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ソニーの空間再現ディスプレイELF-SR1は「レイア姫のホログラム」を現実のものにした

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 2020年10月31日にソニーから発売となった空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display)ELF-SR1は、SF映画で描かれたホログラムを実現している。しかも、より高精細に。この感想は、メディア向け体験会にてELF-SR1を実際に触れて抱いたものだ。

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写真では立体感がなかなか伝わらないとは思うが、ハサミが手前に飛び出しているのがおわかりいただけるだろうか。解像度の高さと殻の質感にも注目してほしい。
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ELF-SR1のパネルサイズは15.6インチ。解像度は3840pixel×2168pixel。
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側面には5.5w(2.1ch)スピーカー。
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背面には電源とHDMI、USB Type-C端子が並ぶ。
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磁石で手軽に装着可能なオプションパーツも付属。トップバー、サイドパネル、ボトムステージを装着することで没入感がアップする。

 視聴者の顔を捉え、3DCGをリアルタイムにレンダリングし、視点位置に合わせた高精細な裸眼立体視を実現するELF-SR1。ソニーが公開しているイメージで描かれているように、3Dコンテンツを表示すると映像がディスプレイから飛び出すように見えるという代物だ。

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ソニーによるELF-SR1体験イメージ。

 発売から約2週間が経過しているが、50万円前後と高価であることからELF-SR1について詳細に語られたレビューは少ないように見受けられる。本稿では、実際に体験してわかった「立体表現のスゴさ」をお伝えしていこう。
 ちなみに、ELF-SR1はソニーショールーム/ソニーストア銀座にて展示されている(他ソニーストアでも展示予定あり)ので、食指が動いた方はぜひ体験してもらいたい。おそらくディスプレイから目が離せなくなるはずだ。

文/豊田恵吾


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憧れを生んだ「レイア姫のホログラム」とELF-SR1が実現した立体表現

 1977年に公開された映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』にて、R2-D2がレイア姫の立体ホログラムを投射するシーンがある。有名なこのシーンは、「レイア姫のホログラム」と呼ばれ、より身近な未来を象徴するものとして強くインパクトを与え、映画の公開以降、多くの研究者・企業が実現に向けて取り組んできた技術だ。人類はまだデス・スターを完成させるにいたっていないが、ソニーはELF-SR1の発売によって「レイア姫のホログラム」を実現させたのだ。

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 それほどの実存感を示すELF-SR1を以下にまとめる。既存のデバイスとの大きな違いとして、顔を認識させるだけという手軽さは、ほかに類を見ないものだろう。なお、認識できるのは1名となるため、ひとつのディスプレイで複数人が同時に立体映像を見ることはできない。だが、セッティングが不要で、ディスプレイの前に違う人が座るだけで自動的に顔を認識し、立体映像を見ることができる。

1.特別なメガネやヘッドセットを使わず、裸眼で立体的な空間映像が見られる
2.セッティングが不要。ディスプレイに顔を認識させるだけ
3.ディスプレイを見る角度に関わらず、視点の変化に合わせて映像が見られる
(左右、上下、奥・手前、好きな角度から立体映像を見られる)
4.解像度が高く、質感がはっきりと認識できる

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 ELF-SR1の4K 60Pによるコンテンツ表示はおそろしいほどクリアで、質感がはっきりと認識できる。硬い、柔らかいといった質感の違いや、見る角度を変えたときに違和感なく光源が変化することで、際立った実存感を放つ。ユニティちゃんが踊るデモ映像では、奥行きのあるステージ、ダイナミックに動くキャラクター、そして被写体・見る側のどちらが動いても立体的に見えることに加え、映像に遅延やズレが皆無なことから「そこに箱があって、その中に立体のステージがある」と感じられるほどだった。

 立体のステージがあると感じられるのは、前述したとおり、顔を左右、上下、前後に動かしても立体映像が見られることが大きく起因している。また、手前にあるロゴが垂直に表示されることも立体感を高めている要因だ。オプションパーツのサイドパネルを装着するとより顕著に感じられたのだが、実際にはディスプレイは斜めになっているので、手前部分に垂直に壁があるわけではない。だが、ディスプレイを目にしたとき「透明な垂直の壁が手前にあり、その壁にロゴが貼られている」と見えるため、より奥行きを感じられるというわけだ。

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画面右下の“unity”マークは垂直に表示されている。

 専用SDK(ソフトウェアディベロップメントキット)はUnityとUnreal Engine 4に対応しているので、クリエイターがVRキャラクターコンテンツなどを制作・公開することにより、ELF-SR1の需要は高まるのではないかと感じた。VTuberがコンテンツ公開の場として活用するのもいいだろう。

 制作現場にELF-SR1を導入する利点としては、イメージ共有がしやすくなる点が挙げられる。デザイナーの頭の中にある3Dモデルが、高精細な動きのある立体映像として表示されるのであれば、これほどわかりやすいイメージの共有方法はないだろう。

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 ソニーは使用イメージとして、CGコンテンツ制作や確認、イベント会場でのエンタメツール、ショールームや店頭サイネージなどでの使用を例として挙げている。個人的には、デジタルフォトフレームのように、さまざまな場所・シチュエーションでELF-SR1が普及するのではないかと可能性を感じている。結婚式の受付にて新郎新婦が3Dでお出迎えする、といった使い方もできるだろう。

 『スター・ウォーズ』を例に挙げたとおり、筆者は齢40を過ぎたおじさんだ。だが、積み重ねてきた歳の分だけ、さまざまなVR、MR、裸眼立体視をこれまでに体験している。そのすべての体験と比較しても、ELF-SR1が示した「そこに空間があり、モノがある」という実在感は、抜きんでたものがあると断言する。

 リアルな奥行き感、質感、佇まい、そして実存するかのようなクリアさ。これまで体験したどのデバイスよりも美しく、「ディスプレイの奥に別世界がある」と感じた新しい空間映像体験。「レイア姫のホログラム」を越える立体表現を示してくれたソニーの技術力に敬意を表し、本稿を締めたい。

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