRの最先端を行く二人に、教育についての未来像をたっぷり放談してもらった。

取材・文/透明ランナー


HoloLens入学式の仕掛け人MIRO氏(画像左)とVRエバンジェリストのGOROman氏(画像右)。

N高入学式のHoloLensは2500万円分!

今日はお集まりいただきありがとうございます。お二人の親交はいつからですか?

Oculus DK1(最初にリリースされた開発者向け機器)つながりですね。2013年。日本で数少ないOculusのバッカー(キックスターターでの支援者)でした。それからなんだかんだで4年経ちますね。

2013年に出荷されたOculus Rift DK1
(画像はOculus社の公式サイトより)

ちょうど4年前の「ニコニコ超会議2」の準備で幕張に泊まっている間に届いていたのを覚えてます。超会議を終えて家に帰ってきたら、「おお、届いてる!」って。

あのときはDK1かついでいろんな人に見せまくって自慢してましたね(笑)。

その衝撃からGOROmanさんはOculusに入社されたわけですものね。
さて、ドワンゴでは今年4月、新入生がHoloLensをかぶって参加する世界初の「HoloLens入学式」を実施しました。昨年のN高入学式で使ったデバイスはGear VR【※】でしたけど、今年はHoloLensにしたのはどうしてですか?

2016年のGear VRを使ったN高入学式のようす。
(画像はN高入学式ニコニコ生放送より)

VRヘッドセットだと外が見られないからです。教育で使うとなると、やっぱり授業を受けながら紙のノートをとりたいじゃないですか。今のところは紙に書くという行為はコストパフォーマンスが非常にいいですからね。将来的にはタブレットに置き換わるとずっと言われていますけど、紙はまだまだ強いです。

なるほど、それはたしかにありますね。

それに、N高では今年4月から新たに通学コースができました。やっぱり通学したいという需要は根強くあるみたいですね。そうすると、今は東京校や大阪校があるんですが、HoloLensを使って東京の先生の授業を大阪で受けられたらいいな、と思ったのがひとつの出発点です。

N高大阪・心斎橋キャンパス
(画像はN高ホームページより)

入学式の裏話…HoloLens不足で、てんやわんや

入学式でHoloLensをかぶれるN高生は事前申し込みで抽選したんですよね。

選ばれし者というわけですね。

去年の入学式も同じように事前申し込みで抽選したんですが、当日来ない生徒がけっこういたんです。今回もそんなもんだろうなと思って、75台より少し多めに当選を出したんですね。そしたらみんな来ちゃって(笑)。

それは大変ですね、どうしたんですか!?

報道陣用や関係者用にHoloLensを割り振ってたんですが、せっかく来てくれた生徒にかぶせないわけにはいかないなので報道陣の方に「後で体験会やりますから」と言って回ったり、壇上で挨拶する理事の分も、冒頭だけかぶってそのあと回収して生徒に渡したり……。

そんな裏話があったとは。てんやわんやでかき集めたんですね。やっぱりせっかくなら300台くらい買いたいですね!

どなたかN高に1億円寄付してくださる方を募集しています!(笑)

GOROmanさんも関心! 入学式特製システム「DAHLES」

今回のN高の入学式にあわせて、MIROさんが中心となってHoloLensを利用した同期コンテンツ配信システムを開発しました。「DAHLES(ダレス)」という名称ですが、こちらはどのようなものなのでしょうか。

まず前提として、広い空間でみんなでHoloLensをつけて1つのものを見ようとすると、HoloLensの位置をきちんと座標上で確定させるのがけっこう難しいんです。きちんと地形をスキャンできるような空間じゃなかったり、人がたくさんいすぎたりして。

空間マッピングをHoloLensにちゃんとさせるのは確かに難しいですよね。

それに、同じコンテンツをバーッと配信した時に、台数が増えるとネットワークのトラフィックの負荷は高まります。要するに、たくさんの端末が広い空間でHoloLensを動かす時に、座標系をきちんと合わせるための下まわりを、ネットワークが輻輳しないようにスケジューリングして配信して、同時に見せるためのシステムということですね。

なるほど、それって教育以外にもいろいろ使えそうですよね。

私が昔から言っていることですが、ARで(初音)ミクさんのライブをしたいんです。ディラッドボード【※】じゃなくて、ARで、立体的に見えるミクさんをそこに立たせたい。それをニコファーレでやって、100人くらい集めてみんなでHoloLensで見たいんです。

※ディラッドボード
プロジェクターで後ろから投影された光を映し出す透明なボード。

それはぜひ見たいですね!

というわけで、いずれは教育だけでなく、エンターテイメント方面にも活用していきたいです。

「DAHLES」の機能なんて、本来OSレイヤーにあるべき!

ちなみに、GOROmanさんはHoloLensでシェアリング【※】されたことありますか?

