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ガンダムの名シーンが「シューティングゲーム」という言葉を生んだ!? アクション、シューティング…ゲームのジャンル分けの歴史を徹底考察!

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コラム:“アクションゲームらしさ”って何?

 本文では、『大辞泉』には「アクションゲーム」の項目がないと説明したが、より収録語数が多い『デジタル大辞泉』のオンライン版にはこの項目が収録されており、以下のように説明されている。

 

“コンピューターゲームの一種で、ゲーム中のキャラクターをボタンやレバーで素早く制御し、勝敗や得点を競うもの。スポーツ・格闘技・レースなどを題材にしたもののほか、シューティングゲームも含む。”

 

 「アクションゲーム」が大まかにはシューティングゲームを含むことについては本文で触れたが、ここで気になるのは、「スポーツ・格闘技・レースなどを題材にしたもの(も含む)」という説明だ。確かにこれらの中には、アクションゲームの範疇に入ると言えるものも少なからずある。

 

 しかし、たとえばカーレースのゲームは、時にとっさの素早い操作が求められることもあるが、だからといってこれをすべてアクションゲームにくくっていいのかという疑問が残る。この説明は、具体例を入れようとして、むしろしっくり来ない例を入れてしまったようにも感じられる。

 

 なぜ違和感があるのかといえば、「アクションゲーム」と「リアルタイムのゲーム」とを混同しているからだ。アクションゲームはまず間違いなくゲームがリアルタイムで進行するが、その逆は必ず成り立つとは言いがたい。

 

 スポーツやレースのゲームにはリアルタイムのゲームが少なくないが、それは題材となっているスポーツやレースが現実に(架空のスポーツの場合は、仮に現実化したら)リアルタイムで行われるという前提があるからで、アクションゲームにするためにリアルタイムにしているとは限らない。

 

 「アクションゲーム」というジャンルをごく素直に理解するなら、プレイヤーのレバーやボタンの操作に対し、画面上のキャラクターなどが即座に何らかの動きを示して反応するというものだろう。

 

 しかしこのような説明は、たとえばフライトシミュレーションなどにも当てはまってしまう。より広い言いかたをすれば、「シミュレーションゲームのうち、何らかの動き、あるいは運動をシミュレートしており、それにプレイヤーの操作がリアルタイムに関与できる余地があるもの全般」が、これに該当することになる。

 

 そうすると、リアルタイムのゲームをアクションゲームかどうか分別する鍵は、プレイヤーの操作とゲーム上の動きとの関係性にあると言えそうだ。

 

 レースゲームなら、ハンドルやペダルで操作する場合はもちろん、レバーやボタンを使用する場合でも、その入力に対するゲーム上の反応が真面目なシミュレーションに近づけば近づくほど、“アクションゲームらしさ”は薄まるように見える。『グランツーリスモ』を、レースゲームと呼ぶならともかく、アクションゲームと呼ぶ人はまずいないだろう。逆に言えば、レバーやボタンの操作と、画面上で起こるキャラクターなどの動きとのあいだに、漫画的な単純化や誇張、あるいは空想的な飛躍が入っていればいるほど、「アクションゲームらしさが濃い」ということになる。

 

これは、ゲームの題材が空想的かどうかという問題とは少し違う。陸上競技を題材にしているゲームでも、ボタンを押すとキャラクターがすぐにジャンプするなら、単純化や誇張があると言えそうだ。その一方で、ロボットを操るゲームでも、XBOX用の『鉄騎』のように、ロボットが実在すると仮定して、操作手順を忠実になぞることが求められるなら、単純化や空想的飛躍の度合いは高いとは言えない。

 

 このように見ていくと、「アクションゲーム」のより実態に近い説明として、たとえば以下のようなものが考えられるだろう。

 

 ビデオゲームの一種で、画面上のキャラクター等がプレイヤーの操作に即応して動き、その操作と動きとの関係に、漫画的な単純化や誇張が多く含まれているもの。

 

 とはいえ現実には、家庭用ビデオゲーム機やパソコン、スマホなどの身近にあるビデオゲームの大半が、レバーやボタン、マウスやキーボード、あるいはタッチパネルといった多少なりとも単純化された入力装置で遊ぶようになっている。したがって、ガチガチのシミュレーションはともかく、リアルタイムのゲームの多くが何らかのアクションゲームらしさを持つことは、否定しづらい。

 

 こう考えると、新しいリアルタイムゲームが出てきた際に、「アクションゲーム」という言葉が、「アクション○○ゲーム」、あるいは「○○アクションゲーム」と呼ぶような形で使われることが多いのにも納得がいく。「アクションパズルゲーム」や「アクションロールプレイングゲーム」はおなじみだし、スーパーファミコン用『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のCMで歌われた「ハッと息飲む謎解きアクション」という一節を思い起こす方もいるかもしれない。おそらくきっとこれからも、「アクションゲーム」という言葉は何かと都合よく使われていくのだろう。

 

 ちなみに『DOOM』でさえも、「First Person Shooter」、略して「FPS」という言葉ができる前は、「3Dアクションゲーム」、あるいは「バーチャルリアリティアクションゲーム」と呼ばれていた【※】

※『公式DOOMサバイバルガイド』(インプレス)では、日本語訳制作者による文章に「3Dアクションゲーム」が、訳文に「バーチャルリアリティアクションゲーム」が用いられている。

 つまり……『人生ゲーム』と『DOOM』は同じジャンルのゲームだったんだよ!(な、なんだってー!?>ΩΩΩ)

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