渋谷の一室にHoloLens80台が大集結! 仮想空間を共有できるシェアリング機能にゲームの未来を見た

※シェアリング
HoloLensが持つ、サーバーを立ててネットワーク経由でつながり、空間を共有する機能。同じ場所に集まった人たちが、同じ仮想オブジェクトをさまざまな角度から同時に眺められるようになる。

HoloLensのファンミーティングでやったことがあります。そのときはシューティングゲームをしたかな。

シェアリングはHoloLensの重要な機能のひとつだと思いますが、まだあまり活用されてないですよね。

シェアリングこそがHoloLensのカギだと思いますけどね。まさに『電脳コイル』【※】の世界。

※電脳コイル……2007年にNHK教育で放映されたアニメ『電脳コイル』。誰もが「電脳メガネ」をかけ、情報を現実世界に重ねて表示できるようになった近未来が舞台
(画像はNHKアニメワールドより)

シェアリングは同じコンテンツと同じ空間の中で座標系を共有するための仕掛けです。でもそれって、前提として全端末がグローバルにつながっていれば必要ないとも言えるんですよ。ただ、今は正確に位置を決める手段がないんです。

そうそう。その機能がOSのレイヤーに普通にあってほしいですよね。

それが普通にできないから、「DAHLES」みたいな仕掛けをわざわざ作って四苦八苦してるわけですよ。

たしかに冷静に考えると、究極的には「DAHLES」はなくていいんですよね。それがもっと下のレイヤーにないとアプリを作る人が苦労するし、関連サービスが生まれてこないんですよね。

そうそう。DAHLESをつくらなきゃいけないことが問題だとも言えるわけです。「何で私はこんなもの作っているんだろう」という気持ちになってきたな……(笑)。

DAHLESみたいな下まわりの技術は、今必要だからとりあえず作ったけれど、空間に教材を出してみんなで見ようなんていうのはOSレベルでできるようになっていてほしいわけですよ。ホログラムで先生を出す技術とか、教材のデータを作るといったことに集中したいんです。

「DAHLES」を使えばN高生もサボれない!?

そうですよね。でも、まさに「DAHLES」を使えば、遠隔でもまるで先生がそこにいるかのように講義を受けられるようになるわけですね。

どうしてもモニター越しのビデオ授業だと集中力が続かないですし、やっぱり先生は人としてのプレゼンス(存在感)があったほうがいいんじゃないかと。

(画像は平成29年度 N高等学校 ネット入学式より)

確かに。人がそばにいると緊張感増しますよね。モニター越しだと、これは映像だと思った瞬間にサボれるし、お菓子とか食べながらできるし。私もコード書くときは集中したらフロー状態に入ってはかどるんですけど、だらけるとなんにもできないです。ある程度緊張してないと集中力持たないですよね。

大阪校にいるのに東京の先生から「お前、サボってんじゃないぞ」とチョーク飛んでくるみたいな(笑)。

HoloLensを使えば、「ゼルダの伝説」の矢みたいなのを飛ばすこともできますね。それを盾で防御する生徒とか(笑)。

ところが実際HoloLensでやってみると、先生が近くに来ると見切れちゃうんですよ。

それはHoloLens自体の視野角の問題ですよね。今はまだかなり狭いですからね……。

Microsoftが本気出して作ったお値段33万円のHMDをさっそく購入してみた【HoloLens体験レビュー】

入学式の時みたいに、話している人が遠くにいると全身が入るので問題ないんですけど、でもそれだと既存の映像とあんまり変わらない。

「喜怒哀楽の感情をクラウドで共有したい」(by GOROman)

たしかにそれは課題ですよね。先生が近づいてきてもフレームでクロップされちゃうので、ある種のプレゼンスは剥がれちゃうかも。むしろ逆に、先生を『聖戦士ダンバイン』のちっこい妖精【※】みたいにしたらどうですか? 先生が教科書の上をトコトコ歩いてたり(笑)。

※ちっこい妖精
富野由悠季総監督のロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』より、妖精の姿をしているチャム・ファウ

それいいですね(笑)。

そこにいるとしか思えないようになったら勝利ですよね。先生である必要もないのかもしれない。『いけない!ルナ先生』【※】みたいな。電ファミ読者なら通じるかな?

※いけない!ルナ先生……1986年から1988年に「月刊少年マガジン」で連載された、上村純子によるお色気マンガ。
(画像はAmazonより)

GOROmanさんのMikulusも理想としてはそういうことですよね。キャラが存在感を持ってすぐそばにいるという。

GOROman氏がつくった、VR空間内で目の前に初音ミクが現れる「Mikulus」。GOROman氏へのインタビューに詳しい

Mikulusはまさにそういうことですね。ちなみに将来的には喜怒哀楽の感情をクラウドで共有できたらおもしろいなと思っています。一緒に映画を見ていると、世界中の人の感情の情報がサーバーに上がっていて、ミクさんと映画を見ていると、ウケるところは一緒に笑ってくれて、悲しいシーンは泣いてくれるみたいな。

なるほど、それはわくわくします……!

たとえば「けものフレンズ」をみんながニコ動で見る理由って「共感」じゃないですか。一緒にコメントを見て盛り上がりたいという欲求画質は少々悪いかもしれないけど(笑)。

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